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2005年2月22日 (火)

日韓と英愛の平行関係 と メサイア初演

pfaelzerwein さん のWein, Weib und Gesang の最新の記事にヘンデル(1685-1759)のメサイアが題材とされ、初演がダブリンで行なわれたということを読み、そういえば当時のアイルランドはどのような政治体制下にあったのだろうと調べてみた。

メサイアのダブリンでの世界初演 1742年の4月13日。

以前ダブリンに仕事で出張したおりに、現地の人と歴史談話をしたことがあるが、その際、日本ではピューリタン革命の立役者として中学校の歴史でも教えられるほど著名なオリバー・クロムウェル(1599-1658)が、アイルランドでは今でも憎まれていることを聞いて驚いた。

1642年の革命後、1649年に英国軍を率いてアイルランドに侵入したクロムウェルは、カトリック系アイルランド人(ケルト系のゲール系が多い)を多数虐殺、アルスター(今の北アイルランド)からは多くのアイルランド人を追い出し、空いた土地に長老派のスコットランド人を入植させ、今日の北アイルランド問題の原因を作った張本人だというのだ。

メサイアのダブリン初演は、その頃から約100年後。イギリスではクロムウェルによる共和制は既に潰え、王政復古後の名誉革命1688~1689年を経た時代で、アイルランドはまだイギリスの支配下にあった。ちょうどガリバー旅行記のジョナサン・スウィフト(1667-1745)ダブリンの聖パトリック大聖堂で大主教を務めていた時代である。

大主教ということで、彼はイギリス国教会派の有力人物であり、恐らくヘンデルのメサイアの初演に居合わせた可能性は相当高いのでははないだろうか。上記のリンクには、「1742年4月にヘンデルがダブリンで“メサイア”の初演を行った時、聖パトリック大聖堂の聖歌隊はクライストチャーチの聖歌隊と合同で参加した。」とあるので、一層その蓋然性は高いだろう。

追記:メサイア ダブリン初演時のヘンデルとスウィフトの関係について

日本語サイト 
面白いフィクションはあったが、スウィフトが反対したのか賛成したのか、初演に立ち会ったのか、明確に記述しているものは見つからなかった。

メサイア(ヘンデル)のページは、解説から対訳、英語の発音,midi など非常に充実したもの。

「ヘンデル スウィフト」で検索したら、このメサイア初演の件ではなく、かかわりがあったというサイトがあった。

英語サイトには、メサイア ダブリン初演とスウィフトの関わりについて言及しているページが沢山あった。

SWIFT HANDEL MESSIAH でGOOGLE検索をした結果

聖パトリック教会のサイト
そのヘンデルのメサイアのページ
BBC h2g2 Handel's 'Messiah'
  
これらによると、スウィフトは、メサイアのダブリンでの演奏を最初は反対したのだが、結局、自分の教会に属する合唱隊が初演に参加したことから考えると、relent(気持ちを和らげる)ことになったに違いないと推測されているようだ。
   

(数年前私が仕事でダブリンを訪れたときに、帰国時ダブリン空港へ向う途中、タクシードライバーに頼んで、ダブリンの市内を一通り回ってもらったことがある。上記の聖パトリックチャーチのほか、クライストチャーチ、トリニティ・カレッジ、ギネス本社なども案内してもらった。その親切な運転手さんはイギリス出身だがカトリック信者らしく、ダブリンの丘の上にある巨大な十字架に連れて行ってくれて、ここにPopeが来たんだよとうれしそうに話してくれた。初めPopeが何を指すか分からなかったので尋ねると、catholic, papa と説明してくれ、ローマ法王のことだと分かった次第。私が「ローマに行きヴァチカンに詣でたことがある」と言うと、ヘー日本人がね、という顔をしながら、「そのうち私も行きたいんだ」と言っていた。)

ところで、日本史をその時代より少しさかのぼってみると、豊臣秀吉(1536-1598)の朝鮮出兵がある。1592年(文禄)と1597年(慶長)のことだ。いまだに韓国・朝鮮の人は、この朝鮮出兵を恨みに思っているという。ちょうど、アイルランド人がクロムウェルとイギリス人を恨むように。

梅棹忠夫「文明の生態史観」という本があり、学生時代に政治学史のゼミで読んだ。旧大陸の東と西に巨大文明、中華文明とローマ文明の古代文明が花開き、その両端の極東(日本)と極西(西欧)になぜ近代文明が平行進化的に出現したかを論じた内容の本で、名著とされる。非常にマクロ的な視点の著作である。

イギリスとアイルランドの関係と、日本と朝鮮との関係は、そのミクロ的な実例かも知れない。(位置関係的には、アイルランドが極西で、日本が極東であり、完全なシンメトリーではないが。)

 

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コメント

ご機嫌如何ですか?

またまたヘンデル関連の新聞記事を見つけてしまい、ついつい推考してしまいました。こちらの記事やリンクも参考にさせて頂きました。英愛関係、特にシンフェンとの問題は英国自身の問題と認識しているのですが、この記事でスウィフトの立場にも興味を持ちました。古い記事で申し訳ありませんが、TB張るかリンクで何れにせよ関連させたいと思います。

投稿: pfaelzerwein | 2005年3月20日 (日) 06:48

コメントありがとうございます。ヘンデルについての新しい記事拝見しました。

投稿: 望 岳人 | 2005年3月22日 (火) 11:11

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恥ずかしながら、後追い記事です。 2月23日は、ドイツ生まれで、イギリスで主に活躍した作曲家、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの誕生日です。 生... [続きを読む]

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