« 2010年1月 | トップページ | 2010年3月 »

2010年2月の28件の記事

2010年2月28日 (日)

日本女子スケート チーム・パシュート(pursuit)種目で銀メダル

ヴァンクーヴァーオリンピックもとうとう期日が残り少なくなり、閉幕間近となった。

日本時間の今朝決勝が行われた「追い抜き」種目で、女子チームが銀メダルを獲得した。

スピードスケート種目としては、日本女子史上初の銀メダルであり、これまでの最高位となった。快挙であり、健闘した選手達にはおめでとうと言いたい。穂積 雅子、小平 奈緒、田畑 真紀の三選手が、予選(対韓国)準決勝(対ポーランド)決勝(対ドイツ)に出場したのだった。(準決勝以降ハイライト gorin.jpは音量設定が最初Maxになっているので注意)。ドイツとアメリカの準決勝は劇的だった。これで勝ったドイツが日本を破ったのだから分からない。パシュートがこれほど面白いとは思わなかった。

ただ、この銀メダルは非常に惜しいもので、たった0.02秒という僅差で金メダルを取り逃したものだというところが惜しまれた。ドイツ 3:02.82、日本 3:02.84。肉眼ではまったく同着に見えたが、写真判定では、日本のラスト選手の方が、ドイツのラストの選手よりも僅か100分の2秒遅かったのだ。

今朝、寝坊してテレビをつけたらちょうどこのパシュートが行われており、最後の1周まで日本が1秒ほどリードしており、長距離銀メダリストを擁するドイツが最後の最後で追い抜いたという結果だった。本当に僅差の勝負だった。

ところで、このオリンピックに対して、石原慎太郎東京都知事の発言を取り上げた朝日新聞の記事がブログなどで結構取り上げられている。

http://www.asahi.com/national/update/0226/TKY201002250536.html?ref=any

石原都知事「銅メダルで狂喜する、こんな馬鹿な国ない」

2010年2月26日7時30分
 「銅(メダル)を取って狂喜する、こんな馬鹿な国はないよ」。東京都の石原慎太郎知事は25日、バンクーバー五輪の日本選手の活躍に対する国内の反応について、報道陣にこう述べた。
 同日あった東京マラソン(28日開催)の関連式典のあいさつでも同五輪に触れ、「国家という重いものを背負わない人間が速く走れるわけがない、高く跳べるわけない。いい成績を出せるわけがない」と話した。

というものだ。これだけ読むと心無い、非論理的な発言だと思う。国家を背負う心構えがあれば金メダルが取れるのか?すべての金メダリストは国家を背負う心構えがあったのか?というような論理的な疑問が普通に浮かぶ。

実際にどういう機会で言ったものか、いくつかニュースソースをたどってみると、都庁のホームページに下記のようなものがあり、2月19日に

http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2010/100219.htm

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年2月19日(金)
15時00分~15時24分

【記者】今、カナダのほうでは、若者たちも、あるいは高齢者も含めて、バンクーバーオリンピックというものが熱気を帯びて、日本人も大活躍を一応していると…。

【知事】してる?してないんじゃないの。

【記者】してます。一応、頑張ってると思います、真剣に。

【知事】あっ、そう。

【記者】はい。本番に向けて、今までやり遂げてきたことを披露しようというような形で、力を出し切れない人もいるかもしれませんけども…。

【知事】なぜ出し切れないのかね。

【記者】本番にちょっと弱かったりなんかすることもあるでしょうけど、精神的なものもあるかもしれませんし。もしかすると、それは日本国内の教育の問題で、せーのでスタートして、手をつないで、ゴールインしようとか、そういうような、いろんなことが加味されてくるんではないかと。そうしたことを考えてみますと、日本国内の教育の中で、ゆとり教育っていうんでしょうか、学校の週五日制とかそういったものが、十数年にわたって、今行われてきて、そろそろ見直すことも考えられるんではないかと。知事もきっと、そういったことをお考えになっておられるんではないかと思うんですが、まず、冒頭、お尋ねしたいと思いまして、質問させていただきました。

【知事】日本勢が不振であることは、誰が見ても確かだと思います。アスリートの世界、競技の世界というのは、横並びっていうのは絶対あり得ないんです。0.01秒の差でも、1位、2位が決まるわけです。それで、おっしゃったみたいに、横並びというものを是とするみたいな風潮というのは論外だと思うけど。選手たちが思ったより高く跳べない、思ったほど速く走れないのは、重いもの背負ってないからなんだよ。国家というものを背負ってないから、結局、高く跳べない、速く走れないと私は思います。(中略)

【記者】先ほど、知事が、日本勢が不振とおっしゃっていたバンクーバーオリンピックなんですが、注目を集めていた男子のフィギュアで、つい先ほど、高橋大輔選手が、男子フィギュア史上、日本で初めてとなるメダルを取得されたんですが…。

【知事】いいじゃないか。そりゃあ一歩一歩。金メダルじゃないんだろ。

【記者】銅メダルでした。

【知事】銅から始めよだな、まさに。別にそれは、私、否定もしませんよ。しかし、快挙かね、それがそれほど。

【記者】初めてのメダルということで。

【知事】結構でしょう。慶賀にたえないとまで言えないけど。どうぞ。

と発言していた。朝日新聞によれば25日に報道陣に同じことを繰り返したようだし、また、「こんな馬鹿な国はないよ」という刺激的な言い回しも25日に行ったもののようだが、残念ながらこれについては、朝日新聞のこの記事でしか確認できなかった。

知事発言がすべてネットにテキスト化されているわけではないので、朝日の記事の日付が間違っているのかどうかは確認できない。もし間違っていないとすれば、オリンピック招致に膨大な税金を費やして敗退した責任者の石原氏は、このような精神論的なスポーツ勝敗論の持論をいろいろな機会に吐露しているもののようだ。それこそ、「都政というものを背負っていないから、オリンピック招致に負けた」のであろう。

なお、26日の定例記者会見(まだ都庁ページではテキスト化されていない)では、

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/localpolicy/362556/

【石原知事会見詳報】

 東京都の石原慎太郎知事は26日の定例会見で、苦戦が続く日本選手の戦いぶりついて、「かわいそうで見てられない」などと感想を述べた。会見詳報は以下の通り。

 --バンクーバー五輪での日本選手の戦いぶりについて

「もうかわいそうで見てられないよ。あれが日本の実力なんだよ」

 --女子フィギュアで注目の浅田真央選手が銀メダルをとりましたが、コメントがあれば

 「ない。残念だから」

と発言している。レームダックの都知事の発言を今更云々しても仕方がないが、心無い発言にスポーツ選手たちは心を痛めないか心配だ。

今回のチーム・パシュートの結果は、気まぐれ天気のようなもの。実力はほぼ一線。たった百分の2秒差で破れたとはいえ、過去最高の銀メダルを獲得した選手たちを誰が責められようか!

2010/03/02追記:

この発言と大同小異のブログ記事を発信した衆院議員ブログに膨大なコメント、トラックバックが付き騒動になっているようだ。その議員はそれに対して屋上屋を架すようなこれまた無残な記事を後追いで付けている。書かれていることがトンチンカンであり、さらにはコメンターに対する政治屋的恫喝のようなものも見られる(これまで自分が反対してきたらしい人権保護法案というものをこの「罵詈雑言」を受けた機会に再考して法的規制をしたい云々)など、収束を図るつもりもないようで、先行きが注目される。(選挙運動で某女性タレントの画像を本人に無断で使用し、その問題でそのタレントが所属事務所を訴えるような騒動の火種になった衆院議員らしい。そのときもブログ大騒動にもなっていたようだ。それを鑑みると、今回の対応も到底まじめなものではなく、場当たり的な「コメント下さい的」な話題づくり愉快犯ではないかとも思えてくる。仮にそうだとすると、政治家と資質に当然のように疑問符が付く。)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

チリ大地震により大津波警報が発令中

チリで日本時間2月27日15時34分頃発生した大地震により1万7千キロメートル離れた日本にの太平洋沿岸に津波が押し寄せるという警報が発令。江戸時代以降歴史に残る大津波を被った東北三陸地方のリアス式海岸では津波が3メートルを超える恐れがあるという大津波警報が発令されており、日本のテレビ局はすべて下記のような警報・注意報をテレビ画面に表示して、警戒を呼びかけている。

到達時刻は、2月28日13時半ごろから15時にかけてとのこと。

気象庁 津波について

http://www.jma.go.jp/jp/tsunami/joho.html

http://tenki.jp/tsunami/

宮城の女川には東北電力の女川原発も稼動しており、心配される。

既にハワイでは第1波が到達しており、1メートルを記録したとのことだ。

03_03_00_20100228093335_2

http://www.jma.go.jp/jp/tsunami/

津波警報・注意報
平成22年 2月28日09時33分 気象庁発表

************** 見出し ***************
大津波・津波の津波警報を発表しました
 東北地方太平洋沿岸、北海道太平洋沿岸、青森県日本海沿岸、関東地方、
 伊豆・小笠原諸島、東海地方、近畿四国太平洋沿岸、岡山県、
 有明・八代海、九州地方東部、鹿児島県、沖縄県地方
これらの沿岸では、直ちに安全な場所へ避難してください
なお、これ以外に津波注意報を発表している沿岸があります

*********** 本文 *************
津波警報を発表した沿岸は次のとおりです
<大津波>
 青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県
<津波>
 北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、
 青森県日本海沿岸、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、
 千葉県内房、東京湾内湾、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、
 静岡県、愛知県外海、伊勢・三河湾、三重県南部、淡路島南部、
 和歌山県、岡山県、徳島県、愛媛県宇和海沿岸、高知県、有明・八代海、
 大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、鹿児島県東部、
 種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部、
 沖縄本島地方、大東島地方、宮古島・八重山地方
これらの沿岸では、直ちに安全な場所へ避難してください

津波注意報を発表した沿岸は次のとおりです
<津波注意>
 北海道日本海沿岸南部、オホーツク海沿岸、陸奥湾、大阪府、
 兵庫県瀬戸内海沿岸、広島県、香川県、愛媛県瀬戸内海沿岸、
 山口県瀬戸内海沿岸、福岡県瀬戸内海沿岸、福岡県日本海沿岸、
 長崎県西方、熊本県天草灘沿岸

*************** 解説 ***************
<大津波の津波警報>
高いところで3m程度以上の津波が予想されますので、厳重に警戒してくだ
さい
<津波の津波警報>
高いところで2m程度の津波が予想されますので、警戒してください
<津波注意報>
高いところで0.5m程度の津波が予想されますので、注意してください

************ 震源要素の速報 *************
[震源、規模]
きのう27日15時34分頃地震がありました
震源地は、南米西部(南緯36.1度、西経72.6度)で、地震の規模(
マグニチュード)は8.6と推定されます

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月27日 (土)

シャーロック・ホームズ 外典2 The Field Bazaar

The Field Bazaar by Sir Arthur Conan Doyle (1896)

「競技場のバザー」

"I Should certainly do it," said Sherlock Holmes.
「僕ならきっとそうするはずだ。」とシャーロック・ホームズは言った。

I started at the interruption, for my companion had been eating his breakfast with his attention entirely centered upon the paper which was propped up by the coffee pot. 
急に声を掛けられて私はドキッとした。私の相棒は朝食を食べながら、コーヒーポットに立て掛けた新聞にすっかり神経を集中していたのだから。

Now I looked across at him to find his eyes fastened upon me with the half-amused, half-questioning expression which he usually assumed when he felt he had made an intellectual point.
食卓の向かい側から彼の視線は私をしっかりと捉えており、半ば楽しみ、半ば問いかけるような表情を浮かべているのが見えた。それは彼が知的な興味が湧いたときにいつも浮かべるものだった。

"Do what?" I asked.
   「君なら何をするんだって?」私は尋ねた。

He smiled as he took his slipper from the mantelpiece and drew from it enough shag tobacco to fill the old clay pipe with which he invariably rounded off his breakfast.
彼はマントルピースからスリッパを取り、そこからタップリと刻み煙草を取り出して古い陶製のパイプに詰め込んで微笑んだ。彼は毎回それで朝食を締めくくるのだった。

"A most characteristic question of yours, Watson," said he.
「一番君らしい質問だね。ワトソン君」と彼が言った。

  "You will not, I am sure, be offended if I say that any reputation for sharpness which I may possess has been entirely gained by the admirable foil which you have made for me.  Have I not heard of debutantes who have insisted upon plainness in their chaperones?  There is a certain analogy."
「こう言っても君はきっと気分を悪くはしないと思うんだが、ぼくが鋭敏だとの評判は、ひとえに君が僕のために演じてくれる賞賛すべき引き立て役のおかげだね。社交界にデビューする淑女がその介添えの女性に一番求めるのは不器量さだと言われているようだね。まったくよく似ているよ。」

Our long companionship in the Baker Street rooms had left us on those easy terms of intimacy when much may be said without offence. And yet I acknowledged that I was nettled at his remark.
このベーカー街の部屋での長い付き合いのおかげで、悪気なしで多くのことを言い合える親密で気安い間柄にはなっていた。そうはいっても、彼の寸評にはイライラさせられたことを認めざるを得ない。

"I may be very obtuse," said I, "but I confess that I am unable to see how you have managed to know that I was... I was..."
「私はとても鈍いかもしれない」と私は言った。「だが、白状するが君がどうやって知ったのか分からないんだよ。私が・・・。私が・・・。」

"Asked to help in the Edinburgh University Bazaar..."
「エディンバラ大学のバザーへの協力を依頼されたことをね」

