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2010年1月11日 (月)

世界の歴史第9巻 「大モンゴルの時代」

年末から読み始めた中央公論社版の新しい方の「世界の歴史」だが、第9巻「大モンゴルの時代」の冒頭の「つかみ」の部分にとりわけ感心したことは既にブログに書いたのだが、それは第1部はるかなる大モンゴル帝国(杉山正明著)の冒頭だった。この第1部は本当に面白く、一読の価値は十分にあるものだった。

特に、ヨーロッパ中心、中国中心の世界史観では軽視され続けてきたらしいのだが、大モンゴル帝国によるユーラシアのほとんどの地域の支配が後世に与えた影響は相当なものがあるようだ。よく言われるがロシアがタタールの軛を脱したというのは、このモンゴル帝国の影響をようやく脱したということだが、ロシア大公国自体がモンゴル帝国統治下に成立したことは紛れもない事実だった。エジプトのマルムーク朝については、いつだったかテレビ番組で面白く見たのだが、その出自がキプチャク草原出身の軍人奴隷(マルムーク)を中核としており、出身・言語・習慣ともジョチ(チンギス・カンの長男)ウルス(国)とは兄弟国といっていい面があった、という記述でなるほどと思った。

また、中国史においては、漢族による宋と明を重視し、その前の金とその中間の元を軽視しがちのようだが、元の統治下に、特に儒教が手厚く保護されたという事実や、日元の民間レベルでの交流が盛んであり、現代の日本文化につながる室町文化は元の影響が強いということ、異形の王権(網野善彦)である建武新政の後醍醐天皇の密教への志向がどうやら元の宮廷で重んじられた先日のこのブログでも触れたチベット密教の影響下にあったらしい、など非常に刺激的、示唆的なところが面白いものだった。

しかし、新知識が得られるかと期待していた第2部「モンゴルとイスラーム」(北川誠一著)の方は、第1部の分かりやすさや刺激的な挑発に比べるべくもなく、通読しても五里霧中的な感じしか得られなかった。

要は、現代のユーラシアのイスラム教国の多くがモンゴル帝国の版図の中にあり、当時の影響を今も受けているらしいことが何とか読み取れたが、細部になると新出する人名や地名のオンパレードであり、年代的にも時間順に記述されていない(ように読めた)ようで、ちょうど高校時代の世界史の教科書で「道に迷った」ときのような漠然とした分かりにくさを覚えた。著者の整理の仕方の責任なのか、読み手の予備知識が不足しているのか、とにかく分かりにくいことはなはだしかった。注目していたティムールについても分かりにくい記述だった。個人的な感想ではあるが、現代の中央アジアの把握しがたさに繋がっているのかも知れない。

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