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2006年11月 8日 (水)

シューベルト 『白鳥の歌』 シュライアー&シフ

Schubert_schwanengesang_schreier_schiff シューベルト 

『白鳥の歌』(全14曲) 
 その他4曲:4.Herbst, 16.Der Wanderer an den Mond, 17.Am Fenster, 18.Bei dir allein

ペーター・シュライアー(テノール)
アンドラーシュ・シフ(ピアノ)

〔1989年8月 ヴィーン・コンツェルトハウスのモーツァルト・ザールにて〕


バルトークの『2台ピアノと打楽器のためのソナタ』(アルゲリッチなど)も英国の音楽雑誌 "Gramophone"の Award collection(受賞盤コレクション)シリーズで出ていたのを購入して記事にしたが、このCDもそのときに店頭で見かけて購入したもの。(本当は、オリジナルのジャケットのものをほしかったのだが。)一応この賞についての記述を読むと、1990年の独唱賞を獲得したものだという。

シューベルトの歌曲集では『冬の旅』『美しき粉引き女(美しき水車屋の娘)』にはその中の曲を歌ったりピアノで爪弾きするなどして以前から親しんできたが、この『白鳥の歌』は、有名な『Ständchen セレナーデ』を歌ったり聴いたりする程度で、音盤も身近になかったためこれまで全曲に親しむ機会はほとんどなかった。(ブログでのドイツ語のウムラウトの表示方法がようやく分かった。普通のホームページと同じだったのだ。HTML編集のできるブログなら可能のようだ。)

このCDには、上記のようにシューベルトの死後編集された『白鳥の歌』全14曲のほかに、それにゆかりのあるレルシュタープの"Herbst"、ザイドルの"Der Wanderer an den Mond" "Am Fenster" "Bei dir allein"の合計4曲を加えて、詩人別にまとめて歌われている。通常の『白鳥の歌』とは異なり、レルシュタープによる8曲のリート集、ハイネによる6曲のリート集、そしてザイドルによる4曲のリート集という体裁になっている。(以下題名は拙訳)

レルシュタープ詩:
1. 愛の便り 2.戦士の予感 3.春の憧れ 4.秋 5.遠ざかりて  6.セレナーデ 7.我が住処  8.さようなら

ハイネ詩:
9.漁師の娘  10.海辺  11.町  12.二重の幻影(ドッペルゲンガー) 13.彼女の絵 14.アトラス 

ザイドル詩:
15.伝書鳩通信  16.月に呼びかけるさすらい人  17.窓にて  18.あなたとだけ

なお、普通の『白鳥の歌』は次の順で歌われる(通常の訳による題名) 1.愛のたより 2.戦士の予感 3.春のあこがれ 4.セレナーデ 5.わが宿 6.遠い国で 7.別離 8.アトラス 9.彼女の絵姿 10.漁師の娘 11.まち 12.海辺で 13.影法師 14.鳩の便り

曲の解説については、こちらのページが詳しく、ためになる。

シュライアーは、旧東ドイツ出身のテノール歌手。先に触れたモーツァルトの『魔笛』のタミーノなどのオペラのほか、バッハのエヴァンゲリストやモーツァルトの宗教曲でも名テノールとして活躍している。

シフは、ハンガリー出身のピアニスト。同年代のラーンキ、コチシュとともに、若い頃はハンガリーの三羽烏と呼ばれたこともあったが、早くから西側で活躍を始めた。モーツァルトやシューベルトを得意とし、J.S.バッハの鍵盤楽曲もピアノで弾く。ヴァイオリニストの塩川悠子と結婚している

やはり、リートもメロディーや歌詞を諳んじられるほど歌ったり聴いたりしないと細かい鑑賞ができないように思う。その点、このCDのシュライアーの歌唱は、声も発音も見事なものだと思うが、比較して鑑賞するようなことができないため、まだ十分に感想を書けないのだが、それでも3の「春への憧れ」は、情熱的で声も輝かしく聞き応えがあった。聞き進むうちにいくつか記憶のある曲もあるが、それにしてもシュライアーの表現力は凄い。シフのピアノも伴奏として完璧によりそうというよりも独自のパートとして歌唱とピアノのデュオ(白井光子、ハルトムート・ヘル夫妻が実践)演奏を繰り広げている感じがする。

録音的には、モーツァルトザールの残響が相当録られているようだ。それでもシフのピアノは残響に埋もれてしまわず速いパッセージでも比較的明晰に鳴っている。一部シュライアーの声のエネルギーが強いせいもあり、フォルテの部分で少々ヘッドフォンがびり付くことがある。

シューベルトのリートは、古くはヒュシュ、そして20世紀後半はフィッシャー=ディースカウと、バス、バリトンによる歌唱が主流のようだが、私はユリウス・パツァークというテノールによる『冬の旅』(オリジナルの音高=調性)に最初に親しんだため、どちらかと言えばバリトンやバスの歌唱よりもテノールの方を好む傾向があり、『美しき・・・』もヴンダーリヒの歌唱を一番好んでいる。この『白鳥の歌』も暗い雰囲気のリートが多いので、バス、バリトンの深い声が一般的なようだが、このシュライアーの透明な声は魅力的だ。

シューベルトの友人のフォーグルは、バリトン歌手だったというので、オリジナルのテノール用の楽譜では歌えなかったはずではなかろうか?それとも低い方に移調して歌ったのだろうか?基準音のピッチも今より半音近く低かったと言われているが、どうだったのか?(この辺の疑問はこの後の日本のバリトン歌手の方の解説に詳しい。)ただ、シューベルトは残そうと思えば低い声用でも楽譜を残せたはずだということも言えるので、やはりできるだけ高い声での歌唱が望ましいのではなかろうか?

はるか昔、高校の音楽室で読んだ1970年代前半の『レコード芸術』にはF=ディースカウのシューベルトの移調がいわゆる平行移動的に原調から下げているのではなく、移調は結構恣意的で、曲と曲の調関係が崩れているというような指摘があったことを記憶している。(この件で別にF=ディースカウとホッターの録音を比べてみたいと思う。)

上記の疑問については、このシューベルトのリートの移調について触れた田辺さんというリート歌手による新聞記事は、非常に面白い。このページでは更に詳しくまとめられている

ただ、こうは書いても、バリトン、バスによるシューベルトのリート歌唱を否定するものではない。それでも作曲者の意図を尊重するのなら、この田辺さんのようなアプローチが必要ではないかとは個人的に思う。声帯と身体は素晴らしい楽器だが、個人個人の能力により、高い声や低い声に得手不得手があり、楽器では演奏できるのに、声では歌えないものも出てきてしまう。合唱をやっていた頃、いわゆるファルセットではなくフルヴォイスで高い声が出たり出なかったりで苦労したことを思い出す。

秋の夜長には、ドイツ・リートもなかなかいい。

p.s. 外国盤のCDのパンフレットのほとんどは、演奏される曲の情報は豊富だが、演奏者についての経歴やその音盤での演奏の特徴などの情報がまったくといって書かれていないことが多い。日本盤では、曲目の情報に加えて、演奏者情報も豊富なのとは対照的なのは不思議だ。

なお、白鳥はその最期に美しい声で歌を歌うという言い伝えがあり、このシューベルトの歌曲集はその意味で付けられたのだが、以前はモーツァルトの交響曲第39番に『白鳥の歌』というニックネームをつけている解説があったように記憶する。最近はとんと見なくなった。このニックネームの由来は何だったのか。

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