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2012年10月の5件の記事

2012年10月24日 (水)

アンナ・マグダレーナ・バッハ 『バッハの思い出』(山下肇訳)

先日届いたグールドのバッハ録音全集を聞きながら、以前買ったまま通読していない『バッハの思い出』(講談社学術文庫)を再読しようかと思いついた。

現在では、「回想録」の形式をとったフィクションということが判明したものだが、この翻訳では、あとがきで若干フィクションではないかという疑念に触れているものの、著者は、アンナ・マグダレーナ・バッハとなったままである。購入した当時は、それが心の棘でもあったり、バッハの二番目の妻が語ったものということで、少々居心地が悪くなるほどの甘美な賞賛と思い出が語られていることもあり、逆にすんなりと入っていけない気分に襲われて、読み通すことができないでいた。

Her fictive autobiography "The Little Chronicle of Anna Magdalena Bach" was written in 1925 by the English author Esther Meynell.  This sentimental narration of the family life of Bach is not based on any sources and is probably far from the personality of Anna Magdalena Bach.(英語版Wikipedia)

それでも辛抱しながら読み進めると次第にその口調にも慣れてきて、次第にマグダレーナ・バッハの語りの世界に入り込んでいくような気分となった。

これまで読んできた伝記などに紹介されている事件や出来事が要領よく小説的にまとめられていて、このエスター・メイネルという女流作家の熱意のようなものが感じられる。

終盤の晩年の章では、これまでの批判的で、冷笑的な読み方はすっかり追いやられてしまい、没入状態に近くなった。

購入してから長い時間がかかったが、フィクションということを理解した上で読めば、バッハへの共感に資することはあっても、マイナス面はあまりないように思うようになった。

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2012年10月21日 (日)

法の不備? 飛行機内での破廉恥行為が不起訴

以前、「利益窃盗」という素人丸出しの記事を書いたことがあった。一般人の常識と法律、法律解釈、法律の運用のギャップについて触れたものだが、今度は誠にナンセンスとも言うべき法律運用が報道された。

迷惑防止条例が都道府県、市町村などの自治体によって内容(迷惑行為のリスト、迷惑行為の構成要件、罰則の軽重など)に差があることは知られているが、今回は国内線の航空機内での迷惑行為の現行犯で、証拠もある事例が、行為の時点が特定できず、どの条例を適用すべきか確定できないというお粗末な理由で、不起訴となったというニュースが流された。
船舶では、船長などが特別司法警察職員とみなされている。
航空機でも、機長が最終決定権を有する。
これらの権限によって身柄拘束された被疑者は、出発地もしくは到着地の条例に服するというのが、妥当な法運用ではないのだろうか?

罪刑法定主義の問題ではなく、法の運用の問題であり、このような破廉恥罪が不起訴とならないように早急な対応をすべきであろう。

最近、この種の嘆かわしい事件が多すぎるし、それを抑止する制度もお粗末すぎる。

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2012年10月10日 (水)

ドイツの空港におけるヴィンテージ・ヴァイオリンの通関問題

-----再追記-------------

一応の解決を見た。

2013年11月14日 (木) 手持ち可能な楽器(職業用)のEU持ち込み等の規則が改正されたらしい

----追記----------------

2013/9/15

最近、この記事を検索して見てくださる方が少し増えているようなので、改めてドイツ大使館などのサイトをチェックしてみたところ、税関手続きについて日本語で分かりやすい説明が掲載されていた。

ドイツの関税規定について、シュタンツェル大使に聞く (2012年10月13日付 シュタンツェル大使ブログ『大使日記』より抜粋)

CA: 非EU加盟国からドイツに入国する日本の音楽家や芸術家は、特にどのようなことに気をつけなくてはいけないでしょうか。 St: それははっきりしています。プロの音楽家として楽器を携帯しEUに入国する場合、空港で「赤いゲート」を選ばなくてはなりません。「緑のゲート」は申告するものが何もない時にのみ利用できます。ですから、430ユーロ以上の価値がある携行品を税関に申告するには、「赤いゲート」を利用するのです。プロが使用する楽器、あるいは報道用のテレビカメラは、いかなる場合でも申告しなくてはなりません。「赤いゲート」は必ずしも関税を支払わなければならないということではなく、むしろ往々にして、その品物が申告されていて、これを再びそのまま持ち出さなくてはならないことを意味するものです。

CA: 二人の音楽家のバイオリンはどうなりましたか?

