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2005年5月19日 (木)

モントゥーの「ロザムンデ」の音楽(抜粋)とハイドン

LONDONレーベルの セル/VPO「エグモント」への付随音楽の余白に、1957年録音のモントゥー/VPOによるシューベルト「ロザムンデ」の音楽の抜粋3曲が収録されている。この中の序曲が「魔法の竪琴」から転用されたものだ。録音時期は古くステレオ録音で左右に分かれた音像になっているのは分かるが少々ワウっぽく聞こえる。面白いことに、モントゥー/VPOのハイドンと同様にヴァイオリンが両翼配置になっているようだ。間奏曲はラジカセを買ってもらったときにFM放送でこの間奏曲の聞き比べ番組をやっていて偶然録音して何度も聴いた音楽で、私にとって音楽鑑賞の原点のような親しい曲だ。ピアノによる即興曲や、弦楽四重奏曲で同じメロディーが用いられているが、このオーケストラによる原曲?の魅力の方が勝っている。モントゥーの録音は、少々鑑賞には苦しいのだが、演奏は悪くないと思う。

ところで、モントゥーが優れた指揮者で、あの「春の祭典」のスキャンダラスな初演を受け持ったほど20世紀前半から活躍していた巨匠で欧米を股にかけて活躍したというのは知識としては知っているが、残念ながらこれまであまり聞く機会がなかった。 ただ、以前に別記事で書いたようにモントゥーとヴィーンフィルのハイドンは、それまで聞いたハイドン演奏のすべてを霞ませるほど優れたものだと思った。(アスキーによるウィーンフィル名曲集として書店で発売されていたもの。通常盤はネットで購入可)

ロンドンレーベルによる録音は上記のロザムンデの音楽とほぼ同時期なのだが、リマスタリングが成功しているのか非常に明瞭で安定した音質で鑑賞上まったく不満はない。「驚愕」と「時計」という耳にタコができるほど聞いたハイドンの有名曲なのだが、まずは両翼配置のヴァイオリンの掛け合いが非常に面白い。現代配置では第二ヴァイオリンがほとんと第一ヴァイオリンにマスクされてしまい聞き取りにくいのだが、これが相当独立して動いているのが聞こえる。編成はそれほど刈り込んではないようなのだが、木管楽器群も弦に隠れることなく音色的にも魅力的だ。それぞれのフィナーレなどは、ピチピチ活き活きしているのだが明晰であり、一本調子ではなくニュアンスも豊か、そして全体に気品がある。 (セルのハイドンはFMで聞いたり、録音状態の悪いエアチェックで聞いていたことがあるが、LPやCDではまだ聞いたことがないので評価は保留。)

この録音と手持ちのA.フィッシャーの全曲盤、C.デイヴィスとACO盤、カラヤンとBPO盤、アバドとECO盤と聞き比べてみるとその違いが歴然とする。近年のピリオドアプローチでは両翼配置は当然なのだろうが、比較的近年の録音であるアバド盤、そして全集録音までもしたA.フィッシャー盤が両翼配置を取らない理由が理解できない。以前音楽雑誌でハイドンの曲は、その見かけの親しみ易さから誤解されがちだが、相当高度なアンサンブル無しには成立し得ないものだと、ネヴィル・マリナーが語るインタビュー記事を読んだことがあるが、現代配置による録音は、アンサンブル上の妥協の産物ではないのだろうか?現代配置はハイドンの魅力を大きくスポイルものと言っても過言ではない。

A.フィッシャー盤は、モコモコした録音(録音場所はあのエステルハージ宮のハイドンザールというハイドンの中期までの交響曲の成立に深く関わったホールなのだが)とその録音のせいもあるのだろうが臨時編成による切れ味の不足と音色的な魅力の少なさで、愛聴には程遠い。カラヤン盤は、1980年代のカラヤン晩年の録音で、「豪華で鈍重な貴婦人の舞踊のようだ」と以前書いたが、自分の好みとは程遠い。アバド盤は、ヨーロッパ室内オケの緻密な演奏は評価したいが、愉悦感が不足する。生真面目で憂鬱そうなアバドの顔が思い浮かんでしまう。C.デイヴィス盤は、このモントゥー盤を聞くまでは最も気に入っていた演奏。隅々まで誠実できちんとしているのだが、余裕と弾力があるのが魅力になっている。 残念なことにモントゥーによるハイドンはこの2曲しか正規録音がないとのことで、非常に残念だが、それゆえに一聴の価値のあるものだと思う。

長老指揮者のハイドン その1・モントゥー編  このページのコメントは私の感想に非常に近い。

P.S. 2005.12.08 追記。ヨッフムのハイドンのロンドンセットの記事にTBを送った。

ヨッフムは、ロンドンフィルとロンドンセットを録音しているが、その内4曲がかつてLP2枚組で発売された折にもとめた。HPにも書いたが、気品のある音楽作りをしており、自分の聴いた限りでは現代楽器でのハイドンとしては、C.デイヴィスとACOとの録音とともに最も愛好するものだ。上記モントゥーは別格。また世評の高いセル(ハイドン学者のロビンス・ランドンが研究家を目指したのはセルとクリーブランドのハイドンを聞いたからだという)については音盤も所有していないため保留。

