« 倉本裕基という名前をよく見る | トップページ | リンドン女伯爵 »

2005年1月31日 (月)

シューベルトの誕生日

1797年1月31日はシューベルトの208回目の誕生日。

スタンリー・キューブリックの映画「バリー・リンドン」の中で使われたシューベルトのピアノトリオの記事が結構面白い。D929の第2楽章。「バリーリンドン」はDVDで所有しており、初めて見たときに、少々野暮ったいこの曲が延々とBGMとして流されたときに違和感を覚えたが、とつとつとした会話のようなこのトリオのメロディーが耳について離れなくて困ったことがあった。1950年以前の古い録音を集めた「シューベルティアーデ」を探すと、オイストラフ、オボーリン、クヌシェビツキーによる演奏があり、聞き直したら、まさにこの曲だった。1/31の夜DVDでその部分(賭博士の相棒となったバリーが、ベルギーでリンドン女伯爵と恋に落ちるところ)を見た。初め音楽は少々場違いな感じだが、主人公二人の心理的な綾をそのまま音楽が語るという趣で間然とするところがないと思うようになる。 なお、一般的な解説で、バリー・リンドンの夫人になったCountess Lyndonについては、リンドン伯爵夫人とされ、前夫のサーリンドンがリンドン伯爵のような書かれ方をしているが、映画でもナレーターが語っているように、彼女自身がリンドン伯爵家を継いでおり、原作によれば、夫は従兄弟だったようだ。)

1997年は彼の200歳の誕生日だったのに、モーツァルトイヤーの1991年ほど世間は大騒ぎしなかったし、自分自身もそうだった。

なお、先に、モーツァルトの誕生日のときに、「中年会社員の観察日記」さんからTBをもらったので、お返しにTBを送信。

シューベルト 誕生日 でググッたところ、とっとき魔のシューベルトというページに、「未完成」交響曲への結構辛らつな感想が書かれていたのを見つけた。私自身もシューベルトのこの交響曲は、なぜこれが名曲とされて愛好されてきたのかが実感できないできているので、部分的には共感するところがあった。

現在この曲は、従来の第8番ではなく、第7番とされ、大ハ長調(いわゆるザ・グレート)が第8番とされている。その前に作曲された比較的よく聴かれる古典派語法を用いている習作的な第5番などに比べると、この「未完成」が別の次元の作品であることはよく分かる。第3楽章のスケルツォがスケッチと一部のオーケストレーションがあるというが、残された第1、第2楽章も必ずしも完成していたとは限らないのではなかろうか?ブルックナーを経験している現代の耳には大きな違和感はないのだが、「未完成」の特に第1楽章などは、第1主題が冒頭の低音主題とクラリネットによる主題に分かれ、その間に主題的な接ぎ穂や関連性が薄く、さらに柔和な第2主題が延々と続くかと思うといきなりコデッタ的な終結のトゥッティのうるさい主題が提示され、それらの間に経過句的なパッセージがないのは、いかにも異質だ。いわゆるミケランジェロの未完のトルソのような疎外感を覚える。主題が並立的に提示されるだけで、一貫性だとか、流れだとかが感じられない。また第一主題が2拍子系のように聞こえる(6/8拍子的)により必ずしも単調なリズムではないとはいえ、両楽章とも3拍子系で、どちらも緩徐楽章的だ。

いまふと思ったが、アルペジオーネソナタの第1楽章の上向音形の冒頭が未完成の冒頭主題の矢張り頭の部分に似ている。「未完成」がアルペジオーネのように滑らかなテンポの第1楽章を持っていたらと想像してみると面白い。「未完成」のアレグロ・モデラートの第一楽章自体、ワルター的に地の底から湧き出るかのように無気味に、またいとおしむように丁寧にゆったりと演奏するのではなく、交響曲の第1楽章としてもっとアップテンポで、構成的に演奏した方が面白いのかも知れない。C.クライバーの録音や、近年の古楽器派の録音を聴いたことがないが、もしかしたらそのような演奏なのかも知れない。

古楽器派の「未完成」を聞いてみたくなり、帰路CD、DVDショップに立ち寄ったところ、店頭に陳列してあるCDのケースについているバーコードをかざすと、CDの各トラックが45秒ほど試聴できるプレーヤーが設置されていた。どういう仕組みだろうか。店内か本店などにMP3などの音声データーのサーバーが置いてあり、バーコードが読み取られるとCDジャケット画像や曲名、音声データが転送されるのだろう。これでいくつか聞くことができて面白かった。インマーゼール/アニマエテルナの演奏はテンポはそれほど速くない。ガーディナー/リヨンのは速めだ。モントゥー/コンセルトヘボウは高雅だ。フルトヴェングラー/BPOは豪儀だ。ただ、「未完成」は意外に人気がないようで、あまり店頭在庫はなかった。このほか、高橋悠治の新録音のゴルトベルク変奏曲も聞くことができた。テーマのアリアのトリルが非常に特徴的。ただ、この曲は、演奏家が誰でも感動してしまうから。また、定価では絶対に買うことのないと思われる宇野功芳の「艶舞曲」と題するオーケストラ小品集を聴いてみたが、試聴機が非常にエコーがかかっている音質であることもあいまって、意外にまろやかで生気のある演奏で驚いた(モーツァルトのドイツ舞曲、ブラームスのハンガリアンダンス5番、シュトラウス2世のこうもり序曲など)。結局、この店では試聴だけさせてもらっただけ。このほか、ベートーヴェンの第九連発という企画ものがあり、メンゲルベルクからシノーポリまで20種類ほどの「歓喜の歌」のさわり(Seid umschlungenの直前?)を聞くことができるもので、面白かった。

