カテゴリー「アニメ・コミック」の17件の記事

2014年8月 5日 (火)

二つのニュース

一つは、スタジオジブリがアニメ制作部門を解体するというもの。

映画制作部門を解体し、今後は版権管理などの事業だけを継続するとみられる。公開中の「思い出のマーニー」(米林宏昌監督)がジブリ最後の長編作品となりそうだ。宮崎駿監督(73)の引退表明から1年足らず。世界に冠たる日本のアニメ業界にとっても大きな局面を迎えた。

もう一つは、サイトウ・キネン音楽祭が、セイジ・オザワフェスティバルに名称を変更するというもの。

長野県松本市の音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(SKF)」が来年、国際的指揮者の小澤征爾氏(78)の名を冠して「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に生まれ変わることになった。実行委員会が4日、東京都内で記者会見して明らかにした。

どちらも、一時代を画した天才であり、いまや巨匠と呼ばれるようになった芸術家に関係するが、ベクトルが異なるように思う。

前者は、ウォルト・ディズニー後のディズニーのような形態がとれないのかの模索時期かも知れない。

後者は、現存する人物の名前を、それも日本語ではなく、英語的な名姓で付けるというのは、とても違和感がある。小澤征爾の「師匠」であるミュンシュ、バーンスタイン、カラヤンも自分の名前を冠した音楽祭を企画したことがあったのだろうか?

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2014年7月18日 (金)

明日公開のジブリ映画「思い出のマーニー」の原作(新訳版)

「思い出のマーニー」  高見浩の新訳(新潮文庫書き下ろし)2014年初版を書店で見かけ購入。読了した。新潮は映画公開をターゲットに刊行したようだ。角川でも別の人の訳で出ているらしい。

ジブリ映画のマーニーでは、岩波少年文庫版をベースにしたらしい。

「アリエッティ」もそうだったが、多くの児童文学(ファンタジー)の「名作」を網羅的に調査しているのが分かる。「ゲド戦記」は、若いころから自分も知っているほどで、それなりにメジャーだったが、「ハウル」は、日本の大手では訳が出ていなかったと思う(後で調べたら 1997年頃、ジブリと関係のある出版社の徳間書店から初訳が出たのだという。その3部作は、長男が好んでおり、その中では、「チャーメインと魔法の家」 原題:House of Many Ways 2008はとても面白かった。)

「マーニー」を読み進めると、以前読んだ英国児童文学の「トムは真夜中の庭で」に、似たところのある設定だな、との考えが浮かんできた。(本文を読み終えた後に、高見浩のあとがきを読んだら、まさにこの作品のことが語られていた。自分の想像力も今回は的外れではなかったようだ。)

言ってみれば現実と過去の交錯のような設定。イギリスでは古い建物(シェークスピア時代の16世紀だったかの建物が、もちろん何度も改修はされているものの未だ住居として使われているものもあるという。以前訪れたことのあるアイルランドでも、古い土壁で作られたような大きな茅葺風の民家を見かけたことがあった。)に、何代もの人々が住んでいるというが、そのような国ならではの設定だろうか?

古い時代の遺跡を訪れてそこに佇んだりしていると、その時代を「感じる」ような幻想的な気持ちになるようなこともないではないが、それが特別な史跡ではなく、身近な民家だったりするのは、人々の精神風土にも影響を残すような気がする。

幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー なるテレビ番組(NHK)でも、イギリスやスコットランドの幽霊屋敷のことが「科学的」に取り上げられているが、後天的記憶の遺伝(あるいは、エピジェネティクスの範疇だろうか?)でも、精神的な風土というものは説明できるのかも知れない。

もちろんそのような幽霊譚として見なくても、とても上質な小説(物語)だった。私の場合、読み進むにつれて次第にこのミステリー小説とも読める物語の謎の答えが見えてきたので、劇的な展開ではなく、むしろ心温まる内容だった。

