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2008年1月29日 (火)

クリップス/ACO のモーツァルト交響曲第40番、第41番

Kripsmozrt4041 モーツァルト
 交響曲第40番 ト短調 K.550
    9:31/7:31/4:44/7:05

交響曲第41番 ハ長調 K.551
   12:32/8:15/5:24/6:49

ヨーゼフ・クリップス指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 〔1972年6月録音〕

(Shinseido 1000 classics ⑤ SDMP-5)

現在は、フィリップスのスーパーベスト100で容易に入手できるクリップスのモーツァルト:交響曲第40番&41番だが、それまでなかなか自分の手元には訪れてくれなかったものだった。

昨夜、みー太さんの音楽日記728 セル(16) モーツァルト 交響曲 第40番 のセルの来日公演の録音の記事にコメントをつけさせてもらったが、セルのモーツァルトの玲瓏で微妙なニュアンスを湛えたモーツァルトの魅力とは違う魅力を楽しめる最右翼がこのクリップスのものかも知れないと聴くたびに思う。

学生時代、クリップスの残したモーツァルトの評判を聞き、エアチェックが成功した「パリ」交響曲を何度も楽しんだが、20番台や今回のような後期の交響曲の録音にはなかなか触れることができないでいた。現在では、なぜかフィリップスレーベルではなく、デッカレーベルの6枚組みが入手できるが、どうもリスナーの間ではフィリップスレーベルの音質の方が評判がよいようだ。

この新星堂による廉価な復刻特別盤の音質も、これが30年以上昔の録音だろうかと思わせるほどの自然で伸びやかな音色で素晴らしい。

演奏は、セルのモーツァルトとは違う魅力と書いたが、クリップスはあまり厳しい指導をしなかった人らしく、アムステルダム・コンセルトヘボウの自発性に任せているのだろうか、非常におおらかで伸びやかなアンサンブルなのだが、かといって乱れもなく、内声部のちょっとした味付けや楽器のバランスにクリップスの解釈や個性が見えるし、何よりもセカセカしないテンポ感がなんとも気持ちいい。ゆっくりなのだが、遅いとかじれったさを感じさせないのだ。

余談になるがクリップスといえば、クリップス指揮の廉価盤LPのベートーヴェンの「第九」が実家にあり、第九の全曲を初めてレコードで(NHKの年末の放送でなく)聴いたのはこのクリップス盤が初めてだった。今聴くと大層ユニークな演奏に聞こえるのだが、先にクリップスとVPOによるモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』も例の生誕200年記念名盤で聴くことができたように、クリップスはモーツァルトには非常に相性がよかった指揮者だったようだ。

追記: その後、HMVのサイトで、オリジナルのフィリップス盤も出ているのが分かった。2007年の発売で6枚組み6000円と、少し高価だが、欲しい。

よく訪問させてもらっている「クラシック音楽のひとりごと」さんでも、このCD(まったく同じ新星堂の特別盤)を取り上げられているのに気が付いて、トラックバックさせていただいた。先日のベルグルンドのシベリウスといい、今回のクリップスのモーツァルトといい、同じ音源を取り上げておられ、まったく違う再生装置ながらよく似た感想も見受けられて、面白いものだと思う。

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ディスク音楽01 オーケストラ 」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。
このCD、私も気に入っています。
特に変わったことをすることもなく
自然な流れの美しいモーツァルト
その美しい音楽に身をゆだねていると
思わず微笑みたくなる
そんな演奏に聴こえます

投稿: 天ぬき | 2008年1月29日 (火) 10:55

初めてコメントをお送りさせていただきます。偶然コンセルトヘボウのオケ名を目にして書かせていただきました。クリップスのこの盤は聴いたことがありませんが、ウィーンフィルではないところに、この指揮者の個性がストレートに出ているのかもしれません。コンセルトヘボウは大好きなオーケストラで、私のブログにこのオーケストラによるマーラーの第4交響曲のことを書かせていただいておりますので、お暇な時にでもご覧いただければ幸いです。

投稿: mickey | 2008年1月29日 (火) 14:51

天ぬきさん、コメントありがとうございます。

本当に特別なことをしていないのに自然に美しい豊かな音楽が生まれてきて、幸せな気分になるというような不思議な演奏、録音だと感じます。

ト短調という調性が「不満、苦労、落ち付かぬ状態を表す」という主張に対する反論としてシューマンが「モーツァルトのト短調交響曲はギリシャ的で、軽く飛び行く曲」と評したことが、辻荘一氏の全音のポケットスコアの解説に出ていましたが、このクリップスの録音を聴くと、シューマンの主張にはさすがに全面的には同意できないものの、第1楽章の提示部の終結部分の明朗さなど、デモーニッシュだけではないこの曲の魅力の一端をクリップスとACOの演奏は示してくれているようにも感じました。