"Precisely.  The letter has only just come to hand, and I have not spoken to you since."
「まさにその通りだよ。その手紙はたった今手にしたもので、まだ君に話した覚えはないのだが。」

"In spite of that," said Holmes, leaning back in his chair and putting his finger tips together, "I would even venture to suggest that the object of the bazaar is to enlarge the University cricket field."
「それにも関わらず」椅子にもたれ、指先を合わせながらホームズは言った。「僕は敢えて思いつきを口に出してもいいよ。バザーの目的は大学のクリケット競技場の拡張だね。」

I looked at him in such bewilderment that he vibrated with silent laughter.
私がひどくびっくりしてホームズを見たので、彼は静かに笑って身体を振るわせた。

"The fact is, my dear Watson, that you are an excellent subject," said he.  "You are never blase.  You respond instantly to any external stimulus.  Your mental processes may be slow but they are never obscure, and I found during breakfast that you were easier reading than the leader in the Times in front of me."
「実はね、ワトソン君。君はこれ以上ない観察対象なんだよ。」とホームズ。「君は決して無感覚な人間ではない。君は外からの刺激に対して即座に反応する。君の知的な処理スピードは遅いかも知れないが、決して不明瞭ではない。そこで朝食の間、僕の前にあるタイムズ紙の社説よりも君の方が分かりやすい読み物だということが分かったのさ。」

"I should be glad to know how your arrived at your conclusions," said I.
君がどうやって結論に達したかを知ることができればうれしいね。」と私。

"I fear that my good nature in giving explanations has seriously compromised my reputation," said Holmes. 
「僕は人がいいから種明かしをしてしまうのだが、それが僕の名声をひどく傷付けているんじゃないかと思うよ」とホームズ。

"But in this case the train of reasoning is based upon such obvious facts that no credit can be claimed for it.  You entered the room with a thoughtful expression, the expression of a man who is debating some point in his mind.  In your hand you held a solitary letter.  Now last night you retired in the best of spirits, so it was clear that it was this letter in your hand which had caused the change in you."
「だが、この場合、推理の過程は明白な事実に基づいているので、信用されないなんてことはないだろう。君は何か考え事をしている様子で部屋に入ってきた。その表情は心の中である物事を熟慮している人が示すものだった。君は一通の手紙を持って来たね。さて、昨晩君はご機嫌な気分で床についたので、手にしていた手紙が君の気分を変えた原因だということは明白だった。」

"This is obvious."
「誰でも分かっただろうね。」

"It is all obvious when it is explained to you.  I naturally asked myself what the letter could contain which might have this affect upon you.  As you walked you held the flap side of the envelope towards me, and I saw upon it the same shield-shaped device which I have observed upon your old college cricket cap.  It was clear, then, that the request came from Edinburgh University - or from some club connected with the University.  When you reached the table you laid down the letter beside your plate with the address uppermost, and you walked over to look at the framed photograph upon the left of the mantelpiece."
「種明かししてもらえれば何だって分かるものだよ。僕はその手紙のどんな内容が君をそんな気持ちにさせたのだろうかと知らず知らずのうちに自問自答したのさ。君が歩いてくるときに、君は封筒の裏面をこちらに向けていたので、そこに君の大学時代の古いクリケット帽についているのと同じ盾形の紋章があるのが見えたんだ。そこで、その依頼がエディンバラ大学か大学に関係のあるクラブかのどちらからか届いたのは明らかだった。食卓に着くと、君は封書の宛名面を上にして君の皿の隣に置いたんだよ。それから君はマントルピースの左にある枠に入った写真を見るために歩いて行ったんだ。」

It amazed me to see the accuracy with which he had observed my movements. "What next?" I asked.
彼が一瞬の内に正確に私を観察したことを知り驚いた。「それで次は?」私は尋ねた。

"I began by glancing at the address, and I could tell, even at the distance of six feet, that it was an unofficial communication.  This I gathered from the use of the word 'Doctor' upon the address, to which, as a Bachelor of Medicine, you have no legal claim.  I knew that University officials are pedantic in their correct use of titles, and I was thus enabled to say with certainty that your letter was unofficial.  When on your return to the table you turned over your letter and allowed me to perceive that the enclosure was a printed one, the idea of a bazaar first occurred to me.  I had already weighed the possibility of its being a political communication, but this seemed improbable in the present stagnant conditions of politics.
「僕はまずその宛名をチラッと見た。すると2メートルほど離れていても、それが非公式の手紙だということが分かった。これは宛名に『博士』という肩書きが使われていることから僕が推測したのだよ。君は医学士だから法的に『博士』を使うように要求する権利はないからね。僕は大学の事務局というものが厳格に正確な肩書きを使用するものだということを知っている。だから確信をもって君の手紙は私的なものだと言えるんだ。君が食卓に戻ったとき君は手紙をひっくり返した。そのことで封筒の中身が印刷されたものだということが分かった。バザーだという考えが最初に浮かんだ。僕はその前には政治的な通信だという可能性を検討していたのだが、現在の不活発な政治状況ではそれはありえないように思ったのさ。

"When you returned to the table your face still retained its expression and it was evident that your examination of the photograph had not changed the current of your thoughts.  In that case it must itself bear upon the subject in question.  I turned my attention to the photograph, therefore, and saw at once that it consisted of yourself as a member of the Edinburgh University Eleven, with the pavillion and cricket field in the background.  My small experience of cricket clubs has taught me that next to churches and cavalry ensigns they are the most debt-laden things upon earth. 
「君が食卓にもどった時、君はまだ考え事をしている表情のままだったので、君が写真をじっくり見ても君の思考の流れが変っていないのは明らかだった。こういう場合、それ自体が現下の問題に関係があるに違いない。僕はその写真に注意を向けた。それで、すぐにその写真にエディンバラ大学のクリケットチームのメンバーである君自身が写っているのが分かった。それに、観客席とクリケット場が背景にあった。クリケットクラブについての少ない経験によれば、世間では教会と騎兵隊旗手の次にカネに困った団体ということだ。

(訳注:calvalry ensignsがカネに困っているという表現は、当時の英国人にとっては常識的なことだったのだろうか?http://www.amk.ca/quotations/sherlock-holmes/page-11

When upon your return to the table I saw you take out your pencil and draw lines upon the envelope, I was convinced that your were endeavoring to realise some projected improvement which was to be brought about by a bazaar.  Your face still showed some indecision, so that I was able to break in upon you with my advice that you should assist in so good an object."
食卓に戻った君が鉛筆を取り出して封筒に線を引いたのを見たときには、僕は君がバザーによって達成されるはずの改善案を実現しようとしているのを確信したんだ。君の表情にはまだいくらか決めかねているのがうかがわれた。だからこそ、そんなに結構な目的には君は援助すべきだという僕の助言が君の沈思黙考を破れたというわけさ。」

I could not help smiling at the extreme simplicity of his explanation.
私は彼の種明かしがこれ以上なく単純なのを聞き、微笑まざるを得なかった。

"Of course, it was as easy as possible," said I.
「もちろん、そんなことは誰でもできるほど簡単なことだね」と私。

My remark appeared to nettle him.
この私の寸評は彼をいらだたせたようだった。

"I may add," said he, "that the particular help which you have been asked to give was that you should write in their album, and that you have already made up your mind that the present incident will be the subject of your article."
「ついでに言うと」と彼は言った。「君が求められた特別な援助というのは、君にクリケットチームのアルバムに何か寄稿してほしいということだろう。それに、君はたった今ここで起きている出来事を記事のテーマにしようと決めているだろう。」

"But how - - !" I cried.
「でも、どうやって・・・!」と私は叫んだ。

"It is as easy as possible," said he, "and I leave its solution to your own ingenuity.  In the meantime," he added, rasing his paper, "you will excuse me if I return to this very interesting article upon the trees of Cremona, and the exact reasons for the pre-eminence in the manufacture of violins.  It is one of those small outlying problems to which I am sometimes tempted to direct my attention."
「誰でもできる簡単なことさ」と彼。「その解明は君自身の巧妙さに委ねるよ。ところで」と、新聞を取り上げながら彼は付け加えた。「君のお許しを得て、僕はクレモナの木(**)とヴァイオリン製作における卓越性の正確な理由に関するとても興味深いこの記事に戻ることにするよ。これは、僕がときどき注意を払うことのある小さな範囲外の問題の一つさ。」

(**訳注:the trees of Cremona 「クレモナの家系」---- family trees ストラディヴァリ、アマティ、グァルネリなど---- と訳す場合もあるようだが、ここではクレモナのヴァイオリンの名器の秘密が木にあるのではないかという推測をしている記事だと思われる。ニスにその秘密があるという説もあるが、現代の分析でもまだその秘密は確定されていない。)

ちなみに、His Last Bow 最後の挨拶 所収の「ボール箱」にホームズが500ギニー相当のストラディヴァリウスを55シリングで入手したことが書かれている。

仮に貨幣価値の換算をこの表に基づいてみると、 

500ギニー*1.05ポンド/ギニー*24000円/ポンド=12,600,000円 の価値のものを55シリング*1200円/シリング=66,000円で買った!ということになる。19世紀末で千二百六十万円である!当時からストラディヴァリは高価で取引されていたようだ。
-----------
追記: 本記事をご紹介いただいたサイトの皆様へ。
著作権フリーのテキストに基づき、独自翻訳したものですが、可能であれば、トラックバックやコメントを残していただければ幸いです。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2010年2月26日 (金)

浅田真央選手 ヴァンクーヴァーオリンピック 銀メダル

カナダ太平洋岸標準時2月25日(木)午後17時(日本時間2月26日午前10時)から開始されたヴァンクーヴァーオリンピック フィギュアスケート 女子 フリースケーティングで、日本の浅田真央選手は、見事銀メダルを獲得した。安藤美姫選手は5位、鈴木明子選手は8位と、出場3選手全員が入賞するという快挙だった。金メダルは、韓国のキム・ヨナ選手。フリースケーティングの得点は男子並みの高得点150点台であり、本人は130点か140点はいくかと予想しており、コーチのブライアン・オーサーさえも予想していなかったものだったという。銅メダルは、カナダのジョアニー・ロシェット選手が獲得。奇しくも、ショートプログラムの順位とまったく同じ順位になった。

14番滑走の鈴木明子選手の出番が、日本時間の12時から13時のお昼どきで、キム選手、浅田選手らの出番は13時半ごろだったため、生放送では見ることができなかったが、それでも順位などは職場でもひそひそとささやかれ、残念ながら浅田選手が金メダル獲得ならなかったのを知った。

帰宅後、残念だったとの会話をしながら、19時からのテレビ朝日での日本選手と上位選手の映像を見たのだが、冒頭、浅田選手が現地スタジオに登場し、姉の浅田舞選手に迎えられ、感極まって泣き出したのは可哀想で正視に堪えないほどだった。

鈴木明子選手のフリースケーティングは実力を遺憾なく発揮した見事なもので、躍動感のある「ウェストサイドストーリー」の音楽も相俟って、ひきつけられるものだった。この時点では1位。

安藤美姫選手は、エジプト女王クレオパトラのイメージの凝ったコスチュームで登場。トリノの時の憔悴しきった痛々しさはなく、落ち着きと風格が感じられたが、丁寧過ぎる演技だったのか、躍動感やアピール力を欠いていたように思えてしまった。音楽は、エリザベス・テイラー主演の映画音楽だったのだろうか?いかにもエジプト風で面白いものだったのだが、メリハリに欠けていたようにも感じた。ここでは、トップに立った。

そして、キム・ヨナ選手登場。金メダルのジンクスのある青色の衣装。平常心を保った落ち着いた表情。音楽は、ガーシュインのピアノコンチェルトヘ長調。これは、メリハリと変化のある編曲、パッチワークを行っており見事だった。その音楽に合わせて、シームレスな感じの磨きぬかれたスケーティングと振りつけをたっぷりと見せ付けた。ただ、競技を見ているというよりも、エキシビションを見ているかのように感じさせるもので、よい意味での緊張感や選手の必死さが感じられなかったのは、私のイロメガネだろうか?得点が、150点という信じられない高得点。これを次に滑る浅田選手は知ったのだろうか?例のないハイスコアは浅田選手の焦燥感を掻きたて、落ち着きを失わせるには十分過ぎたのかも知れない。

浅田選手が厳しい表情で、リンクに登場。それを見送るタラソワコーチのしかめ面は、キム選手の極端なハイスコアへの不満の表れだったかも知れない。浅田選手はそれまでキム選手の演技に気をとられないように、イアフォンで音楽を聴いていたようだが、痛々しい感じだった。トリプル・アクセル、トリプル・アクセルとダブル・トウ・ループのコンビネーションは見事に決まり幸先のよさを感じさせたが、緊張の糸が張り詰めた感じで、何かのきっかけでそれがプツリと切れそうな危うさが漂ってるように見入っていたところ、後半のジャンプ三連続の一本目で着地後によろめき、その後の別のトリプルトウループジャンプでは、踵側のエッジが氷の溝に取られるという不運もあり、トリプルがシングルとなってしまった。しかし、それにもめげずに迫力のあるストレートラインステップシークエンスを決め、スピンも見事にまとめた。しかし、浅田選手の顔には、ショートプログラムの時のような笑顔はなかった。得点はそれでも、131.72という高得点が出たが、いかんせんキム選手の得点が高すぎた。(gorin.jpの動画

ロシェット選手の演技は、ところどころステップアウトやバランスを崩す場面なども見受けられ、決して総合的な出来はよくはなかったが、一つ一つの技に気迫が感じられるものだった。

