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2011年11月の6件の記事

2011年11月24日 (木)

『下町ロケット』(池井戸潤)

今年上半期の直木賞を受賞した話題作。企業小説を書いている作家らしいが、読むのは初めてだった。

『宇宙兄弟』から始まり、はやぶさの帰還や、日本人宇宙飛行士の活躍、同郷の宇宙飛行士の誕生など、自分が子供時代のアポロ計画以来の宇宙ブームになっていることもあり、タイムリーな興味もあって、これまた妻が借りてきた図書館本だが、読みだしたら止まらず、夜更かしをして一気に読み終えてしまった。

細かい設定(主人公がロケットエンジン技術者時代が若すぎるのでは?部品開発の特許性、悪辣な企業内法務の活動、銀行の貸し渋り、三菱重工をモデルとした会社の論理、納品ミスの対応など)に茶々を入れれれば、いろいろあるが、勧善懲悪的なカタルシスが得られるストーリーで、これも『舟を編む』同様、良質の情報小説で、エンターテインメントだった。

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2011年11月22日 (火)

グレゴリー・ソコロフのショパン

R0011704 先日は、簡単にソコロフのベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」の録音について触れたが、その後、ショパンの「ピアノソナタ第2番」「練習曲集作品25」(1985年)、「前奏曲集」(1990年)の録音を聴いた。

グリゴリー・ソコロフ、ナイーブ・レーベル全録音(10CD)

すでにこの録音は20年ほど以前のもので、ネットでもいろいろな批評が読めるけれども、現代ピアノの表現力の粋とでも言うような凄い演奏と録音だと思う。

ピアノの音色の透明感と多彩さ、ピアニシモからフォルティシモまでのダイナミクスの大きさ、集中力の高さ、全盛期のポリーニやアルゲリッチもかくほどと思われるほどの指捌きの精妙さとスピード感とリズム感、なめらかななレガートと、驚くほどスピード感のあるノン・レガート、深く重厚な和音、それらを駆使した表現力で、評判通り確かに凄いピアニストだ。

フランスのマイナーレーベルというが、このナイーブというレーベルの録音も素晴らしい。それゆえに、ダイナミックの幅の広さと、ピアノの透明感、音色まで味わえるのだということが言えるのだろうが、他の演奏者の録音ではどうなのかが分からないので、少々保留気味となる。

1991年の来日時、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の実演を聴いたのだが、その演奏の細部の記憶は相当薄れてしまっている。ずんぐりと太っていたという容姿と、軽々とこの難曲を弾いていたのは記憶にあるのだが、音楽自体の印象はほとんど残っていない。

ショパンの曲の中で、LP時代からおそらく最も回数を聴いたのがポリーニの「前奏曲集」で、「練習曲集」の後に録音されたものだが、玲瓏としたピアノとルバートなどのテンポの変化の少ない端正な解釈の演奏だった。

それに比べると、ソコロフの演奏は、テンポの伸び縮みを避けず、その点ではロマンチックな解釈なのだが、湿度は低く、センチメンタリズムは排され、冴え冴えとした印象を与える。とは言え、一曲一曲の描き分けは的確で、タッチから音色までそれはそれは多彩な演奏だ。本当に久々に感心しながら聴き惚れている。第16番の目覚ましさなど、これまで聴いたことが無いほど。

「ソナタ」も間然するところが無く、真情と精密さとダイナミックさが兼ね備わっている。練習曲集も、作品10に比べるとそれほど熱心に聴くことの無い作品25だが、冴え冴えとしたテクニックを見せるだけでなく、音楽の魅力も伝える。

このほかにも、バッハ、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、スクリャービン、プロコフィエフ、ラフマニノフと、10枚組の集成だけあり、贅沢なラインナップとなっているので、聴くのが楽しみなのだが、現在ソコロフはこのほかにパリ・ライブのDVD(12/1入手済み)がある程度で、ライヴ録音の音源はナイーブが沢山所有しているにも関わらず、発売を了承していないというもったいないことになっているようだ。

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ソコロフ関連の記事

*島田彩乃さん(ピアニスト)のブログ (気まぐれ日記)

 思えば、コンセルヴァトワール関係を調べていたときに、この方がネットに留学情報を出されていて、そのとき、ソコロフの記事を読み、実演を聴いたことを思い出したのだった。

*高橋多佳子さん(ピアニスト)のブログ(「!」な毎日)

 先日、この人の演奏で、NHKBSのクラシック倶楽部で、ショパンの珍しい連弾曲を聴いた。

*Yoshimi/musicaさんのブログ(気ままな生活)

 ピアノ演奏のCDのブログとして素晴らしい充実度で、時折訪問させてもらっている。

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*Wikipedia (英語)

*Grigory Sokolv - the great Russian pianist - (英語)

*AMC Grigory Sokolov page (英語)

