小澤/ボストン響の『ピーターと狼』『動物の謝肉祭』『青少年のための管弦楽入門』
ファンハウスレーベルから発売された小澤征爾/ボストン響によるオーケストラ入門曲集。ナレーションは、小澤征爾自身が担当しているが、独特のしゃがれ声ながら手馴れたもの。さすがに弟や息子が俳優を職業としていることはある。
ナレーションの演出は、実相寺昭雄で、台本と脚色は弟の小澤幹雄が担当している(別冊の台本が上記右側の写真)。音楽の録音は、1992年2月にボストンのシンフォニーホールで行われ、ナレーションは1992年3月と1993年3月となっている。
『ピーターと狼』と『青少年のための管弦楽入門』は、プレヴィンとロイヤル・フィルのCD(テラーク盤)で以前から聞いており、前者はプレヴィン自身の英語でのナレーション入り(後者はナレーションなしの純音楽的な『パーセルの主題による変奏曲とフーガ』になっている)で、我が家の子ども達には結構人気があった。ただ、録音的には少々ナレーションの音量レベルが低く、またオーケストラも少々明瞭度を欠くため、私としてはあまりお気に入りではなかった。またロイヤルフィルもオーケストラの実力を赤裸々に示すブリテンの曲などは、木管のソリストなどの技量が少々物足りなかった。
この小澤盤が入手できたので、聞いてみたところ、オーケストラも比較的クリアな録音になっており、このような青少年向けの企画でも(台本付きだが、実際に少年少女に呼びかけるスタイルをとっている)、いやそれゆえにか、レベルの高い音楽になっている。そしてこのボストン響はロイヤル・フィルに比較してさすがに巧い奏者が揃っている。『ピーターと狼』にしてもロイヤルフィル盤では不明瞭だった部分がよく聞き取れるし、結構演出も巧みだ。また、ブリテンの曲もさすがにボストン響の実力が発揮されたもので、安心して楽しむことができるものになっている。
『動物の謝肉祭』にもナレーションが付いているのはあまり類例がなく、逆の意味で少々もったいないかも知れない。ナレーションにも出てくるが『ピアニスト』では、ジョン・ブラウニングというピアニストと、私も名前を知っているギャリック・オールソンが担当している。これまで、ベーム/VPO(コンタルスキー兄弟)という少々独特な演奏と、デュトア指揮のロンドン・シンフォニエッタ(ロジェとオルティスがピアニスト)というフランス的な演奏で楽しんできたが、小澤/ボストン響の演奏はさすがに巧い。
私が好きな小澤征爾の録音は、以前このブログでも触れた『惑星』(フィリップス)、『巨人(タイタン)』(DG)、ツィメルマンとのラフマニノフのピアノ協奏曲第1,2番(DG)だが、このCDもその仲間に入った。(オネゲルの『火刑台上のジャンヌ・ダルク』と武満徹の『ノヴェンバー・ステップス』は別格だが。)
いわゆるメジャーレーベル発売ではなく、(同趣向の『真夏の夜の夢』は、吉永小百合のナレーションで、DG発売だったと思ったが)、東急文化村関連のファンハウスというレーベルなので、再発売などがなくて入手困難のようだが、中古店にはときおり出ていたり、図書館のCDコーナーで貸し出しをしている場合もあるようだ。
なお、このCDの情報を検索していたら、第8回のゴールドディスク大賞のクラシック部門を受賞していた。
p.s. 2007/9/3 HMVのサイトで検索したら、11月に再発売されるようだ。
| 固定リンク
「ディスク音楽01 オーケストラ」カテゴリの記事
- 2015年暮れの第九(読響とN響)のテレビ放送を聴いてトスカニーニを聴き直した(2016.01.03)
- 第6回音楽大学オーケストラフェスティバル(ミューザ川崎 2015/12/6 最終日)(2015.12.07)
- 第6回音楽大学オーケストラフェスティバル(ミューザ川崎 2015/11/28)(2015.11.29)
- 「コンサートは始まる」を20数年ぶりに再読(2015.10.01)
- マーラー 交響曲第2番「復活」 秋山和慶指揮東京交響楽団 8月9日(2015.08.10)
コメント