St: バイオリンは両方とも所有者の元に戻りました。正直に言いますと、私たち もこのことを喜んでいます。日本人演奏家がメンバーとなっていないオーケストラなどドイツにはほとんどありません。ドイツの音楽学校では日本の若者たちが 多数学んでいます。私たちはクラシック音楽だけでなく、これを解釈し演奏する日本人演奏者も愛しています。このことは特に強調したいと思います。といいま すのも、日独はまさに外交関係樹立150周年を祝ったばかりだからです。この150年の間、音楽は常に両国間の重要な架け橋となってきました。我が国は日 本からの音楽留学生や芸術家を歓迎しますし、音楽が重要な位置を占めている日独の文化交流が今まで同様に活発で活気あふれるものであり続けるよう望んでい ます。バイオリニストのお二人も、不幸な出来事にもめげず、日独文化交流に貢献されております。これに対し私からも感謝申し上げます。

ドイツ入国の際の税関手続きについて

以下の場合に当てはまる場合は、必ず赤いゲートを通り、税関で申告をしてください。

  • 旅行者自身、または旅行者の家族が私用で使用・消費するに限らない物品(例えば職業上使用するカメラ・撮影機材や楽器

以前の説明よりも、懇切丁寧になったようだ。

---追加-----------------

2012/1/4

今度は、日本人のプロサッカー選手(ドイツのブンデスリーグ所属)が日本からドイツに戻るときに、腕時計の申告漏れで、腕時計を没収されたらしい。以前のヴァイオリニストの事件を他山の石としていないようだ。マスメディアも、「災難」と評するところはレベルが低い。ただ、これでこの問題についての議論がより多くの人の目に触れるだろうから、ケーススタディになるだろう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130104-00000310-soccerk-socc

乾がドイツ入国時に税金逃れと間違えられ、税関で取り調べを受ける

SOCCER KING 1月4日(金)12時44分配信

乾がドイツ入国時に税金逃れと間違えられ、税関で取り調べを受ける 拡大写真 新年早々、災難に見舞われた乾 [写真]=千葉格  フランクフルトに所属する日本代表MF乾貴士が、冬季休暇を終えて日本からドイツに入国する際、税関で取り調べを受けたようだ。ドイツ紙『ビルト』が伝えている。  同紙によれば、乾は3日にフランクフルトの空港に到着した際に税関で空港職員から申告するべきものを問われ、「ない」と返答。ところが、職員が乾の腕時計を指摘した。  ドイツでは、430ユーロ(約4万9000円)以上で新規購入したものを持ち込む際は、税金を支払う義務が発生。通訳がいない状況だった乾は、意図的に税金の支払いを逃れようとしていると見なされ、取り調べを受ける結果になったと伝えられている。  乾の通訳は同紙に、「時計は、2年以上前に家族からプレゼントされたものなんだ。乾は、フランクフルトで税金を支払う必要があることを知らなかったよ。通訳を呼べずに、1時間以上の足止めを受けていたんだ」とコメント。なお、3000ユーロ(約35万円)と見られる腕時計は差し押さえられたと報じられている。

 

---元記事--------------

8月、9月と日本に関係のあるガルネリ、ストラディヴァリというヴィンテージ・ヴァイオリンが、ドイツのフランクフルト空港で税関に押収されるという事件が続いた。

8月のガルネリウス(時価1億円?)は、堀米ゆず子というベルギー在住の日本人ヴァイオリニストが、日本からベルギーに帰国する際に機内持ち込み手荷物として、EUへの最初の入国地であるドイツのフランクフルト空港でベルギーへのトランジットのために入国手続きをした際に、書類不備で「密輸」とみなされ、ドイツ税関当局に押収され、その返還を受けるためには、19%の関税(?)1900万円支払うように求められたとという事件だった。

日本の新聞テレビなどのマスコミも大々的に取り上げ、堀米さんが人気ヴァイオリニストということもありネットでの署名活動や日本政府筋からドイツ政府への解決要請などもあったりして、ドイツ税関は無償での返還を認めて決着したかに見えていた。

http://togetter.com/li/384321

ところが、今度は9月末に、日本人の女性とドイツ人男性とのハーフでドイツ国籍を持つヤンケという女性ヴァイオリニスト(つい最近20代の若さで、なんとドイツの名門シュターツカペレ・ドレスデンのコンサートミストレスに就任したばかり)が、やはり日本での演奏会の帰路、同じく機内持ち込み手荷物で持ち帰ったストラディヴァリウス(時価6億円?、日本音楽財団の所有物でありヤンケさんに貸与されている品)を、同じドイツのフランクフルト空港で、「転売の可能性が否定できない」という理由で、押収され、この時点では、19%の関税約1億円を支払うまでは、返還はされないということになっている。