最新のリサイタル予定

Date City Place Time Program
23.11.2011 BERN Kulturcasino 19.30
26.11.2011 PARIS Théatre Champs-Elysées 20.00
02.12.2011 WIEN Konzerthaus 19.30
03.12.2011 Bratislava Music Festival 19.30
09.12.2011 LUXEMBOURG Philharmonie 20.00
12.12.2011 GENOVA Teatro Carlo Felice 21.00
01.02.2012 TORINO Lingotto
10.02.2012 Ludwigshafen 20.00
14.02.2012 Zaragoza
16.02.2012 San Sebastian
Grigory Sokolov
Date
City
Place
Time
23.11.2011
BERN
Kulturcasino
19.30
Program J.S. BACH
Klavierübung Teil II (1733-34):
Concerto nach Italienischem Gusto BWV 971
I (without indication of tempo)
II Andante
III Presto

Ouverture nach Französischer Art BWV 831
(Ouverture)
Courante
Gavotte I. Gavotte II
Passepied I. Passepied II
Sarabande
Bourrée I. Bourrée II
Gigue
Echo

P A U S A

J. BRAHMS
Variations on a Theme by Handel Op. 24. (1861)

Three Intermezzi op. 117 (1892)
Andante moderato
Andante non troppo e con molta espressione
Andante con moto

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2011年11月21日 (月)

『舟を編む』と『まほろ駅前多田便利軒』(三浦しをん)

妻が、三浦しをんに注目しているらしく、借りてくるので、ご相伴で読ませてもらっている。

直木賞を受賞した『まほろ駅前多田便利軒』は、町田市が舞台の便利屋コンビが主人公の小説。シリーズ物ではないらしいが、連作短編集。「まほろ市」という架空の地名設定にしているが、町田界隈を知っている人には、実在の町田市をそのままモデルにしていることはすぐ分かるようになっている。鶴見川の水源などもご丁寧に出てくる。この著者らしい実在感のある人物像と設定の細やかさが面白かったが、他の作品に比べて少々類型的なストーリーのようにも感じた。別にこの作品に直木賞を贈らずとも、別の作品でもよかったのではなかろうか?

良質なエンターテイメントで知的な情報小説でもあるのは、最新の『舟を編む』。以前、音楽青春小説で 藤谷治『船に乗れ!』に似た題名で混同しそうだが、こちらは辞書編纂の話。長編小説だが、それほど長くもなく、とても読みやすく、辞書への関係者の思い入れや周辺人物の設定も巧く、これは誰にも薦められるいい小説だった。

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2011年11月20日 (日)

吉田修一『平成猿蟹合戦図』

話題になった同じ作家の『悪人』は読んでいないが、今回も妻が図書館から借りてきたのを借りて読んだ。

登場人物が多く、場面転換の多い作品で、一応「神の視点」から叙述されているが、少々読みにくい書き方だった。映画化を前提としているのだろうか?

タイトルがおとぎ話からのインスパイアだと告げている通り、現代の政治的な御伽噺だった。

最後まで、結末が読めず、そういう点では、サスペンス的な読ませる力はあった。

週刊誌連載だったようで、こういう書き方がそれに対応した現代作家の手法なのだろうが、一度読むと「ネタバレ」となってしまい、二度三度読みたいという興味を失わせる傾向があるようだ。

方言によるモノローグ(文字のフォントを変えてある)は、面白い試みだと思った。

追記:そういえば、世界的なチェリスト(実在ではない)が登場するのだった。

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2011年11月19日 (土)

光速よりも速い素粒子の再実験で、また光速超え?

台風ではないが、時折猛烈に発達する低気圧(嵐)があるが、今日の嵐もその類だったようだ。徳之島では、突風か竜巻かで、痛ましいことに家が吹き飛ばされ て三人が亡くなったという。台風のときにもめったに無いことだが、温帯低気圧のときには突風、竜巻の発生がみられることがあるようだ。いつも書いている が、気象庁やマスメディアはもっとこのような嵐には注意を喚起すべきだと思う。

さて、先の日本チームの実験の再実験の結果が注目されていたが、また光速を超えたということだ。

http://www.cnn.co.jp/fringe/30004648.html

ニュートリノ、再実験でも光より速い

(CNN) スイスにある欧州合同原子核研究機関(CERN)の国際共同研究グループOPERAは18日、素粒子ニュートリノが光より速く飛んだとする実験を再度実施し、同一の結果が得られたと発表した。

今 年9月の最初の実験結果を受け、科学界で疑問が出たことなどを踏まえ再び行ったもので、実験装置を厳密に点検したほか、速度測定に工夫を加えるなどした。 これらの実験結果が事実なら、光より速いものはないとするアインシュタインの相対性理論を覆す大発見で、現代物理学の根底を揺るがす可能性がある。

ただ、OPERAは再実験の結果が同じだとしても、実験の正しさなどの最終証明には中立的立場のほかの科学者の立証が必要であることに変わりはないとしている。

(以下略)

サイエンスの世界観が大きく揺らいだことになる。コペルニクス的転換と言われたが、今度はどのような名前で呼ばれるのだろうか?

