毎年この季節になると、田舎から夏野菜が大量に届く。父が家庭菜園で丹精した胡瓜、茄子、トマト、莢隠元、獅子唐辛子、ピーマン、じゃが芋(*)などなど。そのほか、赤紫蘇や岡鹿尾菜なども。
(*)最近読んだ牧野富太郎のエッセイによると、南米原産のじゃが芋 potato を 馬鈴薯と呼ぶのは間違いだという。
特に、今年は高冷地の田舎も猛暑の影響か、胡瓜と茄子の出来がよく、見事に大振りに実ったものがダンボール箱いっぱいに届いた。
また、妻の実家からは、信州黒姫山麓の農家産のトウモロコシと、地元産の桃が送られて、それに加えて妻の近所の友人から地元の家庭菜園でできた茄子なども沢山届き、臨時で八百屋を開店したいほどの盛況になっている。
先週初めから、妻が珍しく本格的な夏風邪を引き、その間の料理は夏休みの高校生の子どもたちや私が担当したのだが、冷蔵庫に入れる余地がないため段ボール箱に入れて、廊下に置いてある野菜の様子を、この土曜日にチェックしてみると、室内30度を超す高室温のため、せっかくの葉物は傷んでいるものもあり、茄子も胡瓜もしなび始めていた。
夏野菜料理と言うと、生野菜サラダや味噌汁のほかに、大量に投入した野菜カレーや、茄子とピーマンと玉ねぎによる油味噌が思い浮かぶが、それだけでは使いきれないと心配になり、結婚のときに買った素材別の料理ブックを開いてみたところ、ラタトゥイユなる料理が目に留まった。どうやらこの料理ならば、茄子、胡瓜、トマトを大量に一度に調理できそうだと目星がついた。フランス料理風な名前だが、イタリアやスペイン風でもあり、なかなかおいしそうだ。
レシピ通りではないが、適宜アレンジして調理してみたところ、特別に調味料は使っていないにもかかわらず、野菜の甘みと旨味が混然一体となったなかなか結構な味の料理が出来上がった。自己流のポイントは、ニンニクを隠し味にするため玉ねぎを炒める前に最初にオリーブオイルで炒めること(イタリア料理では当たり前?)と、コンソメなどの固形スープが無かったのでその代わりに粉末の昆布だしの素を使ったことだろうか?グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果ということが美味しんぼ情報として頭に残っていたが、今回のはトマトと昆布のグルタミン酸相乗効果であろうか?
土曜日の夕食には、スパゲッティを茹で、このラタトゥイユをソースとして和えて、夏野菜スパゲッティにしてみたが、もしかしたら「お金が取れるかも」と密かに自画自賛できるほどのレベルだった。
翌日の日曜日は、午前中からラタトゥイユ第2弾に挑戦してみた。今回は胡瓜を入れ忘れたことや、使い残しのじゃが芋や莢隠元を使ったこともあり、途中から方向転換して、この野菜の煮物ラタトゥイユ風をベースにした夏カレーにしてみた。ただ、玉ねぎとトマトの甘みと旨味と酸味が際立っているせいか、カレールーを投入しても、ベースの味にカレーの風味が少し負けてしまい味のバランスがあまり整わない気もしたが、それなりに野菜を美味しく消費できた。
ところで、昼食の付け合せは、ゴーヤの炒め物。卵や肉を入れたチャンプルー方式にしなくても、ごま油で炒めて、鰹節を掛けるとそれなりに美味しいことが分かった。
夕食もカレーで、大量の野菜が入っているのだが、さて胡瓜をどうしようかと思い、夕食には胡瓜の炒め物を試してみた。先の料理ブックの胡瓜の章に、生食するのが普通だがビタミンCを分解する酵素が入っているため、中華料理では熱を加えて食べることもあると書かれていたことにヒントを得た。やはりゴマ油で炒め、フライパン蓋で少々蒸し焼きにして熱を通し、軽く振り塩をしてから、中華スープ(ラーメンスープの残ったもの、昆布だしの入った麺つゆでも可)を加えて、少し冷ましてから食卓に出したところ、胡瓜独特の青臭味も抜け、中華風漬物とも言えるいい味になっていた。大量に取れる夏場の胡瓜を腐らせずに日持ちさせるためには、実家の母が佃煮にして保存するようにしているが、毎食の生食のサラダや塩もみなどに飽きたときには、この炒め物もなかなかよいのではないかと思ったりもした。
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