それと同時に、子育てというものが、いずれの時代、どのような環境であっても困難を宿しているのだということを認識させられたように思われる。

映画は、特に関係している日本テレビで、宣伝番組が連続して行われ、トレイラーも何度か流されたのを見た。場所の設定は、「アリエッティ」と同じく、原作のイギリスが日本に変更されているようだが、原作の雰囲気とはそれほど違和感が無いように思える。ただ、海岸の湿地と、内陸の湿地では砂と泥の違いは大きいように思えるのだが。

家族の動向を見ると、この夏もジブリ映画かも知れない。

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2014年7月15日 (火)

"FROZEN" 日本版 一日先行発売

Frozen_3 最寄りの量販店では、一日早く、本日発売だった。

ディズニーが始めた新しいパッケージ販売で、MovieNEXという。

Blu-ray disk, DVDが一つのパッケージに入っていて、値段は定価4,000円(税別)。それに加えて、デジタルコピー(クラウド)へのアクセス権(コード)が封入され、モバイル機器やPCで見ることができる。またおまけ的だが特設サイトで限定コンテンツを見る権利も付与される、といった仕組みのようだ。アクセスしてみたが、発売日の明日にならないとダメとのメッセージが出た。

ジブリなどの別売り(DVD4700円、Blu-rayが6800円)よりも廉いのは、製造・販売側でも管理が楽という理由があるのではなかろうか?

追記:7/16午前0時過ぎにアクセスしてみたところ、受け付けられた。Gmailを利用しているため、ユーザアカウントが登録してあったので、GooglePlayを使って鑑賞できた(日本語吹き替え版のみ)。アクセス可能期間は、2年間のようだ。ブラウザはFirefoxでは、私の環境ではライセンスの関係?で上手くいかず、IEにしたらきちんと動画が再生された。(翌日、FirefoxでGooglePlayとYoutubeで試してみたら問題なく再生できた。もしかしたらMovieNexとFirefoxが相性がよくなかったのかも知れない。)

※本編取得の登録期限は以下の通りです。Google Play(2016年7月15日) / niconico(2016年7月15日)
※選択できるのはいずれか1つのプラットフォームで、視聴に際しては、ユーザーアカウント(Google Playもしくはniconicoデジタルコピー)が必要になります。

一度アクセス手続きをすれば、その後はMovieNEXを開かずとも、GooglePlayで「無料」購入したという扱いになっていて、GooglePlayを開いて鑑賞ができる。さらに、Youtubeでも購入済として登録されてた。取得の期限が2年後までということで、Youtubeでの有効期限は、「有効期限なし」となっていたので、再生可能期間が購入後2年ということではないらしい。

DVDで英語音声、英語字幕で通しで初めてみたが、英語ネイティブな子ども向けなのだろうが、瞬間的に意味が取れない台詞などもあり、少々隔靴掻痒だった。

また、これまでに何度もみた「Let it go」のシーンは、押し詰まったクライマックスだろうと予想していたが、意外にも前半に登場したのには驚いた。

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2013年9月30日 (月)

「3月のライオン」第9巻(羽海野チカ)

先週末に発売された「3月のライオン」第9巻は、ピンクを基調とした色彩の何とも可愛らしい表紙絵で、まさかこれが「ヤングアニマル」なる男性(少年)向け雑誌連載だとは思えないだろうというものだった。逆に第8巻は、老棋士が表紙を飾るというもので、対照的に渋いものだったのだが。書店でも、もともと「ハチミツとクローバー」などで著名な女性漫画家として知られた作者の作品であり、女性向けコーナーと男性向けのどちらに陳列するか迷っているのではなかろうか?ちなみに職場最寄りの書店では、女性向けの棚に並んでいる。

今回も読みごたえがあった。

棋士たちの才能・努力・勝負、いじめ問題、受験、家族、恋愛、老人の生きがい、生計の道などなど、扱っているテーマが多彩だが、どれもしっくりくる出来栄えだった。

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2012年4月17日 (火) 3月のライオン 羽海野チカ (第7巻)

