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2006年11月26日 (日)

クリュイタンス/BPOのベートーヴェン 交響曲全集の簡単な感想

Disky盤の クリュイタンス指揮ベルリンフィルによるベートーヴェンの交響曲全集を聴くのは楽しかった。

Andre Cluytens/Berlin Philharmonic Orchstra

◆第3番。クリュイタンスの『エロイカ』がこういう演奏だとは思わなかった。不意打ちで驚いた。スリムで引き締まった軽快な『英雄』像だ。フルトヴェングラーのベルリン・フィルがこのようなアポロン的なエロイカを演奏したとは非常に意外だ。その直後のカラヤンの録音よりもこちらの方に共感を覚える。

◆第7番は、第1楽章の主部はとにかく遅く感じる。躍動感が感じられない。吉田秀和『世界の指揮者』では、クリュイタンスのこの録音が俎上に乗せられ、アゴーギクがディナーミクに結びついていないことに強い違和感を呈している。それには遠くから近づきまた遠ざかるく汽車の比喩を使われている。フルトヴェングラー的なアゴーギクとディナーミクの結びつき(ストリジェンド)のよしあしもあるように思うが。そこでは、あのセルでさえ、第4楽章の長い持続的なクレッシェンドでは、アッチェレランドを伴っていたと指摘されている。しかし、クリュイタンスの第4楽章は結構好きだ。これがインテンポによる迫力(吉田氏)によるものかは分からないが、執拗なリズムの反復の積み重ねによる効果がよく分かる。

◆第5番は、第1楽章の第2ヴァイオリンの強調が不意打ちでびっくりした。セル、ライナーのコーダでのホルンでのモットーの拡大の強調は聞かれなかったが、明晰でもたれない古典的なプロポーションを保った演奏だと思う。

◆第6番は、世評が高いため意識して聞きすぎたのかも知れないが、あまりピンと来なかった。先の記事にも書いたが、少々第一楽章でのアンサンブルの微妙なズレが気になるし、ヘ長調の弦楽器の鳴りが少々耳につく。これはワルター/コロンビアの名盤でも感じた。その点セルの録音は、少々人為的な感じがするが、特に第一楽章の安定したテンポとアンサンブルは見事だし、音色的にうるさくなく慎ましやかで好みだ。

◆第9番の合唱は凄い。特に自分が歌ったことのあるベースが右チャンネルから明瞭に分離して聞こえる。しかし、オーケストラの音は芯がない音というのか、冒頭のホルンと弦の刻みの上にかすかにきらめくはずのヴァイオリンの音がよく聞こえないほど。全体に夢の中のような演奏だ。それなのに第四楽章の歌手と合唱の実在感が奇妙に思う。合唱は聖ヘドヴィッヒ教会(大聖堂)の合唱団という団体で、これはフリッチャイがほぼ同時期に録音したときと同じ団体。調べてみるとこの団体は名合唱指揮者の指導により名合唱団として名を馳せたものらしい。歌手はフリッチャイが、F=ディースカウを初めとしたドイツ系の名歌手揃いだが、クリュイタンスはゲッダを除いて知っている歌手がいなかったが、著名な歌手たちらしい。

WIKIPEDIA英語版の外部リンク集ではベートーヴェンのマニュスクリプトも一部見られる。)

◆第1番と第2番。LPで聴いた曲だが、CDの方がしまった演奏に聞こえる。LPの方がもっと弦が分厚い響きで飽和気味だった。編成の大きさが違うと思えるほど聴いた印象に差がある。CDの方がコンパクトで、古典派交響曲的なすっきり感があり好ましい。

◆第8番は、これをモノーラルにして音質を劣化させ、フルトヴェングラー/BPOの幻の録音として世に出されたこともあったという。洋泉社Mookの『名盤&裏名盤』では、口の悪い評論家によってこのクリュイタンスの録音はただ音を並べただけだと酷評されている(他の指揮者の録音についてもルサンチマンのような悪口を並べているのだが)。それほどひどい演奏だとはまったく思えない。簡素に見えてアンサンブル面で非常に演奏が難しい作品だというが、そのような点を微塵も感じさせず高潔で気品がある演奏だと感じた。

◆第4番は、ここでも最後に聞くことになってしまった。自分の中ではやはり影が薄い曲だ。しかし、クリュイタンスとBPOによる録音は聞いていて楽しかった。フルートはニコレだろうか、クラリネットは、オーボエは、ファゴットは、ホルンは・・・。管のソロが実に美しい。カラヤンの楽器になる前のベルリンフィルだが、今聞いても(オケの上手い下手はよく分からないのだが)、各パートとも非常に充実している。クリュイタンスのバランスなのだろうが、それほど低音を強調していないため、全体的にクリアに聞こえるため余計それがよく分かる。そしてマスとしての全体の響きの豊かさがなんともいえない。解釈としては、カルロス・クライバー以降の流行りになった雄渾で火の玉のような第4ではないが、男性的な音楽が繰り広げられる。

◆序曲では、『プロメテウスの創造物』、『エグモント』、『フィデリオ』(Op.72b)が収録されている。

録音会場は、ベルリンのグリューネヴァルト教会での録音とのこと。Disky盤は、録音データはいまひとつ明らかではなく○Pマークと西暦が印刷されているだけだが、世界のネットでは流石に詳しいディスコグラフィー(韓国の人らしい)があった。

それによると以下の通り。

第1番 19th Dec. 1958, Grünewaldkirche, Berlin

第2番 15,16th Apr. 1959, Grünewaldkirche, Berlin

第3番 Dec. 1958, Grünewaldkirche, Berlin

第4番 May 1959, Grünewaldkirche, Berlin

第5番 10,11,13th Mar. 1958, Grünewaldkirche, Berlin

第6番 2,3,9th Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin 何とこの前の1955年に同じベルリンフィルとのモノ録音もあるという!(Testamentから発売 Testament SBT 1182で、下記の『未完成』とのカップリング!

第7番 Feb. 1957, Grünewaldkirche, Berlin

第8番 Dec. 1957 & Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin

第9番 Dec. 1957, Grünewaldkirche, Berlin

プロメテウスの創造物序曲 Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin

エグモント序曲 Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin

フィデリオ序曲 Nov. 1960, Grünewaldkirche, Berlin

p.s. 東芝EMIのセラフィム盤のLPでは、定番の『運命・未完成』にするために、同じコンビでシューベルトの『未完成』交響曲も録音されていたことが分かる。ベートーヴェン全集でこのようにまとめられてしまうと、せっかくの『未完成』が消えてなくなってしまい少々残念だ。

と書いたが、25th Nov. 1960, Grünewaldkirche, Berlin録音のこの「未完成」が Testamentの SBT 1182 というナンバーのCD で上記『田園』(1955年のモノ録音)とのカップリングで入手可能らしい!

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