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2011年4月 4日 (月)

放射性物質拡散予測のリテラシー

Twitterの世界では、今日付けの二つの記事でちょっとした混乱が起き続けているようだ。

放射能予報 世界で公開されている日本の放射能予報データを掲載http://atom.yaruoch.com/  などというサイトもできているほどで、欧州の気象庁などが放射性物質の飛散予報しているのは結構早く知られていたのだが、下記の記事で初めて知った人も多いらしく、怯えが伝わるツィートが多く見られた。

しかし、ドイツの気象庁の出している情報は、この翻訳サイトで解説されているようにhttp://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329 

上の図は「福島から放出される放射性粒子の相対的な拡散図」と題されており、下部の小文字部分には「要注意:放出源の濃度が明らかでないため、この予想図には空気中にある放射性粒子の実際の密度が反映されているとは限りません。発電所からの仮想上の放射が天候条件によってどのように拡散し希釈化されていくのかのみが表現されています。」と の注意書きがあります。 赤色の濃淡で粒子の濃度を表しており、上から順に 「濃度は僅かに希釈」 「濃度はかなり希釈」 「濃度は極めて希釈」 となります。ですから福島地方においての空気中の放射性物質の濃度を基準にした場合に他の地域での濃度はどのように薄まって行くか、という事を予測した予 想ですので放射線量の絶対的な測定数値がシミュレーションには直接反映されていません。その為に敢えて「相対的」と前置きしている訳です。よってこの図から危険度の評価はできません。

とあり、危険度や実際の放射性物質の拡散濃度を示すものではない。

しかし、下記の読売新聞の記事への Tweet を見ても、Blogos 記事への Tweetを見てもこの予測をしっかり読み取っているリテラシーのあるTweet は稀だ。これまで福島原発事故とはあまり関係の無いと思っていた西日本の人(らしい人)たちのショックが大きいようだ。もっと自分で考えようよ。もっと調べようよ。読売新聞は、政府・気象庁への批判をするのはいいが、勇み足で、このドイツのシミュレーションの解説が抜けていて、不安感を煽る形になっているし、学者先生の方は確信的にあおり気味だと感じる。

実際、ドイツのシミュレーションもノルウェーのも、福島第一原発からの放射性物質の空気中放出が高濃度では起きていない最近でも(実際東北関東中部の大気中放射線量は微減している)、同様の少しセンセーショナルな放射性物質雲が広がるような予測アニメーションを継続しているので、「4月6日以降に西日本に広がる恐れ」などというのはアジテーション一歩手前だと思われる。

もちろん、SPEEDIもまともに情報を出さず、拡散予測を行っている日本の気象庁、気象学界の体たらくは許されるわけではないが、下記の2件の記事のように誤った方向に読者をリードするのは行きすぎではないかと思う。

 

◆読売新聞 日本で公表されない気象庁の放射性物質拡散予測 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110404-OYT1T00603.htm?from=tw

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、気象庁が同原発から出た放射性物質の拡散予測を連日行っているにもかかわらず、政府が公開していないことが4日、明らかになった。

 ドイツやノルウェーなど欧州の一部の国の気象機関は日本の気象庁などの観測データに基づいて独自に予測し、放射性物質が拡散する様子を連日、天気 予報サイトで公開している。日本政府が公開しないことについて内外の専門家からは批判が上がっており、政府の原発事故に関する情報開示の在り方が改めて問 われている。

 気象庁の予測は、国際原子力機関(IAEA)の要請に基づくもの。国境を越える放射性物質汚染が心配されるときに、各国の気象機関が協力して拡散予測を行う。

 同庁では、東日本大震災当日の3月11日から毎日1~2回、拡散予測を計算している。具体的には、IAEAから送られてきた放射性物質の放出開始 時間や継続期間、どれくらいの高さまで上ったかを、風向きや天候など同庁の観測データを加えた上で、スーパーコンピューターに入力し、放射性物質の飛ぶ方 向や広がりを予測している。

(2011年4月4日14時30分  読売新聞)

◆Blogos 原発 緊急情報(47) 汚染・6日に日本全土に拡がる怖れ 2011年04月04日08時41分 武田邦彦 http://news.livedoor.com/article/detail/5464191/