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2013年9月28日 (土)

コミック(アニメ)「銀の匙」と中勘助「銀の匙」

9月も最終日が近づきつつある。4月開始の年度では、上半期が終わることになる。

先日の台風の後、彼岸を経て、涼しくなりつつあったが、秋晴れに誘われて蝉がこの晩夏の名残を歌っていた。

上半期の最終週の今日土曜日、人気の高さが話題となったNHKの朝ドラ「あまちゃん」が最終回を迎えた。コネタ満載という意味では面白かったが、ここ数年間の朝ドラ(*)を録画視聴で見続けた者としては、質の点ではとりたてて高度だったわけではなく、偉大なるマンネリに風穴をうまく明けたという感じではなかろうか?

(*)てるてる家族、どんど晴れ、ちりとてちん、つばさ 、ウェルかめ、ゲゲゲの女房 、てっぱん、おひさま、梅ちゃん先生、純と愛 など

朝ドラの女性ヒロインの半生記というマンネリ的・伝統的モチーフは、来年の上半期の村岡花子訳の「赤毛のアン」に影響されたのではないか、という分析をあるところで読んだが、うべなるかなと思った。前回の「純と愛」は、面白かったものの、この朝ドラの固定視聴者層にはアン・ハッピーエンドや不要になった登場人物を死なせてしまうような部分がエキセントリック過ぎた感はあったが、今回の三世代のマーメイドによるドラマは、そこまで奇矯さを際立たせず、コネタが分からなくても、ついて行ける一貫した伝統的な半生記性も持ち合わせていたのも人気の秘密だったのかも知れない。

さて、この春に遅ればせながら家族ではまったファンタジーコミックの巨編『鋼の錬金術師』の作者荒川弘(あらかわ・ひろむ)という女性漫画家(*)が、今度は実体験に基づいたリアリズム系の「銀の匙(Silver Spoon)」というコミックを発表していて、それがこの夏シーズンの(深夜)アニメ時間帯に放映された。

女性漫画家の出身校の北海道の農業高校を舞台にした現代的な青春もので、食と生命、農業への強い意識がうかがわれるもので、その点同じ農業系の学校(農大)を舞台にした「もやしもん」とは若干方向性が違うようで、こちらの方がシリアス路線だろう。

書店の平積みコーナーでも見かけ、評判は幾分知ってはいたが、アニメーションが面白かったので、コミックも読み始めた。

「銀の匙」というと、古い世代にとっては、例にもれず、中勘助の小説「銀の匙」を思い出した。私が以前求めたのは、ちくま文庫の日本文学全集に入ったものだった。

神戸の灘中学・高校でこの「銀の匙」をテキストに国語授業を行ったことで有名になった橋本武氏が、つい先日長寿を全うされて亡くなったと新聞に出ていたが、その前に岩波ジュニア新書で出されていた「<銀の匙>の国語授業」を入手しており、ざっと読ませてもらっていた。

何も文庫本一冊ですべての授業を行ったのではなく、あくまでも現代国語の教材として、橋本氏自身が生徒のために毎回膨大なプリントを準備して、関連する故事来歴や様々な言葉の意味などを解説し、生徒には要約や感想などの課題を課すと言った、綿密なものだったようだ。

(*) 恩田陸(りく)、有川浩(ひろ) 桜庭一樹 など著名な女性作家だが、字面だけでは男女が判断ができない人が増えているのだろうか? 

