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2008年8月 5日 (火)

事件ファイル#12 ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』

事件ファイル #12 神の手を持つ男 ~ラフマニノフ「ピアノ協奏曲・第2番」 依頼人 財前八郎(風間トオル) 職業 医者(心臓外科医)が、8/3(日)の夜11時からBS2でようやく放送されて、そのビデオ録画を今晩やっと見ることができた。

この記録のような感想のようなものも少々義務のようになってきて、少々自分でも食傷気味なのだが、簡単に概要だけを書き付けてみようと思う。

「白い巨塔」のパロディで、財前という心臓外科医がクライアントで登場。10年前にカリスマ心臓外科医として肩で風を切っていたが、手術中のミスを起こし、自信喪失して町の開業医としてこれまでメスを握らなかったが、大学時代の恩師の治療困難な心臓病の執刀を恩師自ら依頼され、その際にラフマニノフ自作自演のピアノ協奏曲第2番のLPを渡されたというのが話しの発端。

演奏と演奏者としてのコメントは、中村紘子さん。指揮は、準メルクル。オーケストラはNHK交響楽団。

コメンテーターとしては、またもや野本准教授と、愛知県芸大の安原准教授。

第1楽章から第2、3楽章まですべての楽章を、推理の材料として使っていたが、面白かったのは、第2楽章の作りが、オケが4拍子で進むのに対して、3連符を4つでそれを4×3で、3拍子として使ったピアノとの「ポリリズム」的な食い違いへの指摘。ゆったりした楽章なので、特にズレという風には感じなかったが、そのような仕掛けがしてあったらしい。

中村紘子女史はエッセイ『ピアニストという蛮族がいる』で、ラフマニノフの手の大きさがある病気に由来することを紹介していたが、その手のレプリカが作られており、それでは軽く12度(ドから上のソまで)を鳴らせるほどの大きさだったことがテレビらしい実証性で紹介されていたのも面白かった。

今回の番組で使われた中村女史の演奏は最近のものらしいが、相当お年を召されたようだ。まだ私が学生だった頃仙台の宮城県県民ホールでリサイタルを聴いたときには、まだ40歳代の美しさを保たれており、舞台マナーも非常にピリピリしていた(ショパンのプレリュード全曲、バルトークの「戸外にて」全曲、モーツァルトのK.331?だったと思う)。それが、すっかり貫禄がついて、柔和になったように見えた。

準メルクルとの共演は、さすがに演奏しなれたレパートリーだけあって、堂に入った演奏ぶりで、特に左手でのベース音の強調はこの曲をよく知り尽くしている感を抱かせたが、さすがに実演の録画だけあり、第3楽章が最後に少しのカットだけで5分以上通しで放映されたが、ミスタッチと、調子の悪いときに聴かれると思うのだが、音が団子状にになるように聴こえるところが聴き取れてしまい少々つらいものがあった。中村女史は、更なる難曲の第3ピアノ協奏曲もレパートリーとしていて、本場ロシアでも演奏をしたことがあるほどだが、さすがに往年の切れが失われてきつつあるのを感じた。

偶然にもこの曲のナマ演奏を、ダン・タイソンとモスクワフィル(指揮:小林研一郎)、ソコロフとレニングラード(第2)フィルにより聴いたことがあるが、巷間言われるように、録音で聴かれるようにはピアノの音は聞こえてこない。オケとピアノが溶け合うことにより、細部の超絶技巧が目立たなくなる。その意味では、細部クローズアップのようなツィメルマン盤のような録音はまさにレコード芸術のなせる業なのかも知れないし、その意味での精密性をこの曲に求めすぎるのは、異常な手の大きさと柔軟さを持った作曲家の意に反しているのかも知れないとも思ったりした。

参考:この曲の自分の記事

追記:ラフマニノフの自作自演盤と言えば、中村紘子女史の夫君で芥川賞作家の庄司薫氏が『僕が猫語を話せるわけ』というような題名のエッセイで、この自作自演盤のLPが宝物であることを書いていたのをふと思い出した。もう30年以上前のエッセイになるだろうか?赤青黒白の四部作を書いた後、このようなエッセイを発表した後、文名をとんと耳にしなくなったが。

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