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2010年4月17日 (土)

ストラヴィンスキー『春の祭典』 アバド指揮ロンドン響 (1975)

Stravinsky_abbado_lso

東日本一帯に冷たい雨、みぞれ、雪を降らせた寒気もようやく峠を越したようで、南関東では、今日は昼過ぎから久し振りの晴れ間が広がってきて、青空が見えている。まだ空気は冷たいが、陽光は気分を明るくさせてくれる。

凍てついたロシアの大地を溶かし、春の到来を寿ぐ、古代(原始)儀式を主題にしたと言われる(もっと猥雑な解釈もあるようだが)、『春の祭典』を久し振りに聞いてみたくなった。

2008年7月19日 (土)  小澤征爾のEMI録音選集 BOX SEIJI OZAWA conducts・・・ で、pfaelzerweinさんと 小澤征爾指揮シカゴ響の『春の祭典』(未聴)の話題をきっかけに、コメントで意見を交換したが、そのときにpfaelzerweinさんの愛聴盤として挙がったアバド指揮ロンドン響の1975年録音が少し前に手に入った。

『春の祭典』は、ディズニー映画『ファンタジア』の中の一つのエピソード、「地球の誕生から生命の誕生」を描いたアニメーションで使われていたため、子どもたちが幼い頃から親しみ、特に長男が小学生の時に好んでいた曲で、その関係もありいつの間にかCDも数種類集まり、以前、いくつかレビューをしたためたこともあった。

さて、このCDはは、アバドとロンドン交響楽団によるストラヴィンスキーを集めたもので、過去に記事にした『プルチネルラ』と『火の鳥』(組曲)も収録され、このほかに『春の祭典』『カルタ遊び』『ペトルーシカ』が収録された大変お得なもの(「ペトルーシカ」については少し記事をアップした)。

『春の祭典』は1975年の録音であり、その年代は自分としては若い頃で、同時代の録音として古さを感じることはないのだが、すでに35年も前のものになるわけだ。

下記に手持ちのCDやLPを並べてみたが、1970年代から1980年代にかけては、1969年のブーレーズの画期的・エポックメーキングな録音に続いて多くの指揮者、楽団による録音が続いた時代だった。このほかにもメータとロスアンゼルスフィル、マゼールとヴィーンフィルなど注目すべき録音もある。

ブログの聴き比べなどでは、LPの方が切れ込みの鋭い音がしていたという意見もあるようだが、このCDの音でも自分にとっては十分刺激的だ。

演奏は一貫して前に流れようとする流れと妥協しないリズム的な鋭敏さがある。それは、細部まで非常に緻密に精確に演奏されていることでもたらされているものだ。

同じ1970年代にバーンスタインが同じロンドン響と録音していて、下記にもその感想記事のリンクを張っておいたが、それとはまったく違う楽団が演奏しているように聞こえる。バーンスタインのものは体当たり的な興奮を再現する意図のものだったのかも知れないが、いかんせん録音の仕上げが雑だったのが惜しい。

その点、このアバドのものはティンパニもブラスも演奏が研ぎ澄まされ、第2部冒頭の微妙繊細なオーケストレーションの妙も面白く聞くことができ、複雑なリズムもあいまいさを残さずに的確に処理されている。非常にダイナミックではあるのだが、アバド的などこか覚醒して、冷静な雰囲気も漂わせるスリムな演奏でもある。そのような矛盾した側面が統合されて、このような鋭敏で整った演奏が生まれたのだろう。

ただ、ブーレーズと耳タコのコリン・デイヴィスと比べると少しスマート過ぎるきらいを感じる。

ブーレーズのは先駆的に分析的でありながら、異様な迫力が感じられるものだ。もちろんブーレーズの深い読みと鋭い耳とバトンテクニックがあってのことだが、これにはセルが鍛え上げたクリーヴランド管の実力があっての成果だと思う。

コリン・デイヴィスとアムステルダムの録音は、このアバド盤の翌年の録音であり、アバド盤の優れたブラスとティンパニを意識して、この演奏・録音を凌駕しようという意図も今となっては感じられ、精密さとコンセルトヘボウ管弦楽団の弦と管の豪奢な音響の凄まじさが巧くミックスされ、覚醒感よりも酩酊感を感じさせてくれる。