途中の行き着けのブックオフに立ち寄ったら、正規盤ではないが、クラシック名曲シリーズが大量に入庫しており、ハンス・ホッターの日本ライヴの「冬の旅」が置いてあり購入した(懐かしいオーマンディの「展覧会の絵」もあった)。
帰宅後、今日はシューベルトの誕生日であることを家人に告げて、聞き始めた。ホッターの声を聞いた子ども達は「格好のいい声だね」と感想を語ったのには驚いた。「ヴァーグナーの『ニーベルングの指環』というヒーローが沢山出てくる『オペラ』で、一番偉い神様の役を歌うのを得意とした人なんだよ」と答えておいた。ただ、聞きつづけるのはつらい。少年時代からあまりにも何回もテナーのユリウス・パツァークの「冬の旅」を聞いて来た者にとって、バスバリトンの時に割鐘のような威嚇する野太い声は、孤独な弱弱しい旅人のイメージではない。まさに、「ジークフリート」で神々の王ヴォータンが扮する「さすらい人」の歌だ。

自前のCDで「未完成」を聞きなおした。昨日のコメント、第1、第2楽章が推敲を終えていない作品かも知れないというのは暴言だった。これはこれで完結している。全曲は、ライナー/シカゴで聞いたが、聞きなれたバーンスタイン/NYPも悪くなく、豊かで繊細な響きのハイティンク/コンセルトヘボウはやはり、自分の持っているこの曲の録音のなかではベストだと思った。ただ、スタンダードとしてのベームなどによる伝統的なヴィーンフィルの演奏も聞いてみるべきだろう。

|

« 倉本裕基という名前をよく見る | トップページ | リンドン女伯爵 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

「中年会社員」です。相互のTBになりました。よろしくお願いします。
文書中心のBLOGですね。大変かと思いますが、がんばってください。
もしかして、仙台ですか?私は今は埼玉ですが、大学が盛岡でたびたび仙台には御邪魔しておりました。20年ほど前ですが。
懐かしいです。

投稿: sakaiy22 | 2005年1月31日 (月) 12:41

また、お邪魔しました。
ベーム、ウィーンフィルの未完成というと、たしか70年代に来日されたときに演奏されたような記憶があります。当時は高校生で、テレビでの鑑賞でした。ブラームスの交響曲第1番とのカップリングでCDが出ていましたが、現在流通しているかは不明です。購入した記憶はあるのですが、探さないと出てこないです。

投稿: | 2005年2月 1日 (火) 23:07

「中年会社員」さん、コメントありがとうございます。1975年のベーム/VPOの来日公演は、LPが発売された折に購入したことは購入したのですが、熱心に聞かなかったので、曲目を正確に思い出せません。

今実家においてあり、確かLP4枚組だったと思います。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/orch/page128.html

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005FJMC/249-5855602-5432336

などを見ると、

ブラームス1番、マイスタージンガー第一幕前奏曲、ベートーヴェン7番、レオノーレ序曲3番、シューベルトは大ハ長調(ザ・グレート)を聞いた記憶はあるのですが、肝心の「未完成」は収録されていたかどうか。今度の帰省のおりに確かめてみたいと思います。モーツァルトの「ジュピター」の裏面に入っていたかも知れません。(しかしこの曲目ドイツ系のオーケストラ曲の大傑作集という趣ですね。)


投稿: 望 岳人 | 2005年2月 2日 (水) 09:36

「中年会社員」さん コメントありがとうございます。
自分のBLOGを検索したら、LP4枚組に「未完成」が収録されているのが確認できました。(ウーム、あまり印象に残っていません。)

リンクした来日公演記録やNHKホールのライヴ録音CD(7枚組)の曲目を見ると、確かにJ.シュトラウス2世のワルツを取り上げていますね。(確かLPのブックレットには、全公演のプログラムがアンコールを含めて掲載されていたように記憶します。)

投稿: 望 岳人 | 2005年2月 3日 (木) 16:30

あんまし興味ないけど書いてみました!!
シューベルトについて教えてくださーい!!

投稿: 蛮 | 2005年2月15日 (火) 11:04

蛮さん、コメントありがとうございます。

私も、シューベルトは自分のホームページに書いているように、つい素通りし勝ちの作曲家の一人で、伝記には詳しくないし、演奏も聞き込んでいません。今回は、誕生日にちなんで集中して聞いて見ましたが。

あんまし興味ないとのことですが、シューベルトでググってみると沢山情報が得られますし、HMVやamazonなどでは、試聴もできるページもありますよ。

投稿: 望 岳人 | 2005年2月15日 (火) 13:00

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/37411/2756014

この記事へのトラックバック一覧です: シューベルトの誕生日:

» 今日は何の日? 【1月31日】 シューベルトの誕生日 [中年会社員の観察日記]
今日はシューベルトの誕生日です。 生年・没年は、1797年1月31日 - 1828年11月19日です。 本日は、生誕208年。 [続きを読む]

受信: 2005年1月31日 (月) 12:31

» 『バリー・リンドン』(スタンリー・キューブリック) [0 1/2 ]
Barry Lyndon     『バリー・リンドン』   TOP [続きを読む]

受信: 2005年2月21日 (月) 21:25

« 倉本裕基という名前をよく見る | トップページ | リンドン女伯爵 »