ドイツの気象サービス及びノルウェーの発表では、4月5日から7日にかけて、福島原発からの風が一旦、南に行き、四国・九州にまで南下し、そこからさらに偏西風で日本列島を縦断して、北海道に達する上ると予想されています。

この図はドイツ気象サービス(DWD)のシミュレーションで、日本で4月6日頃にあたります(あまり時間は厳密に考えない方が良い)。

パソコンで図を見ることができない人がおられますので、文章でも説明しますと、福島から一旦、太平洋に出た汚染物質は、その後、東風でぐるっと回って日本の房総半島、静岡、四国、九州とまわり、山陰から福井まで達します。

つまり4月6日頃を中心にして初めて福島原発の汚染物質が西日本を汚染する可能性がありますので、注意が必要です。

次に示す図はノルウェーのシミュレーションであり、上のドイツの気象サービスのデータから約1日たった状態です(7日ぐらい)。

一旦、日本の西日本に到達した福島原発からの放射性物質は、その後、偏西風に乗って北に進み、日本列島を縦断して北海道まで達すると予想されている。

この頃、新たに福島原発から放射性物質が漏れれば、それもともに北海道の東海岸に到達すると計算されています。

このシミュレーションの結果は、あくまでもドイツとノルウェーの結果であって日本の気象庁の予想ではありません。

日本の気象庁は、現在のところ福島原発の放射性物質がどのように飛散するかの予報を出していません。花粉予想や噴煙の予想は気象庁の役割でありますが、どうやら放射性物質を飛散については気象庁の役割範囲にはないそうです(税金は?)。

いずれにしても、できるだけ多くの情報を集めて、私たちと家族の安全を守りたいと思います。

ドイツとノルウェーの情報が、どのような基礎的なデータに基づいているのかわからないので、ここでは日付もはっきりとは示していません(もとデータは時間もハッキリ示してありますが、それほど精度が無いと思うので、「絶対にそうなる」と断定的に考えないでください。

しかし、私たちにとって重要な情報であることは確かです。この情報に基づいて、

「もしかすると、西日本もしくは日本全体に放射性物質が飛散するかもしれないので、4月5日から7日ぐらいにかけて、外出を避けたり、マスクをする、子供を外で遊ばせない、家の戸締りをしっかりするという対策を取っておく。」

と考えてください。

ドイツとノルウェーの予想が外れるかもしれません。外れたら申しわけないけれども、それは仕方がないので、その時は、多少無駄な時間を過ごしてしまったと思ってください。

・・・・・・・・・

ところで現実に九州まで放射性物質が飛んで、例えば鹿児島が1時間当たり1マイクロシーベルとまで放射性物質が上がり、それが1週間続いたとします。

その場合の被ばく量は、

1×7×24=168マイクロシーベルト

で、今回限りであれば、長期的にも、赤ちゃんにも、妊婦にも問題はない。

(注)さらに詳しい計算(鹿児島の人の1年間)

168+(0.05*358*24)=597マイクロシーベルト

で、今回限りであれば、累積放射線も大丈夫です.

鹿児島が大丈夫なのは「ずっと続けて被曝する」というのが恐ろしいので、一時的な被曝はあまり影響がないということです。

でも、被曝は少なくしておくのが良いので、自衛してください。

さて、福島原発のこれまでで今後について相当蓋然性の高い記事 大前研一 「炉心溶融してしまった福島原発の現状と今後」 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110404/265766/

では、既に3月15日と16日に、1,2,3号機の炉心が溶融してしまっており、そのため圧力容器の圧が大気圧並みで、冷却水が中にたまらず、どんどん漏れでてしまって高濃度の汚染水が地下にたまった状態を引き起こしているという予測が述べられている。これは、3月15日、16日に「最悪の事態」(メルトダウン 炉心溶融)は既に起こっており、再臨界の恐れは相当少なくなっていることも意味しているという。

ただ、これからが長期戦で、水による冷却と汚染水の処理、核燃料、廃棄物の処理、廃炉にいたるまで10年単位の年月を要する。

今回のこの事態がなかったとしても、赤字国債や核廃棄物の処理・廃炉は、未来の国民・人類へしわ寄せをして、現在を辛うじて凌ぐというのが、現代人の本質であるということは言うまでもまい。子孫に美田を買わずどころではなく、悪田を押し付ける政治、文明はどこかで清算しなくてはならないのだろうが、今回のことがその契機となるのかも知れない。

「今がよければ後は野となれ山となれ」という習癖はいつ、どこから蔓延したものだろうか?