これらと小澤/ボストン響を比べてみると、アメリカのオケ、特に金管楽器群にしては少し技術的、音色的な粗があるように聞こえる部分もあるが、バーバリックな迫力や冷徹な知性的凄味やよりも、親しみやすさが感じられるのが演奏といううものの不思議さかもしれない。

手持ちCDの一覧と記事 :
1969 Pierre Boulez/Cleveland Orchestra

2008年7月 4日 (金) ブーレーズ/CLO(1969年)の『春の祭典』にセルはどのくらい関与したのだろうか

1972 Leonard Bernstein / London Symphony Orchestra

2008年10月 9日 (木) バーンスタイン/LSO の 『春の祭典』

1974 Georg Solti / Chicago Symphony Orchestra

2006年6月20日 (火) ショルティ シカゴ響 ボレロ 春の祭典 牧神の午後への前奏曲

1975 Claudio Abbado / London Symphony Orchestra

1976 Colin Davis/ Concertgebouw Orchestra, Amsterdam

2005年8月17日 (水) 最近買ったCD (コリン・デイヴィス)

1978 Riccardo Muti/Philadelphia Orchestra

1979 Seiji Ozawa / Boston Symphony Orchestra

1981 Antal Dorati/ Detroit Symphony Orchestra

2005年4月20日 (水) 昨日買ったCD ハルサイ、カサドシュ&セルのモーツァルト (ドラティ)

1985 Riccardo Chailly / Cleveland Orchestra

1999 Valery Gergiev / Kirov Orchestra


その他過去記事

2006年5月22日 (月) 連休の収穫8(LPをまとめて) (LP フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団)

2005年8月22日 (月) 実家でLPを聞く  (LP フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団)

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コメント

「pfaelzerweinさんの愛聴盤として挙がった」と言われると、ご多分に漏れず出会いは柴田南雄の書いたLP紹介でしたので、小恥ずかしいのですが、三十年ほどたった今その後のこの指揮者の芸術をも含めて、益々気に入るようになりました。

正直購入当初は当時話題となっていた、マゼール盤やショルティー盤、極めつけとの誉れの高いブーレース盤と比べての優位はそれほど感じていなかったのも事実です。しかし、面白いことに先月そのマゼールが振ったがヴィナーフィルハーモニカーとフランクフルトでの実演がかなり批判されていて、まさにその差異が批判点となっていたのでありました。ドイツにおいても今やっとと言った感じです。

ブーレースは何回か再録をしているようですが、アバドはこれで十分でしょう。この録音だけでもこの指揮者の価値が刻まれているかと思います。

小澤の演奏もベルリンでのエアーチェックなども手元にありますが、それはそれで素晴らしいと思いますが、レフェレンスとしての価値は限られますね。小澤と云えば、復帰が延期されたとの報道。病巣の場所が場所だけになかなか厳しいものがあるかと思いますが、まだまだ日本では特にN饗事件を知っている世代を中心に「その実力を体験」されていない方も多く、是非そうした人々のためにも、もう一度不死鳥の如く蘇って欲しいと心より願うばかりです。

投稿: pfaelzerwein | 2010年4月17日 (土) 18:10

pfaelzerweinさん、以前のコメントでの会話が印象に残っており、この音盤を見つけた(ネットで買えば容易ですが)時には結構喜びました。

実にスマートで鋭利な『春の祭典』で、おかげ様で興味深く鑑賞しました。(以前ガレリアシリーズで発売されたディジタルリマスターはぼやけたものだったらしいのですが、こちらのCDは相当明瞭な音響を聞かせてくれています。)

小澤氏の復帰は延期になってしまったようですが、ここはじっくりと養生して、アバドがそうであったようで、復帰後により深まったと言われるような音楽を聞かせてくれるのを楽しみにしています。

ところで、ヨーロッパは、アイスランドの火山噴火の影響が大きいようですね。以前仕事でアイルランドに行ったときに、ヨーロッパの航空網とEU圏のパスポートフリーが凄いものだと感じておりましたので、経済活動に与える影響も相当なものではないかと心配しております。

投稿: 望 岳人 | 2010年4月17日 (土) 20:14

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