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2006年3月29日 (水)

シューベルト 弦楽五重奏曲を聴く

シューベルト 弦楽五重奏曲 ハ長調 D.956 (op.post. 163) (2Vn,1Va, 2Vcのための)

bergq_schubert_quintet ◎アルバン・ベルク四重奏団、ハインリヒ・シフ(Vc)


bylsma_schubert_quintet◎スミソニアン協会のストラディヴァリウス楽器(五重奏団)
アンナー・ビルスマ(Vc)を含む
 併録 シューベルト Vn&String Quartet(3Vn, 1Va, 1Vcのための)ロンド イ長調 D.438(弦楽五重奏によるロンド)


シューベルトの最晩年、ハ長調の大交響曲に続いて完成されたやはりハ長調が主調の弦楽五重奏曲。

モーツァルトの有名なハ長調やト短調などの弦楽五重奏曲群は、弦楽四重奏にヴィオラを加えたものだが、シューベルトの唯一の弦楽五重奏曲は、これとは異なり、弦楽四重奏にチェロを加えたもの。この先駆としては、ボッケリーニが数多くの作品を残している(「ボッケリーニのメヌエット」として知られるポオピュラーな小曲もこの編成が原曲らしい)ので、影響を受けたのだろうか?

チェロを一本加えたため重厚な音響を響かせるが、伸びやかでシューベルト的な旋律が多く登場する曲ではある。しかし、突然深淵を覗き込むような暗い楽想がところどころに登場する。これが非常に若くして晩年を迎えたシューベルトの、死への想いを表現したものだといわれるようだ。

モーツァルトにとって死は「親しい友達」だったという(リート K.523 『ラウラに寄せる夕べの想い』などに見られる諦観)。また、ベートーヴェンは「死への想い」を会話帖に残しているのか不明にして知らないが、「喜劇は終わった」という少々シニカルな言葉を残して逝去していることもあり、死への強い恐怖は感じられない。しかし、シューベルトの場合、死の影が若い頃から纏わりついているように思う。あの傑作「魔王」にしても「野薔薇」にしても。

シューベルトの死因ははっきりは分からないようだが、その若い晩年に、身体の不調を訴えていたことは確からしい。最晩年とは言え、わずか31歳、現代で言えば「青年」期の彼の器楽での「白鳥の歌」がこのように完成した形で残されたのは、痛切な感情を抱かせられるためそう頻繁に聞ける曲だとは言えないが、それでもありがたいことだと思う。

CDは、現代ヴィーンの代表格である、アルバン・ベルク四重奏団とハインリッヒ・シフの演奏は、非常にスケールの大きい演奏になっている。録音にもよるが、弦楽合奏風の広がりを感じさせる演奏になっている。

一方、ピリオド楽器と当時のものと考えられる奏法による ビルスマたちのピリオド・アプローチによる演奏は、スケール感はないものの親密な対話を聞かせてくれる。痛切な感情を抱かせるのは、どちらかといえば前者だろうか?

p.s. 2007/06/09 

 電網郊外散歩道の『シューベルト「弦楽五重奏曲ハ長調」を聴く』にトラックバックさせてもらった。

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ディスク音楽03 アンサンブル」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。この五重奏曲はシューベルトの作品中、最も
深みのある、また充実したものを感じます。
カザルスが弾いている演奏ですが、以前書いたのをTBさせて
もらいました。

投稿: | 2006年3月30日 (木) 09:14

丘さん コメント、トラックバックありがとうございます。

傑作と評価の高いこの五重奏曲ですが、私の場合結構以前から聴いていたものの、なかなか耳に馴染めませんでした。このところシューベルトを集中的に聴きながらようやく少し取っ掛かりができてきたという感じで、まだ深く味わえてはいないのですが、敢えて記事にしてみた次第です。

ヴェーグカルテットとカザルスの録音は、迫力があることでしょうね。一度聴いてみたいと思います。ご紹介ありがとうございました。

投稿: 望 岳人 | 2006年3月30日 (木) 18:53

コメント、トラックバックありがとうございます。ようやく積読状態から脱し、美しく切ないこの音楽の魅力をようやく理解いたしました。ヨーヨーマとクリーヴランド・カルテット盤は、他の演奏を知らないので比べることはできませんが、リアルなスタジオ録音でした。

投稿: narkejp | 2007年6月10日 (日) 06:11

narkejpさん、こちらにもコメントいただきありがとうございました。

この曲は、傑作との評価の高いもののようですね。結構以前からアルバンベルクカルテット盤で馴染んでいるのですが、私にとっては、シューベルトの他の著名曲に比べて、第1楽章がどんなメロディーだったか、とか、第4楽章がどんな音楽だったかなかなか記憶に沁み込んでこない類のもので、聞いているときには、美しいとか、ドキドキだとか、ハンガリー風だとか味わっているのですが、どうもその先に進まずに停滞している曲の一つです。ただ、ビルスマたちによるピリオドアンサンブルは、よりchamber music としての親密さを感じさせるもので、偉大さや切迫さよりもそちらの方からのアプローチが私には合ってはいるようです。

投稿: 望 岳人 | 2007年6月10日 (日) 10:18

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どういう訳か、この曲に限ってSPレコードの記憶がぼやけている。 放送ではなかった、確かにSPを聴いていた筈なのに・・・・。 LPはメロス弦楽四重奏団の輸入盤を買った。そして確かに聞き覚え のある、あの印象を懐かしく思ったものだ。 カザルスの文字を見て、つい... [続きを読む]

受信: 2006年3月30日 (木) 08:52

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