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2008年1月22日 (火)

シベリウス 交響曲第1番 ベルグルンド/ヘルシンキフィル

Sibelius_symphonies_berglund ヤン・シベリウス(1865.12.8-1957.9.20)

交響曲第1番 ホ短調作品39(1899年完成)
パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団 
  1986年5月 ヘルシンキ、文化ホールでの録音

2006年4月19日 (水) シベリウス 交響曲第3番 ベルグルンド/ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団 の記事で書いて以来、この交響曲全集のリスニングはほとんど進んでいない。昨年は没後50年ということもあり、寄り道をして「カレリア組曲」などを楽しみはしたが、一度基本に戻って(?)愛好曲であるこの第1番を改めて聴いて感想をまとめてみようと思う(その前の作品『クレルボ』交響曲は、また特殊な作品なのでひとまず棚上げをしておく)。

第4番から第7番の交響曲についてほとんど理解が進んでいないのだが、この第1番は第2番にも増して比較的古典的とも言える把握しやすい形式を用いながら、作曲者独自の音楽が奏でられているように思え、冒頭からひきつけられる。聴きながら自分的な聞き取りを書き付けてみよう。

クラリネットによる不思議な呼びかけのような序奏にティンパニのトレモロ、そして弦のトレモロの上にいきなり曙光が射し込むような第1主題が登場する。この第1主題は、印象的で、初めて聴いたときからすっかり魅了されてしまった。この第1主題ががっちりと確保された後、ハープに乗って木管が森の小鳥たちのような第2主題を奏で始め、息の長い木管のメロディーを導き出し、クライマックスを作り、その後ブラスによる嵐のような楽想が展開される。このあたりが展開部だろうか?(経過6分前後)。素材的には第1主題はあまり用いられず、第2主題群が使われるようだ。7:20頃から弦楽合奏による明快な世界への再現を予告し、8分前後から第1主題が感動的に再現する。第2主題群は、提示部の順序では再現されず、木管によるリズミカルな音が積み重ねられアッチェレランドしてブラスによるクライマックスから低弦であっさり終わる。比較的分かりやすいソナタ形式だ。

第2楽章は、長調の穏やかな弦楽から始まりエコー的な木管にシベリウスの特色が見えるようだ。続いてファッゴトなどの木管によるエピソードが次第に劇的に高まっていく。再びハープに乗ったホルンの柔らかな情景が現れるが、その後また鳥の鳴き交わしのような部分が現れる。楽想の展開がめまぐるしく、突発的なクライマックスが現れたりもする。その後、木管のグリッサンドのような音型を伴い、弦による逡巡するようなテーマが現れ、再びクライマックスを作り出し、闘争的な様相を呈する。その後、冒頭の穏やかな弦楽合奏に戻り、エコーも聴かれる。大雑把に言えば三部形式なのだろうが・・・。

第3楽章は、伝統的なスケルツォ楽章だが、主題も楽器法も個性的で面白い。主題はいかにも洗練されていない民俗的なものを使用したようで、ナマの面白さを感じる。2:45頃からいわゆる長調のトリオの部分に入ったようだがラプソディックな性格を残す。そして主部の再現。コーダ4:40頃からは輝かしく盛り上がり終わる。

フィナーレは、いきなり弦による嘆きの歌から始まる。そこにシベリウス的な金管のエコーが続き、トレモロが加わる。解説によるとオーボエやフルートで奏でられる冒頭部は、第1楽章のクラリネット序奏の変形だという。楽器群が会話をするような主部に入る。短いモチーフでの会話がシベリウスのお得意だ。その後、チャイコフスキーの影響を思わせるドラマチックなエピソードに入る。劇的なエピソードの後は、慰撫のような穏やかなメロディーが続く。チャイコフスキーで言えば、ロミオとジュリエットの愛の場面に通じるだろうか?金管と木管によるコラール風のフレーズが終わると、再び騒々しい焦燥感のある部分になり、ドラマチックに闘争が繰り広げられるかのようだ。8:00前後からは、先ほどのロマンチックな美しいメロディーが弦楽合奏主体にたっぷりと歌われる。コーダは、シベリウス的なブラスの強奏とティンパニのトレモロで高まり、静かに終わる。この楽章は、交響曲のフィナーレというよりも、交響詩や幻想的序曲という風にに名づけられる方がふさわしいような性格を持ち、少し晦渋で分かりにくい。

シベリウスとしての性格があまり出ていない若い頃の作品(といっても、有名な『フィンランディア』と同時期)と言われているが、他の作曲家との違いは明らかで十分シベリウス的だと思う。個人的には、お気に入りの第1楽章第1主題の世界が展開されていればと思ったりもする。

あまり聞き比べはしたことはないが、本場ヘルシンキのフィルハーモニーと左利きの指揮者フィンランド人のパヴォー・ベルグルンドによるこの演奏は、録音のせいもあるのか、大変清涼感と伸びやかさのある演奏で素晴らしいと思う。

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コメント

おはようございます。TBしっぱなしで失礼しました。申し訳ありません。
ベルグルンドのシベリウス、イイですね。いろいろ録音があるんですが、ヘルシンキ・フィルとの演奏がもっともシンフォニックな感じがします。スケール十分で、よく練られた名演と思いました。

投稿: mozart1889 | 2008年1月25日 (金) 04:45

mozart1889さん、コメント、トラックバックありがとうございます。今年は一応第7番まで聴いてみようと思っておりますが、第2番を改めてセル、カム、オーマンディで聞き、そのほかベルグルンドの全集に収録の馴染みのない「タピオラ」や「大洋の女神」「故国」「火の起源」などの交響詩にも挑戦してみようと思っております。また、シベリウス関係の記事も読ませていただきたく、よろしくお願いします。

投稿: 望 岳人 | 2008年1月25日 (金) 19:25

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忙しいですな。 せめて休日くらい、肉体も精神ものんびりしたいもんです。 四国の週末、土曜は大変な寒さでしたが、日曜日は陽射しが暖かかったですな。 さて、シベリウスの交響曲を今日も聴いています。 交響曲第1番ホ短調作品39。 パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルの演奏。1986年5月、ヘルシンキ文化ホールでの録音。 ベルグルンド2度目のシベリウス全集からの1枚。彼はボーンマス響と1回目を、ヨーロッパ室内管と3度目の全集を録音している、まさにシベリウスのスペシャリスト。 ボ... [続きを読む]

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