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2008年7月 6日 (日)

7月の7番は ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第7番

Beethoven_mid_sq 7番という番号は、交響曲作家なら(ハイドン、モーツァルトは別にして)ベートーヴェン、シューベルト、ブルックナー、マーラー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、シベリウスなどが思い浮かぶが、弦楽四重奏曲の著名な作曲家としては、(これまたハイドン、モーツァルトを別にして)、ベートーヴェンのほかは、ショスタコーヴィチくらいだろうか。(シューベルトも相当の数の弦楽四重奏曲を残していたのを忘れていた。第13番が『ロザムンデ』、第14番が『死と乙女』など)

ショスタコーヴィチのは、Brilliant のルビオ・カルテットの全集を購入してはいるのだが、ミチョランマ状態でもあり、昔からずっと愛好してきたこのベートーヴェンのラズモフスキー1番を聴いてみようと考えた。

現在、手元にある音盤としては、アルバン・ベルク・クァルテットの1970年代EMI録音(スタジオ)のみ。LPでは、当時非常に人気のあったスメタナ四重奏団のDENONのヨーロッパPCM録音シリーズのもので、これはエアチェックしたテープでもよく聴いたため、この曲にとっての刷り込みスタンダードとしていまでも、この曲の基準になっている。

その後、CD時代になり、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲では、それまであまり聴いたことがなかった後期に挑戦してみようと、1980年代初期の録音の日本盤の東芝EMIのアルバン・ベルク・クァルテットの4枚組み12,000円で購入。この中では、ズスケ・クァルテット(ベルリン・クァルテット)のエアチェックで親しんだ第14番(全7楽章)を、やはりよく聴いた。この後期の後、長野市にも開店した新星堂で輸入盤を扱っており、同じアルバン・ベルク・クァルテットの中期3枚組みが、何と破格の4000円ちょっとで売っており、あまりの安さに思わずとびついた。当時は円が米ドル、ヨーロッパ通貨に対しても相当高い時代で、輸入盤が破格の値段で入手でき始めた頃だったように思う。(EMI CSA 7 47131 8  Made in W. Germany)

エアチェックの少々貧しいながらも明快な音と、LPの分解能のよい伸びのよい音響で聴けるスメタナ四重奏団のラズモフスキーの1番は、大人の風格で、しなやかな演奏なのだが、覇気よりも余裕を感じさせる演奏だったように記憶している。

それに比べて、1979年に Original sound recording made by EMI Records Ltd. と詳しい録音データが記されていないアルバン・ベルク・クァルテットの方は、各奏者の技量やアンサンブルの精密さ、滑らかさはスメタナ四重奏団とは違うと感じさせるものがあった。(後期の録音は、後年までヴィオラ奏者を務めて数年前惜しまれつつ亡くなったトマス・カクシュカ氏だったが、中期にはその前の奏者のハット・バイエルル氏がクレジットされている。)

吉田秀和氏も『私の好きな曲』で、この弦楽四重奏曲第7番ヘ長調「ラズモフスキー第1番」作品59-1を取り上げられ、詳細に論じられているが、エアチェックのスメタナQ盤で親しんだのは、そのエッセイを読む前で、その影響もないうちに、スコア(弦楽四重奏曲のものは薄くて比較的廉かった)も購入しながら、四つの弦の作り出す深く広い世界を味わうことを得た。

最初は、第1楽章の広々とした雰囲気の勇壮なソナタ楽章を好んだが、次第に、第3楽章のAdagio molto et mesto の、下を向き歯を食いしばりながらひたむきに歩き続けるような孤独な男の戦いを思わせる音楽が耳に染みてきて、毎晩のようにこの曲を聴いたことを思い出す。

弦楽四重奏曲における『エロイカ』的な飛躍の音楽(6番までは作品18のセット)であり、ベートーヴェンらしさが非常によく出た音楽でもあり、多くの名四重奏団によって録音、演奏されている名曲中の名曲であるが、今宵久しぶりに聴きなおして、その音楽の広さ、深さに驚きつつ、感動しているところだ。

このアルバン・ベルク・クァルテットも今年で解散(引退)とのことで、日本でのさよなら公演も行われたとの話を聞くが、1度だけ生で実演を聴いたことのある団体でもあり、その関係もありなかなか感慨深い。

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コメント

おはようございます。
この曲を最初に聴いた時(ベルリン四重奏団のLP)には随分と感動しました。特に第3楽章の美しさにはすっかり魅せられて当時付き合っていた一回り以上年下の女子大生にカセットにコピーしてプレゼントしたら大層喜ばれたりしたものでした(^^ゞ

最近は加齢のせいか交響曲よりも室内楽やピアノソナタ等の器楽曲を好んで聴くようになりました。

投稿: 天ぬき | 2008年7月 7日 (月) 10:41

天ぬきさん、今晩は。若かりし頃の素敵な思い出をどうもごちそうさまです(^^)。

アルバン・ベルク・クゥアルテットの第3楽章は、もちろんスタイリッシュで素晴らしいのですが、この音楽はどちらかと言えば、少し訥弁的な誠実な趣の方が似合いそうで、スメタナQの録音は気に入りでした。ベルリン(ズスケ)四重奏団では、今のところ7番は聴いたことはなかったですし、14番の録音は音盤としては入手できていませんが、今でもあの誠実な音楽は耳に残っていますので、その四重奏団のラズモフスキーを若い恋人にプレゼントして、その方も大層喜ばれたというのはなんともうらやましく微笑ましい話ですね。

投稿: 望 岳人 | 2008年7月 7日 (月) 21:28

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