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2008年7月27日 (日)

日本フィル夏休みコンサート2008で初サントリーホール

相当以前に過ぎてしまった父の日だが、その頃「父ちゃんは君たちをいろんなところに連れていってあげてるけど、こちらに引っ越してきて自分の好きな音楽のコンサートにはあまり行けていないんだ。あの有名なサントリーホールでもコンサートを聴いたことがないんだ」とか何かの拍子にぼやいたことがあり、それを覚えていた妻が一応父の日のプレゼントとして、子どもと一緒に行けるサントリーホールということで、今回の日本フィルの夏休みコンサートのチケットを家族分手配してくれていた。

そのコンサートが今日午前中の11時からサントリーホールで行われ、東横線から地下鉄南北線に乗り継いだら意外なほど短時間で、一種の「聖地」サントリーホールに着いてしまってちょっと驚いた。南北線の六本木一丁目駅では、この夏休みコンサートに行く親子連れらしい人々の姿が多かった。

駅の3番出口から約5分でカラヤン広場を通り、サントリーホールへ着く。アークヒルズ界隈も六本木再開発の最初の頃のプロジェクトだったはずで、そのせいかリニューアル工事がここかしこで行われていた。

ホールそのものはアークヒルズのビル地区の中にすっぽり と収まっているため、音楽芸術の殿堂という崇高さのようなオーラはまったくない。ローカルな比較になるが、長野県の須坂市のメセナホールという文化会館などは、低い丘の上に立っているが、建物正面のデザインなど、なかなか素晴らしいもので、地方都市には贅沢なほどの建物になっており、当時そこに住んでいたおりには、よくコンサートにも出かけ、また所属合唱団の定期演奏会や、合唱コンクールも開かれたり、自分の庭のようなホールだったので、そことの比較になるが、外観やホワイエ(ロビー)などは、あの地方ホールも、また長野県の文化会館もそれなりの豪華さだった。閑話休題。

P7270012_3家族連れで賑わうカラヤン広場で、10時半の開場の仕掛けオルゴール(オルガン)が鳴り出して人々がホールに吸い込まれていき、その後を追って我々も中に入る。ホールに入るとさすがにそこは、テレビなどでも見慣れた正面に豪華なパイプオルガンとシャンデリアのある巨大なサントリーホールの空間だった。

今回は、「のだめ」で取り上げられた「ラプソディー・イン・ブルー」を指揮者弾き振りで演奏するため、若手の沼尻竜典(ぬまじり・りゅうすけ)と渡邊一正(わたなべ・かずまさ)が指揮者として起用されており、今回のサントリーホールの午前11時と午後2時の2回で7月19日からの沼尻氏の指揮は終了、その後7月29日から8月2日は渡邊氏の番になるということで、夏休みコンサートとは言えなかなかのハードスケジュールのようだ。

曲目は、第1部がモーツァルト『フィガロの結婚』序曲。颯爽と登場した沼尻氏は、快調なテンポでモーツァルトを指揮する。初めて聴くサントリーホールのナマの響きだが、舞台に向かって左側の1階平土間の一番後ろの方で、少々音が遠く、残響の多さに慣れるまではなかなか音楽に集中できなかったが、各パートの音も分離して聴き取れるようになってきた。次は、「G線上のアリア」。チェンバロなしの弦楽合奏のみの演奏でリピートも省略されていたが、弦の響きの溶け合いが美しかった。解説と歌として江原陽子という歌手が登場し、「G線」のことを指揮者に質問し、実際にコンサートミストレス江口有香さんが、めったに聴くことができないヴィルヘルミ編曲のG線のみで弾くこのアリアの冒頭部分を弾いてくれたが、ヴァイオリンとは思えないほどの低い音で聴くこのアリアはなかなか聴き物だった。次は楽器紹介をしながら、チャイコフスキーの『白鳥の湖』の『4羽の白鳥の踊り』とハチャトリアン『剣の舞』。フルート、オーボエもなかなかよかった。『剣の舞』は、さすがにアピール力の強い曲で、終演後子どもも妻も凄い迫力だったと言っていたが、会場の残響の関係もあったのか(千葉県文化会館、府中の森芸術劇場、横浜みなとみらいホール、ミューザ川崎シンフォニーホール、大宮ソニックシティの順で、今日がサントリーホール初日)、活躍する打楽器群とその他のパートがほんの少しだけずれているように聴こえたように思った。演奏を始めてしまえば途中で修正が聴くような曲ではないし、あれだけのテンポで駆け抜けるのは結構難しいのだろう。

次は、指揮者弾き振りの『ラプソディー・イン・ブルー』。なお司会者が「日本フィル夏休みコンサート2008ハイライト版です」と紹介したが、全曲ではなく、途中の部分を巧妙にカットしていたが、聴きなれている長男などは、後で「省略があったね」と言っていたので、できれば全曲を聞いてみたかった。演奏は、沼尻氏のピアノも堂に入ったもので、ピアノの響きも美しく、オーケストラともども熱の入ったいい演奏だった。クラリネットのアドリブ風トリルから始まって、途中金管楽器がミュートを使ったりしての特殊な音響を出す部分など会場も沸いていた(ように記憶しているが)。カデンツァでは、沼尻氏はイロイロな曲のサビの部分を演奏していていて、なかなか芸達者だと思ったが残念ながらどんな曲だったか短期記憶が弱まっており思い出せないのが残念。

