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2008年1月13日 (日)

藤沢周平『用心棒日月抄』第1作

正月の帰省からの帰りに新幹線の車内誌トランヴェールの「藤沢周平 用心棒日月抄の世界へ」を読んだことは、1月3日の携帯電話からの投稿で書いた。相当以前、父の本棚にあった文庫本で読んだ記憶があったが、書店で手にとってパラパラめくってみるとあまり覚えていなかったので、購入して読み始めたところ、すっかり面白く、シリーズ全4編の残り3冊も一度に購入して今、第2冊目「孤剣」を読んでいるところだ。

第1冊目は、読んでいるうちにおおまかな記憶が蘇ってきた。赤穂浪士の吉良討ち入りがこの用心棒稼業を務めざるを得ない脱藩浪人の生活の背景に絡んでくるのだが、その大石内蔵助や吉良、幕府の裁きなどの書き方が、このほかにもこのような傾向のあるようなものは知らないが、実に地に付いており、なるほどと思わせるものになっていた。前回も確かこのあたりに感心したように思う。当時は藤沢周平についてあまり知らず、時代小説にも現代的な作家がいるものだと感じた記憶が蘇ってきた。特に「内蔵助の宿」での江戸城中での刃傷沙汰の記録を大石が調べさせた下りは、さらっと書かれており、歴史的な研究では正しいのかどうかは知る限りではないが、こういう設定なら、その後の行動の説明が非常に合理的だと思った。

トランヴェールでは、将軍綱吉の時代の分かりやすい解説、日月抄の舞台を歩く(本所深川など)という特集になっているが、原作自体は、池波正太郎の江戸三部作「鬼平」「剣客」「梅安」ほど当時の江戸の街についての記述は少ないように思う。

ただ、この用心棒でも池波ものでも、岡本綺堂の半七でもそうだが、現在では電車や地下鉄で移動する距離を当時の人々はほとんどが徒歩で、時には駕籠、武士なら馬で、移動したわけで、まったく足が達者だったのだろうと感じさせてくれる。昨年は、1月の浅草観音参りの時に浅草寺とその界隈を歩いたが結構疲れたし、今年は帰省帰りに東京駅で途中下車して、箱根駅伝のゴール付近から皇居の御濠端を歩いたが、少し歩いただけですぐに足が疲れてしまった。勤務先への通勤には最寄の駅と自宅間の約1km強は、バスも通っているのだが、結構早足で毎日往復しているようにしている。それでもその体たらくで恥ずかしい。下の写真は、1月3日に御濠端で写した写真だが、ちょうどトランヴェールの 「『特集ページの写真:夕暮れの江戸城(現皇居)』 内堀通りから桔梗濠沿いの巽櫓を望む(写真/呉 敏晴)」の構図とほぼ同じものになっていた。

P1030088

とはいえ、そんなことは抜きにして、第3作「刺客」、第4作「凶刃」も楽しみだ。

藤沢周平の作品は、ときおり思い出したように読み、昨年は、関ヶ原の戦いを背景にした『密謀』を読み、その前には、絶筆『漆の実のみのる国』(上杉鷹山が主人公)を読んだ。そのほか『一茶』、映画化もされた『たそがれ清兵衛』、映画・テレビドラマ化の『蝉しぐれ』、『三屋清左衛門残日録』などを読んだことがあるが、市井ものでも池波正太郎の作品の明朗さに比べて陰りのようなものがあり、そこがまた魅力となっているようだ。

p.s. 以前から、藤沢周平について多く記事を書かれている narkejpさんのブログ「電網郊外散歩道」の 藤沢周平『用心棒日月抄』を読む 記事にトラックバックさせてもらった。

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コメント

ご紹介、トラックバックをありがとうございます。藤沢周平は、面白いですね。御指摘のように、やや翳りをおびた作風で、それが私にはいい味を出しているように感じられます。文章の視点が、まるで映画のようで、作中人物になったかのような錯覚を覚えることもあります。連作四部作、いずれも名作です。どうぞお楽しみください(^_^)/

投稿: narkejp | 2008年1月13日 (日) 08:53

narkejpさん、おはようございます。御看病で大変なときにトラックバック、コメントありがとうございました。

おっしゃるとおり、主人公への感情移入がスムーズにできるように工夫されているようにも感じますね。最近のテレビドラマの再放送は見逃してしまいましたが、池波、岡本綺堂ときて、藤沢周平の江戸物も楽しめそうです。

投稿: 望 岳人 | 2008年1月13日 (日) 10:39

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このWeblogの開始と微妙にずれていて、まだ登場していなかった藤沢周平作品、『用心棒日月抄』を再読しました。読みかえすたびに、これは名作だと感じます。 主人公、青江又八郎は、大富家老らによる藩主毒殺の謀議を立ち聞きしてしまい、婚約者である由亀の父親に相談しますが、逆に後ろから斬られそうになります。無意識のうちに反撃し、父親を斬ったところを由亀に見られ、脱藩して江戸で浪人暮らしを始めます。糊口をしのぐ手段は、剣の腕を生かした市井の用心棒家業でした。 はじめのうちこそ、犬の用心棒だとか娘の送迎だと... [続きを読む]

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