『ニーベルングの指環』オーケストラ・ハイライト ショルティ/VPO
ヴァーグナー
『ニーベルングの指環』 オーケストラ・ハイライト(またはオーケストラ抜粋)
サー・ゲオルク・ショルティ指揮ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団
〔1982年10月 ゾフィエンザール〕
1.ヴァルキューレの騎行(『ヴァルキューレ』)
2.ヴァルハラ城への神々の入場(『ラインの黄金』)
3.ヴォータンの告別と魔の炎の音楽(『ヴァルキューレ』)
4.森のささやき(『ジークフリート』)
5.ジークフリートの葬送行進曲(『神々のたそがれ』)
6.フィナーレ(『神々のたそがれ』)
昨夜に引き続き、ヴァーグナー入門盤(『ニーベルングの指環』編)を聴く。1982年の録音ということで、1983年のショルティのバイロトへの初登場のデモンストレーションとなる録音のように思える。実際、デッカとしては、カルショウのプロデュースの元でVPOとの録音史上不滅の業績、『ニーベルングの指環』全曲スタジオ録音を残したショルティによるバイロイトでのライヴ録音を残したかったようだが、ショルティが1983年の1年のみで健康上の理由で(不評を気にしてとも言われる)降板してしまい、その夢が潰えたということがあったらしい。
さて、このハイライト集だが、ディジタル初期の録音で、「あの」ショルティがVPOとヴァーグナーを録音したということで、当時は結構話題になったものだった。これは、LONDON BEST 100の再発盤。ただ、ショルティとVPOは、『指環』全曲後、いくつか録音を残してはいるが、VPOの団員からはあまり高い評価を得ていなかったのだという。
この録音は、合計でも40分ほどで、また声楽がまったく入らないことから、オーケストラによる『ニーベルングの指環』の名曲集になっており、比較的聞きやすい。ただ、全曲演奏すると14時間になりなんとするまったくもって膨大な舞台芸術・音楽作品であり、この録音によってはほんのとば口に立ったとしか言えないだろう。
実際、自分自身も、ノイホルト指揮バーデン州立歌劇場の14枚2000円弱という超廉価版と図書館の翻訳台本で、この全曲を一応何日間かかけて通して味わったのだが、台本が結構突っ込みどころのあるものとは言え、音楽の力はものすごいものがあった。このショルティ/VPO、デッカ録音という豪華な布陣とは音楽のレベルが相当落ちるものだったが、様々なライトモチーフが複雑に絡み合って、無限に続くかのように巨大でかつ透明なソノリティを持つ管弦楽法と超人的な歌手たちによって延々と歌われるのは、まさに感覚が麻痺するかのような境地に陥る。台本があらわすゲルマン神話の思想のこともあり、自分としては何度も経験したいものではないが、そうする価値はあるとは思う。
*関連記事: あずみ椋のコミックと新書館の翻訳
:超廉価盤の『指環』を聴いて (ホームページの記事)
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コメント
懐かしい演奏ですね。
デジタル初期の名録音。外盤LPは、今も我が家のオーディオチェックのためのレコードです。
CDも凄い音です。美音の洪水に酔ってしまいます。
1曲目のヴァルキューレの騎行から、ゾクゾクします。ボクにとっては忘れがたい名盤です。
投稿: mozart1889 | 2006年8月12日 (土) 18:57
mozart1889さん コメントありがとうございます。
ヴァーグナーは何しろ難解な言葉入りなのと、筋書きや登場人物に共感できるかどうかということもあり、気軽には楽しめないという先入観がありますが、このショルティ盤などはその点ハイライトですが、その魅力の一端に触れられるのでいいでですね。
投稿: 望 岳人 | 2006年8月13日 (日) 11:01