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2007年8月 2日 (木)

ベートーヴェンの戦争交響曲『ウェリントンの勝利/ビトリアの戦い) マゼール/VPO

Wellingtons_sieg チャイコフスキー 大序曲『1812年』 作品49 (16:45)
ベートーヴェン 『ウェリントンの勝利』 作品91(16:17)
チャイコフスキー『スラヴ行進曲』作品31(8:20)

ロリン・マゼール指揮ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ヴィーン国立歌劇場合唱団(『1812年』)

〔1981年6月、ムジーク・フェライン・ザール、ヴィーン〕


ベートーヴェンの伝記を読むと、彼の生前の最大の人気曲だったとして必ず取り上げられる『戦争交響曲』(ウェリントンの勝利/ビトリア Vitoriaの戦い )だが、現在普通のコンサート、録音レパートリーとして扱われることはほとんどなくなってしまっている。(スペイン語のVi は、ヴィではなく、ビと表記したほうがよいようで、あの作曲家Victoria もビクトリアと書くべきだという。)

ロリン・マゼールがヴィーン・シュターツ・オーパーの音楽監督時代に、ヴィーンフィルとマーラー・チクルスを初めとして相当の数の録音を行ったが、その折に現代では駄作として無視されることの多いこの曲(古くはシェルヘンもウェストミンスターレーベルに録音していたり、カラヤン、ドラティも録音したが)を敢えて取り上げたもので、実際に大砲やマスケット銃を使用したということでも発売当時話題になったもの。

これは、19世紀以降のヨーロッパに多大な影響を与えたナポレオンの市民革命輸出戦争に関係するチャイコフスキーの『大序曲 1812年』と、クリミア戦争後のクリミア半島でのセルビア対トルコとの戦争にロシアがセルビアに加担した際の戦争慰問のためのオーケストラ曲『スラヴ行進曲』とカップリングさせて同時期に録音したもので、要するに戦争に関係する管弦楽曲集だ。

先にも述べたようにベートーヴェンの伝記関係に触れるたびに、この少々変わった録音を聞きたいものだと思っていたが、購入はついつい後回しになり、そのうちCBSソニーのカタログから外れて最近みかけなくなっていたものだった。それが、ようやく中古盤で入手できた。

イギリス軍を示す「Rule Britania」と フランス軍を示す(フランス民謡)「Marlbrough s'en va-t-en guerre マルボロ将軍は戦争に行く」(マルボロ公爵家は、例のチャーチルを輩出した家系で、イングランドの著名な軍人の家系のことらしいが、これがフランス民謡として引用されているのは皮肉だ) 及び、イギリスの勝利を示すイギリス国歌"God save the King(Queen)"が素材として用いられている。これには、この機会音楽の発案者、メルツェル(メトロノームの発明者)がプロデューサー的に働き、ベートーヴェンのイギリス旅行の持参曲としての意味もあったのだという。

このCDのライナーノートでは、マゼールがこの『戦争交響曲』擁護の論陣を張っている?が、それほど優れた曲だとは思えない。確かに、同じ題材を平凡な作曲家が作品化し、平凡な指揮者とオーケストラが演奏するよりもましという程度だろう。終結部の勝利の音楽は、『エグモント』の勝利の音楽に通じる輝かしさと効果的なオーケストレーションが聞き取れたりもするが、後期に入らんとするベートーヴェン(第7交響曲は作品92)の豊穣さ、深遠さ、崇高さを感じるとることは難しい。それでも、終結部でイギリス国歌が勝利の主題と組み合わされる部分など、イギリス国民とは縁もゆかりもない者にとってもなんとも言えない感慨が沸いてくる。

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コメント

クラシックギターを演奏しています。ギター曲の中に「マルボローの主題による変奏曲」というのがあり、マルボロー行進曲の歌詞を知りたいのですが、日本語に訳されたものはないのでしょうか?もしよろしけばお教えください。

投稿: み-やん | 2007年11月 2日 (金) 11:19

"み-やん"さん、初めまして。ソルの『マルボロの主題による変奏曲』でしょうか?

私もこの「戦争交響曲」を聞いたときに、耳なじみのあるこのメロディーが出てきたのに驚いていろいろ当たってみたのですが、残念ながら日本語歌詞は見つかりませんでした。

それでも上記記事でリンクを張った「Marlbrough s'en va-t-en guerre マルボロ将軍は戦争に行く」の英語版のウィキペディアの記事が一番詳しいようです。

ここに各国語で歌えるVerseが紹介されており、英語のものもあります。

また最下部の外部リンクに Original French song and its English version があり、オリジナルのフランス語歌詞の直訳英語が書かれておりました。これによると、大意は「マルボロ(マルボロ公爵1世のジョン・チャーチル)が戦争に行った。妻は彼の帰還を待ちわびたが彼は戻ってこなかった。戻って来たのは四人の士官が持ち帰った彼の遺品だった。・・・」という感じでしょうか?

投稿: 望 岳人 | 2007年11月 2日 (金) 14:42

お返事ありがとうございました。そうです、マルボローの主題による変奏曲のことです。あれこれ検索して英語版にはたどり着いたのですが、なかなか読み取れなくて・・・「戦争交響曲」のことは知らなかったのですが、ぜひ聴いてみたいです。

投稿: みーやん | 2007年11月 2日 (金) 22:24

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