最終滑走の米国代表ナガス・ミライ選手は、以前来日したときに全米チャンピオンらしからぬミスを連発する演技をテレビで見ていたのであまり期待していなかったが、キム選手と同じくシームレスな感じの演技ではあるが、よりスポーティーで、フィギュアスケート競技らしい見事な演技で驚かされた。調子の波の大きさを克服できれば、非常に強くなるのではないかと思わせるものがあった。


ヴァンクーヴァーオリンピック公式サイトの得点詳細

スケーター別の審判(Judge)採点明細(Judges Details per Skater) (Judge Panelの数字とGOEの関係式が分かりにくい)

浅田選手は総合で国際大会での自己ベストを更新(ベストは国内で出したもので、2006年12月全日本の71.14+140.62=211.76)。

2 22 Japan ASADA Mao 2 73.78 2 131.72 205.50 Expand
ASADA Mao
Total Score Executed Elements Factored Program Components Deductions
131.72 64.68 67.04 0.00
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Planned Elements Executed Elements Base Value GOE Score
Triple Axel Triple Axel 8.20 0.80 9.00
Triple Axel + Double Toeloop Triple Axel + Double Toeloop 9.50 0.20 9.70
Triple Flip + Double Loop Triple Flip + Double Loop 7.00 0.60 7.60
Flying Sit Spin Flying Sit Spin 4 3.00 0.80 3.80
Spiral Sequence Spiral Sequence 4 3.40 2.60 6.00
Triple Loop Triple Loop 5.50 0.60 6.10
Triple Flip + Double Loop + Double Loop Triple Flip (downgraded) + Double Loop + Double Loop 5.17 -0.48 4.69
Triple Toeloop Single Toeloop 0.44 0.00 0.44
Double Axel Double Axel 3.85 1.00 4.85
Fly. Combination Spin Fly. Combination Spin 4 3.00 0.80 3.80
Straight Line Step Sequence Straight Line Step Sequence 3 3.30 1.10 4.40
Change Foot Combination Spin Change Foot Combination Spin 4 3.50 0.80 4.30
Totals Executed Elements 55.86   64.68
                                              

Music:Bells of Moscow by S. Rachmaninov

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Program Components Unfactored Score Factor
Choreography/Composition 8.45 1.60
Transitions/Linking Footwork 7.85 1.60
Interpretation 8.55 1.60
Performance/Execution 8.50 1.60
Skating Skills 8.55 1.60
Factored Program Components 67.04
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   
Deductions Value
Time Violation 0.00
Music Violation 0.00
Illegal Element 0.00
Costume & Prop Violation 0.00
Fall 0.00
Interruption in Excess 0.00
Total Deductions 0.00

キム選手の世界最高得点。男子並みと言われるのは、次の男子の高橋選手と比べると分かる(男子と女子では、Program Components の Score Factorと呼ばれる係数が女子1.60倍で男子2.0倍と差があるが、その分男子の方が厳しく見られているようだ。)

1 21 Korea KIM Yu-Na 1 78.50 1 150.06 228.56 Expand
KIM Yu-Na
Total Score Executed Elements Factored Program Components Deductions
150.06 78.30 71.76 0.00
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Planned Elements Executed Elements Base Value GOE Score
Triple Lutz + Triple Toeloop Triple Lutz + Triple Toeloop 10.00 2.00 12.00
Triple Flip Triple Flip 5.50 1.80 7.30
Double Axel + Double Toeloop + Double Loop Double Axel + Double Toeloop + Double Loop 6.30 1.40 7.70
Fly. Combination Spin Fly. Combination Spin 4 3.00 0.80 3.80
Spiral Sequence Spiral Sequence 4 3.40 2.00 5.40
Double Axel + Triple Toeloop Double Axel + Triple Toeloop 7.50 2.00 9.50
Triple Salchow Triple Salchow 4.95 1.40 6.35
Triple Lutz Triple Lutz 6.60 2.00 8.60
Straight Line Step Sequence Straight Line Step Sequence 3 3.30 1.00 4.30
Double Axel Double Axel 3.85 1.40 5.25
Flying Sit Spin Flying Sit Spin 4 3.00 0.60 3.60
Change Foot Combination Spin Change Foot Combination Spin 4 3.50 1.00 4.50
Totals Executed Elements 60.90   78.30
                                              

Music:Concerto in F by G. Gershwin

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Program Components Unfactored Score Factor
Choreography/Composition 8.95 1.60
Transitions/Linking Footwork 8.60 1.60
Interpretation 9.10 1.60
Performance/Execution 9.15 1.60
Skating Skills 9.05 1.60
Factored Program Components 71.76
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   
Deductions Value
Time Violation 0.00
Music Violation 0.00
Illegal Element 0.00
Costume & Prop Violation 0.00
Fall 0.00
Interruption in Excess 0.00
Total Deductions 0.00

ちなみに、男子銅メダルの高橋選手のフリースケーティングの得点詳細 150点台

3 22 Japan TAKAHASHI Daisuke 3 90.25 5 156.98 247.23 Expand
TAKAHASHI Daisuke
Total Score Executed Elements Factored Program Components Deductions
156.98 73.48 84.50 -1.00
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Planned Elements Executed Elements Base Value GOE Score
Quad. Toeloop Quad. Toeloop (downgraded) 4.00 -3.00 1.00
Triple Axel + Double Toeloop Triple Axel + Double Toeloop 9.50 1.60 11.10
Triple Loop Triple Loop 5.00 0.40 5.40
Fly. Change Foot Sit Spin Fly. Change Foot Sit Spin 4 3.00 0.40 3.40
Circular Step Sequence Circular Step Sequence 4 3.90 2.20 6.10
Triple Flip + Triple Toeloop Triple Flip + Triple Toeloop (downgraded) 7.48 -1.60 5.88
Triple Salchow Triple Salchow 4.95 1.00 5.95
Triple Axel Triple Axel 9.02 1.80 10.82
Triple Lutz Triple Lutz 6.60 -0.60 6.00
Triple Lutz + Double Toeloop + Double Loop Triple Lutz + Double Toeloop 8.03 -0.60 7.43
Fly. Change Foot Comb. Spin Fly. Change Foot Comb. Spin 3 3.00 0.20 3.20
Straight Line Step Sequence Straight Line Step Sequence 3 3.30 1.20 4.50
Change Foot Combination Spin Change Foot Combination Spin 2 2.50 0.20 2.70
Totals Executed Elements 70.28   73.48
                                              

Music:La Strada by N. Rota

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Program Components Unfactored Score Factor
Choreography/Composition 8.40 2.00
Transitions/Linking Footwork 8.15 2.00
Interpretation 8.65 2.00
Performance/Execution 8.50 2.00
Skating Skills 8.55 2.00
Factored Program Components 84.50
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   
Deductions Value
Time Violation 0.00
Music Violation 0.00
Illegal Element 0.00
Costume & Prop Violation 0.00
Fall 1.00
Interruption in Excess 0.00
Total Deductions -1.00

-----

なお、蛇足だが、この日韓対決とも言うべき女子フィギュアの報道の様子をいろいろと見てきて、以前フジテレビが2008年の韓国でのグランプルファイナルで、浅田選手が久しぶりにキム選手を破って優勝を決めたときの、浅田バッシング、キムの持ち上げの不自然な報道を思い出させるようなことが今回もままあった。

キム応援的なニュアンスを感じるものが、NHK(韓国でのキム応援をわざわざニュースで流したり)でも感じたり、特に毎日新聞(Yahooからニュース記事にリンクされるケースが多い現地報道を目にする機会が多い)ではその傾向が強く感じられたのは、残念だった。韓国が一丸となって「国民の妹」と称するキム選手を応援しているようなのに、こういうときぐらい浅田、安藤、鈴木の自国選手を素直に応援することはできないのだろうかと思わせられた。偏向とまではいわないが、妙なバイアスがかかっているような嫌な感じを受けた。

2010/2/27朝追記:

NHKニュースについて
下記の“ジャンプ完成度の差 影響”は、なるほど一見すると客観報道のようだが、むしろ審判団による日本側への言い訳・エクスキューズを代弁しているかのようだ。

また、日本選手のライヴァルであるキム・ヨナの韓国での盛り上がりをわざわざ伝える意図が不可解。キム・ヨナを韓国が熱狂的に応援するのは当然ではないだろうか?上位選手への応援を取り上げるとするならば、カナダのロシェット選手の地元のことは取り上げてもいないし、SPで3人も上位に入っている自国の日本選手への期待、応援振りはそれほど取り上げていない。特に、安藤、鈴木選手については扱いがおろそかに思えた。

http://www3.nhk.or.jp/news/k10015814901000.html

“ジャンプ完成度の差 影響”
2月24日 18時59分

ショートプログラムで2位だった浅田真央選手は、トップのキム・ヨナ選手と、

4.72ポイントの差がつきましたが、2人のジャンプの完成度の差が点差に大
きく影響した形となりました。

2人の得点のうち、実施した技の難しさを示す「基礎点」は、
トリプルアクセル
=3回転半ジャンプなどを決めた浅田選手が34.4、
3回転を2つ跳ぶ連続
ジャンプなどを成功させたキム選手が34.9と、わずか0.
5ポイントの差で
した。一方、一つ一つの技に与えられる、
完成度や出来栄えを示す「加算点」を
見てみると、
浅田選手は連続ジャンプと3回転ジャンプの加算点が低く、2つの
合計は0.8だったのに対し、
キム選手の連続ジャンプと3回転ジャンプは浅田
選手より跳んだ距離が長く、着氷後の流れもスムーズだったため、
加算点が高
く、2つの合計は3.2でした。ここで、
全体の点差の半分以上となる2.4ポ
イントの差がついていて、
ジャンプの完成度の差が2人の点差に最も影響した形
となりました。

http://www3.nhk.or.jp/news/k10015813181000.html#


韓国 キム選手に喜びの声 2月24日 18時21分

バンクーバーオリンピック、

フィギュアスケートの女子シングル前半のショートプログラムで、韓国のキム・ヨナ選手が世界最高得点を更新してトップに躍り出ると、ソウル市民は大きな喜びを分かち合いました。
http://www3.nhk.or.jp/news/k10015845121000.html 
    韓国 キム選手に金期待する声 2月26日 4時35分  

------

浅田真央選手銀メダル獲得、日本選手全員入賞おめでとう!-バンクーバー五輪(MURMUR別館)の記事 とても詳しく分かり易い記事。私の「エキシビションを見ているようだ」との感想を抱いたキム選手の演技への批評は辛らつだ。記事下部の関連記事も読み応えあり。

浅田真央12歳(小学校6年生)での全日本デビューの動画が同じサイトを通じて見ることができる。滑り、ジャンプし、回転する喜びに溢れている。アナウンサーと解説の八木沼純子さんが、「将来世界を引っ張っていく選手になる」とコメントしているのを耳にすると感慨深いものがある。

-------

結果論だが、『鐘』と呼ばれるラフマニノフの前奏曲第1番は、曲調が重厚、沈鬱過ぎたのかも知れない。音楽で躍動感や開放感のようなものを感じられ好印象を持ったのは、鈴木選手の『ウェストサイドストーリー』、長洲未来選手の『カルメン』(サラサーテの幻想曲がベース?)、キム・ヨナ選手のガーシュイン『ピアノ協奏曲ヘ長調』だった。浅田選手の素直な伸びやかさに壮大さを加えてアピールするためには、以前のストコフスキー編曲で使った『月の光』も良かったのでそこから選ぶとすれば、むしろ『沈める寺』の方が合っていたかも知れないなどと感じた。ただ、これは冒頭が少し静か過ぎるけれど。編曲モノではないオリジナルを使うとすれば、ドビュッシーの「夜想曲」の「祭り」、ラヴェルの『ダフニスとクロエ』の「夜明け」やスペイン狂詩曲の「祭り」などもよいだろうが、そういうえばあまりラヴェルはフィギュアスケートに使われていない?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月24日 (水)

ヴァンクーヴァー女子フィギュアショートプログラム 浅田選手ノーミスの演技で2位につける

前回のトリノオリンピックには2005年7月1日現在で満15歳に達していなければならないというInternationl Skating Union (ISU)の年齢制限のため、2005/2006シーズンのグランプリファイナル優勝という実力世界一にも関らず出場ができなかった浅田真央選手が、2010年のカナダヴァンクーヴァーオリンピックの女子フィギュアのショートプログラムに登場した。

日本勢3人の一番手。日本時間の13時前で平日の昼休みの終了の直前。職場でもワンセグ携帯でテレビ中継を見ている人がいたり、Yahooのテキストライヴで見る人がいたり、注目度は高かった。苦手のショートプログラムをノーミスで滑りきり、73.78とパーソナルベスト75.84(2009/4/16ISU国別対抗)に迫るできで、完璧なスケーティングだったようだ。

帰宅後、TBSのテレビ放送で、ビデオ映像を見たが、最初のトリプルアクセル+ダブルトウループが成功し、乗りに乗ったショートの演技を見せてくれた。オリンピック前の日本での集中練習でリンクのフェンスに垂直に向かっていく方向が最も成功確率が高いことを会得したということをNHKのテレビが報道していたが、今回もその通りの方向で見事オリンピック女子シングルのショートプログラムでのトリプルアクセル成功は初めての快挙だったそうだ。本人も心からの笑顔で、タラソワコーチ、フォレコーチも満足そうな笑顔だった。

(いつまでリンクされるかどうかわからないが、gorin.jpでの動画

テレビ画面を通して見た演技は、浅田選手と次に滑った韓国のキム・ヨナ選手だけ、別次元の高度な戦いをしているという印象だった。

今回のフィギュアの採点システムは、ほぼリアルタイムで公式サイトに反映されるとのことで、下記のサイトを見てみたところ
http://www.vancouver2010.com/olympic-figure-skating/schedule-and-results/