それが、今日になってとんでも無いニュースが飛び込んできた。

ドイツ:バイオリン返還で財務相を告発 税関職員

毎日新聞 2012年10月09日 10時31分(最終更新 10月09日 10時36分)
ベルリン篠田航一】
フランクフルト国際空港の税関で8月に音楽家の堀米ゆず子さん(54)の高額バイオリンが押収された後、財務省の指示で無償返還されたことに対し、押収した税関当局の職員が、返還を決めたショイブレ財務相を「音楽家の脱税行為を助けた」として脱税ほう助の疑いで検察当局に告発した。

独メディアは、9月に同空港で差し押さえられた有希・マヌエラ・ ヤンケさん(26)の高額バイオリンについても返還指示が出たと報道。一連の押収騒動は財務省と下部組織の税関との内部対立に発展している。

同空港では、8月にベルギー在住の堀米さん、9月にドイツ10+ 件在住のヤンケさんの愛器が押収された。税関などによると、430ユーロ(約4万3000円)以上の価値を持つ高額物品を欧州連合(EU)域内に持ち込む場合には申告が必要だが、2人とも無申告で税関を通過しようとしたため、密輸などの疑いを持たれたという。

堀米さんは評価額1億円の名器ガルネリを押収され、 約1900万円の関税支払いを求められたが、その後正当な購入証明書などを提出し、無償で返還された。評価額6億円の名器ストラディバリウスを押収されたヤンケさんは約1億1000万円を払うよう求められ、返還に向けて交渉を続けている。

同税関は「取材には回答しない」としているが、 独ビルト紙は一連の税関の対応にショイブレ財務相が立腹していると伝えている。

ドイツの報道 : http://m.faz.net/aktuell/wirtschaft/deutsches-zoll-dickicht-stradivari-im-roten-kanal-11918295.html

8月の堀米さんの件の解決に対する税関当局の抗議のようだ。

この日本の政府筋や外交筋を動かしての解決は、日本国内ではあまり批判されることは無かったが、一部の良識ある意見としては、万人が平等であるべき税金の徴収において、一部の有名音楽家だけが、政治決着のような特別待遇で優遇されるのは、平等原則に反することであり、さらに同様の「密輸事件」の再発を防ぐための先例にならない、というようなものもあった。そうしたら、その矢先に、ヤンケさんの事件が発生していたのだった。

http://blog.livedoor.jp/argus_akita/archives/18594424.html

ドイツ国内では、税関職員が、無償返還を命じた財務大臣を告発するという事態にまで立ち至った。

数年前自分が勤務先の業務として従事していた輸出入の手続き問題として見た場合、今回の件は、ヴァイオリニスト側が不用心だったように思われる。実際、以下に引用した新聞のような反応(ある音楽関係者は、「従来、演奏家が携行する楽器については、 多くの場合、無申告の持ち込みが慣例で認められていた。急に通関手続きが厳格になれば、今後の演奏家の往来に支障が出かねない」と危惧する。)が見られているようで、 時価の高い骨董品(ヴィンテージ品)を国境を越えて持ち運んでいるという意識がほとんどなかったようである。さらに、EUに入域する際の申告品無しの緑ゲートを安易に通過しようとしたようでもある。

以下の注意は、2010年頃から話題になっていたらしい。
http://www.japan.diplo.de/Vertretung/japan/ja/03-konsular-und-visainformationen/033-zoll/Zolleinreise.html

ドイツならびにシェンゲン協定域内入国時の税関審査について:ATAカルネに関する注意

機内持込手荷物で持ち込まれる物品は、原則として最初にシェンゲン協定域内に入る地点で申告義務があります。EU内、またはドイツ国内を引き続き旅行するつもりの場合(例えば、パリやベルリンへの乗継)であっても、物品は常に最初に入域する空港の「赤いゲート」(写真1参照)で申告されなくてはなりません。これは、カルネに記載された物品の一部のみが手荷物に入っている場合にも適用されます。

