ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの逝去を悼む
今朝の新聞を読んでいた妻が、「ディスカウが亡くなった」と知らせてくれた。86歳だったという。フィッシャー=ディースカウの妻で同じく歌手だったユリア・ヴァラディによれば「安らかに永眠した」とのことだ。
F=ディースカウの歌唱を、生で聞く機会は無く、膨大な録音もたまたま縁があって入手したごく一部しか聞いていない。
ドイツリートではこのブログでも記事にしたエッシェンバッハのピアノによるシューマンの歌曲集『詩人の恋』『リーダークライス』『ミルテの花』の歌唱が一番印象に残っている。1976年の録音で、ディースカウ50歳ごろの歌唱だが、今聞き直しても高音の伸びが素晴らしく、声にも潤いがあり、知的で慎重な印象の強いディースカウにしては熱唱の部類に入り、思わず胸が熱くなる瞬間がある。
オペラでは、ベームの指揮、ポネル演出の『フィガロの結婚』映画でのアルマヴィーヴァ伯爵の演技と歌唱は見事だし、1954年のフリッチャイの『魔笛』での30代の若きディースカウのパパゲーノもユニークだった。
リストを書き出していて思い出したが、バーンスタインとウィーンフィルのマーラーの「大地の歌」の録音で、アルトで歌われることが多いパートをバリトンの彼が歌ったものも印象が強い。
宗教音楽ではリヒター指揮のバッハの受難曲とカンタータでも多く録音を残しているが、『マタイ』のバスのレチタティーヴォとアリア "Mache dich, mein Herze, rein" を聞き、その歌唱を偲びたい。
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ関係の記事
2006年4月20日 (木) シューマン 歌曲集「詩人の恋」ほか フィッシャー=ディースカウ、エッシェンバッハ
2007年1月12日 (金) シューベルト『冬の旅』 フィッシャー=ディースカウ、デムス
2012年3月 7日 (水) 以前音質的に不満だった音源を聴きなおしてみて(5) アンサンブル、声楽編
2006年11月 8日 (水) シューベルト 『白鳥の歌』 シュライアー&シフ
2008年4月26日 (土) モーツァルト 『フィガロの結婚』 3種類のベーム指揮を聴く
2007年8月 8日 (水) モーツァルト 生誕200年記念の名録音による4大オペラ全曲集 10CDボックスセット
2006年5月18日 (木) 連休の収穫6 マーラー「大地の歌」バーンスタイン/VPO ミュージックカセット
2007年6月 2日 (土) エルンスト・ヘフリガーを偲んでバッハの受難曲を聴く(マタイ受難曲)
2008年7月 5日 (土) 『四季』を題材にした曲集より『夏』の音楽 (ハイドンの「四季」)
☆白水社/ドイツグラモフォン シューベルト歌曲集
HP音楽の茶の間のページより。ディースカウの著書(『シューベルトの歌曲をたどって』だろうか?)にLP10枚ほどがセットになったもの。1970年代に父が購入。
追記:2012年7月3日 6月22日に親戚の葬儀で帰省し、翌日の土曜日に『シューベルト 歌曲の世界』(白水社)を写真におさめてきた。『シューベルトの歌曲をたどって』は、収録されていなかった。その代わりといってはなんだが、DFD著の『シューベルトの人物像』、『わが生涯を語る』、ジェラルド・ムーア著の『フィッシャー=ディースカウとシューベルト歌曲』といった文章が収録されていた。
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コメント
馴染みがあるかどうかといえば、その録音の数々から無くてはならない存在でしたが、生で接したことが無く、その意味ではシュヴァルツコップよりも遠い存在でした。あくまでもメディアを通した存在です。
その歌声も生の中継を聞いたものもそれほど多くは無く、ザルツブルクなどでのリサイタルのエアーチェックものを改めて探してみなければいけません。
先月にラジオで特集番組があってインタヴューなどが流れていましたが、その時点以前から回顧する機運があったのでしょう。
オペラを引退してからは大分経ちますが、もしかすると初演のライマンのリア王が歴史に残るかもしれません。フルトヴァングラーのトリスタンからの長いオペラの録音歴ですね。
投稿: pfaelzerwein | 2012年5月19日 (土) 12:59
もう86歳という高齢だったそうですが、演奏史に一時代を画した偉大な歌手でしたので、驚きは大きかったです。
そういえば、フィッシャー=ディースカウはマーラーの歌曲集の歌い手としてフルトヴェングラーによって見出されたという経緯があったんでしたね。
「トリスタンとイゾルデ」ですが、フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管の有名な1952年の録音を昨年ボックスで入手したのですが、このクルヴェナールがフィッシャー=ディースカウのオペラ界へのデビューに近いんですね。このちょうど60年前のせっかくの名録音ですが、これまでじっくりと聞いていなかったので、
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/44.html
を参照しながら、若き20代のディースカウのクルヴェナールの張りのある美声を聞いてみます。
また、30年前には1982年録音のカルロス・クライバー盤でも同じくクルヴェナールを歌っていますね。50代半ばで、ブレンデルとの冬の旅の前の時期で、若々しい従者ではないですが、これも今聞き直すと味わい深く感じます。
投稿: 望 岳人(Mochi Takehito) | 2012年5月19日 (土) 15:41