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2013年9月 2日 (月)

アニメーション映画「風立ちぬ」(宮崎駿監督、スタジオ・ジブリ、2013年夏公開)

夏休み直前に公開された映画だが、ようやく夏休み最終の土曜日に見に行ってきた。

Photo(前売り券の画像)

ゼロ戦と堀辰雄と言えば、自分にとって小中学生の昔から興味のある対象だったので、あまりに壺に嵌り過ぎているような気がして、自分としてはむしろこの映画を敬遠する気分で、当初は自分だけロードショーでは見ずに、妻が子どもたちと見に行く予定だったのだが、妻の夏風邪で8月初めの予定が延期になり、その後子ども達の宿題の進み具合や、実家への帰省、妻の資格試験の受験勉強などが重なり、ようやく8月の最終日に私が子ども達を連れていくことになったのだった。

ジブリ映画を映画館で見るのは、横浜が舞台になった『コクリコ坂から』(2011年)以来だが、その前の『崖の上のポニョ』も印象深かった。『風の谷のナウシカ』(1984年)のロードショーを映画館で観て何か救われたような感じがしたのだが、その映画の監督が、高校生のときに熱中して初回放映を見たテレビアニメ『未来少年コナン』の監督だと知って以来の付き合いでもある。

さて、この映画公開が7月20日でもあり、10スクリーン以上もあるシネコンということもあり、さらに話題ホラー映画『貞子3D2』が8/30に公開されたばかりだったり、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』という一部に熱狂的なファンがいるアニメ映画の公開日だということもあったのか、12時からの回は意外なほど座席が空いていた。また、アニメーション映画ではあまり見かけない比較的年輩の観客の姿が目立った。

涙腺が弱くなっているせいで、ちょっとしたエピソードですぐハンカチが必要になった映画ではあった。ただ、「ナウシカ」のように浄化・カタルシス的に癒されたかと言えばそうではなく、いろいろ複雑な感慨をもたされた宮崎監督72歳の作品でもあった。

構成上は、二つのストーリー(堀辰雄の「小説」と、飛行機設計エンジニア堀越二郎の半生)の融合感はあまり良くなかったように感じられた。その意味では逆に二つの源泉を知らない方が素直に見られたのかも知れない。映画に先立った宮崎監督自身の原作漫画があるそうなので、それと見比べてみたいものだ。

その意味で大きな一本線のストーリーとしてではなく、部分部分のエピソードの方に強い印象を受けた。特に冒頭の関東大震災の描写は(音量の大きすぎる映画館のモノーラル!の音響設定とも相まって)迫力がありすぎだった。相模湾を震源とする地震の波が、小田原の町(?)から広がり、大正、昭和の日本の都市の瓦葺の低層木造家屋の美しい街並みが、地震の波によってのたうつように揺れる様は、ショッキングだった。地震の揺れのために蒸気機関車が急ブレーキをかけて緊急停車するシーン(二郎の故郷上州藤岡からすると、信越線・高崎線だろうか?)なども含めてこのようなデフォルメ的な動きの描写こそに、アニメーションの面目躍如があるように感じた。ただ、災害や強風の描写にはアニメ的な迫力があったが、飛行機による空中戦や爆撃のシーン(96式陸攻が空襲に赴くようなシーンはあったが)など戦争自体を描くシーンは意外にも少なかった。

さて、この映画の一つのテーマでもあるであろう「ゼロ戦」については、このブログでも以前とりあげたことがあった。

2005年2月22日 (火) 国立科学博物館の零式艦上戦闘機

(参考 坂井三郎について:松岡正剛の先夜千冊568夜「大空のサムライ」

2006年7月14日 (金) 映画「トラトラトラ」

2010年の夏に、太平洋戦史を読んだ頃には、立て続けに大学時代に謦咳に接した故・池田清教授の『海軍と日本』(中公新書632)や、百田尚樹の『永遠のゼロ』、水木しげる『敗走記』、吉村昭『零式戦闘機』などをまとめて読んだのだった。