申告義務のある物品について、ATAカルネによって物品を持ち込む場合や、所持物品に申告義務があるかどうか疑問がある場合にも、常に「赤いゲート」を使用することを勧告します。

http://libertyhillvacations.co.jp/hotnews/?p=114

さらに突っ込んでみると、今回の場合は二人ともEUに本拠を構えているので、まずEU域内から外国に出国する際に今回押収されたヴァイオリンをきちんと輸出手続きしておけば、結果が変わった可能性はある。書類によってEUから輸出したものの再輸入ということが証明できれば、当然その際には関税や(そのような制度があったとして)輸入消費税(VAT)は免除されることになるからだ。

さらに、今回の2件では、職業用の器具でよく使われるATAカルネのことはマスコミでは全く報道されない。カルネ申請では、器具の価値に応じて担保金を積まなければならないことになるということも裏面にはあるのかも知れない。

また、EUから来日した際に、日本での輸入通関をキチンと行ったかどうかもまったく報道されていない。元来日本で入手・貸与されたものであっても、EUから再度持ち込む(輸入する)際には日本の税関においても、手荷物品として輸入申告していなければならなかったはずなので、この時点で日本入国時にも「脱税」の可能性がある。

さらに、日本から出国する際の輸出手続きも適正に行われたのかも不明である。

これまでの特に新聞の報道を見る限り、マスコミ各社は税関での通関業務についてあまりの無知をさらけ出している。一部のメディアはドイツにおける日本バッシング論まで匂わせていて、それに乗ったネット市民が日本叩きの被害者意識を見せているのも気になる。

税関の本来の使命は、適正な関税の徴収はもちろんのこと、今回のヴィンテージ楽器のようなものによるマネー・ロンダリングや、禁輸品目の密輸の可能性の排除にもあるのであり、特例決着のために陰に日向に動いた日本の役人やドイツの政治家は、あまりに近視眼だったのではなかろうか?

新聞によれば、国際的な演奏家の都合のために今回のようなヴィンテージ楽器のスムーズな通関制度を作ろうなどという話も出ているそうだが、あまりにも性善説で、おめでたき人々だと思ってしまう。
それよりも、まずは各国の通関制度に詳しい専門家に相談して、高額物品の輸出入のリスクを洗い出し、それ相応の対応をすることが先決だろうに。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121005-OYT1T00244.htm?from=popin

バイオリン名器、また押収…「なぜ」音楽界困惑

ドイツ在住のバイオリニスト、有希・マヌエラ・ヤンケさん(26)が、日本音楽財団(東京)から貸与されている名器ストラディバリウス(評価額約6億1000万円)を、ドイツのフランクフルト国際空港で押収されたことに、日本のクラシック音楽関係者の間で波紋が広がっている。

楽器を貸与している日本音楽財団では4日、 職員らが情報収集に追われた。同財団は購入した名器20丁を、優れた演奏家に国籍に関係なく貸与している。ヤンケさんはドイツ国籍で、父はドイツ人、母は日本人。

同財団の塩見和子理事長は、「 ヤンケさんとは貸与契約を9月に更新したばかりで、証明書類もそろっていた。なぜ押収されたのかわからない。外務省や文化庁に働きかけ、一刻も早く返還してもらえるよう手を尽くす」と話す。

フランクフルト空港では8月にも、 ベルギー在住のバイオリニスト、堀米ゆず子さん(54)が、所有する名器ガルネリを一時押収されたばかり。

ある音楽関係者は、「従来、演奏家が携行する楽器については、 多くの場合、無申告の持ち込みが慣例で認められていた。急に通関手続きが厳格になれば、今後の演奏家の往来に支障が出かねない」と危惧する。

堀米さんの楽器が押収されたことが報じられて以来、 日本と欧州を行き来する演奏家の間には、フランクフルト空港の利用を控える動きが出ている。

ある大手の音楽事務所では、「 楽器の押収は演奏家にとって死活問題。詳しい経緯が分からない以上、当面、フランクフルト空港を利用しないよう、所属する演奏家に呼びかけている」と困惑している。(2012年10月5日08時50分  読売新聞)

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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121005-OYT1T00281.htm?from=popin

【ベルリン=三好範英】ドイツ・フランクフルト国際空港の税関で高額のバイオリンの押収が続いていることについて、同空港税関広報官は4日、「430ユーロ(約4万4000円)以上の価値のある物品をEU域外から持ち込む場合は申告が必要。実際、楽器でない高額な物品もしばしば押収されている」と述べ、楽器に的を絞った摘発でないことを強調した。