このように詳細が表示されていた。ただし、ISUの公式とは異なり、誰がジャッジしているかというジャッジ情報はすぐには見つからないようだ。(と思ったら Judges Details per Skater があった。審判の順番はランダムとなっているが、縦の列は同じ審判なのだろうか、一番右側の審判が浅田選手に非常に辛い点を付けている。)

キム選手の演技も磨きぬかれたもので、やはりノーミスの出来だったが、ジャッジの採点は、
浅田選手の73.78
キム選手が78.50
でキム選手に4.72リードを許した結果となった。しかし、約5点の差ほどの差があるようには感じられなかった。(キム選手の得点はSPの歴代最高点とのことだ。)

ここで効いてくるのが、Grade Of Execution (GOE) という エレメント(要素)の出来を判断する部分で、相当主観的なものなのだが、これが総じてキム選手の方が高く、
浅田選手7.1
キム選手9.8
2.7点の差となっている。

また、最高難度とされる浅田選手のトリプルアクセルとダブルトウループの基礎点が9.50で、キム選手のトリプルルッツ+トリプルトウループの方が10.00と0.5点高くなっている。これで合計3.2点の差となった。

プログラム・コンポーネンツという昔の芸術点的なこれも主観的要素がタップリの部分でも
浅田選手32.28
キム選手33.80
と1.52の差となっている。これにより合計で4.72の点差が生じたわけだ。

キム選手の後の滑走は、日本の鈴木明子選手で、手をつくシーンもあったがよいできで、シーズンベストを更新61.02。ただ、順位は11位。2007年の世界女王の安藤美姫は最終滑走で、これも悪くなかったが、あまり点が伸びず64.76で4位。直前に家族に不幸があり心配されたカナダのロシェットは頑張り3位で71.36となった。

日本人としては、浅田選手がキム選手の後塵を拝しているのは悔しいが、浅田選手の談話は、いつもSPでは10点ほどの差をキム選手につけられているので、今回の差はそれが縮まってうれしいというようなニュアンスだった。夕食時に家族とテレビ観戦していて、同世代のこのようなライヴァルが存在するというのは、奇跡的なことで、このようなドキドキ、ワクワクするような競い合いを見られるのはめったにないことで、ファンとしても幸せなこともかも知れないというようなことを話した。

日本時間の2月26日(金)10時(現地25日17時)からフリーの演技が開始される。

もちろん、浅田選手が金メダルを獲得して欲しいが、どの選手も悔いのない演技をして欲しいものだ。結果は時の運次第だろう。

14             日本鈴木 明子
15             イタリアカロリナ・コストナー
16             フィンランドラウラ・レピスト
17             ロシアKsenia Makarova
18             グルジアエレーネ・ゲデバニシビリ
19             アメリカレイチェル・フラット
20             日本安藤 美姫
21             韓国金 姸児
22             日本浅田 真央
23             カナダジョアニー・ロシェット
24             アメリカ長洲 未来

詳細点(オリンピック公式サイトより)
浅田真央

2 22 Japan ASADA Mao 73.78 Expand
ASADA Mao
Total Score Executed Elements Factored Program Components Deductions
73.78 41.50 32.28 0.00
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Planned Elements Executed Elements Base Value GOE Score
Triple Axel + Double Toeloop Triple Axel + Double Toeloop 9.50 0.60 10.10
Triple Flip Triple Flip 5.50 0.20 5.70
Layback Spin Layback Spin 4 2.70 0.70 3.40
Spiral Sequence Spiral Sequence 4 3.40 2.00 5.40
Double Axel Double Axel 3.50 1.60 5.10
Flying Sit Spin Flying Sit Spin 4 3.00 0.50 3.50
Straight Line Step Sequence Straight Line Step Sequence 3 3.30 1.00 4.30
Change Foot Combination Spin Change Foot Combination Spin 4 3.50 0.50 4.00
Totals Executed Elements 34.40   41.50
                                              

Music:Waltz Masquerade by A. Katchaturian

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Program Components Unfactored Score Factor
Choreography/Composition 8.10 0.80
Transitions/Linking Footwork 7.40 0.80
Interpretation 8.20 0.80
Performance/Execution 8.40 0.80
Skating Skills 8.25 0.80
Factored Program Components 32.28
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   
Deductions Value
Time Violation 0.00
Music Violation 0.00
Illegal Element 0.00
Costume & Prop Violation 0.00
Fall 0.00
Interruption in Excess 0.00
Total Deductions 0.00

キム・ヨナ

1 23 Korea KIM Yu-Na 78.50 Expand
KIM Yu-Na
Total Score Executed Elements Factored Program Components Deductions
78.50 44.70 33.80 0.00
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Planned Elements Executed Elements Base Value GOE Score
Triple Lutz + Triple Toeloop Triple Lutz + Triple Toeloop 10.00 2.00 12.00
Triple Flip Triple Flip 5.50 1.20 6.70
Layback Spin Layback Spin 4 2.70 0.80 3.50
Spiral Sequence Spiral Sequence 4 3.40 2.00 5.40
Double Axel Double Axel 3.50 1.60 5.10
Flying Sit Spin Flying Sit Spin 4 3.00 0.50 3.50
Straight Line Step Sequence Straight Line Step Sequence 3 3.30 0.70 4.00
Change Foot Combination Spin Change Foot Combination Spin 4 3.50 1.00 4.50
Totals Executed Elements 34.90   44.70
                                              

Music:James Bond Medley

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
Program Components Unfactored Score Factor
Choreography/Composition 8.40 0.80
Transitions/Linking Footwork 7.90 0.80
Interpretation 8.75 0.80
Performance/Execution 8.60 0.80
Skating Skills 8.60 0.80
Factored Program Components 33.80
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   
Deductions Value
Time Violation 0.00
Music Violation 0.00
Illegal Element 0.00
Costume & Prop Violation 0.00
Fall 0.00
Interruption in Excess 0.00
Total Deductions 0.00

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年2月23日 (火)

無党派層と民主党の乖離

民主党は選挙を小沢幹事長に一任するつもりのようだが、長崎県知事選、町田市長選で結果が出たように、そのようなやり方では参院選挙は民主党は大敗するように思う。

昨夏の地すべり的な民主党の勝利は、決して小沢氏が選挙を仕切った民主党への信任ではなく、自民党政治からの脱却を期待したという、どちらかと言えば消去法での得票が多かったのにもかかわらず、これまでの新党を作っては壊しの小沢一郎氏の院政めいた黒幕政治が認められたかのように勘違いし、鳩山内閣は自民党政権よりもひどい迷走を繰り返し、特に鳩山氏の献金問題はまったく決着が付いていないにも関らず、数の多さを頼みに居直り、道義的な責任も取らないという無党派的な一般有権者を、自民党政治よりも政権不信にさせるという状況を作り出している。

まだ結果を要求するのは時期尚早、短気すぎるという意見もあるが、政治は決して結果オーライではなく、その過程も重視されるものだ。数に頼るだけで、顔の見えない議員の多い民主党は、その意味でも責任を果たしていない。結局、一部議員が突出したような公開事業仕分けもポピュリズムに堕してしまったように思う。なぜ単なる党員、議員である彼らにあれだけの権限が与えられたのか、説明責任も果たしていないように思う。

最近の内閣支持率の急落も決してマスコミが作り出したものとは言えないだろう。この上で、自浄機能が働かなければ、民主党の未来はないように思う。金を使った選挙運動ゆえの得票ではないことに思いをいたすべきだ。

と、今晩は少し辛口に考えてみた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月22日 (月)

「6つのナポレオン」の‘idée fixe’

『シャーロックホームズの帰還』を、少し原文テキストを参照しながら読んでいたところ、少年時代から馴染みのあった『6つのナポレオン像』の中に興味深い表現を見つけた。

ベルリオーズ作曲の『幻想交響曲』の独創的な技法、『固定楽想』という言葉 idée fixe が、何とこの短編の中に下記のように登場するのだ。

“There is the condition which the modern French psychologists have called the ‘idée fixe,’ which may be trifling in character, and accompanied by complete sanity in every other way. "THE SIX NAPOLEONS" from "The Return of Sherlock Holmes"

「現代フランスの心理学者が『固定観念』と呼ぶような状態があります。それは性質としては取るに足らないものですが、その他のあらゆる点では完全な正常さが伴っているのです。」というような風ワトソン博士の台詞として、一種の偏執の説明の中に登場する。

よくできたフリーの全訳サイト 「コンプリート・シャーロック・ホームズ」を発見。その中の該当箇所の原文は姉妹サイト「原文で読むシャーロック・ホームズ」のここ。なるほど、conditionは、症状か。だが、idée fixe をそのまま「脅迫症」と訳すのはどうだろうか?)

1904年に発表されたこの『6つのナポレオン』の当時、ドイルが書くようにその頃以前のフランスの心理学者が唱えていたのだろうか。

ベルリオーズの幻想交響曲1830年作曲なので、心理学用語としてそれ以前から用いられていたのか、それともベルリオーズがidée fixe という技法を使った際は一般的な日常語だったのか、もしくは、ベルリオーズのこのidée fixeによって、その後の心理学者たちが一種の偏執、妄想、固執をこの用語で表したのか、その辺の順序や真偽は分からないが、もしかしたら、フランス皇帝「ナポレオン」の胸像を扱ったこの短編で、ドイル得意の音楽知識を披露したのかも知れないなどとも思った。

Pretre_symphonie_fantastique_velrkl 音楽は、ジョルジュ・プレートル指揮ヴィーン交響楽団(Wiener Sinfoniker, Vienna Symphony Orchestra 1985年録音) の幻想交響曲

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2010年2月21日 (日)

『恐怖の谷』Sir Arthur Conan Doyle "The Valley of Fear" を読む

一通り、新潮文庫(延原謙全訳)10冊を揃え、第40作『恐怖の谷』を読んだ。恐らくこの長編を読むのは初めてだ。ホームズシリーズは、イギリスグラナダテレビのテレビドラマシリーズをほぼ全編見たし、講談社の大全も読んだのだが、以前にも書いたように『事件簿』と『恐怖の谷』が落ちていたようだ。

どうもサー・アーサーは、アメリカには偏見を持っていたようで、この長編でもアメリカ人が読めば少し不愉快になるような設定になっているのが、興味深かった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月20日 (土)

ヴァンクーヴァーオリンピック フィギュアシングル 男子 高橋大輔銅メダル

日本時間の昨日2月19日昼(現地2月18日夜)に行われたフィギュアスケートの男子シングルフリースケーティングの結果、高橋大輔選手がこのフィギュアスケートシングルの男子競技としては日本人初のメダルを獲得した。金メダルはアメリカのライサチェク、銀メダルはソルトレーク銀、トリノ金のロシアのプルシェンコだった。

日本から3人出場したが、織田信成選手は7位、小塚崇彦選手は8位に入賞した。

上位入賞が期待されたフランスのブライアン・ジュベールやアメリカのジェレミー・アボットは予想外の下位に沈んだ。また地元カナダのパトリック・チャンは5位に終わった。

高橋は4回転に失敗したが、この4年で身につけた表現力が十分に発揮されて見ごたえのあるスケーティングだった。銅メダルに相応しい風格も漂っていた。

織田は途中まで素晴らしく軽やかなスケーティングだったが、あと1分ほどの持ち時間のところで、ジャンプの着氷時によろけて手をつき、そのまま演技を中止して、審判のところに滑っていき、靴紐が切れたことを申告し、中断が認められリンク外で紐を縛り直して、中断した箇所から演技再開し、最後まで見事に滑りきった。初出場でライサチェクの演技直後ということもあり緊張していたというが、このトラブルがなければ上位を窺えたできだったので惜しい。彼の談話によると、練習時から紐の状態はよくなく切れるかも知れないという懸念はあったが、この靴と紐の微妙な感覚を狂わせたくなかったので敢えてそのまま本番に臨んだのだという。トップ選手ならではの繊細な感覚ゆえのトラブルということを知り、オリンピックの魔物がここにいたかと驚かされた。波乱万丈でペーソス溢れるチャップリンメドレーだった。

小塚は、自身初の4回転に成功し、20歳の初出場で見事入賞した。一回の転倒は惜しかったが、実力を出し切れたのではなかろうか。4年後のロシア黒海沿岸のリゾート地ソチでのオリンピックに期待ができる。さらに体力を付けて望んでもらいたいと思った。

急遽2009年にカムバックしたプルシェンコは、得意の4回転を決めたが、そのほかのジャンプが回転軸が大きくずれるなど流麗さと連続性に欠けた演技で、本調子ではない様子だった。本人は不満そうだったが、銀メダルを取れたのはよしとすべきだろう。

ライサチェクは、細身の長身で長い手足を、黒のコスチュームにくるみ、ダイナミックで美しい演技を披露した。2009年12月の東京でのグランプリファイナルで優勝したときに注目してみたが、その演技がさらに磨かれた感じだった。四回転には挑戦せず、プルシェンコはそこを強く批判していたが、それぞれの強み、個性、そして問題があるとは言え現在の採点方式が必ずしも高難度ジャンプとその挑戦を高く評価しないという思想なので、戦略としてはキム・ヨナ的なものだろうと思った。その点、トリプル・アクセル2本という今の女子では誰もできないスポーツ的フィギュアとしては頂点を極めている浅田真央もこの採点方式では苦戦が予想されるが、何が起こるかわからないオリンピックでもあるので、活躍を期待したい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月19日 (金)

