J.S.バッハ 『音楽の捧げもの』
上記は、ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ
BWVでも『フーガの技巧』と並んで特殊作品に分類されているが、バッハの器楽曲としては、私にとって非常に親しみ深いものだ。この曲に一番初めに馴染んだのは、30年近く前にNHKFMで放送していた確か『現代の音楽』というような番組のテーマ音楽として、ヴェーベルンによる『リチェルカーレ』の編曲が用いられており、聴くとはなしにこの『フリートリヒ大王の主題』が耳なじみになったのだった。
学生時代には、エラートから廉価で発売されていたクルト・レーデル指揮&フルートのミュージックテープ(カセットテープ)を購入し、音楽之友社版のポケットスコアを参照しながらよく聴いたものだった。大バッハが晩年、息子が仕えているベルリンのフリートリヒ大王(フリードリヒ)の宮廷を訪れ、音楽愛好家の王から主題を貰い(これが『王の主題』だとされる)、その場で即興演奏を披露したが、それに飽き足らず、ライプツィヒに戻ってから今日残されている曲集を作曲し、『音楽の捧げもの』と名づけ、王に献呈したという逸話は大変有名なものだ。これに続く『フーガの技法』は、対位法的に展開するにはあまり適していなかった『王の主題』による曲集に飽き足らなかったバッハが、その全ての対位法技法を盛り込もうと集大成として創り、未完に終わったものということで、晩年のバッハに刺激を与えた出来事だったのだろう。
参考:
フリードリヒ(Friedrich)二世。プロイセン王(在位一七四〇~八六年)。オーストリア継承戦争・七年戦争によって全シュレジエンを領有し、ポーランド分割で西プロイセンを獲得。国内的には官僚組織を整え、重商主義政策を進めて富国強兵に努めた。「国家第一の下僕」と自称した啓蒙専制君主の典型。フリードリヒ大王。(一七一二~八六) Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) ゥ Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988
さて、学生時代に繰り返し聴いたクルト・レーデル盤は、昨年実家の物置から持ち帰ってきたが、カセットテープレコーダーを接続しているアンプの調子がよくないためじっくり聴けないのが残念だが、つまみ聴きしても懐かしさが蘇るものだ。もともと飾り気の少ない質朴な演奏であることもその印象に寄与しているように感じる。
LPでは一枚も買わなかったが、CDになってからは、モダン楽器によるバッハ演奏の頂点を極めた指揮者・鍵盤楽器奏者のカール・リヒターがリーダーとなり、ニコレなど当時のバッハ演奏の著名奏者を集めたもので、現在でも名盤として著名なものが、DGの名盤シリーズに登場したものを求めた(後に、小学館の全集のうちオーケストラ・協奏曲集を購入したが、そこに収録されたのもこの録音だった)。レーデルの少々鄙びたとでも言えるほどよく力の抜けた録音に馴れていたので、この録音からは、襟を正した雰囲気を強く感じ、またニコレのフルートも少々禁欲的過ぎる感もあり、以前のレーデルの頃よりこの曲を聴く機会が減った。
ネヴィル・マリナー盤は、規範的とでも言うリヒター盤に比べてイギリスのバッハはどうだろうという興味で買ったもの。レーデル、リヒターは、通奏低音の鍵盤楽器はすべてチェンバロだが、マリナーは、ヴィヴァルディの四季でも用いたようにオルガンも用いている。くつろいだ感じの演奏だ。
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