フランクフルト空港は、欧州大陸部では最大規模の国際空港で、 欧州各国の便をつなぐハブ空港の役割を果たしている。出入国審査を免除するシェンゲン条約に基づき、人の移動の自由が保障された地域が広がるにつれて、「いったん域内に入ったら物品も欧州内をほぼ自由に運搬できる。『最後の関門』としての税関の対策も強化されている。職員の意識も高い」(外交筋)という。

その一方で、別の外交筋は「独税関当局には、古い楽器は( 売買目的の)骨董こっとう品という意識が強い。高額物品を使ってのマネーロンダリング(資金洗浄)が行われているという情報もあり、楽器に目をつけていることも考えられる」と語る。

同筋は、こうした独税関の取り組み強化に、 日本人音楽家が対応し切れていない、と指摘する。(2012年10月5日09時17分  読売新聞)

今後は、ドイツ財務大臣対税関当局の対決は、今後の推移に注目だ。

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10/10朝の続報:
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121009-OYT1T01094.htm?from=popin

独税関押収ストラディバリウス、今回も無償返還

ドイツ在住のバイオリニスト、有希・マヌエラ・ヤンケさん(26)が、日本音楽財団(東京)から貸与されたバイオリンの名器ストラディバリウスを、ドイツ・フランクフルト国際空港の税関に押収された問題で、同税関は9日、楽器をヤンケさんに無償で返還した。

同財団が明らかにした。

ヤンケさんは、9月28日に東京から同空港に到着した際、手荷物のバイオリンを申告せずに持ち込もうとしたとして押収された。同税関が、楽器の評 価額約6億1000万円の19%に当たる約1億2000万円の関税支払いを求めたため、同財団や日本の外務省などが無償返還を独政府に働きかけていた。

同税関が楽器返還に応じた理由は明らかになっていないが、10月8日付のドイツの大衆紙ビルトは、独財務省が税関当局に返還を命じたと報じていた。(2012年10月9日19時08分  読売新聞)

◆海外での反響:著名な音楽ジャーナリスト ノーマン・レブレヒトのブログ
http://www.artsjournal.com/slippeddisc/2012/10/seized-violin-becomes-political-hot-potato.html

http://www.artsjournal.com/slippeddisc/2012/10/the-german-press-stays-silent-in-the-face-of-a-musical-outrage.html

◆Seized Violins at Frankfurt make now a political issue
http://www.violinist.com/discussion/response.cfm?ID=23268

◆やはり政治介入はまずかった
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121010/erp12101009590000-n1.htm

「自衛策講じるしかない」 バイオリン名器差し押さえ 政治介入と税関当局反発
2012.10.10 09:55 [欧州]

日本人演奏家らが使用し、ドイツ・フランクフルト国際空港の税関で相次いで差し押さえられたバイオリンの名器はいずれも無償返還された。しかし返還の決定に政治介入があったとして税関当局が反発、検査態勢が見直される可能性は少ない。通関手帳を携行するなど「自衛策を講じるしかない」(外交筋)のが実情だ。

同空港では8月中旬と9月下旬、バイオリニスト堀米ゆず子さんのガルネリと、有希・マヌエラ・ヤンケさんのストラディバリウスが輸入申告を怠ったなどとして、税関に差し押さえられた。外交筋によると、ドイツで税関の検査が強化され始めたのは数年前。欧州債務危機の影響で徴税に力を入れているとの指摘もあるが、最近になって急に厳しくなったわけではないという。

高価な楽器が差し押さえられるケースはドイツだけでなく、フランスなど他の国でもある。(共同)

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この件を扱っているブログ記事

http://ameblo.jp/yusyutsukanri/entry-11371577023.html

http://ameblo.jp/casat/entry-11370957544.html

http://sakufuu315.exblog.jp/16549093/

http://flowerpiano.seesaa.net/article/295438066.html

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2012年10月 9日 (火)

『保元・平治の乱 平清盛 勝利への道 』(角川ソフィア文庫) 元木 泰雄 (著)

大河ドラマ『平清盛』の脚本での多くの疑問が氷解するような微に入り細に穿つ本格的な歴史書で、たまたま書店で目について買ったのだが、得をした気分だ。

この日曜日は、福原(現在の神戸)の大和田の泊りの工事に関連して、若い頃からの盟友の瀬戸内海賊の頭領兎丸と、平家の密偵禿(かむろ)との悲劇的な関係を描写していたが、清盛の心境の変化があまりにも上滑りしていて、見ているのがつらいほどだった。何だかなあ、という感じだ。その一方で、「ちゃちな五条大橋」の上での遮那王(牛若丸)と弁慶との出会いの場面は、なるほどそういう描き方もあるかという感想を持つほど、わりと新鮮なものだった。