シャーロック・ホームズ 外典1 How Watson Learned the Trick

ドイル自身が、ホームズもののパスティーシュを書いたことがあったという。これはその内の最も短いものの一つということだ。短いので試訳をしてみた。ご笑読を賜りたし。

How Watson Learned the Trick 1924年(リンク先:WIKIPEDIA ワトスンの推理法修行)

ワトソンはどのようにして秘訣を教わったか? (試訳:望 岳人)

Watson had been watching his companion intently ever since he had sat down to the breakfast table. Holmes happened to look up and catch his eye.
ワトソンは、彼のお相手役が朝食のテーブルについてからずっと彼の方を熱心に注視して いた。ホームズはふと目を上げ、そのことに気付いた。


"Well, Watson, what are you thinking about?" he asked.
「おや、ワトソン、君は何を考えているんだい?」ホームズは尋ねた。

"About you."
「君のことさ」

"Me?"
「僕のこと?」

"Yes, Holmes. I was thinking how superficial are these tricks of yours, and how wonderful it is that the public should continue to show interest in them."
「そうさ、ホームズ。僕が考えていたのは、君の秘訣が何とも表面的なもので、 一般の人たちがあいも変らずその秘訣に興味を示しているのは何とも驚くべきことか、ということだよ。」


"I quite agree," said Holmes. "In fact, I have a recollection that I have myself made a similar remark."
「まったくその通りだよ」とホームズ。「実際、僕の記憶では、僕自身が同じ見 解を示しているはずだがね。」


"Your methods," said Watson severely, "are really easily acquired."
「君の方法は」とワトソンは厳しい声で言った。「実に容易に習得できる。」

"No doubt," Holmes answered with a smile. "Perhaps you will yourself give an example of this method of reasoning."
「確かにそうだよ」ホームズは微笑みながら答えた。「ひょっとしたら、君は自分で推理の方法の具体例を見せてくれるんだろうね。」

"With pleasure," said Watson. "I am able to say that you were greatly preoccupied when you got up this morning."
「喜んで」とワトソン。「僕は、君が今朝起床した時に、何かにひどく心を奪わ れていたと言い張ることができるよ。」

"Excellent!" said Holmes. "How could you possibly know that?"
「素晴らしい!」とホームズ。「よくもそんなことが分かったね。

"Because you are usually a very tidy man and yet you have forgotten to shave."
「君はいつもとても几帳面なのに、まだ髭剃りを忘れているじゃないか。」

"Dear me! How very clever!" said Holmes. "I had no idea, Watson, that you were so apt a pupil. Has your eagle eye detected anything more?"
「おやおや!なんて抜け目がないんだい。」とホームズ。「ワトソン、僕は君が そんなに利口な生徒だとは知らなかったよ。君の鷹の目は、もっとほかのことも 見破ったかい?」

"Yes, Holmes. You have a client named Barlow, and you have not been successful with his case."
「その通りだよ、ホームズ。君はバーロウという名前の人物から依頼を受けてい る。そしてその事件はこれまでのところ上手くいっていない。」

"Dear me, how could you know that?"
「おやまあ、そんなことをどうやって知ったんだい?」

"I saw the name outside his envelope. When you opened it you gave a groan and thrust it into your pocket with a frown on your face."
「封書の表書きにその名前が見えたのさ。それを開封したとき、君はうめき声を 漏らし、ポケットに押し込んだね。君の顔は不機嫌そうだった。」

"Admirable! You are indeed observant. Any other points?"
「何と素晴らしい!なるほど君は本当に目ざといよ。そのほかに何かあるかい?」

"I fear, Holmes, that you have taken to financial speculation."
「僕はね、ホームズ。君が投機にふけっているんではないかと危ぶんでいるんだ。」

"How could you tell that, Watson?"
「どうやってそれが分かったんだい、ワトソン」

"You opened the paper, turned to the financial page, and gave a loud exclamation of interest."
「君は新聞を開いて、金融面をめくり、さも重要なことだというように、僕の耳 にも聞こえるほどの嘆き声をあげたんだよ。」

"Well, that is very clever of you, Watson. Any more?"
「なるほど、君はかしこい、ワトソン。まだほかには?」

"Yes, Holmes, you have put on your black coat, instead of your dressing gown, which proves that your are expecting some important visitor at once."
「あるさ、ホームズ。君は黒いコートを着ているね。部屋着ではなくてね。この ことは、誰か重要な人物がすぐにでも訪ねて来るのを君が待ち構えていることを 証明するのさ。」

"Anything more?"
「まだほかにあるかい?」

"I have no doubt that I could find other points, Holmes, but I only give you these few, in order to show you that there are other people in the world who can be as clever as you."
「当然ほかにも重要な点を見つけたよ。でも僕がここまでの指摘で君に示そうと したのは、君と同じくらい賢い人が世の中にはいるということなのさ。」


"And some not so clever," said Holmes. "I admit that they are few, but I am afraid, my dear Watson, that I must count you among them."
「そして、それほど賢くない人もいるということをね。」とホームズ。「それほ ど賢くない人がほとんどいないということを僕は認めるよ。でも僕が心配するの はね、ワトソン君。君がその内の一人だと言わざるを得ないことなのさ。」

"What do you mean, Holmes?"
「どういう意味だい、ホームズ」

"Well, my dear fellow, I fear your deductions have not been so happy as I should have wished."
「それはね、君。君の推理が僕が期待したほど適切ではないように思うからさ。」

"You mean that I was mistaken."
「僕が間違ったと言うんだね。」

"Just a little that way, I fear. Let us take the points in their order: I did not shave because I have sent my razor to be sharpened. I put on my coat because I have, worse luck, an early meeting with my dentist. His name is Barlow, and the letter was to confirm the appointment. The cricket page is beside the financial one, and I turned to it to find if Surrey was holding its own against Kent. But go on, Watson, go on! It 's a very superficial trick, and no doubt you will soon acquire it."

「思うに、ちょっとそのようだね。要点を順番に整理してみよう。僕は髭をそら なかった。それは髭剃りを研ぎに出していたからさ。僕はコートを着た。残念 だったけど、早い時間に歯医者に予約を入れてあるのさ。歯医者の名前がバーロ ウなんだ。あの手紙は予約を確認するためのものだった。クリケットのページは 金融面の隣にあるね。そこを開いてサリーがケントを上回っているかをみようと したのさ。でもね、続けようよ、ワトソン君。このままね。こんなのはまったく 取るに足らない秘訣なのさ。きっとすぐに君も習得できるだろうよ。」

Text:
http://www.sherlockian.net/acd/stories.html

http://www.sherlockian.net/acd/thetrick.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月18日 (木)

正典(The Canon) 60篇 というらしい

講談社版の「シャーロックホームズ大全」を購入してからは、漫然とシャーロック・ホームズシリーズを読んでいたが、改めて調べると、コナン・ドイルの真作を Canon と呼ぶらしい。以下一応リストにまとめてみた。

題名を見ておよそのストーリーを思い出せるのは3分の1以下だろうか。

  1. 《A Study in Scarlet - 深紅色の習作/緋色の研究》 (1887)

  1. 《The Sign of Four - 四の印/四つの署名》(1890)

《The Adventures of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの冒険》(1892)

  1. A Scandal in Bohemia - ボヘミアでの醜聞/ボヘミアの醜聞 (1891年7月)
  2. Red-Headed League - 赤毛連盟/赤髪組合(1891年8月)
  3. A Case Of Identity - 同一性の事件/花婿失踪事件(1891年9月)
  4. The Boscombe Valley Mystery - ボスコム低地の奇怪な事件/ボスコム谷の惨劇(1891年10月)
  5. The Five Orange Pips - 五つのオレンジの種/オレンジの種五つ(1891年11月)
  6. The Man with the Twisted Lip - 唇の捩れた男(1891年12月)
  7. The Adventure of the Blue Carbuncle - 青いルビー/青い紅玉(1892年1月)
  8. The Adventure of the Speckled Band - まだらの紐(1892年2月)
  9. The Adventure of the Engineer's Thumb - 技師の親指(1892年3月)
  10. The Adventure of the Noble Bachelor - 独身の貴族/花嫁失踪事件(1892年4月)
  11. The Adventure of the Beryl Coronet - エメラルドの宝冠/緑柱石の宝冠(1892年5月)
  12. The Adventure of the Copper Beeches - ぶな屋敷/椈屋敷(1892年6月)

《The Memoirs of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの回想/思い出》(1894)

  1. Silver Blaze - 銀炎号/白銀号事件(1892年12月)
  2. The Yellow Face - 黄色い顔(1893年2月)
  3. The Adventure of the Stock-broker's Clerk - 株式仲買店員(1893年3月)
  4. The Adventure of the Gloria Scott - グロリア・スコット号事件(1893年4月)
  5. The Adventure of the Musgrave Ritual - マスグレーヴ家の儀式(1893年5月)
  6. The Adventure of the Reigate Squire - ライゲートの大地主(1893年6月)
  7. The Adventure of the Crooked Man - 背の曲った男(1893年7月)
  8. The Adventure of the Resident Patient - 住人でもある患者/入院患者(1893年8月)
  9. The Adventure of the Greek Interpreter - ギリシャ語通訳(1893年9月)
  10. The Adventure of the Naval Treaty - 海軍条約/海軍条約文書事件(1893年10月・11月)
  11. The Final Problem - 最終問題/最後の事件(1893年12月)
  1. 《The Hound of the Baskervilles - バスカヴィル家の犬》(1901年8月から1902年4月)

《The Return of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの帰還》(1905年)

  1. The Adventure of the Empty House - 空き家の冒険(1903年10月)
  2. The Adventure of the Norwood Builder - ノーウッドの建築業者(1903年11月)
  3. The Adventure of the Dancing Men - 踊る人/踊る人形(1903年12月)
  4. The Adventure of the Solitary Cyclist - ひとりぼっちの自転車乗り/美しき自転車乗り(1904年1月)
  5. The Adventure of the Priory School - プライオリ学校(1904年2月)
  6. The Adventure of Black Peter - ブラック・ピーター/黒ピーター(1904年3月)
  7. The Adventure of Charles Augustus Milverton - チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン/犯人は二人(1904年4月)
  8. The Adventure of the Six Napoleons - 六つのナポレオン(1904年5月)
  9. The Adventure of the Three Students - 三人の学生(1904年6月)
  10. The Adventure of the Golden Pince-Nez - 金縁の鼻眼鏡(1904年7月)
  11. The Adventure of the Missing Three-Quarter - スリー・クォーターの失踪(1904年8月)
  12. The Adventure of the Abbey Grange - アビー屋敷/アベ農園(1904年9月)
  13. The Adventure of the Second Stain - 第二の汚点(1904年12月)
  1. 《The Vally of Fear - 恐怖の谷》(1915年)

《His Last Bow - シャーロック・ホームズ最後の挨拶》(1917年)

  1. The Adventure of Wisteria Lodge - ウィスタリア荘/ウィステリア荘(1908年9月・10月)
  2. The Adventure of the Cardboard Box - ダンボール箱/ボール箱(1893年1月)
  3. The Adventure of the Red Circle - 赤い輪(1911年3月・4月)
  4. The Adventure of the Bruce-Pardington Plans - ブルース・パーディントン設計書/ブルース・パティントン設計書(1908年12月)
  5. The Adventure of the Dying Detective - 瀕死の探偵(1913年12月)
  6. The Disappearance of Lady Francis Carfax - レディー・フランシス・カーファクスの失踪/フランシス・カーファクス姫の失踪(1911年12月)
  7. The Adventure of the Devil's Foot - 悪魔の足(1910年12月)
  8. His Last Bow - 最後の挨拶(1917年9月)

《The Case-Book of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの事件簿》(1927年)

  1. The Adventure of the Illustrious Client - 高名な依頼人(1925年2月・3月)
  2. The Adventure of the Blanched Soldier - 脱色された兵士/白面の兵士(1926年11月)
  3. The Adventure of the Mazarin Stone - マザリンの宝石(1921年10月)
  4. The Adventure of the Three Gables - 三破風館(1926年10月)
  5. The Adventure of the Sussex Vampire - サセックスの吸血鬼(1924年1月)
  6. The Adventure of the Three Garridebs - 三人ガリデブ(1925年1月)
  7. The Problem of Thor Bridge ソア橋の難問/ソア橋(1922年2月・3月)
  8. The Adventure of the Creeping Man - 這う男(1923年3月)
  9. The Adventure of the Lion's Mane - ライオンのたてがみ(1926年12月)
  10. The Adventure of the Veiled Lodger - ヴェールをかけた下宿人/覆面の下宿人(1927年2月)
  11. The Adventure of Shoscombe Old Place - ショスコムの古館/ショスコム荘(1927年4月)
  12. The Adventure of the Retired Colourman - 引退した絵具屋/隠居絵具屋(1927年1月)

サラサーテのリサイタルが出てくる(赤毛組合)のは有名だが、最近読んだものの中に、日本の鎧、聖武天皇と正倉院、父親が帝国劇場のオーケストラの指揮者をしていた、などという興味深いアイテムも登場するのを発見した。読み込むほどに面白い。

ホームズと日本  ニュースダイジェスト

原文 Wikisource

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月17日 (水)

長島銀、加藤銅おめでとう だが、スピードスケートの韓国の驚異的な躍進に驚く

ようやくスピードスケート500mで長島選手が銀、加藤選手が銅メダルを獲得して大変喜ばしいのだが、それにも増して韓国の伏兵のモ・テボムが金メダルになったのには驚き、少しショックを受けてしまったというのが本音だ。