投稿: 望 岳人 | 2008年1月29日 (火) 20:41

mickeyさん、初めまして。コメントいただきありがとうございます。

アムステルダム・コンセルトヘボウのモーツァルトと言えば、アーノンクールの挑戦的なものの方が有名かも知れませんが、クリップスの一連のモーツァルト録音はACO自体のフレキシビリティの高さと自然で豊かな音楽性を示すものであるようにも思います。

貴ブログも拝見させていただきました。私も手持ちのCDでマーラーの4番を少し聴き比べた記事を書いたことがありますが、メンゲルベルク時代からの流れを追って聴かれた記事は読み応えがありました。これからもよろしくお願いします。

投稿: 望 岳人 | 2008年1月29日 (火) 20:52

望さん、こんばんは。
ご紹介いただき、恐縮です。TBも有り難うございました。
クリップスのモーツァルトはエエですね。大らかで、ふくよかで、ゆったりとしていて、聴いていて実に心地よいんです。モーツァルトを聴くのは幸福なことなのだ・・・・とつくづく思います。そういう演奏です。
DECCAの選集、録音も良かったです。我が家ではフィリップスと遜色ありませんでした。
望さんご推奨の「パリ」はじっくり聴いていません。この週末、休日の楽しみにしようと思います。

投稿: mozart1889 | 2008年1月31日 (木) 19:58

mozart1889さん、こちらにもトラックバック、コメントありがとうございました。一昨日聴き、昨晩も聴きなおしましたが、聴くたびに幸福感を覚えるのは不思議です。

クリップスのことを改めてWikipediaで読んでみたところ、記事にも書いたロンドン響とのペートーヴェン全集(エヴェレストレーベル)のことが絶賛されていて驚きました。日本語版の元になっている英語版でも同じように書いてあったのです。クリップスの第9にはお世話になったのですが、どこかに迷盤とか書かれており、なんだかそんな気になっていたのでした。今度実家に戻った際に聴きなおしてみたいと思っておりまs。

投稿: 望 岳人 | 2008年1月31日 (木) 21:17

望 岳人さま こんにちは
コメントを頂きながら、お返事も遅れ大変失礼しました。その上、私の下手な日記までご紹介頂き、どうもありがとうございました。
 ところで残念ながら、私はヨーゼフ・クリップス氏については、殆ど聴いたことが無く唯一CDを持っているのが、ベト全だけなのです。。。
 彼の指揮するモーツァルトの作品は、CDの存在だけ知っていて未だに経験なし。でもセル氏と対極的な演奏と聞けば、興味津々です。私の拙い鑑賞からだと、マリナー氏とかジュリーニ氏なんかを想像してしまうのです。
失礼しました。

投稿: みー太 | 2008年2月 4日 (月) 16:55

みー太さん、こちらにもコメントありがとうございます。セルのあの東京ライヴは元々テレビ放送用で、かろうじて音だけが救えたという噂をどこかで読んだ気がします。それで、もしそれが本当なら多分父親が見ていたはずだし、私も見ただろうと想像するのですが。それでもセルの東京ライヴが入手できたときは、夢のようでした。

ところで、クリップスのベートーヴェンの交響曲全集をお持ちのよし、wikipediaの記事では大変誉められていました。もし既に記事にされていれば失礼してしまうのですが、感想をお聞かせください。

モーツァルトは、マリナーやジュリーニ(比較的若い頃)のような颯爽としたものではなく、本当に好々爺が孫を慈しむような暖かい演奏のように感じます。そしてアムステルダム・コンセルトヘボウの音が実にいいんです。テンポは、別のクーベリックの記事で書いたように別格的な遅さですが、それがちっとも気にならないのが自分ながら不思議です。機会があったら是非お聞きください。

投稿: 望 岳人 | 2008年2月 4日 (月) 19:55

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汗ばむほどの暖かい陽気。 久しぶりの休日、昼下がりは音楽三昧でありました。 なかでも良かったのはモーツァルトの交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」。 ヨーゼフ・クリップス指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管の演奏。 1972年6月、コンセルトヘボウでの録音。フィリップス盤。 モーツァルト最高の交響曲が、素晴らしく幸福に鳴り渡る。ああ、「ジュピター」はかくあって欲しいと思う気持ちを満たしてくれる演奏。 30分間、ひたすらモーツァルトの天才の響きに身を浸しても良し、クリ... [続きを読む]

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