ヘンデル 「メサイア」(ガーディナー指揮)
12月の音楽といえば、ひねりのないまっとうな(べたな)選曲として、この「メサイア」、「クリスマス・オラトリオ」「第九」「くるみ割り人形」がどうしても聴きたくなってしまう。
昨日は、ミューザ川崎で、シュナイト指揮の神奈川フィルと横浜市緑区第九を歌う会による「メサイア」の公演があったようだが、家族連れで聞くには長すぎるから残念ながらあきらめた。
以前、地元の合唱団に入っていたときに、仲間の団員で他の団体を掛け持ちしていた人が、その団体で公演をするからと誘われて聞きにいったことがあった。オケもコーラスもアマチュアで、独唱者だけ、縁のあるプロを招聘していたが、結構立派な演奏だった。私は当時は、C.デイヴィスとバイエルン放送交響楽団のCDで耳なじんでいたが、一緒に行った人は、結構飽きていたようだ。英語の歌詞とは言え、日常語ではない文語的なキリスト教用語が用いられているので、何度も聞くなどして音楽を諳んじることができなければ、集中力を保つのは結構難しい。
曲中、「ハレルヤ」の時には、敢然と起立した教養のある初老の男性がいたが、周囲の人々はあっけにとられていた。昨夜はどうだったのだろうか?
暖冬の予想とは言え、天気の悪い今日は、薄ら寒い。陰鬱な冬。日本の太平洋側は、冬型の気圧配置では、真冬でも陽光に溢れるが、ヨーロッパの冬は厳しく寒い。一陽来復の冬至を祝う気持ちとイエス・キリストの誕生日が結びついたのも理解できるような気がする。
さて、このガーディナーの「メサイア」。1982年11月11日-20日、ロンドン、セント・ジョンズ・チャーチでの録音。手兵のモンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツによる「ピリオドスタイル」の演奏。珍しく、フィリップスレーベルに録音している(この後、ブラームス合唱曲集などがフィリプスに録音されているが。)ガーディナーの最大の成果は、やはりモンテヴェルディの「聖母マリアのヴェスペレ」だろう。このヘンデルやバッハ、ベートーヴェンにいたるピリオドスタイルの演奏は、私にとっては、さっぱりし過ぎるようだ。
ヘンデルのこの曲を聴くと、ヴァチカンのシスティナ礼拝堂のミケランジェロの「最後の審判」の、ヘレニズム的な筋肉隆々の肉体を持つ裁きの神としてのイエス・キリストを思い出す。以前、ローマを訪れたときには、残念ながらちょうど修復作業中で、この大壁画を見ることはできなかったが、天井画はすでに修復が完了しており、陰鬱な色彩で親しんでいた天地創造が、水彩画とでもいえる軽快な明るい色彩で浮かび上がっていた。
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コメント
「敢然と起立した教養のある初老の男性」は、矢張り英国ファッションでしたか、以前留学した時に誂えた、少し古臭い?
私は来る土曜日にピリオドで聞く予定です。
投稿: pfaelzerwein | 2005年12月 4日 (日) 15:32
ガーディナーのメサイア、もう20年以上も前になるんですね。当時は斬新な演奏で、しかも録音も良くて話題になったことを思い出します。
今は、ハイライト盤で聴いています。イイとこ取りなんですが、全曲盤を聴く時間がなくて・・・・。
投稿: mozart1889 | 2005年12月 4日 (日) 19:10
pfaelzerweinさん いつもコメントありがとうございます。英国ファッションかどうだったかは記憶が定かではありませんが、「英国初演の国王ジョージ2世の起立エピソード」とその後の起立の習慣を知っていて勇気のあった人は約1000名の聴衆の中で彼だけだったということになるかと思います。ドイツでの公演はいかがでしょう?
mozart1889さん 確かにメサイア全曲を集中して聞くのは大変です。たまたま昨日は時間が取れたのですが。これなら歌う方が楽かも知れないと思ってしまいます。将来またコーラスに復帰できるようになったら是非参加したい曲の一つです。
投稿: 望 岳人 | 2005年12月 5日 (月) 17:02