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コメント

何時もコメントを書きながら長くなって破棄して居ります。

モントューは、レコードカタログ等で馴染みでしたが、結局は昔FMでその演奏を聞きました。「春の祭典」の初演が示すようにリズム感覚が鋭いはずですが、何故かレパートリーは腰の重い和声のものですね。ドビュッシー等は如何なんでしょう。セルとは正反対の印象を持っています。

「音楽鑑賞の原点」と言われるように何時ものお話から、移り行く和声の流れとかの音色のパレットを想像してしまいました。

今日はどうやら、最後まで行き着けました。

投稿: pfaelzerwein | 2005年5月21日 (土) 14:14

コメントありがとうございます。

モントゥーとセル、生まれ育ちも資質も違いますが、一点、曇りのない明晰な表現という点で共通性があるように感じております。

モントゥーには非常に魅力を感じているので、これからフランス物なども聞いてみたいと思います。

モントゥーのハイドンについては、中途半端なエントリーだったので、コメントをいただいたのを励みに少々追記しました。

投稿: 望 岳人 | 2005年5月24日 (火) 12:10

望岳人さん、こちらこそ刺激を受けて、手元にある制作録音の一部を較べてみました。指揮者では、クレンペラー、ケンペ、バーンスタイン、デーヴィス、アーノンクール、クイケン等です。オーケストラの配置で第二ヴァイオリンが強調されるか、声部のバランスで掛け合わさせるかで様々です。

現在は、楽団の配置を変えるまでの深い付き合いをする指揮者は皆無で、バランスを加減するぐらいが精々でしょうか。配置に関わらず強調するかしないかの見識であって、アンサンブルの制御と並んで腕の見せ所なのでしょう。

仰るようなまたリンクにあったような、中庸と言うのがキーポイントのようですね。しかし両翼に拘ると内声部に対して副次的なものまでが過度に誇張されてしまう危険もありそうです。そうなると、本当に通の聴衆を持っていた作曲家の意図に反するような気もしました。

だからピリオド楽器でも声部が見え隠れして、味わいのある演奏を望みたいと思います。管の合わせ方も絶妙で象牙細工を見るような芸術ですね。和音の中の声部間の絡み・ぶつかりが魅力で「余裕と弾力、切れ味と音色的な魅力の不足」も十分に想像出来ました。ハイドンの交響曲の聴き較べで随分と素晴らしい作曲を楽しめました。

投稿: pfaelzerwein | 2005年5月25日 (水) 15:56

モントゥーのハイドン、両翼配置なんですね。聴いてみたいです。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの掛け合いが面白いので、どんどんこのオケ配置でやって欲しいものです。

A・フィッシャー盤、我が家ではなかなかエエ音で鳴ります。残響が良いです。少しモコモコしているようですが、雰囲気が豊かで良い感じです。

投稿: mozart1889 | 2005年12月 8日 (木) 13:55

mozart1889さん、コメントいつもありがとうございます。モントゥー/VPOのハイドンは素晴らしいと思います。多分、自分と相性がいいのだと思いますが、ハイドンを聞いてこんなに感心したことはあまりありませんでした。

とてもいい装置で聴かれているようでうらやましいです。我が家の古いステレオではA.フィッシャー盤(まだ全曲制覇していません)からは残響が美しく聞こえないためか、音像がぼやけた感じでちょっといただけないのです。

来年には、アンプとスピーカーをそろそろ買い換えたいのですが、またコストパフォーマンスのいい廉価品に手を出しそうです(>_<)

投稿: 望 岳人 | 2005年12月 8日 (木) 17:40

モントゥーのハイドンと同じくセルのハイドンでも一部ですが、両翼配置が聴けますよ。
96番ニ長調です。モントゥーと同じくチェロを左に持ってくる形の両翼です。セルの96番は
モントゥー並みに乗りのりの演奏です。バイオリン同士の掛け合いが鮮明にかつ楽しく聞こえてきます。

投稿: Monteux'sMustache | 2005年12月27日 (火) 21:58

Monteux'sMustacheさん はじめまして。

コメントありがとうございます。お礼が遅れてもしわけありません。

「モントゥーの口ひげ」は、サンサーンス、フォーレもそうでしたか、いかにも古きよきフランスですね。

セルも両翼配置を使ったことがあるんですね。是非聞いてみたいと思います。

投稿: 望 岳人 | 2006年1月 4日 (水) 14:06

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氷雨の一日。 この数日の気温の低下で、風邪引きが周囲で激増中。 気をつけなくちゃね。 さて、今日はハイドンの交響曲第104番ニ長調「ロンドン」。 オイゲン・ヨッフム指揮ロンドン・フィルの演奏。1971年10月のDG録音。ヨッフムのロンドン交響曲集(4枚組)からの1枚。 ヨッフムはこの録音の後、1970年代半ばからEMIにベートーヴェン・ブラームス・ブルックナーというドイツ3大Bの交響曲全集を一気に録音、巨匠晩年の全盛期を迎えてゆく。 このハイドンもその全盛期にさしかかる頃で、大変おおらかで健康的... [続きを読む]

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