この後、オーケストラ演奏にのって、会場のみんなで歌を歌う(このようのコンサートでは定番の)コーナーが設けられ、「誰にだってお誕生日」「大きな古時計」「さんぽ」が歌われた。合唱から遠ざかって相当経つのでしばらく大きな声で歌ったことがなかったが、なかなか気持ちよく歌えた。

休憩を挟んでの第2部は、ムソルグスキー=ラヴェル編曲の組曲『展覧会の絵』。この曲は、コンサートでナマで聴いたのは初めてで、また単に子ども向けとも言えず期待して、昨日などは、オーマンディ(CBS)盤やジュリーニ/CSO盤(ハーセスのトランペット!)を、長男と聴き比べて楽しんだのだが、やはり生演奏の迫力は素晴らしかった。

生演奏も、数多く聴けば、もっと冷静な聴き方ができるのだろうが(ただ、それが必ずしも音楽を楽しむためによいことかどうかは別だが)、ホール全体に広がる金管や打楽器の音の迫力に圧倒されることが多く、いわゆる音楽の情報量よりも、感覚的な喜びの方がまず多くなる傾向があるように思うのだが、今回の『展覧会の絵』は、子どもを飽きさせないという多少の演出(絵のない巨大な額縁)や、黒子の持って出てくる巨大な曲名紹介でもそれほど興をそがれずに、音楽そのものを結構楽しめた演奏になっていた。

以前にも書いたが、高校時代オーマンンディ盤によって十分に親しみ、細部まで覚えきったような感じの曲だが、ここ10数年は離れていた曲だった。個性的で描写的な音楽の集合である組曲で、面白い曲揃いで、気軽に聴ける曲ではあるのだが、音楽にもっと別の充足感を求めるようになると次第に敬遠しがちになってきていた曲だった。数年前に手持ちのCDの聴き比べのような記事を書いたことがあったが、表面的な印象を書いただけで、それほどつっこんだコメントは書かなかった。私が高校のときにはまった『展覧会の絵』だが、子ども達は意外にこの曲への食いつきが悪く、今回のコンサートで魅力に開眼するかも楽しみだった。

沼尻/日本フィルの『展覧会の絵』は、結構見事な演奏だった。トランペットソロは、プログラム掲載の首席の星野さんだろうか、一曲目のプロムナードのソロは、ハーセス顔負けの素晴らしい音だった。「こびと」の打楽器、「古城」のサキソフォーン、「チュイルリー」のアンサンブル、「ブィドロ」の重々しいチューバソロも見事。ナマでは結構粗が出るのではと心配した「殻をつけたひよこの踊り」とアンサンブルが難しそうな「リモージュの市場」も颯爽とこなし、「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」でもミュート付きトランペットが疲れることなく甲高い声でしゃべっていた。「カタコンブ」は、ひっそりとした足取りで地下墓地を歩む姿の部分が緊張感があり、「ババ・ヤーガ」では、迫力満点の魔女の姿が描かれていた。「キエフの大門」は、さすがにいつも聴いているステレオイアフォンや、大きな音を出すのは控えざるを得ないステレオセットでは聴けない大音響を聴けカタルシスを得ることができた。この曲など、指揮台で指揮できれば、爽快な曲だろうといつも思っているが、つい手が動いてしまい、子どもに後から注意されたほどだった。

アンコールは、恒例の「ラデツキーマーチ」で、手拍子の演出もたくみに、子ども向けとは言え長丁場を無事聴き終えることができてほっとした。

なお、この午前の部か午後の部は、NHKBS11が収録することになっているとパンフレットにも書かれており、それらしいテレビカメラが二階席の両側で撮影していたようだった。オーケストラがフォルテの部分で、カメラマンたちがヘッドセットを使ってディレクター?と会話しているような声が耳に入ってきたのはいただけなかった。妻もその声には気がついたようで、誰かがラジオでもうっかりスイッチを入れたのかと思ったなどと言っていたので、結構大きい音だったのだろう。テレビ放映は楽しみだが、テレビのスタッフは少々注意不足ではなかったのではあるまいか?

まあ、こうして初のサントリーホール詣でも無事終わって、いつもは子どものための外出が多いが、自分も満足できる外出もやはり精神衛生上必要だと思った次第だ。とはいえ、比較的廉価なこのコンサートでも、そうおいそれとは来れないし、ましてや外来演奏家など最近の経済事情では相当難しいこともあり、高価なコンサートでなくてもいいから、それ用に貯金でもして、数ヶ月に一度くらいはナマの演奏を聴きに行きたいものだと思う。

追記:2008/10/09

日本フィルのホームページを見てみたところ、NHKBS11の収録ではなく、BSデジタル11という放送局の収録だったとのことだ。

番組名:BS11スペシャル「日本フィル ファミリーコンサート2008~音の展覧会~」
放送日(予定):2008年11月2日(日)14時~16時30分
■BS11の試聴方法はこちら

NHK衛星第2(アナログ)がBS11とも新聞のテレビ欄に書かれていたりするので、勘違いしてしまっていた。無料放送だというが、ディジタルチューナーがないので、今のところ見れない。残念。

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