カラヤン/BPO('77-'78) ブラームス 交響曲第4番
ブラームス 交響曲第4番 ホ短調 作品98
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
〔1977年10月-1978年2月 フィルハーモニー、ベルリン〕
12:48/11:05/6:04/9:57
4月に第4番の曲。我ながら単純な発想だが、1月から3月まで、一応同じように聴いてみると、なんとなく発見があるような気がする。ある作曲家がある分野で何曲の作品を残したかとか、いろいろな作曲家にとってたとえば3番目の作品がどういう位置づけにあったのかとか。1月は、ブラームスの交響曲、ピアノ協奏曲。シベリウスの交響曲。(2月に少しずれ込んだが)バッハのチェロ組曲の1番、ベートーヴェンの交響曲第1番(飯守泰次郎指揮)。2月は、ラフマニノフとニールセンの交響曲。3月は、メンデルスゾーンとベートーヴェンの交響曲の3番。ショパンのピアノソナタの3番(これはちょっとこじつけか?)
これまで、カラヤンによるブラームスの交響曲は、1984年(だったと思う)のザルツブルク音楽祭で、なぜかブラームスの作品が多く演奏されたように記憶しているのだが、カラヤン/BPOで交響曲全曲、ムターとワイセンベルクでヴァイオリンソナタ全曲をエアチェックしたと思う。その録音(ラジカセによるものであまり上質ではない)を結構聴いていたが、あまり馴染みのあるものではなかった。これまで音盤では、クレーメル、ムターとの共演盤のヴァイオリン協奏曲、ドイツ・レクィエム程度だろうか?
このCDもたまたま格安だったたので、気軽に聴いてみようと買ったもの。先日、ピースうさぎさんが同じCDの中の2番を爆演と紹介されていて、コメントをさせてもらったこともあり、まだじっくり聴いていなかったこれを思い出し、4月の4番の初めにもってきた。
今年はカラヤン生誕100年(1908年生まれ)ということで、街のCDショップでもカラヤンの記念盤が大量に陳列されているが、私などはようやくバイアスが掛からずにカラヤンに接することができるかというところで、カラヤン入門をようやく始めるところのような気がする。
第1楽章は、提示部から展開部に掛けては、どこかバッハのマタイ受難曲のアリアを連想させるような音楽で、視線を下に落とし諦念に満ちた表情でさびしげに淡々と進む。やはり下降音型には、そのような効果があるのかも知れない。しかし、再現部後半からコーダに掛けての盛り上がりと熱気は相当すごい。このような部分が少し演出めいているといわれる所以かも知れないが、これがライヴ演奏ならそんなシニカルなことは感じないだろう。
第2楽章は、全般的に分厚いBPOの響きをたっぷり使い、レガート(テヌート)で音楽を作っていくが、これが素晴らしい。カラヤンのブラームスでは、クレーメルと共演したヴァイオリン協奏曲の冒頭のオーケストラの弦による深深とした響きがいかにもブラームスという響きだと思ったが、この楽章でも豊かでグラマラスな音響にグっとくる。
第3楽章は引き締まって輝かしい。少々レガートで演奏し過ぎかと思わせるフレーズもあるが、前進するエネルギーがあり、楽器間の受け渡しや会話など立体的で、さすがに名手揃いのベルリンフィルという演奏を聞かせる。
第4楽章のパッサカリア。変奏曲の名人ブラームスがバロック時代の古い変奏様式のシャコンヌ(パッサカリア)を用いた曲で、19世紀も終りに近い当時の人々にとっては、古い皮袋に新しい酒を注ぐではないが、非常に時代錯誤に感じたことだろうと思うが、カラヤンのこの演奏で聴くと、鳴りの悪いとされるブラームスも非常にゴージャスな音楽に聴こえるような気がする。晩年の諦観に満ちた晩秋の風情の音楽などと言うことが言われるが、私の好きなセルの録音といい、このカラヤン盤といい、ブラームスの4番はむしろ雄雄しく闘う中年男性(当時ブラームス52歳)の音楽だと思う。
カラヤンのブラームスは、彼のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンに比べて(といってもいろいろな年代のものを少しずつしか聞いていないが)結構私の感性にはフィットする演奏のようだ。当時、70歳になったカラヤンの録音だが、エネルギッシュであり、オーケストラの鳴りもよく、ブラームスの新たな面(他の時期のカラヤンのブラームス演奏は知らないが)を聴かせてくれる。
相変わらずこれまでの聴かず嫌いを反省する。
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コメント
おはようございます。
晩年のカラヤンはブラームスを好んでとりあげていたような気がします。手元にも2種類のエアチェックテープが残っています。
1981年に来日した折りには4番と2番の演奏会に行きました。
カラヤン体験、最初で最後でした。
艶やかな音と破綻することのないダイナミックレンジの広い音には驚嘆しました。この年はオーマンディ/フィラデルフィア、ブロムシュテット/ドレスデン歌劇場なども聴いていたのですがオケの能力に関しては桁が違うと思わされたものでした。
個人的にはこの2曲がカラヤンに合っていると思っています。
投稿: 天ぬき | 2008年4月 8日 (火) 10:19
ご紹介ありがとうございます。
カラヤンの第4番は枯れた感じがないところが興味深く聴けました。
音の鳴り方がほかの指揮者にはまねできないでしょう。
天ぬきさんが仰るのと同感で第2番第4番が特に素晴らしいと思っています。
そう言えばカルロス・クライバーもこの曲を録音していましたっけ・・・。
投稿: ピースうさぎ | 2008年4月 8日 (火) 19:48
天ぬきさん、コメントをありがとうございました。
カラヤンをナマで聴かれ、同時期にブロムシュテットのSKDとオーマンディのフィラデルフィアを聴かれたとは、垂涎ものですね。黄金コンビの三連発というところでしょうか。それでも桁違いと言うのはやはり、当時のBPOは凄いオーケストラだったんですね。カラヤンのブラームス、残り3曲をじっくり聴けるのが楽しみです。
投稿: 望 岳人 | 2008年4月 8日 (火) 20:43
ピースうさぎさんコメントありがとうございます。
おかげさまでカラヤンのブラームス、積んどく状態だったのですが、ようやく真剣に向き合って聴くことができました。
この曲は、セルとクリーヴランド管のLPで入門して刷り込みになっているため、有名なカルロス・クライバー盤も何か物足りない(好きな方は申し訳ありません)感じを受けていたのですが、このカラヤン盤はなかなかのものでした。
ブラームスの曲からただ明るく明快というのではなく、あれだけ豊麗な音楽を作るというのは、オーケストラの(制御された)自発性を作り出すことに精魂を傾けた指揮者にしか成しえないものかな、などと思いました。
投稿: 望 岳人 | 2008年4月 8日 (火) 20:56