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2008年4月29日 (火)

名曲探偵アマデウス 事件ファイル#4 チャイコフスキー 交響曲第6番『悲愴』

前回の『ゴルトベルク』に続いて、今回はチャイコフスキーの交響曲第6番 『悲愴』だった。

今回の探偵事務所に相談に来たのは根岸季衣が扮する未亡人。夫が遺した本格的なフルスコアがチャイコフスキーの交響曲第6番。その表紙に「君に贈る」というように書かれており、スコア内部には多くの書き込みが・・・。これは一体誰に向けたどんな意味のメッセージなのか、というのが話しの発端だった。

筧利夫が演じる天出臼夫(あまで うすお)という指揮者兼探偵が、助手の響カノン(黒川 芽以という女性シンガーらしい)とその謎を解き明かす。

夕食後、日曜日の夜11時から11時45分に放送されたもののビデオを家族で見たのだが、さすがにこの曲は最近あまり聴いていないこともあり、子ども達は ほとんど初めて聴いたと言っていたが、それでもチャイコフスキーのバレエ音楽に似た部分もあるね、などと言って興味をもったようだった。いわゆるニック ネーム付きの交響曲で広く知られた名曲でもあり、私も中学生の頃からカラヤンとベルリンフィルの1960年代の録音のLPをそれこそ擦り切れるほど聴いて 親しんだものだが、ある時期からほとんど聴かなくなってしまった。いわゆる縁起を担いでというような消極的な気分も少しはある。

今回の演奏は、渡邊一正指揮のNHK交響楽団。どこかのスタジオでの収録らしいが、コンマスは、マロ殿だった。ファゴットのppppppも実際に演奏したり、第四楽章の冒頭の第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを分奏させてみたりと、結構番組に協力的だった。

専門家としては、玉川大学の准教授が出演。チャイコフスキーに詳しい人らしい。大学の電子ピアノ(笑)を弾きながら、解説していた。特に有名な名旋律として知られる第1楽章の第2主題は、曲中3回姿を変えて現れるが、そのときどきで付けられている和音が異なり、第1回目では確か減九の和音が使われているのが、特徴的というようなことを説明していた。

今回の番組でも自身の指揮による初演のわずか9日後にチャイコフスキーが急死してしまったことは述べられていてその悲劇的な死との絡みでも「悲哀」を表したものと考えられがちだが、実はということで、自筆譜のフランス語の表題「Pathetique」から日本語でも『悲愴』と訳されているが、ロシア語の表題 パテティチェスカヤの訳語には、直接「悲哀、悲しみ」という訳はなく、いわゆるギリシア語のパトスの訳にあたる「(元来は揺り動かされた心の状態をさす)知性に対して、一時的で感情的な精神。激情。情熱。情念。」(Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) ゥ Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988より)の訳語に当たるものしかないとされるというような説明がなされていた。

しかし、この説明は、語源であるギリシア語のpathos に遡り、そこから派生したヨーロッパの各国語ということを考える必要があり、露和辞典の記述に『悲しみ』がないことで、それがその言葉にその意味がないと考えるのは早計だと思える。英語のpathetic の語源として、「後ラテン語←ギリシャ語 pathetikos (pachein苦しむ+-ikos -ic=苦しみやすい→同情心をもちやすい)Progressive English-Japanese Dictionary, Third edition ゥ Shogakukan 1980,1987,1998/プログレッシブ英和中辞典  第3版  ゥ小学館 1980,1987,1998 とあり、pachein = suffering 苦しみ が語源であるからだ。フランス語にしても、英語にしても、ロシア語にしても、日常的な用法は別として、芸術的・文学的な用法ではこの原義が失われることはないだろうと思う。一時期、パテティチェスカヤにこだわって『悲愴』と訳すのは誤りだという主張もあったようだが、逆に考え直す必要があるのではないか、とテレビを見ながら思った。参考になるのが、このページの解説だ。

パトス pathos
〈受動的状態〉〈感情〉〈情念〉などを表すギリシア語。英語ではペーソス。人間精神の能動的・習慣的・理性的契機としてのエートスやロゴスに対比されるとともに,実体に対する属性,さらには激情や苦悩,受苦,受難などの意でも用いられるようになった。

平凡社世界大百科事典

番組は、この曲の第1楽章と、第4楽章を取り上げ、第2、3楽章は割愛されたのは残念だったが、番組の時間的制約からは仕方がないとは言え、この曲の解説としては十全のものではなかったのが、少々残念だった。

ディスクで以前記事にしたのは、ジュリーニとロスフィル、マルティノンとヴィーンフィル程度だが、名盤とされるムラヴィンスキーとレニングラードフィルのDG盤、カラヤンとベルリンフィルの70年代録音、小澤征爾とパリ管のものが今手元にあり、久しぶりに聴いてみたいと思った。

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