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2006年10月27日 (金)

パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番、他 ハーン,大植/スウェーデン放送響(新譜)

Paganini_vnc1_spohr8_hahnoueパガニーニ(1782-1840)
  ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ聴調 作品6

シュポア(1784-1859)
  ヴァイオリン協奏曲第8番 イ短調 作品47『劇唱の形式で』

ヒラリー・ハーン(Vn)  大植英次/スウェーデン放送交響楽団
 〔パガニーニ:2005年10月、シュポア:2006年2月、ストックホルムでの録音〕

10月25日に発売されたばかりのフル・プライス(税込み2,548円)の新譜。新譜を買うことはめったにないのだが、以前からヒラリー・ハーンの音盤をじっくり聴いてみたいと思っていたのと、曲目がやはり落ち着いて聴いてみたいと思っていたパガニーニだったので、エイッと決心して購入。(先着?名様にポスターが付いていた。ちょうど『大草原の小さな家』に登場するような19世紀風の衣装を付けたハーンがヴァイオリンを弾いているもの)。

指揮は、現在大阪フィルの常任の大植英次。バーンスタインに師事し、あのスクロヴァチェフスキのミネソタ管(ミネアポリス響)で活躍し、昨年バイロイトで『トリスタンとイゾルデ』を指揮した指揮者。オーケストラは、どういう関係があるのかスウェーデン放送交響楽団。パガニーニのほかに、ルイ(ス)・シュポアの第8番のヴァイオリン協奏曲が録音されている。(シュポアのこの作品は『LP300選』には入っていないが、『歌の情景』としてかろうじて言及されている。)

ハーンのヴァイオリン演奏は、先日のミドリと同様非常に高度なテクニックと美しい音をもっているが、ハーンの風貌から醸し出される冷静で物に動じない雰囲気は、演奏にも表れているように思う。

悪魔に魂を売ったとまで噂され、死後きちんと埋葬もしてもらえないほどの大ヴィルトゥオーゾだったパガニーニが、その自分の演奏を公衆に聞かせるために作曲した作品がこのヴァイオリン協奏曲第1番だ。オーケストラがいわゆるロッシーニ的なブンチャッチャの作りで、構成的にもどことなくぎごちないのだが、ヴァイオリンパートだけはさすがに凄い。また、イタリア的な甘いメロディーもふんだんに出てくる。このような音楽をハーンがどのように料理するのだろうかというところが、このCDへの関心だった。

ハーンの技術も音も相変わらず冴えているが、以前のような鋭利さはこのようなショーピース的な曲にしては却って抑制されているように聞こえた。歌もやはり冷静に折り目正しく歌い、第三楽章の超絶技巧の花盛りのような部分もいとも容易そうに弾きこなしている。ただ、ゲップが出るような畳み掛けるような技巧の誇示はなく、音楽として品格を保っているように思う。贅沢を言うようだが、それが少々物足りない部分でもある。大植の指揮はこのブンチャッチャ的な薄くて打楽器がやかましいオーケストラをそつなく鳴らしているが、このような曲ではあまり活躍の要素がないようだ。

シュポアの曲は、初めて聴いた。"in modo di scena cantante" という題名がついているようで、これが「劇唱の形式で」と訳されている。シュポアも名ヴァイオリニストだったというでけあって、ヴァイオリンが雄弁に音楽を語っている。オペラの一場面で登場人物が朗々とアリアを歌っているように書かれているからわざわざあのような題名が付けられたのだろう。ここでも、ハーンはすっきりと安定した音楽を奏でている。大植はここでもあまり出番がない感じだ。

ブラームスやベートーヴェンなどシリアスな聴きなれた曲で、ハーンを聴く方が面白いかも知れない。

P.S. 2006/10/29追記。
 10/27はパガニーニの誕生日だとされる日だったことにようやく気が付いた。昨年の同じ頃、ミドリの『カプリース』を聴いていたのだった。

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コメント

こんにちは、ご無沙汰しています。
大植さん、なかなか活躍されているんですね。いつか、
ジュニア向けコンサートの模様をTBで観た記憶が
ありますが、非常に明るい大衆受けするようなキャラクター
に思えました。
ヒラリー・ハーンと共演とは面白いですね。興味深いです。
ハーンは最近気に入っているバイオリニストです。

投稿: | 2006年10月27日 (金) 11:43

丘さん 今晩は。こちらこそご無沙汰しております。

モーツァルトのピアノ協奏曲第25番ではコメントを書かせてもらおうかと思ったのですが、自分の考えがまとまらず遠慮させてもらいました。

最近音楽雑誌も買わないのでたまたま昨日珍しいなと思って店頭のCDを手に取ったところ新譜で、ハーンの音盤をじっくり聴きたいと買ってみました。以前、ベートーヴェンやブラームス、バッハなどは耳にしたことがあり、その鮮烈とも言うべき精密で安定した音楽に驚異を覚えたのですが、パガニーニでもその妙技は味わうことができました。ただ、凄く品格が高く、ところどころ別の曲を聴いているかのような錯覚に陥りました。五嶋みどりの「カプリース」全曲も凄いですが、ハーンでも聞いてみたいものです。

投稿: 望 岳人 | 2006年10月27日 (金) 19:43

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