忘れられた花園(ケイト・モートン著、青木純子訳)、他英文学の児童書
特異な構成に読み始めはとまどうが、上下巻を一気に読ませる力を持っていた。オーストラリアの女性作家の作品。題名から連想(「秘密の花園」)されるように英文学へのオマージュもある。日本語への翻訳もこなれている。ストーリー性を追求するあまり、ハークレイン(アルルカンの英語読み! 実際には読んだことは無いが)的な通俗性も垣間見える。
児童文学作品は2冊続けて読んだ。
「テムズ川は見ていた 」(原題:The December Rose) レオン・ガーフィールド著、斉藤健一訳
「その歌声は天にあふれる」 (原題:Coram Boy) ジャミラ ガヴィン著、 野の水生訳
どちらも近年の英文学の児童向け小説。
前者は「忘れられた花園」と同時代のビクトリア朝のテムズ川が舞台のサスペンス調の作品。ディケンズやホームズの頃の極貧の煙突掃除の少年が主人公。
後者は、インド系の女性作家の作品。ホグウッドが録音したことのあるヘンデルの「メサイア」の孤児院版の演奏が舞台背景になっているが、こちらは上記2冊に比べて非常に重く暗い内容。産業革命前後の英国の暗部が描かれるのは、インド出身の作家ならではか。これは児童文学ではないだろう。むしろ少年少女が主人公であり、かつストーリーテリング的ということで、児童文学のスタイルを借りた告発だとも考えられる。
どの作品も特に近現代に良くも悪くも大きな影響を与えてしまった大英帝国の性格というものに思いを致させられる。
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