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2011年10月26日 (水)

どくとるマンボウ 北 杜夫 逝去

どくとるマンボウで知られる北杜夫(斎藤宗吉氏)が逝去された。享年84歳だったという。

中学生の時に、確か教科書に「どくとるマンボウ昆虫記」の一節が載っていた記憶がある。そこからこの作家、自伝的エッセイストの作品との付き合いが始まった。当時、私の周囲では、どくとるマンボウシリーズは、静かな人気を博していて、級友や従兄弟姉妹などと面白さを語り合ったものだった。躁鬱病を知ったのもこの作家のエッセイからだった。また、北が影響を受け、そのペンネームの元になったトーマス・マンの「トニオ・クレーゲル」や「ヴェニスに死す」を読んだのも、エッセイに影響されてだし、北の松本高校の同窓生で親友だった辻邦生を読んだのも、エッセイのおかげだった。

何の偶然か、先日子どもが、「どくとるマンボウ航海記が面白いと言っていたけれど、こっちにおいてあるの」と尋ねてきたので、古い文庫本は全部、祖父母の家の本棚においてあるため、新しいのを買ってやったところだった。

処女小説「幽霊」と時期が重なる「昆虫記」、続く旧制松本高校と東北大学医学部を舞台にした「青春記」、船医時代の「航海記」など面白くて、何度も読みふけったものだった。時代は隔たっているが、弊衣破帽のバンカラ学生の精神に憧れ、自分の進学先を決めるのにも多少の影響はあった作品群だった。その他「南太平洋ひるね旅」「白きたおやかな峰」など。

意欲作「夜と霧の隅で」は、フランクルの「夜と霧」やフロムの「自由からの逃走」と並んで専攻した西洋政治学史の勉強の副読本的な位置を占め、「楡家の人々」を読んで、茂吉の「万葉秀歌」も手に取った。

この10年ほどで新しく読んだのは「医局記」だけだったが、いろいろな意味で、楽しませてもらい、影響を受けた作家だった。

初期の作品集だったか、「青春記」にだったか、SP盤でバンカラ学生が聴く場面が当時読んだとき、意外でありかつとてもしゃれていたと感じた「牧神の午後への前奏曲」を聴いて、冥福を祈らせてもらおうと思う。



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