男子5000mでもイ・スンフンがアジア勢としては初めての銀メダルを韓国選手が獲得しているし、何と今日の女子500mでも韓国のイ・サンファ選手が金メダルをとってしまった。ここ数回のオリンピックで韓国のショートトラックスケートの強さが目だっていたが、フル規格の400mリンクを使ったスピードスケートでもここまで強くなっているとは正直驚きだ。

もともと今スーズンの男子500mでは、韓国の二人のイ選手(イ・ギュヒョク、イ・ガンソク)が、1位、2位を占めており、今回も優勝候補だったので、韓国が強くなっていることは聞いてはいたのだが。(この2選手は、今回の整氷器の故障での中断により、下馬評が逆にプレッシャーになったという意見もあるようでメダルには届かなかった。)

こういうときには、大新聞といえどもナショナリズム一色となり、他国の選手についての報道が少なく、なぜ韓国が強いのかについての冷静な分析記事を読むことができない。

朝鮮日報の日本語版がネットで読めるので開いてみたところ、韓国のスピードスケートの強さの秘密がそのまま記事になっていた。モ選手はすっかり英雄で、記事もやたらと多い。ただ、この「秘訣」の記事では、とりたててその秘密が明らかにされているわけではない。低い姿勢はモンゴロイドとして同様な胴長短足体型(別に卑下したり蔑視したりしているわけではなく、コーカソイドに比較しての特徴)の日本選手もとりわけ長島選手や女子の岡崎選手も追求しているのでここに今回の韓国の躍進の秘密があるのではないようだ。

特に短距離では、全体的に欧米のスピードスケートの地位の凋落もあるのかも知れない。旧共産圏も自由化で素質のある選手が集まらないのではないか。スピードスケートは陸上競技などに比べるとマイナーだし、競技会での賞金なども陸上に比べたら桁違いに少ないだろうから。オランダではスケートは日常的なスポーツで国技とのことで、ナガノではオールラウンドで強かった印象があるが、今大会はまだ振るわないようだ。これからどうなのだろうか?アメリカもかつてのエリック・ハイデンのようなスーパースターは不在で、地元カナダも500mの現世界記録保持者でベテランのウォザースプーンも活躍できなかった。

スピードスケートも日本期待の男女1000mや、追い抜きなど競技が目白押しなので、じっくり日本、韓国、中国の東アジア勢の活躍を楽しみながら、スケート強国の勢力図の変化の模様などを眺めてみたいものだ。

なお、今日の夕刊で、ナガノの金メダリスト清水宏保氏(男子500mで観客席に宮部保範氏と並んで観戦していたのがテレビに映った)が、銅メダルの加藤選手に先輩として愛情のある暖かくも厳しい「書簡」を寄せていて、かつての第一人者による苦い良薬として感心した。加藤選手はどう応えるだろうか?

追記:2010/2/22 朝日夕刊の一面に、韓国のスピードスケートの躍進についての解説記事が登場した。88世代というらしいが、1988年韓国の経済発展に勢いがついた頃に生まれた世代がこのスピードスケートの隆盛をになっているらしい。フィギュアのキムヨナは90年生まれ。世界企業となった韓国財閥系が経済的なバックとなっていること、メダリストには報奨金、終身年金、そして男性には兵役が免除されるに等しい待遇が受けられるというのもモチヴェーションをあげる背景になっているようだ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年2月16日 (火)

リヒテル リスト ピアノ・ソナタ ロ短調 1966年 リヴォルノでのライヴ

Liszt_piano_concertos_sonata_richte PHILIPS 446 200-2 という番号のCDを入手。

LPでよく聴いたリヒテルとコンドラシンによる有名なスタジオ録音のリストの2曲のピアノ協奏曲のCDだと思って中古店で廉価で購入したところ、ピアノ・ソナタ ロ短調 も収録されていた。このCDは、Made in USAで、録音年や録音場所などの記載はなく、名曲名盤などのリストにも載っていない録音だったのでネットで調べてみたところ、日本語の情報はヒットせず、海外のサイトには情報が豊富だった。

米アマゾンの情報によると、リストのソナタは、1966年の録音らしい。

また、このmusicweb-international.comの情報 では、このレビュアーのお勧めではあるらしい。

Sviatoslav Richter’s analogue account on Philips Classics Solo 446 200-2 is also one that I admire. Richter provides plenty of weight and passion but rather lacks the poetry of some rival versions. The 1966 live Livorno recording contains general audience noise that might cause annoyance to some.  

このリストのソナタの完全ディスコグラフィー(フランス語で、特殊文字が文字化けしていて読みにくいが)によると

Richter [4]

ø Concert Livourne, 21 novembre 1966 - CD : Philips 454 545-2 / "Solo" 446 200-2 (+ Concertos. La Sonate est notée : 1988) / 438 620-2
10 Rép. n° 83 / 5Y Diap. n° 420

« [Cette version de la Sonate, comme toutes les interprétations Liszt de Richter, laisse pantois en bien des points : le] ton impérieux, le contrôle et l'ampleur dynamique, la recherche du détail (qui va loin, très loin, mais sans aucune maniaquerie) [...] le poids phénoménal du geste pianistique. » (Ch. Huss, Répertoire n° 83)

ということだ。

別のディスコグラフィー(英語)によると、

Sonata in b, S 178  

  • (Carnegie Hall, New York, 1965 )    
    • Private Recording P-101 (LP) [ labelled Carnegie Hall, New York, 18 May 1965 ]    
    • Melodiya M10 47287 (LP, 1986)    
    •  Philips 422137 (CD) [ labelled Budapest, 1960 ]
      (望 岳人注: 1960年ブダペストとCDかブックレットにクレジットされているという意味だろうか?不思議だ)
     
  • (Moscow, 12 October 1965) on Brilliant Classics 92229/3 (CD)  
  • (Aldeburgh, 21 June 1966)    
    • Discocorp RR 454 (LP) [ labelled Budapest, 11 Feb 1958 ]    
    • AS Disc 342 (CD) or 345 (CD) or Historical Performers HP 26 (CD)    
    • Bianco e Nero BN 2433/2 (CD)    
    • Classica d'Oro CDO 3007 (CD 2001)    
    • Legend LGD 145 (CD)    
    • Music & Arts CD-600 (CD)    
    • Music & Arts CD-760 (CD) [ labelled Florence, 1971 ]    
    • Memories HR 4218 (CD)    
    • Nuova Era 013.6340 (CD)    
    • Seven Seas / King Records KICC 2267 (CD)    
     
  • (Livorno, 21 Nov 1966) on Philips 438620 (CD) or 446200 (CD) or 454545 (CD)  
なお、日本語のリヒテルファンの方のサイトによると、このイタリアのリヴォルノの録音については触れられていないが、

1965年5月18日 ニューヨーク カーネギー・ホール リストのピアノ・ソナタを演奏

『私がカーネギー・ホールでリストのソナタを演奏したとき、私たちのアメリカでのマネージャーであるヒューロックはニューヨークの新聞各紙の音楽批評家を ひとりも招待しなかった。それで演奏会は大変な成功だったのに完全に知られないまま終わってしまった。リストの作品を集めたこの録音は、いくつかの録音技 術上の不備が理由で長いこと発売されないでいるが、本当にうまくいった演奏のひとつである。私自身楽しく聴き返す。これはそうそうないこどた。』(「音楽 をめぐる手帳」1981年1月8日 『リヒテル』380㌻)  CD は、 PHILIPS 422 137-2

という録音もあるようで、これはどうも上記の英語版のディスコグラフィーによると、プライベート盤LPの板起こしらしい。リヒテルの自伝にもこの演奏会のことは満足のいくものとして触れられているようだ(「気ままな生活」blog )。

要するに、今回入手したCDのピアノ・ソナタ ロ短調の録音は、1966年11月21日、イタリアのリヴォルノという町でのコンサートのライヴ録音とのことだ。1915年生まれのリヒテル51歳。1960年の西側デビューから丸6年を経過した頃。実際に、聴衆のノイズなども収録されている。録音は、モノーラルという表記はないが、ピアノの音が広がらず中央に定位する。歪感はほとんどない。

さて、肝心の演奏だが、これまで主に親しんできたツィメルマンの精緻で磨きぬかれた演奏・解釈との比較になるが、まずは、ライヴということもあるが、初めのうちは多少ミスタッチめいた音も散見される。

それでも全体の大づかみの把握がしっかりしているのだろう、一つの曲として分裂さを感じさせぬ統一感が表現されている。

低音の強打ではピアノが十分に応えきれないほどであり、また、ロマンチックなメロディーは、耽美的とも言っていいほどの美しいピアノの音色で奏でられる。

こういう錯綜した怪物的な標題楽のような作品を高い集中力をもって飽きさせないところに、リヒテルの懐の深さ、大きさを思い知らされる。

追記:2010/2/17 ツィメルマンの録音を久しぶりに聴いた。少し生硬な感じはするが、細部まで緻密でありながらピアニスティックな効果を最大限に出したすさまじい演奏だと改めて思った。録音も非常に優れている。ただ、凄いのは凄いのだが、リヒテル的にガシっとこの大曲を大づかみにするという点からみると、少しリスナー側の集中力が途切れることがある。クリフォード・カーゾンの録音(ヴィーンのゾフィエンザール録音1963年とのこと)も併せて聴いた(DPM所収)。こちらはツィメルマンほど磨きぬかれた演奏ではないが、ブリテンとのモーツァルトの20番、27番のピアニストとは思えないほどアグレッシヴな部分もある演奏だった。

追記:2010/4/15 リストのピアノソナタの聴き比べを開始されたBlogOutさんが、これと同じCDを入手されたとのことでピアノ協奏曲の方を記事にアップされていたのを拝見し、トラックバックさせてもらい、改めてピアノ協奏曲を聴いている。私のLPは廉価盤だったが、フォンタナではなかったように記憶している。比較的明瞭な音だった。CDはステレオイアフォンで聴くには少しハイあがり的だが細部まで明瞭な凄い録音だと感じた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月15日 (月)

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番、第5番 ムター、カラヤン/BPO

Mozart_violin_concerto_35_mutter_kaMozart
Violin Concerto No.3 in G major, K.216
Violin Concerto No.5 in A major, K.219
Anne-Sophie Mutter(vn) Herbert von Karajan / Berliner Philharmoniker [1978年2月]





まだ14歳の少女の頃の初々しいアンネ・ゾフィー・ムターのデビュー盤。

これまで聴いてきたメニューヒン、シェリング、クレーメルの老巧、誠実、奇矯な解釈にはない、このムターの演奏の率直さによってティーンエージャーのモーツァルトのこれらの若書きの協奏曲の魅力にようやく気がつかされたという感じだ。

生き生きとしたAllegroもいいのだが、第5番の第2楽章、曲調が短調に傾く部分などの陰りのある美しさはこの演奏で初めて気が付いたようなものだ。モダン楽器ならではの美感だろうか。

カラヤンもまだこの頃は、69歳で(指揮者としての)若々しさを失っておらず、小編成のベルリンフィルも少なからず低音は厚いが、決して厚化粧の音響には聞こえず、ムターのイノセントなソロのバックを巧くつとめている。カラヤンの影響下にはあるのだろうが、溌剌とした音楽はムターの個性だろう。

氷雨の降る2010年の2月だが、この録音は32年前の2月のベルリンということだ。さぞ寒かったことだろうが、この音楽の華やぎは青春に相応しい。

参考記事:
2005年11月27日 (日) モーツァルトのヴァイオリン協奏曲集 クレーメル

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月14日 (日)

MS月例パッチでXPの一部に障害

Yahooニュースによると

Microsoft、『Windows XP』に障害発生でパッチを配信停止 2月13日12時11分配信 japan.internet.com

11日午後までに、Microsoft のユーザーフォーラムでは、この話題に関するエントリの数が157個に達し、閲覧回数は1万7000回近くにのぼった。同じ問題に遭遇したユーザーたちが 解決策を求めて殺到したようだ。12日午前までに数字はさらにはね上がり、エントリは297個、閲覧回数は約10万8000回に達した。

Microsoft のセキュリティ コミュニケーションズ担当上級マネージャ、Jerry Bryant 氏は11日午後、『Microsoft Security Response Center』(MSRC) の Blog で次のように述べている。「2月のセキュリティ更新のインストール後、一部ユーザーの間で、コンピュータが再起動する問題が発生している件については、当社もすでに把握している。当社の初期解析によると、この問題はMS10-015 (KB977165) をインストールした後に起こるようだ。しかし、この問題が MS10-015 に特有のものなのか、あるいは別のコンポーネントやサードパーティ製ソフトウェアとの相互運用性の問題なのかは、まだ確認できていない」

という問題が発生しているようだ。

このパソコンでは自動更新で2月10日にこのアップデートが行われているのを確認したが、この問題は発生していない。職場で使用しているPCも同じくWindowsXP SP3で、アップデートが適用されているが、同様に問題はおきていない。

ただ、この問題はひとごとではなく、相当多数のPCに不具合が発生しているようなので、いつの間にか自動更新により問題のあるアップデートが行われてしまえば、このような不具合が発生する可能性があるということだ。早急の対応を望みたいものだ。

日本のマイクロソフトユーザーフォーラムというのを探してこの問題を確認しようと思ったが、該当する問題が見つからなかった。米国だけの問題なのだろうか?

