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2007年7月 1日 (日)

クレンペラーの『田園』

Pastoral_klemperer_1

ベートーヴェン 交響曲第6番『田園』
  12:58/13:17/6:32/3:44/9:11 〔1957年10,11月〕
フィデリオ序曲  6:55 〔1962年2月〕
レオノーレ序曲 第3番 14:32 〔1963年11月4,5日〕

オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団

キングズウェイホール、ロンドンでの録音


ブックオフでよく見かける『新・名曲の世界』というEMI系の名曲シリーズは、私にとっては結構素晴らしい録音が収録されている。昨年入手したセル/クリーヴランド管によるドヴォルザークの8番を初めとして、ガブリーロフとムーティによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲・『イスラメイ』・『ラ・カンパネラ』、バレンボイムの旧録の『悲愴』『月光』『熱情』、そしてこのクレンペラーの『田園』交響曲だ。

『田園』は、ワルター/コロンビア響によるLPの「名盤」を中学生の頃から聴き続けてきたが、どうもオケの音響が粗い部分が耳につき、あまり好みではなかったが、それでも当時は同じ曲を複数枚購入することなど夢のまた夢で、定評のあるこの盤をそれこそ何回も聴いた。私には『田園』よりもむしろ『コリオラン』序曲の方が好みだった。(『英雄』もワルターとコロンビア響が刷り込みだったのだが、こちらは非常に気に入っていた。フルトヴェングラー的な有機体の運動のようなドラマチックな『エロイカ』もいいが、このワルターは古典的で軽快でスマートな音楽で、『田園』ほど響きが不自然でなく、飽和せず自分好みの演奏だった。)

さて、その後『田園』の音盤としては、バーンスタイン/VPO、セル/クリーヴランドO、クリュイタンス/BPO、ブロムシュテット/ドレスデン・シュターツ・カペレ、ジンマン/チューリヒ・トーン・ハレO、C.クライバー/バイエルン・シュターツ・カペレと購入して聞いてきたが、いずれも一長一短で、セルの第一楽章は絶品だが、第ニ楽章以下が少々流れが悪いと感じたり、クリュイタンス、ブロムシュテットという定評のあるものでもアンサンブルの精度や音色的な面で満足できなかったりしていた。ところが廉価で入手できることもあり、この『田園』を興味本位で入手して聴いてみたのだが、意外や意外これが実にいい。

クレンペラーは、テンポが遅く大河のような演奏をするというイメージがあるが、私には、遅さはそれほど気にならず、むしろヴァイオリンの対抗配置による弦楽合奏のクリアな音楽や、木管を浮き立たせた楽器バランスによって、渋いイメージとはまったく対照的な華やぎを覚えるほどだ。

このBlogでは何度も書いているが、特に古典派のオーケストラ作品の演奏では、ヴァイオリンの対抗配置による効果は捨てがたいものがあるように思う。クレンペラーはこの配置にこだわってきたようだが、それがこの『田園』でも生きている。現代の大編成のオーケストラでは、音の時間差によりアンサンブルが整いにくいのだとは思うが、クレンペラーの録音ではそのような乱れはほとんど感じられず、左と右で掛け合ったり、第一ヴァイオリンが高い音で対旋律を弾き、第二ヴァイオリンが主旋律を弾くというような場合、くっきりとした対照が聞き取れるのが大変面白い。第一楽章は、いくつかの録音を聞いても、低弦のアンサンブルがうまく合わないのが気になるものが比較的多いのだが、クレンペラーではそのような不満がない。

また、クレンペラーの楽器バランスでは(実演ではどうだったのか分からないが)、鮮明な弦楽合奏の上に、木管群がくっきり聞こえることが多いようだが、『田園』では第2楽章を初めとして、フルートやオーボエ、ファゴットが自然の象徴として特に活躍するが、このバランスがもたらす効果が相当私にとってアピール力が強いようだ。

農民の踊り、嵐、感謝の歌と続く後半部分でもじっくりと安定した音楽作りは変わらないが、メリハリや運動性、そして感謝の感情の表出まで過不足なく聞き取ることができる。

LPでは、クレンペラー指揮はまったく所有しておらず、CDでもこのように少しずつ入手して聞く程度なのだが、今のところどの録音も他とは一線を画する独特な魅力を感じさせてくれるものが多い。奇を衒ったものではない(人格的には非常に個性的な人物だったらしいが)ところが、また凄いと思う。

ベートーヴェンは第九についで2枚目だが、このような聴き応えがあるほどのものをEMIから出ている全集でじっくり聴きたいものだと思う。

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コメント

望さん、おはようございます。
僕も、『新・名曲の世界』EMI系の名曲シリーズでずいぶん多くの音源を入手できました。バブル期にレコード各社が名曲全集を出すのが流行したものですね。今は古本屋などで激安、大いに助かっています。

クレンペラーの「田園」は貫禄の名演と思います。
ヴァイオリンの対向配置も楽しく、演奏はまさに充実、大河のような感じがします。

投稿: mozart1889 | 2007年7月 8日 (日) 05:39

mozart1889さん コメントありがとうございます。

クレンペラー指揮の録音は、まだまだ聴いたことのないものが多いので、モントゥーと並んでこれから聴くのが楽しみベスト2かも知れません。

投稿: 望 岳人 | 2007年7月 9日 (月) 20:31

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今日は重陽の節句。菊のお節句です。 観菊にはまだまだ早いですが、確実に秋は来てます。 虫の音を楽しみながらクラシック音楽を聴くことにしましょう。 今日は、ベートーヴェン。 交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」。 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管の演奏。 1957年10月の録音。EMIの超廉価盤クリスマス・ボックス所収の1枚。 第1楽章からさすがクレンペラー、テンポが遅い。非常に遅い。 ヨッフム/LS0盤やアバド/VPO盤なみに遅い。 ボクは「田園」は遅い方が... [続きを読む]

受信: 2007年7月 8日 (日) 05:41

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