Hyakuta_eien_no_zero_3 Yohimura_reishiki_3

吉村昭のノン・フィクション的な小説である『零式戦闘機』での印象に残った記述、名古屋の三菱の工場から岐阜の各務原の試験飛行場まで、舗装されていない道路を延々と、人家の軒先をかすめながら牛車によって試作機が運搬される部分が、今回の映画でも二回も描かれていた。社会インフラも人々の暮らしも貧しく、非力な飛行機エンジン(『海賊になった男』の燃料のオクタン価の話題では、航空燃料も劣っていたという)を生かすための、防弾能力を割愛せざるを得ず、極限まで軽量さを求めた機体の開発、設計の末に生み出された零式艦上戦闘機、ゼロ戦。そして、それに先立ち、その対極でもある、戦艦大和と武蔵の大艦巨砲主義のちぐはぐさ。(世界一を目指すスーパーコンピュータの現代も、もしかもすれば、似たり寄ったりなのかも知れない。今でもどこかアンバランスな感じが拭えないのだ、わが国は。)

ところで、日本の戦争映画や、ドキュメンタリーを見たり、読んだりすると、米英との物量差も考えずに「負ける戦争」に無謀に突っ込んでいったことを批判することが多いのに気が付く。それでは勝てる見込みのある戦争ならどうだったのだろう、思わされることが多い。戦争それ自体の悪、不正義、を問題にすることは少ないように思う。

この作品中でも、ソ連スパイのリヒャルト・ゾルゲをモデルとしたと目される西洋人(ドイツ人?)が、「日本も破裂、ドイツも破裂」(?)というようなカタコトの日本語で、主人公の堀越二郎に向かって戦争の先行きの予測を述べるシーンがあったし、堀越らの高等教育を受け、海外視察(留学)も行い、英独の雑誌を購読するようなインテリ層でもあるエンジニアたちも、英米との戦争には懐疑的な感想を述べているのが描かれていた。そのようなシーンでそんなことがふと頭をよぎった。(ゾルゲ?がピアノの弾き語りで歌う「会議は踊る」からの「ただ一度だけ」。昔、NHKラジオのドイツ語会話で、今月の歌で掛かっていた歌だった。東西の歴史の諸層が複雑に絡み合った感がある。ドイツのユンカー社だとかも。)

(2'20"あたりからDas gibt's nur einmal のオリジナルが聴かれる)

要するに、「勝てる戦」ならよかったのだろうか?という疑問だ。

2011年8月25日 (木) 加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)でも触れたのだが、「原発もあの戦争も、負けるまではメディアも庶民も賛成だったのではないか?」ということだ。支配層や一部のインテリ識者は、その危険性や不可能性を知っているのだが、庶民層である世間は、マスメディアや世論によるある種の集団催眠(生得的な条件反射=文化)に掛かったかのように、レミング的に、深層雪崩のように根こそぎ時局を動かしていくのかも知れない。 仮に、第二次大戦で枢軸国側が何らかの偶然の結果、勝利を収めていれば、そのような戦争遂行の「無謀さ」に対する、結果論的な反省はあまり行われなかっただろう、などと辛辣なことを思ってしまう。

さて、この映画は、堀辰雄の「風立ちぬ」がストーリーの下敷きになっているのだが、ヒロインの名前は節子ではなく、「菜穂子」であり、同じく堀の小説から取られている。姓の里見だが、これは作家の里見弴(さとみとん)から取られたように思われた。

里見弴 同じく小説家の有島武郎画家有島生馬は共に実兄。

姉の有島愛は旧三笠ホテル経営者の山本直良と結婚。指揮者作曲家山本直純は、その孫にあたる。また愛の息子の山本直正は、与謝野鉄幹与謝野晶子夫妻の二女の与謝野七瀬と結婚した。俳優の森雅之は長兄・有島武郎の息子なので、甥にあたる。

堀辰雄の小説「風立ちぬ、美しい村」は、おそらく集英社文庫だったと思うが、中学生時代に父母のどちらか忘れたが、買ってきてくれた。当時は通読できなかったように思うし、その後も流し読み程度しかしなかった。その後、彼の小説に、フーガ(遁走曲)だの、カペーカルテットだのが登場して興味が湧き、追分の「記念館」を訪れ、カペー四重奏団のSPレコードがあるのを見て感激したりした。軽井沢の文人の中では、堀よりも立原道造の方が好きだったりもしたのだが。

