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2007年5月20日 (日)

『天と地と』『武田信玄』『風林火山』

今年のNHK大河ドラマ『風林火山』は、以前武田信玄を扱った「タイトル」の海音寺潮五郎原作『天と地と』、新田次郎原作『武田信玄』に比べると、原作の井上靖『風林火山』が歴史小説としては、少々考証的に大雑把だったのでどうかと思っていたが、脚本家の工夫と、俳優陣(もちろん演出家)の健闘のためか、結構見ごたえがあり、このところ毎週楽しみに見ている。

私が、歴史ドラマに興味を持ち始めたのが、大河ドラマ『天と地と』で、上杉謙信の『毘沙門天』の「毘」の旗、武田信玄の「風林火山」の旗を、小学校のノートの表紙に自分の印として書いたことなどを思い出す。石坂浩二の謙信、高橋幸治の信玄も颯爽と重厚の対象があり、これをきっかけにして、長野市(当時は川中島町だったと思うが)の八幡原の史跡が整備され謙信と信玄の一騎打ちの銅像が制作され置かれたのだと思う。

海音寺潮五郎の名前は今ではあまり聞かなくなったが、それでもブックオフなどで「武将列伝」「日本名城伝」などを読むと、その深い知識と幅広い見識で圧倒される。『天と地と』は、謙信を理想化し過ぎているように感じるが、それでもやはり優れた小説だと思う。

現在のドラマ『風林火山』が始まる前に読み返したのは、井上靖の原作だったが、これはあまり感心できない部分があった。小説家としての格付けでは、井上靖がこの三人の中で一番高いようにみなされているが、この小説は、歴史的な細部の誤り(あいまいさ)や、信玄、諏訪御料人(由布姫)、山本勘助の三人の人間模様を中心とした恋愛小説的なくくり方は、少々読み応えの部分で物足りないものがあった。しかし、ドラマは自分としては結構面白い。

小説として一番精密なのは、山岳小説に健筆を振るい、その他『武田信玄』「武田勝頼』『武田三代』『新田義貞』などの歴史小説でも気象学者、観測家的な科学的・実証的な細部にわたる記述で異彩を放つ小説を多く書いた(最近話題の数学者 藤原某は、この人の子息だが・・・)新田次郎のものだろう。大河ドラマはすでに20年前近くの中井貴一主演の『武田信玄』として放送されたが、華麗さのない演出だった印象があり、熱心に見なかった記憶がある。

現在、読み返しているのが、この『武田信玄』だが、風の巻、林の巻、火の巻、山の巻と分かれている。すでに書いたが、『甲陽軍鑑』『妙法寺記』などの基礎資料、小林計一郎の『武田軍記』など多くの歴史資料に基づいているようで、信玄の行動、合戦が事細かに記されている。恋愛的な部分を除けば、小説というよりも歴史書を読んでいるかのようだ。この細かさが苦手という向きもあるだろうが、現在のドラマ『風林火山』の参考書としては最適だと思う。

今回改めて読み返し、自分の出身地の地侍たちの根強い抵抗の姿勢と信玄の徹底的な弾圧がやはり特に印象に残った。

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コメント

はjめまして。
「天と地と」の頃はまだ幼児でしたので「白黒だったなー」とか冨田勲の音楽くらいしか覚えておりませんが・・。「武田信玄」は信玄、謙信、信長に人を得ていなかった感はありますが、脇役陣、特に小川真由美と平幹二朗の凄演はいまだに強く印象に残っています。
今年の大河は久しぶりに大河らしい大河が戻ってきたな、という印象です。ここ10数年は学芸会にファミリードラマ、クソ脚本のオンパレードでしたから、こうした作品に飢えていたのです。
「風林火山」の原作はなにしろ小学生の頃一読したきりですので、恥ずかしながら全く記憶に残っておりません。むしろ東宝製作の映画版の印象が強いですね。山本勘助=三船敏郎、武田信玄=中村錦之助(萬屋錦之助)、上杉謙信=石原裕次郎という、今考えるとトンでもない豪華キャストでした。

投稿: 花岡ジッタ | 2007年5月22日 (火) 21:38

花岡さん、コメントありがとうございます。

改めて考えると、山本勘介を敢えて主人公にしたことは、井上靖の挑戦だったかも知れないですね。文庫版の後付を見ると昭和30年頃の初版のようで、現在のように「甲陽軍鑑」の再評価の試みがぼつぼつ行われるようになるはるか前で、歴史学上は、偽書的なものとして、その肯定的な研究は歴史学界からの追放を意味するようなものだったと最近読みました。

今後の大河ドラマですが、来年の大河ドラマ「天璋院篤姫」(十三代将軍家定正室)といい、再来年の上杉景勝の家臣の直江兼続といい、歴史マニアなら当然知ってはいる有名人ですが、一般的には歴史のバイプレーヤーとみなされる人物に脚光が当てられるような気がします。もちろん、その周囲には歴史的な著名人物が取り巻いているという構図ですが(昨年の「功名が辻」の山内一豊と千代も同じ傾向ですね。) 

直江兼続については、童門冬二 小説「直江兼続—北の王国」が主人公として取り上げていますが、司馬遼太郎「関が原」や、隆慶一郎「一夢庵風流記」(前田慶次(前田利益)が主人公でも、注目すべき人物として登場する)でも取り上げられるなど、戦国、江戸初期を生き延びた一地方大名の家臣がどのような取り上げられ方をするのかが非常に興味があります。原作もあまりメジャーなものではないようですし。

投稿: 望 岳人 | 2007年5月23日 (水) 09:35

こんばんは。
来年は「天璋院篤姫」なんですよね。この題材でどうやって1年間持たせるんだろう?と余計な心配をしています。怖いものみたさで1ヶ月くらいつき合ってみるかもしれません。しかし主人公の視点からすると大奥に入った頃の薩摩は「公武合体、一橋サンも幕閣もお友達」だったはずが、いつの間にか「勤皇倒幕」などと態度を一変させ、かつて自分の為にいろいろ便宜を図ってくれた西郷とかいうお庭番がいまや官軍の指揮を執って江戸に攻めて来るのですから、「もー、わけわかんないしー」な状態だったでしょうね。
再来年は待望の直江兼続なのですが、期待も大きい分不安はその何十倍も大きいですね。原作は未読ですが番組の企画意図書を一読する限り、「関ヶ原」や「密謀」より「花の慶次」(一夢庵風流記の漫画化)に近い兼続像を志向しているのか、そんな印象を持ちました。「爽やか系」になりそうですので大坂城中で伊達政宗に暴言を吐いたり慶長大判を放り返したり、といった行儀の悪い事はしないかもしれませんね。ま、全てはキャスティング次第でしょうか。

投稿: 花岡ジッタ | 2007年5月24日 (木) 01:09

花岡さん、たびたびどうも。篤姫の方は、原作が宮尾登美子なので、それなりに仕上がるのではなかろうかと思うのですが、直江兼続の原作のできはどうなんでしょうか?

『密某』は兼続を藤沢周平が書いているんですね。今度読んでみようかと思います。

投稿: 望 岳人 | 2007年5月24日 (木) 23:39

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