佐伯泰英の時代小説を読み始める
佐伯泰英という作家の時代小説は、「平成の大ベストセラー」として大変な人気らしい。大体、ベストセラーというと、比較的敬遠しがちなのだが、朝日新聞の土曜日版(be Business)の「逆風満帆」という連載記事で取り上げられて、その内容に興味を持ったので、入手して読んでみたところ、流行作家にありがちなやっつけ仕事的な味の薄さや文章量の少なさはあまり感じず、相当濃密な味わいのある作品になっているので驚いた。
最初に読んだのは、双葉文庫の『居眠り磐音(いわね) 江戸双紙』シリーズの『陽炎の辻』という小説。とにかく、この小説家は、書き下ろしが多いことが特徴だということで、その筆力は驚くべきものがある。この『居眠り』シリーズも相当の巻数を数え、20巻を越えているようだ。
また、「逆風満帆」にもエピソードとして紹介されていた時代小説としての処女作『密命 巻之一 見参!寒月霞斬り』(祥伝社文庫)もその後に入手して読んでみたが、こちらも面白かった。まだ、時代小説の書き始めということもあり、設定上少々大げさすぎるように感じる部分もあったが、それでも面白い。ベストセラーになるのも無理からぬところだろう。「逆風満帆」にもエピソードで紹介されていたのだが、この作品が売れなければ、この小説家が今このように膨大な時代小説を書いていなかったかも知れない可能性のある転機となったものだというので、運命というものの不思議さを感じる。
追記:2008/09/23
電網郊外散歩道のnarkejpさんも佐伯泰英の時代小説を読み始められたとの記事を拝読。トラックバックさせていただいた。
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コメント
トラックバックありがとうございます。佐伯泰英さんの『居眠り磐音』シリーズを読みはじめました。始まりはなかなか迫力があります。今後、どんなふうに続くのか、興味深いです。ただし、対決の場面で、やけに改行が多いのが気になります。流行作家の行数稼ぎでなければよいのですが。
投稿: narkejp | 2008年9月24日 (水) 19:57
narkejpさん、コメントありがとうございます。
佐伯泰英氏は結構苦労人らしく、デビューするまでなかなか大変だったようです。既に相当の年齢で、筆を擱きたいと思っているようですが、多くの読者がそれを「許さず」、力尽きるまで執筆を続けけるそうです。
私は、藤沢氏と佐伯氏では同じ時代小説の枠とは言え相当個性が違うように思ってはおりますが、藤沢周平氏あったからこそ佐伯泰英氏の時代小説が受け入れられたのではないかという記事がありましたので、紹介させてください。http://d.hatena.ne.jp/hideoyama1963/20080219
投稿: 望 岳人 | 2008年9月24日 (水) 20:56