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2011年11月15日 (火)

近況

久しぶりのブログ更新。

11月に入って、特に忙しいというわけでもなく、比較的淡々と過ごしている。年賀はがきの発売が始まったり、お歳暮のカタログが届いたり、街にはクリスマスセールの飾りが見えるようになったりで、11月に入ると一気に年の瀬が近付くように思う。

先日、大阪に日帰り出張に出かけてきた。今年の初め以来で、前回はホーライの肉まんをお土産に買えなかったのだが、今回は肉まんとシューマイを購入できた。551という数字が入ったお土産袋を、最寄りの新幹線乗り換え駅の在来線ホームでよく見かけたときは、何だろうと思っていたが、東の崎陽軒、西の蓬莱と言うそうで、注目していた。

シューマイを(高尿酸血症のための生活改善中なので)1個だけ食べてみたが、サイズも大きく、たっぷりとした食べ応えで美味しかった。崎陽軒のものよりも相対的に廉価に感じる。551の数字は、由来的にはモーツァルトの交響曲第41番ハ長調(「ジュピター」)K.551とは特に関係がないそうだ。

行きの新幹線は、朝早かったが、曇り空だったため富士山側に座ったのだが、雄姿は望めなかった。前回は、関ヶ原の通過に注目していたのだが、今回は石田三成の佐和山城跡の看板と、京都の梅小路機関区が車窓から望むことができた。

引っ越し以来、CD入りのダンボールを開封しておらず、もっぱらPCオーディオで聴いているのだが、このところHMVとアマゾンからCDを取り寄せて聴き始めた。やっぱり新しい刺激がほしくなる。

最近購入したCD

R0011699 ◎K.ザンデルリング ベルリン交響楽団 ブラームス交響曲全集

 ttp://www.amazon.co.jp/gp/product/B004E52MRG/ref=ox_ya_os_product

K.ザンデルリングのブラームスは、シュターツカペレ・ドレスデンとの録音が有名だが、こちらの1990年のまとめての録音は、長年の手兵の東ドイツのベルリン交響楽団を指揮したもの。文春新書で、最大級の誉められ方をしていたので、相当売れた物らしいが、これまで聴く機会が無かった。amazonでとても廉い(1300円ほど)という情報を得たので、思わず買ってしまった。中では、アルトラプソディーがとてもよかった。以前ベーム/VPOでじっくり聴いた曲だが、この全集の独特の音楽作りがとてもこの曲に合っているようだ。


R0011701 ◎トスカニーニ NBC交響楽団 ベートーヴェン 交響曲全集

 ttp://www.amazon.co.jp/gp/product/B0000CNTLU/ref=ox_ya_os_product

こちらは、以前から欲しかった全集で、上のセットを購入したときに目に留まった、思わずクリックしてしまった。これも2000円弱で購入。これに割引が付き、2セット合わせて3,000円せずに買えてしまった。リマスタリングで、以前聴いていた第九と比べると、音の鮮度が向上し、干物のような音楽ではなくなり、ずっと聴きやすくなったので、その音質からトスカニーニを敬遠していた自分にとっては、とてもうれしい買い物だった。


R0011704_2グリゴリー・ソコロフ、ナイーブ・レーベル全録音(10CD)

 現存するピアニストの中で、最高峰の一人だが、最近来日しないためか、日本では幻のピアニストになっている。過去の録音の集成がまとめられたもの。ディアベリ変奏曲を聴いてみたが、とてもライヴとは思えない完成度と緊張度の高さと、多彩な表現力で、長大なこの曲を飽きさせずに聴かせてくれる。

 


R0011697ヴァイオリン協奏曲、チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 フランチェスカッティ、セル/CLO, シッパース/NYP

ミトロプーロス/NYPとの協演で、フランチェスカッティはこの2曲をモノーラル録音しているが、そのLPでこの2曲に入門したこともあり、フランチェスカッティの美音と節回しがとてもしっくりくる。Youtubeでもアップされているセルとのメンデルスゾーンだが、あのイタリア交響曲と同様の引き締まったオーケストラとパガニーニ直系のフランチェスカッティの協演で、ポルタメントの耽美性を帯びながらも品位を失わない理想的な演奏になっている。夭折したシッパースの指揮するニューヨークフィルをバックにしたチャイコフスキーも、第1楽章にカットはあるものの、襟を正した感のあるメンデルスゾーンに比べると、余裕のある演奏で、その上手さと美しさに陶然とする。こちらも、主観的にはトップクラスの録音だと思う。


R0011702交響曲全集 ノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(5CD)

N響に客演するなど、現在、モダンオケでも活躍中のノリントンの初期の録音。ホグウッドと並んで、ピリオドアプローチのベートーヴェンの早い例で、このほかにはグッドマンとハノーバーバンドもあった。楽器バランスなど荒削りだが、その若々しいアプローチが、結構面白い。


R0011698交響曲全集、ピアノ協奏曲全集 クレンペラー&フィルハーモニア管、バレンボイム

分売を何枚か買って感心したクレンペラーの全集。こちらはノリントンの実験的な試みとは違い、熟成したモダンオケによるアプローチの一つの極致だと思う。古いEMI録音ながら音質的にも聴きやすく、テンポは遅いのだが、遅く感じない奇跡的な演奏を聴くことができる。

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