MSの更新プログラムでブルースクリーン? ユーザーから報告相次ぐ 2月12日10時27分配信

追記:2010/02/15 マルウェアが原因かも知れないという推測が出た

| | コメント (0) | トラックバック (0)

旧正月元旦 上村愛子選手惜しくも4位入賞

今日は、旧正月元旦。新暦の昨年2009年は、1月26日。来年2011年では2月3日が旧暦の元旦にあたる。21世紀に入ってから2015年までの旧正月をまとめると次のようになる。早い年で、1月22日。遅い年で2月19日とほぼ一ヶ月の幅はあるが、節分2月3日、立春2月4日を中心とする時期に旧正月はめぐってくるようだ。

旧暦元旦
2001年1月24日 2002年2月12日 2003年2月1日  2004年1月22日 2005年2月9日
2006年1月29日 2007年2月18日 2008年2月7日  2009年1月26日 2010年2月14日
2011年2月3日  2012年1月23日  2013年2月11日2014年1月31日 2015年2月19日

寒さは、この頃がピーク(というか底)なのだが、そろそろ春の気配が漂ってくる。賀春、新春という表現については、この旧正月が似つかわしい。(他の季節は、24節季が毎年ほぼ同じ日となる新暦の方が合理的なのだが。)

ヴァンクーヴァーオリンピックは女子のモーグルの予選決勝が日本時間の日中に行われ、テレビ観戦した。

長野オリンピックの時にはヴォランティアとしてこの競技の裏方を務め、生の上村や里谷を見る機会もあり、それ以来この競技にはそれなりに関心を持っている。

今シーズンの調子はいまいちとは言え、昨シーズンの世界女王であり、その前のシーズンのワールドカップの総合優勝者でもある上村愛子の4回目のオリンピックでの悲願のメダルがなるかという関心で見ていたが、惜しくも4位となった。

大きなミスのない滑りと空中演技だったが、唯一スピードが僅かに上位選手に劣ってしまったようだ。それでもこの12年間の精進は素晴らしいものだったと思う。

ただ、長野7位、ソルトレーク6位、トリノ5位、今大会4位と1位ずつのステップアップというのが素晴らしい反面、運に恵まれなかったのかも知れないという感もある。

追記: 2010/2/15  上村愛子選手のブログを拝見した。

新聞記事で、夫君の皆川賢太郎選手が日本の実家でテレビ応援をして、上村選手の結果に対して「上位選手の順位は、天気のようで誰にも予想できない。そのときそのときで変わる運のようなもの」というような趣旨の感想は、自らがトップを競う選手だからこそ言えるものだと感心した。また、ライヴァルでトリノの覇者で今回惜しくも銀メダルのカナダのジェニファー・ハイルの談話にあったらしいが「愛子のターン技術がこの女子のモーグル競技に刺激を与え、進化させた」という趣旨のコメントもライヴァルアスリートゆえの本音の評価だろうと思った。

|

2010年2月13日 (土)

今日は旧正月の大晦日

今日は、太陰暦の大晦日で、月齢は28.8。明日は朔日で、旧正月の元日(春節)。中国や台湾、香港、韓国、シンガポールなどでは、今日から旧正月休暇で、長いところでは、来週2/21(日)までの長期休暇となる。先月、箱根登山鉄道に乗った際に、おそらく中国人だと思われる若い女性グループと乗り合わせたが、そういえば湯本駅や強羅駅には、「歓迎光臨」の文字の入ったポスターが多かった。景気のよい中国台湾からの観光客を日本の観光地は求めているようだ。明日は日曜日で春節なので、横浜の中華街も春節のお祭りで大盛況のことだろう。

今日は、関東地方はこの冬一番の寒さだったようだ。霧雨のような霙が降っており、空気湿って冷え切り、乾燥した寒さと違い、肌に沁みこむような寒さだった。

テレビでは、午前中からお昼をはさんで、日本との時差17時間遅れのカナダ ヴァンクーヴァーでの冬季オリンピックゲームの開会式を長々と中継していた。先住民を歓迎ホストとして祭り上げており、それなりの工夫や演出が見られたアトラクション、聖火の点火だったが、いかんせん長すぎた。無事終わってほしいと祈りたいところだが、リュージュのコースが高速設定過ぎるという問題があるようで公式練習中のグルジアの選手が気の毒にもコースアウトして死亡するという事故が開会式の前にあり、大変悲しいムードになってしまった。同じコースでスケルトンもボブスレーもある(?)と思われるので、運営委員会には早急な改善を望みたいものだ。

iTunesでのCDコレクションの取り込みを再開して、バッハの協奏曲、管弦楽曲を取り込みながら、『シャーロック・ホームズの思い出』(短編集第2巻)を読み終えた。この巻の最後が、『最後の事件』になるわけだが、ドイルは読者からの要望の多さに負けて、この後もホームズものを書き継いだわけだ。講談社版の大全(鮎川信夫訳)は全60話中47話が納められているが、『事件簿』12話と『恐怖の谷』1話が講談社文庫では未完のため、詳しく調べたわけではないがこれが省かれているのだと思われるので、今度はこれらを読んでみようと思う。

Jsbach_orchesterwerke


フランスの交響曲は、マニャールに取り掛かったが、まだ十分聞き込めていない。

ニュースでは、オリンピックの開幕のほかに、ブラジルのリオのカーニバルが始ったと伝えていた。いつの間にか謝肉祭の季節にもなったわけだ。寒さの底だが、春は遠からじというところだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月12日 (金)

コミック『宇宙兄弟』(小山宙哉) 講談社 単行本現在8巻まで刊行中

現在、多くの日本人宇宙飛行士が誕生し、今も国際宇宙ステーション(ISS)実験棟きぼう で昨年暮れにロシアのソユーズで打ち上げられた野口さんが活躍するなど、このところ日本の宇宙開発が身近なものとなっているが、現在講談社の漫画雑誌 モーニングで連載中の『宇宙兄弟』は、2020年代が舞台の近未来の宇宙開発を描いている。月に基地を建設中であり、火星への人類到達も目前という段階だ。

そのような時代ながら、非常にコミカルに、JAXAとNASAを舞台にした宇宙飛行士の選抜の内情を事細かに描き、とても興味深い。

この小山宙哉という漫画家のことはほとんど知らないが、大した取材力だと思う。

つい先日第8巻を読み終えたが、突然緊迫感が高まってきた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月11日 (木)

フランス系の交響曲を続けて聴いてみようと思う

ドイツ・オーストリア音楽のメインストリームとして発展してきた交響曲だが、隣国フランスでも特に19世紀になってから突発的に現われた天才エクトール・ベルリオーズを嚆矢として、その後ベルギー生まれのセザール・フランク、カミーユ・サンサーンス等によって「フランス楽派」的な交響曲が生み出されてきた。

ベルリオーズは別として、ゲルマン的な論理性(弁証法的な正・反・合を体現するようなソナタ形式)に反発するのではなくそれを取り入れ、ベートーヴェンにその淵源があり、リストによって開発された循環形式を用いていることがフランス近代の交響曲の特徴だろうか?

先週の金曜日(2月5日)の夜放送された大野和士指揮国立リヨン歌劇場管弦楽団の来日公演(2009年11月9日 東京オペラシティ)で、一曲目に演奏されたショーソンの交響曲ニ短調を聴いて、あれこんな曲だったかと思ったほどなので、以前からまとめてしっかり聴いてみようと思っていたフランス系の交響曲を聴いて感想を綴ってみようと思う。

まずは、リストアップだが、今iTunesに取り込んであるものを一覧にしてみる。

ベルリオーズとフランク、サンサーンスを除けば、それほど他の作曲家の交響曲のCDがあるわけではないので、スイス系だがオネゲルも含めることにした。

このリストのうち、既に聴いてこのブログ記事にアップしたものもあるが、一応作曲家の生年順に、ぼちぼちと間歇的に感想を綴ってみようと思う。

◎Hector Berlioz (1803-1869)
   Symphonie Fantastique, Op.14
     Pierre Boulez/London Symphony Orchestra
     Herbert von Karajan / Berlin Philharmonic Orchestra
     Pierre Monteux / San Francisco Symphony Orchestra
      Charles Munch / Orchestre de Paris, Société des Concerts du Conservatoire
           André Cluytens / The Philharmonia Orchestra
           Georges Prètre / Wiener Symphoniker

◎César Franck (1822-90)
  Symphony in D minor
   Mariss Jansons / Royal Concertgebouw Orchestra, Amsterdam, 2004 Live
     Eugene Ormandy / Philadelphia Orchestra
     Jean Martinon / Orchestre National de L.O.R.T.F.

◎Camille Saint-Saëns (1835-1921)
  Symphony No.3 in C minor, Op.78 "Organ Symphony"
   Jean Martinon / Orchestre National de L.O.R.T.F., Marie-Claire Alain(organ)
   Chung Myung-Whun / Royal Concertgebouw Orchestra, Amsterdam, 2005 Live
      Daniel Barenboim / Chicago Symphony Orchestra, Gaston Litaize (Organ de Cathédrale Notre-Dame de Chartres)
     Charles Dutoit / Orchestre Symphonique de Montréal, Peter Hurford(org)
     Seiji Ozawa / Orchestre National de France, Philippe Lefevre(organ)

◎Georges Bizet (1838-1875)
  Symphony No. in C major
     Seiji Ozawa / Orchestre National de France
     Bernard Haitink / Royal Concertgebouw Orchestra, Amsterdam, 2000 Live

◎Paul Marie Théodore Vincent d'Indy (1851-1931)
  Symphonie sur un chant montagnard français (Symphonie cévenole), Op.25
    Serge Baudo / Orchestre de Paris, Aldo Ciccolini(p)別記事

 

◎Ernest Chausson (1855-99)
    Symphonie en si bémol majeur op. 20
   Ernest Ansermet / L'Orchestre de la Suisse Romande

◎Albéric Magnard (1865-1914) 
  Symphonie no. 3 en si bémol mineur op. 11 
   Ernest Ansermet / L'Orchestre de la Suisse Romande 1968

◎Albert Roussel (1869-1937) 
  Symphony No. 3 in G minor
  Symphony No. 4 in A major
   Ernest Ansermet / L'Orchestre de la Suisse Romande 1956(別記事

◎Arthur Honegger (1892-1955)
   Symphony  No.1
       Symphony  No.2
       Symphony  No.3 «Liturgical»(典礼風)
       Symphony  No.4 《Deliciae Basiliensis》(バーゼルの喜び)
       Symphony  No.5 《Di tre re》 (三つのレ)
    Serge Baudo / Czech Philharmonic Orchestra

       Symphony  No.3 «Liturgical»(典礼風)
       Symphony  No.4 《Deliciae Basiliensis》(バーゼルの喜び)
    Ernest Ansermet / L'Orchestre de la Suisse Romande

◎Olivier Messiaen(1908-1992)
  Turangalîla Symphony
   Seiji Ozawa / Tronto Symphony Orchestra;Yvonne Loriod(p);Jeanne Loriod(Ondes Martenot)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月10日 (水)

メタボ 腹囲基準根拠がゆらいでいるらしい

昨晩付けのニュースメタボ健診:腹囲基準根拠ゆらぐ 3万人データ解析で 2010年2月9日 21時9分 更新:2月9日 21時22分 毎日新聞  を読んで、2009年3月 2日 (月) メタボリックシンドロームの基準は適正なのだろうか? という記事を昨年の3月に書いたのを思い出した。ようやく後追いの記事が一年越しで付いたという感じだ。

("あらたにす"を見ると朝日新聞は今回はこの件をまったく報道していないようだ。ただ、朝日コムでは、2009年10月に やせてても「メタボ」 国際組織が新たな基準という解説記事が載っている。)

実際、自分で腹囲をメタボ基準以上だったのを基準以下に減らしてみて、成人病の基本的な項目、血圧、コレステロール・脂肪、肝機能などの数値が軒並み「正常値」に入ったので、減量することにはそれなりの効果があったことは認めるにはやぶさかではないが、腹囲が大きくても、小さくても、それよりも上記のような検査項目の異常値を計測する方が、成人病、生活習慣病のリスクを判定する指標としてはよほど有用なのではあるまいか?腹囲だけが一人歩きしたのはやはりおかしかったと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月 9日 (火)

ミステリーを幾冊か

日曜日の寒風の中を出かけたのが原因か、熱が出て月曜日と今日仕事を休んでしまった。今日は熱も落ち着いてきたので、本棚の奥からミステリーを何冊か取り出して読んだ。

天藤真の『大誘拐』(創元推理文庫)。1978年に書き下ろし刊行されたもので、第32回日本推理作家協会賞を受賞しており、傑作ミステリーとして評価の高いものだ。ちょうどこのように風邪をひいて休んでいるときに読むことが多いような気がする。文句なく面白いのだが、この中に登場する財産や利息、税金に関する計算が正しいものなのか、どこかで検証は行われているのだろうか?また、あとがきに書かれているのだが、この2年前の1976年に公開された映画『喜劇 大誘拐』(前田陽一監督 森田健作など)が老婆を誘拐した犯人達が老婆に操られるという設定を持っているということで、その点から盗作問題があったというすっきりしない余談もあるのが指のササクレのように気になる。

新潮文庫版の『シャーロック・ホームズの冒険』(延原謙訳 この文庫版ではThe Adventure of the Engineer's Thumb - 技師の親指 と The Adventure of the Beryl Coronet - 緑柱石の宝冠は、別巻に収録)も読んでいるところだ。延原謙氏の翻訳はところどころ古い言葉遣いがでてきて少しとまどうが、概ね躓くことなく読み進められる。今回久しぶりに読み直して面白かったのだが、ワトスンが関らなかった興味深い事件(「ボヘミアの醜聞」で言及されているウクライナのオデッサでのトレポフ殺人事件、トリンコマリーのアトキンスン兄弟の奇怪きわまる惨劇、オランダ王室関係の難しい使命など)、「オレンジの種五つ」で言及されている1887年の「パラドールの部屋」事件、「素人乞食協会」事件、三檣のイギリス帆船ソフィ・アンダースン号の喪失に関する事件、アファ島におけるグライス・ピータースン一家の怪奇な事件、カンバウェル区の毒殺事件といった、「ワトスン博士の手記」(ホームズシリーズ全60篇)に含まれていないと思われる事件が多数述べられているところだ。(まとめサイトがあった。パスティーシュpastiche もいくつか出ているようだ。)

