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2008年5月25日 (日)

小復活、名曲探偵アマデウス事件ファイル#7 モーツァルト ピアノ協奏曲第20番ニ短調

しばらく休んでいたが、少し復活した。連休明けのストレスで、心療内科で投薬をしてもらったが、それがよく効き、朝が起きれなくなってしまった。思い切ってじっくり休んだ。また、先週月曜日の吹き降りの大雨の朝、鉄筋コンクリート造りの最上階ではないのに、外壁に激しく打ち付けた雨が滲み込んだのか天井から雨漏りがしてしまい、その対応にも追われるなど、激しい波のある半月だった。そんなこんなでしばらく休養した。

土曜日と今日日曜日も雨が降っているが、吹き付ける雨ではないためか、今のところ雨漏りはしていない。工事は外壁にあるだろうと思われる隙間を埋めるものになるようで、しばらく時間がかかりそうで、この際雨漏りのあった部屋(子ども部屋)の大量のおもちゃ類を整理しようということになった。(自分のCD,書籍も収拾がつかなくなりつつあるので整理が必要なのだが。)

さて、先週の日曜日の夜の23時からの番組をビデオ録画しておいてみた。

櫻井淳子扮する銀座のクラブのママ(卯たひめの雪乃)。客の小説家に恋をした。その小説家は気まぐれで悪魔的でその心が分からない。彼がそのママの店を訪れたときそこのピアノで弾いたのがテレサ・テンの『つぐない』(窓に西日の当たる部屋は・・・)のメロディーによく似た曲。そしてその男は姿を現さなくなった。この曲に託したその男のメッセージとは? ママの恋はどうなるのか?

例外的なニ短調の曲。第1楽章は不安を感じさせるシンコペーションとアウフタクトの低音リズムが組み合わせられる。「アンサンブル・プリマベーラ」という室内楽団体?による実験(シンコペしない、する)も面白かったが、それほどの違いは感じられなかった。

オケによるシンコペとアウフタクトも第1主題部の前半だが、ピアノが独自の主題を奏する。これがこの曲の特徴。この主題について毎回登場する玉川大学の准教授、野本由紀夫氏は「ため旋律」と呼び、8度の飛躍とため息、10度の飛躍とため息のように「がんばろう、だめかも。がんばろう、だめかも」の繰り返しだと語る。なるほど。このピアノ協奏曲は、いわゆる「おきて破り」で、同時代の例のサリエリのピアノ協奏曲変ロ長調の冒頭部分が比較のために用いられたが、これがなかなか聴き応えのありそうな曲だった(ナクソスなどで聞けるだろうか?)。このような祝祭的な華やかな曲に対して、暗く、静かで、オケとピアノが違うメロディーを扱うのはデモーニシュで非常に珍しいとのこと。

第2楽章(の主部)は、親しみやすくおだやか。安堵と調和の世界。高音の旋律と低音の伴奏がちょうどソプラノとテノールの女声と男声による二重唱のよう。よりそってデュエットをしているかのようだ。この楽章は Romance (英語ではロマンスだが、ロマンツェと読む)という名前。

BGMがジュノムに切り替わり、モーツァルトのピアノ協奏曲論(音楽通もそうでない人も楽しめるのがピアノ協奏曲の極意)が紹介、フォルテピアノの開発も大きな影響。ベートヴェンはカデンツァを作曲し愛奏、ブラームスもこの曲を愛奏したことが紹介される。

また、ママが登場。「彼がお店に現われたが、私のことを無視して冷たくする」。まさに第3楽章の冒頭の追い立てられ不安に突き落とされたまま走り続けるよう。「告白に対する拒絶」。属九の和音(最も激しい不協和音)も用いられている。しかし、第1楽章のピアノ主題が、それに続いて現われる。一種のバリエーション。モーツァルト国際コンクール優勝の菊池洋子によれば、第3楽章の主題は、第1楽章のそれに比べてより前向きな感じを受けるとのこと。「希望や救い」がある。そしてピアノとオケが会話を始める。両者の関係に前向きの変化が始まったことを示唆するかのよう。第1楽章:不安。第2楽章:安堵、第3楽章不安を秘めながら希望への光を見せるという図式。

筧(アマデウス)探偵「どんなに悪魔的な人だとしても、これが彼からの精一杯の気持ち」「彼はあなたを想っている。美しいメロディーこそが彼の気持ち」

第3楽章の演奏。指揮はデュトワ。ピアノは、ピョートル・アンデルジェフスキという東欧系の若手男性ピアニスト。第1カデンツァは自作?(ベートーヴェンのではないようだが。)再現部でピアノのメロディー(第1主題)をオケが引き継ぎ、第2カデンツァ。最後は、ニ長調に転調して祝祭的な雰囲気で華やかに終結。

以上のように結構勉強になった。第1楽章のピアノだけに現れるアイガングと呼ばれるメロディーが『つぐない』に似ているというのは新発見で驚いた。またこれが第3楽章の主要主題として変奏されて登場するというのも、解説書には出ていたかどうか覚えていないが、なるほどと思った。そして、その主題がオーケストラでも奏でられる。第2楽章の穏やかなメロディーは、女声と男声の二重唱のようということも。

この番組だけを見れば、なるほど巧くできているという風に感じる。

が、この後、久しぶりにハイドシェックとヴァンデルノートの盤でいざ全曲を聴きなおしてみると、第1楽章にしても第2主題はピアノとオケの対話になっている。第2楽章のロマンツェ(モーツァルトは、この形式名を「グラン・パルティータ」や「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」でも用いておりやはり穏やかな主部と不安げで急速なテンポの中間部で構成しているのが見られる)の中間部の同じ速度ながら突然テンポが上がり非常に焦燥感のある非常に不安げな音楽に転換することを、この番組のストーリーは敢えて省いている。というように、この番組の不満な部分も次第に表れてきた。

これまで『ゴルトベルク』はそれなりに全曲を扱っていたが、『悲愴』は、第1、第4楽章のみ。『死と乙女』は第1、2楽章のみ。『前奏曲集』も数曲のみ。そして『ピアノ協奏曲』は、一応全楽章だが、ストーリーにこじつけるため(あわせるため)に部分的に敢えて省略したところがある。新たな啓示はあるのだが、この番組のストーリーがその曲全体を十分に説明しつくしたとは言えないところに注意をする必要があるように思った。(十分条件と必要条件という言葉で説明したいが巧くいかない)

なお、この第20番とそれに続く対照的な第21番の協奏曲と、有名なシンフォニー第40番と第41番との不思議な関係については、ずっと以前自分のホームーページに冗談のような対話編を書いてみたことがある。なかなかの着想だと自分では思うのだが。題して「モーツァルトの隠し絵」。

事件ファイルの#1(ボレロ)、#2(ブラームスの第4交響曲)は、見逃したが、これで#7まで見たことになる。今晩のBS2は、シューベルトの再放送。また来週はチャイコフスキーの再放送で、次回新作はシベリウス「フィンランディア」、続いてベートーヴェンの「月光」、シューマンの「子どもの情景」と続くらしい。

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