岡田暁生『オペラの運命』(中公新書)
『西洋音楽史』よりも前に書かれた本だが、『西洋音楽史』を読了後に購入。これも非常に面白い。快刀乱麻的に明解に書かれているが、あまり強引さを感じず、納得させられる部分が多い。まとめ方のうまさだろうか?先日、NHKの『魔笛』を題材にした番組の折にこれを引き合いに出したが、ようやく読了した。『音楽史』はほとんど一気読みだったが、こちらは少々時間がかかった。『音楽史』に登場する器楽曲に比べて、オペラはなじみがない作品が多いからだろう。何しろ、モンテヴェルディの『オルフェオ』も『ポッペア』も『ウリッセ』も、グルックの『オルフェオとエウリディーチェ』も、ロッシーニもヴェーバーもヴェルディもプッチーニも、ヴァーグナーも、オペラ史に残る作曲家、作品のほとんどが未だまともに聴いたことのないものだから。
目次のようにざっくりまとめると、
絶対王政の王家の祝典としてのバロックオペラ、オペラセリア。
啓蒙時代のブルジョア階級の台頭、斜陽貴族とモーツァルトなどのオペラ・ブッファ。ロココ趣味。
フランス革命後のブルジョアとフランス・グランド・オペラ(マイヤベーア)。最大の娯楽産業、カジノ・売春・さくら(宣伝)。
ドイツ・東欧の「国民」オペラのイデオロギー性(イタリア統一とヴェルディ)と異国オペラ(アイーダ、蝶々夫人、トゥーランドットなど)、中南米のオペラハウス。
ヴァーグナー 王になった作曲家。
ヴァーグナー以降、オペラのライヴァル映画の登場。そしてエーリッヒ・コルンゴルド、マックス・スタイナー、ニーノ・ロータ、ジョン・ウィリアムズの映画音楽。ベルクの『ヴォツェック』、ショスタコーヴィチの『鼻』。
日本におけるオペラについては触れられていないが、ある意味、独墺オペラの総本山の一つ、ヴィーン・シュターツ・オーパーに東洋人の小澤征爾が音楽監督として就任しているのも、近現代文明の源流であるヨーロッパとアメリカの文化による世界の席巻過程の果てと、その終りの始まりを象徴するのかも知れない。
日本人は、このような重層的な歴史把握が苦手で、多くの古典が同一平面に並べられる傾向があるが、そのような音楽実践と受容自体、また現代を象徴することなのだろうな、などと思った。
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コメント
こんにちわ!
記事を拝見して、とても興味を惹かれたので私も買って来てしまいました。
なかなか、本と向き合う時間がとれず、
まだカストラートのあたりですが
ちょうど、私が欲していた内容のようで、とても面白いです。
良い本を教えて頂きましたありがとうございます。
投稿 バルダ | 2008年5月13日 (火) 15:18
バルダさん、今晩は。
コメントありがとうございました。この一週間、PCを開きませんでしたので、せっかくのコメントにお礼が遅くなりすみません。
私のこの『オペラの運命』の記事はちゃんとした紹介にはなっておりませんでしたが、それでもこれをきっかけにしていただいて読み始められたというのはとてもうれしいです(^^)。
この著者は同じ中公新書から『西洋音楽史』
http://kniitsu.cocolog-nifty.com/zauber/2007/12/post_436d.html
という本も出されております。(これも記事にしました)快著だと思いますよ。
投稿 望 岳人 | 2008年5月19日 (月) 20:10