この他には、アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』(清水俊二訳、ハヤカワ文庫)も取り出してみたが今回は未読。

音楽は、ベネディッティ=ミケランジェリによるドビュッシーの前奏曲集第2巻を聴いた。

ミシェル・ベロフ(EMI盤)、サンソン・フランソワのCDも聴き、特にベロフ盤は何度も耳にしたのだが、この第2巻がこれほど印象に強く、面白く感じられたのは、このミケランジェリ盤が初めてだ。淡い中間色がほとんどない、原色に近い明瞭なピアノにより演奏されるドビュッシーはユニークだが、面白い。

Debussy_prelude_2_michelangeli

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月 7日 (日)

東京都写真美術館の木村伊兵衛展

木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン - 東洋と西洋のまなざし - は、今日までが会期だったので、貰ってあったチケットを無駄にするのもということで家族で出かけたところ、大変な混雑で、私と次男は人の頭越しにざっと見ただけで外に出て、4階の図書館で時間をつぶしたほどだった。どうしてあれほど込んでいたのか、驚いた。人が少なければゆっくり見ることもできたのだろうが。それでも妻と長男は人込みにもめげずにゆっくり鑑賞したようだった。川口松太郎や上村松園などの著名人の肖像写真は面白かったらしいが、普通の美術とは違い、鑑賞するのに少し難しさというか抵抗がある。写真美術というのはどうも馴染みがない。この東京都の美術館は様々な企画展をやっているようで、3階まである展示場がそれぞれ別の企画展でそれぞれが別の入場券を必要とするというスタイルをとっていて、常設展示はないようだったのが、残念だった。

今日は、大変風が冷たく強い日で、山手線の原宿渋谷間で飛来物が架線にまとわり付き、電車が20分ほど遅れたりもした。昨日から今日にかけては特に新潟では地吹雪が荒れ狂うほどの荒天だったようで、このようなときには関東も空っ風が冷たく強くなる。

恵比寿ガーデンプレイスは、10年ほど前に一度行ってみたことがあったが、相変わらずこぎれいな新開発の街並みだった。ただ、寒風の影響で外を散策する人は少なかった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月 6日 (土)

エコカー プリウスの「ブレーキ抜け」のこと

今日の朝刊の1面にトヨタ社長の陳謝の記事が大きく掲載されていた。品質問題は「危機的な状況」との見出しだ。

我が家のクルマはプリウスではないが、トヨタ製(一部ダイハツと言うことだが)のコンパクトカーに乗っているので、トヨタの品質問題はひとごとではない。丸3年前に購入して昨年の後半に1回目の車検も終わり、これまで大きな不具合はなかったが、その間に2回も軽度のリコールがあった。トヨタの副社長の記者会見で耳についた「フィーリング」的には、このコンパクトカーはCVT(無段階変速)車ということもあるのだろうが、プリウス同様やはりブレーキ時に完全停止する直前に少し加速するような感覚を覚えることがあった。ただ、この違和感は前のABSもついていない古い別のメーカーの車からの乗り換え時直後に気になることがあったもので、数ヵ月後には馴れもあって消える程度の軽いものだった。(Vitzのブレーキの癖はこの価格コムのスレッドで議論されているのと同じもの)

さて、現在(軽自動車以外では)日本で最も売れている乗用車であるプリウスの「ブレーキ抜け」といわれる不具合に関しては、このところのアメリカ運輸省長官?のトヨタ車の急加速、アクセルペダルへの痛烈なクレームや、アメリカでのプリウスのブレーキ関連のリコールに始まり、とうとう日本でも今朝の朝刊の事態にまで立ち至ったので、本当のところ「出る杭は打たれる」式のマスヒステリー的なバッシング(アメリカのマッカーシズムなどその典型例)なのか、それともクルマ自体に根本的な原因がある不具合なのか調べたくて、ネット情報を見ていたところ、自動車評論家として私も名前を知っている人のブログに行き着いた。

プリウス ブレーキ抜け:国沢光宏 という記事だ。日時が表示されていないが、コメント投稿欄の末尾を見ると2010年1月12日ということが分かり、コメントを読みすすめていくと、どうもマスコミが騒ぎ出す相当以前にプリウスユーザーの間ではブレーキの抜けについては話題になっていたらしい。

ここに投稿されている多くのユーザー報告は、マスコミ報道では得られないプリウスオーナーであるドライバーの真実味のある書き込みがほとんどで、この問題が旧プリウス時代から体感されていたのがよく分かった。

こちらのブログは、昨年末にプリウスオーナーになった方のブログで、ブレーキ抜けの体験(1/4)とディーラーへの連絡、ディーラーの対応について冷静に書かれている。

ブラックアイスバーンなどの滑り易い路面での低速走行時の緩いブレーキで、ブレーキ抜けが発生しやすいようだ。価格comでも2009/12/8付けでオーナーによるブレーキ抜けの報告があり、延々と議論が続いている。

なお、欧米で発生しているというアクセルペダル問題は、日本製では問題がないという発表なのだが、どうなのだろう。

追記2010/02/12: トヨタの社長による「リコール会見」とブレーキ問題の詳しい解説記事がこちらに載っていた(Car Watch)。この記事(組込みソフトウェア工房)を検索で見つけてたどりついたもの。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年2月 5日 (金)

テレビドラマ『剣客商売』を見た

文庫本で愛読してきた池波正太郎の『剣客商売』のテレビドラマ版を今晩初めて見ることができた。飄々とした江戸情緒に生死の境を綱渡りするような剣客の生活が綯い交ぜになった原作の味わいを映像化するのは結構難しいものだと感じた。

芸達者な大物俳優達の競演で見ごたえはあった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月 4日 (木)

リスト ピアノ協奏曲第1番 ブレンデル、ハイティンク/LPO(1972)

Brahms_liszt_pianocon_1_brendel

Franz Liszt (1811-1886)
Piano Conderto No. 1 in E flat major
   - 1. Allegro maestoso 5:36
   - 2. Quasi adagio - Allegretto vivace - Allegro animato 8:37
   - 3. Allegro marziale animato 4:08

Alfred Brendel(piano)  Bernard Haitink / London Philharmonic orchestra [1972]

CDをiTunesに取り込んだままほとんど聴くことのなかったリストのピアノ協奏曲第1番を久しぶりに聴いた。若い頃のブレンデルとハイティンクの共演盤。

さて、この曲の入門は、リヒテルとコンドラシン指揮のロンドン響(フィリップス)という重量級の録音のLPで、豪快さと精緻さを兼ね備えたリストを堪能したので、それに続いて音盤を求めることはなかったが、昨年初めにブレンデルのこの録音を購入してiTunesに入れていたのをすっかり忘れていた。 これは、企画盤で、アバド/BPOとのブラームスの2番とカップリングされたもの。

今晩改めて聴いてみて、結構楽しめた。

すでに40年近く前の録音だが、ステレオイアフォンでも聞き苦しくない。少し音が丸みを帯びているのはフィリップス録音の特徴なのかも知れない。歪み感や音割れ、ビリツキなどはほとんどない。

リストの曲は、ケレンが必要な要素だという先入観があるが、ブレンデルは若い頃からリスト弾きでありながら、決してケレン味を出さず、誠実に音楽と向き合っている感じがする。この交響詩風のラプソディックな音楽が、少し品格がアップしたように聞こえる。ハイティンクはもう一つの常任?だったロンドン・フィルを指揮している。こちらもリストにしては上品だが、ブレンデルともども少々引っ込み思案的なリストに聞こえる部分もある。

DPMには、ジャン・イヴ・ティボーデのピアノとデュトア指揮モントリオール交響楽団によるリストのピアノ協奏曲2曲他が収録されている。このブレンデルに比べるとティボーデはさらに大人しいが、デュトア指揮のオーケストラ部は聞き応えがある。

品格と言えば、今日大相撲の横綱朝青龍(あさしょうりゅう)が引退した。幕内優勝25回を数えるモンゴル出身の力士だが、血の気が多すぎたのか、一般人への暴力の疑いという粗暴な行為がたたって結局引退に追い込まれた。モンゴル出身の力士の先駆的な存在だたようだ。大相撲中継を見ることもなくなって久しいが、それでもライバル横綱で同じモンゴル出身の白鳳との勝負は見ごたえがあった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月 3日 (水)

節分に鰯の頭を柊と大豆の束に刺して玄関に飾る

今日2月3日は節分。毎年、福豆をこの日に買って、家の内外で鬼は外、福は内と唱えて豆まきをした後に、子どもは歳の数、大人は適当に福豆を食すことにしている。

今年は帰宅時にスーパーマーケットに立ち寄ったところ、鰯の丸干しや目刺にも節分シールが貼ってあり、柊と大豆の収穫後の豆がらの束ねたものを売っていたので購入し、帰宅後目刺を焼いて頭を取り、大豆の枝に刺して、玄関の外に飾った。鰯の強烈な臭気とヒイラギのとげは鬼が嫌うものだという。豆がらについては不詳。

その後、恵方巻きを食べ、節分行事を終えた。明日は、立春。今週は特に寒さが厳しいが、次第に光の勢いが増してきたように感じる。光の春というものだろうか。

音楽は、グールドの演奏するベートーヴェンの交響曲第5番。

Gould_beethoven_sym5_3 Beethoven Symphony No.5 (Transcribed for Piano by Franz Liszt) Gould

Recorded: Columbia 30th Street Studio, New York USA, November 22, December 2, 7, 28 & 29 1967, January 8 1968

I 6:01(提示部リピートなし), II 14:33, III 7:01, IV 11:35

ジャケットのシルエットは、上からグールド、ベートーヴェン、リストのようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月 2日 (火)

ミケランジェリとミケランジェロ

昨夜の11時頃には雪は遠くが見えなくなるほど降り募り、この分では相当積もるかと思いながら、ベネディッティ=ミケランジェリ Arturo Benedetti Michelangeliのピアノによるドビュッシーの前奏曲集第1巻『雪の上の足跡』 Des pas sur la neige を聞き眠りについた。

今朝起きると、夜中から明け方はそれほど気温が下がらなかったようで、積雪は1センチにも満たないほどだった。それでも歩道にはシャーベット状の雪が残り歩きにくかった。ニュースによれば滑って転んで怪我をした人も相当いたらしく、私が歩いている前後でも転びそうになっている人がいた。

ところで、ミケランジェリだが、姓は二重姓で、ベネディッティとミケランジェリの両方が苗字になるとのことだ。そういえば、イタリアルネサンス美術の巨匠ミケランジェロという名前は、ファーストネームのはずだが、と思い出してみると、彼の苗字はブゥオナローティだった(より正確には、 Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni というらしい)。

ここで、イタリア男性の名前と姓の法則的なことが少し分かったような気がした。イタリア語の語尾が O で終わるのは男性名詞だったはずだが、男性名は Oで終わるものが多いようだ。そして、どうも姓(苗字)の方は、複数名詞を表す語尾の I で終わるものが多いようだということに気が付いた。トスカニーニ、ジュリーニ、ムーティ、シノーポリ、カンテルリ、ポリーニなどなど。

よく、ガリレオ・ガリレイ Galileo Galilei という名前のどちらが、名前か苗字か分からなくなることがあるが、Iで終わる形の苗字が多いということ、Oで終わる男性名が多いというこの「法則」で、名前がどちらかが分かる。

なお、イタリアでは、偉大な人物は姓よりも名前で呼ぶことが多いということで、ガリレオという名前が通り名になっているようだ。他にもレオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ、マザッチオ(しかし、サンドロ・ボッティチェリやニコロ・マキアベリなどは苗字で呼ばれる)など。

今晩の音楽は、ベネディッティ・ミケランジェリとカルロ・マリア・ジュリーニのベートーヴェンの第三ピアノ協奏曲。

Beethoven_pconcerto13_michelangeli_

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月 1日 (月)

この冬初めての本格的な雪

今日から2月。ここ南関東では、今日は午後から本降りの雨になったが、次第に気温が低下するにつれて雨から霙となり、夜の8時頃からははっきりと雪に変わって、今は降りしきっている。まだ気温が高いせいか、地面に落ちては消えているが、明日の朝に掛けて気温が下がると少し積もるかも知れないほどだ。

この雪は、太平洋岸を進んできた低気圧によるもので、生まれ故郷の長野県では県の中部から南部に掛けてふるこのような雪を「かみゆき(上雪)」と呼び習わしている。郡の名前に、上水内郡、下水内郡、上高井郡、下高井郡、上伊那郡、下伊那郡(諏訪にも下諏訪町、上諏訪がある)というように、都により近い方を上、より遠い方を下と呼ぶようで、このかみゆきは、普段豪雪の降る長野県北部に降る雪ではなく、上の方面、比較的南の方面に多く雪が降ることを言うらしい。以前にもこのことは書いたが、今晩の雪などは典型的なかみゆきだろう。

かみゆきが降ると春が近づいていることにもなる。そういうえば、2月3日は節分あり、翌2月4日は春分。もう春も近い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年1月 | トップページ | 2010年3月 »