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2012年7月11日 (水)

浦賀和宏『彼女は存在しない』と『24人のビリー・ミリガン』(ダニエル・キイス)

朝刊掲載の幻冬舎文庫の全面広告の下部に浦賀和宏『彼女は存在しない』が、重版を続けていて、書店員おすすめと出ていたので、まったく知らない作家だったが最寄の書店に行ってみたら文庫本が平積みされていたので、購入して読んでみた。

少々ネタバレになるが、いわゆる多重人格障害をファクターにした叙述トリックに近いミステリー作品だった。読んでいる途中で、もしかしたら、と思ったりもしたが、仕掛けは読み解けず、大団円でのタネ明かしに、電車に乗っていて「方向感覚」が狂ったときのような居心地の悪さを感じた。その意味で作者の仕掛けに嵌まったのだろうし、その確認のために二度目のななめ読みをしてしまった。

しかし、この作者の作品は、後知恵になってしまうが、いわゆる二大禁忌とされるインセスト・タブーとカニバリズムを積極的に取り上げているらしく、不快感が非常に強いものだった。必然性のない残酷な描写もあり、その意味ではグロテスクB級ホラーよりも不快なものだ。そこまで猟奇的な背景を描かなくても、仕掛け的には成立しえたのではなかろうかと思う。

同じ多重人格障害を扱った「24人のビリー・ミリガン」も、解離性同一性障害を主張する犯罪者を主人公にしたものだが、この精神障害についての理解を深めさせてくれるものだった。この小説もずいぶん話題になりよく読まれたものなので、『彼女は存在しない』の登場人物たちが、多重人格障害にほとんど知識が無いように描かれていたのもの少々気になった。知っている人は知っているだろうし、知らない人は知らないのだろうから、そのような設定でも構わないのだが。

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