もともと、元木泰雄のこの著書は、NHKブックスとして2000年代初期に発行されたものだそうで、今回のドラマにも相当活用されたのではと思いきや、この本で描かれた清盛の平治の乱までの取り立てて主体性の無く、偶然が重なって政権中枢に上り詰めたという歴史解釈に反して、無理やりその時期の清盛を主人公に仕立て、そのライヴァルとして義朝を仕立てたところに、様々な綻びが見える結果となったのではないかと、思わせるものだった。

王家(法皇、上皇、天皇とその后)、王家側近の非摂関家貴族、藤原摂関家、台頭してきた武家(京武士、坂東武者)という勢力関係、さらに鳥羽院政が、嫡流の崇徳天皇を排除して、無理やり権威も勢力もない後白河天皇をショートリリーフとして即位させたことによって生じた院政の機能不全など、藤原氏の関係者が数多登場し、わかりにくいこと甚だしいのだが、このあたりを丁寧に描けば、一般受けはせずとも、相当面白い政治模様、人間模様が見られたのではないかと、読みながら思った。

なお、「平清盛勝利への道」は、この角川ソフィア文庫で復刊するときにあたって出版社が補したものと、筆者の断り書きで述べられていた。出版社側は、大河ドラマの関連本としての売り込みを図ったのだろうが、内容を必ずしも反映していない副題であり、この詳細な歴史書を安っぽくするように感じる。清盛は結果として勝利への道を歩みはするが、それは本当に偶然の積み重ねというのが、筆者の考えのようだ。

また、清盛が太政大臣に任じられ、位人臣を極められたのは、やはり白河院の庶子であることを当時の朝廷も藤原貴族たちも認めていたからで、そうでなければ、あり得ないという解釈が述べられていた。ただ、その清盛の影響力によるのだろうが、平家の一門が、それまでの例によらずして、次々に高官に任じられたことは事実であり、必ずしも家系重視の先例を破ることが、おそらく平治の乱以前の藤原信頼あたりから、すでにタブーではなかったということも考えられるように思う。

書かれている事実が複雑で、すんなりとは頭に入らないきらいはあるが、不可思議に感じていた保元・平治の乱の疑問を快刀乱麻を断つように解決してくれる好著だと思った。

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            実家から送られてきた秋の山の味覚 あけび

関連記事:2007年11月14日 (水) 西行と玉藻前

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2012年10月 8日 (月)

コピ・ルアクをとうとう飲んでみた

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2012年6月 2日 (土) コピ・ルアク を注文をしたはいいが、その後続いた暑さと湿気で、ドリップコーヒーを自宅で飲む気になれず、もったいないことに今まで放置していた。

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10月1日のコーヒーの日なるものも過ぎ、前の森から蝉の鳴き声が聞こえなくなった体育の日に、コーヒーミルで挽いて、ペーパードリップで落とし、ようやく飲んでみた。

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さすがに購入したときの芳香は大分おさまってしまっていたが、めったに飲めないものなのでミルを掃除し、気合を入れてドリップして、家族全員で試し飲みをしてみた。

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ベースは、マンデリンということでもともとコクがあるコーヒーで、それほどコーヒー自体の香りは高くない品種だが、穏やかでマイルドな味わいだった。熱い温度のときよりも、冷めてきた方が特徴がでるようで、最後にカップに残ったコーヒーの香りや後味が悪くなかった。

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カップ2杯で、約1200円するのだから自宅で飲むコーヒーとしては破格の値段ではあるが、喫茶店で飲むことは考えればそれほど高いものではない。

今は、コーヒー豆も手軽に入手でき、ドリップコーヒーも家庭で安価に飲むことができるが、今回のような貴重な豆を扱うように、以前の日本人は飲んでいたんだろうなと、そんなことに思いを馳せた。思えば本当に贅沢な暮らしに慣れてしまったものだと思う。

その後、せっかく出した道具なので、冷凍庫に保存してあったウィーン土産のコーヒーの最後をドリップして飲んでみた。ヨーロッパの中でも最も早くコーヒーが親しまれた都市ということもあり、お土産のコーヒーながらとても美味しいものだった。コピ・ルアクとはまったく別の風土のヨーロピアンコーヒーで、ウィンナコーヒー用なのか苦みの強いもので、冷めるとよけいその苦みが際立った。

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