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コメント

大前研一 「炉心溶融してしまった福島原発の現状と今後」の記事は先ほど紹介されましたが、公式発表と矛盾しているので一種の誘導と考えます。もちろん氏のVIDEOなども見ましたのである程度は分かりますが、この場合は政府と同じ主旨に沿っていると思われます。ある意味危険な気休めになっています。

日本人の刹那は歴史的なもので、人生観や生死感とも重なっていると私は考えます。

投稿: pfaelzerwein | 2011年4月 5日 (火) 03:57

事態がますます深刻化している今の状況では、その時点での状況分析が気休めか、誘導か、何が正しいかは、その後の事態の推移と、されには歴史の審判を待つしか無いと思います。

原発が現在のような事態なっているのは、(一億総懺悔ではないですが)日本政府や企業、マスコミそしてもちろんそれらを含めた日本国民全体に責任があり、今の日本に生きるものとして、対岸で火事を見るかのような外国からの報道姿勢や内容は、多少参考にはさせてもらうものの、切実さの観点が抜け落ちており、非常に違和感をおぼえるものがあります。

今回の震災で、多くのマスメディアが大スポンサー(その地位も危ういですが)の意向にはいまだ逆らえず、危機感を煽るよりも、鎮静的な情報を流すことにより、目を逸らそうという意図があることは多くの国民が知るところとなりました。しかし、外国からの報道も震災直後の日本持ち上げ(ヨイショ)の粗雑さに見られると同じ粗雑さが、原発報道にも見られます。

ただ、「ガイジン」さんたちが西日本避難、国外退避をするのは当然で、もし仮に私が海外駐在員などの立場で、その国で同じようなことが起こればおそらく「安全」を考えて同様の行動を取ることが予想できるからです。その意味でフライジンたちを非難しようとは思いません。http://www.timeout.jp/ja/tokyo/feature/2692

外国からの支援は必要です。ただ、ヒステリックな教師のような感じで、日本をできの悪い生徒扱いをしてどやすのは避けてもらいたいものだと感じています。

投稿: 望 岳人 | 2011年4月 5日 (火) 21:24

「切実さの観点が抜け落ちており」 - 世界中ががっくりしています。丁度、死期の迫ったがん患者に寄り添うようかです。皆が残念に思っているのは、国民が真実をみる事が出来ない社会で、丁度嘗ての日本社会のように癌患者が癌を宣告されずに疑心暗鬼に生きている姿を傍で見ている刹那さなんですね。手を携えるにしても、本人と同じ環境認識を持つことが不可欠となります。もはやコミュニケーションがとれない、違う世界に行って仕舞ったような友人をみるのはとてもやるせないのですよ。

投稿: pfaelzerwein | 2011年4月 7日 (木) 06:39

コメントをいただきましたが、大変残念です。「世界中ががっかり」とか、「皆が」とか、書かれていますが、程度の低いゴシップ紙ならわかりますが、辛らつながら冷静なpfaelzerweinさんはどこに行ってしまったのかと逆に心配になります。

そちらのコメントの喩えを使いますとと、まだ末期ガンを患っているわけではなく、治癒の可能性は大いにありますので、そのように哀れんでもらういわれはありません。

日本ではこれから根本的な原発の見直しが行われるでしょうが、それよりも、ドイツ国内では反原発の気運が高いとはいえ、結局は原発国のフランスから電力を大量に購入するという保証があるという話も伝わっています。http://bit.ly/ifY5kT EU内とはいえドイツがフランスのエネルギー政策に物言いをつけるのは内政干渉になるのでしょうが、フランスや近隣諸国の原発が事故を起こせば当然ドイツにも被害が及ぶわけで、自国内から原発を無くしても自己満足にしか過ぎないのではないかと、対岸の火事のように日本からは考えております。以前問題視された一般廃棄物を国外に輸送して廃棄するような政策では対応できないですよね。

お互い自分の頭の蝿をまず追うべきでしょう。

投稿: 望 岳人 | 2011年4月 7日 (木) 21:11

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