うたの旅人「だれもが兄弟となる」朝日新聞 土曜版 be on Saturday Entertainment 2008/12/20
朝日新聞の日曜版が、土曜日版として、娯楽(Entertainment) と 商売(Business)の二つの "be" と称するものになり、そのうち日曜版として 科学とテレビの be も発行されるようになって相当時間が経過したように思う。
この週末の be on Saturday Entertainment の 1面の「うたの旅人」は、ベートーベン「第九交響曲・歓喜の歌」 という副題で 「だれもが兄弟となる」という記事だった。
第一次世界大戦で、中国のチンタオに駐留していた旧ドイツ帝国の軍隊が、戦勝国側の日本の捕虜となり、徳島県の鳴門市に敵国兵として収容されていたが、この捕虜のドイツ人たちの手によって、全曲演奏か、第四楽章か、またはその一部かは知らないが、とにかく、ベトーヴェンの第九交響曲の日本初演が行われたことは、相当以前からトリビア的に知られており、近年このエピソードが映画化されたようだ。(それにしても「バルトの楽園」というのは、どうしてもバルト海を連想させてあまりいい題名とは言えないように思う。wikipediaによるとバルトとはドイツ語で髭のことらしい。「敬愛なるベートヴェン」とかいう映画の題名もあったが、音楽系の映画の題名のいくつかは poor だと思ってしまう。)この戦争の末期にドイツ革命が起こり、共和制のヴァイマール共和国が誕生したのだが、それがまた鬼子であるNazi Nazional Sozialist を生み出したのだった。
さて、この記事は、伊藤千尋という記者が担当しており、東欧の革命当時この記者が実際に取材したチェコのプラハのビロード革命勝利記念の 1989年12月14日のチェコ・フィルによる第九のこと、ベルリンの壁撤去を記念するその10日後のバーンスタイン指揮による 『"Freiheit "に寄せて』のベルリンでの東西のオケ、ソリストによる第九(DGから発売された)に何と日本人声楽家が参加していて、その人が、現在上記の鳴門市にある鳴門教育大の教授を務めており、チンタオでの第九「里帰り」公演に参加したというようなことも綴られていて、つながりというものを辿って行くと結構面白い事例があるものだと感じた。
それら中心記事に添えられたエピソードの中に、戦後第九が広がった一因としての川崎市の市民合唱団の活動などが紹介され、そして、不意打ちで驚いたが、私の母校である長野県の高校で約20年前から途切れずに続いている文化祭(学園祭と書かれているが、『日輪祭』という名前の文化祭だった)での全校生徒による第九の合唱のことが紹介されていた。その合唱が始った当時、母校に赴任していた私の大学時代の友人がそのことを伝えてくれたが、私達が在学当時にはまだその伝統は作られておらず、普通のクラス別の合唱コンクールがあっただけだった。この継続も素晴らしいことだが、その後に紹介された郡山市の中学生創立60周年を記念してオーケストラと合唱を自前で組織して「第九」を演奏したというエピソードとその写真の迫力には影が薄いようだった。
今日は、ワルターがコロンビア響(第1から第3楽章はロスフィル主体で、第4楽章のみ別録音でニューヨークフィル主体のウェストミンスター合唱団との共演)を指揮した80歳過ぎのステレオ録音での第九を聴いた。10数年前に「第九」のバスパートを歌ったときに使った楽譜を持ち出してきて、そのパートの声を出してみたが、既に相当音程が怪しくなっていて驚いた。歌詞は忘れていないが、鑑賞では主旋律(通常最も高い音域)を耳にすることが多く、バスパートの音は普段意識しないので、あれだけ歌ったものでも忘れてしまうようだ。ワルターの録音は微温的というイメージがどうしても付きまとうが、高齢の巨匠の指揮による第九の録音は、上記のような珍しい録音ではあり、21世紀の今では少し大時代的ではあるけれど、重心の低い音響的な特徴もあり、大変豊かな気持ちになれる演奏だった。
p.s. 今更ながらの灯台もと暗しというものだが、上記の高校の校歌は、作詞が詩人草野心平、作曲があの小山清茂によるもので、どうして今まで意識しなかったのだろうと思うほどの大物によるものだった。ただ、校歌の歌詞自体は地名羅列的で格調は高いがそれほど詩的なものでもなく、メロディーも普通に西洋音階をつかったもので言われなければ小山清茂作曲とは分からないようなものだった。どのような伝手があり、詩と音楽の大家に校歌の制作が依頼されたのかは知らないが、今更ながら意外なことだった。
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