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2013年8月11日 (日)

村上春樹の旧作品のまとめ読み 

2013年4月、新作の「多崎つくる」 が出版された。「1Q84」の第4部が発刊されるのではないかとの自分の予想が外れた。「1Q84」の第1部、第2部は、妻が図書館から借りてきたものを読んだので、第3部を自分で購入したときも相当記憶が薄まっていて、十分味わった感じが無かった。そこで、この4月から5月に掛けて、「多崎つくる」を読む前に、村上春樹の旧作を読んでみようと思いついた。先日ブックオフで「ハリポタ」があまりに廉価だったのに味をしめ、何店かめぐってみると、村上のハードカバーも多くが廉価で入手できる。その内、「世の終わりとハードボイルド、ワンダーランド」は古書店で入手できず、新刊書を購入した。

初期作のいくつかを除く多くの小説、村上が自らまとめたインタビュー集、「アンダーグラウンド」などのノン・フィクションを読んでみて、これまで自分が、彼の小説を、エンターテインメント系の「リアリズム」小説として無理な努力を重ねながら読もうとしていたことが分かった。先入観の問題で、はぐらかされた感じが強かった。

ただ、そうは言っても、リアリズム小説として書かれたという「ノルウェイの森」にしても、はぐらかされ感からは逃れられない。それでも、主要作をざっと通読してみて、面白さを感じたのは、「世の終わりとハードボイルド、ワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」「1Q84」だった。オウムによる地下鉄サリン事件で被害を受けた人たちやその遺族の人たちへのインタビューをまとめた「アンダーグラウンド」は、いつの間にか風化しつつあるこの「大事件」に関する重要な資料であるようには思った。

ところで、今回「1Q84」を第1部から通して読み直してみて、1Q84の第3部の章の数が31で、3章ずつサイクルを作っていることに改めて気が付いた。

31章が、ミソヒトモジのメタファーだと以前読んだときには考えた。ところが、今回Book1,2 の2章ずつのサイクルでそれぞれが、24章というのは、おそらくバッハの平均律(*)クラヴィラ曲集の1、2巻とも長・短調のセット×12回で24曲(そもそも、バッハはなぜ2集作曲する必要があったのだろうか?)の隠喩だとされていたこともあり、第3章の31章はゴルトベルク変奏曲(アリアと30の変奏曲。変奏は、3曲がセットになっている。そのセット内では、第1曲目が特徴的な舞曲による変奏、第2曲目が技巧的な変奏、そして第3曲目が、1度=同度からセット毎に次第に度数を増やしていくという作曲技巧上の超絶技巧で作られたカノンによる変奏で、第27変奏では9度のカノンとなっている。ただしダカーポで冒頭のアリアが再現されるので、円環が閉じられるように、しめくくられ、その意味で32曲とも言いうる。)に関連づけれらるのかも知れないとも思われた。

第30変奏のクオドリベットが雑多な要素の融合も行われているが、小説では、第1章が牛河の章、第2章が青豆、第3章が天吾となっている。少々牽強付会かも知れないが、以前、島田雅彦という小説家が「音楽探偵アマデウス」というテレビ番組で、ゴルトベルク変奏曲の変奏曲の数とひと月の日数との関連に触れていたことも思い出した。

(*)最近読み直した芥川也寸志の「音楽の基礎」で、しっかりと「平均率」と書かれていたのには驚いた。一か所だけでなく、何か所も同じ表記だったので、おそらく間違いではないのだろう。

(元記事 2013年4月)

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