菜穂子が結核の療養のため入院した富士見町のサナトリウムだが、その描写の前だったか後だったかの列車が深山の山峡の鉄橋を渡るシーンは、同じ八ヶ岳山麓だが富士見側とは反対にあたる小海線のこの橋梁と八ヶ岳のシーンではなかったろうか?(写真-5  小海線  撮影年:昭和46年  撮影場所:清里-野辺山)

結核、労咳が、不治の病だった時代。若くして、ゆっくりとした死と向かい合わざるを得なかった人々。軽井沢がトーマス・マンの「魔の山」に擬せられるが、富士見のサナトリウムは、喧噪とは隔絶された静かさの中にあったようだ。真冬の零下20度にもなるような戸外で、寝袋にくるまって結核患者の人たちは過ごしていたのだろうか?印象的でありショッキングな描写だった。(近年「治療不可能結核」(薬物耐性結核)が登場してきているらしい。)

嫌煙派から批判のあったタバコのシーンは、確かに多かった。ヘビースモーカーが多かった時代であり、文学者や研究者などはタバコとともにあったようなイメージがある。その時代のアイテムとしては欠かせないものだろう。嫌煙派の偏狭過ぎる批判は、「痛い」。

軽井沢のホテルで、「ゾルゲ」がぱくついていたクレソンだが、故郷信州の高冷地では、「台湾せり」と称した。日本の在来種のセリとは異なる外来植物だろうが、千曲川源流地帯の清流のほとりに自生していたものだった。生で食べるよりも、おひたしにして食べることが多かった。あの爽やかな味は子ども時代ながらも忘れがたい。もう源流地帯も農薬の心配もあり、簡単に食べることはできないだろうが。

風景描写では、夏の軽井沢の高原の透明な空気感、木陰の羊歯と水流の様子など、ジブリ一流の風景画としての魅力が十分に詰まっていたのが印象的だった。

声優では、論議を呼んだアニメーション監督の庵野秀明の起用は、「トトロ」での父親役の糸井重里や、「耳をすませば」でのやはり父親役の立花隆に比べれば、「エヴァ」の監督だけのことはあり、ただの素人的な棒読みではなく、演劇的な劇的な要素も多少含まれ、それほど違和感は無かった。しかし、ロセッティの「風」の詩の朗読などは少々つらいものがあった。

ヒロイン菜穂子役の瀧本美織は、ソニー生命のCMや朝ドラ「てっぱん」の頃から爽やかな美声で印象があったが、陰影のある役柄をうまく演じていたように思った。個人的に惜しむらくは、「菜穂子」のアニメーションとしての映像キャラクターが多面的なものを含むからなのか、同一人物には見えないような、一貫性がないように感じられるところがあったことだ。リアリズムよりも、主人公やヒロインの心象と見ればいいのかも知れないけれど。

なお、ポスター等で使われている主翼がW字型の飛行機のシルエットは、ゼロ戦の前に堀越たちが設計した九試単座戦闘機 とのこと。

そして、今日9月2日に、ジブリの社長がベネチア映画祭での記者会見で、宮崎駿氏の長編映画からの映画監督引退を発表したニュースが伝わってきた。宮崎監督と長年コンビを組んできた鈴木敏夫プロデューサーが、「この映画は宮崎の遺言」と語っていたようだが、それに呼応するものだろうか?

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2013年8月13日 (火)

安彦良和 「ナムジ」「神武」 (記紀神話再解釈)

今年の初夏、5月か6月に、職場最寄の駅前書店で、中公文庫のこのコミックシリーズがなぜか平積みで売られていた。

ネットで調べてみると、1990年頃に発表された作品で、その当時にそれなりに話題になった作品だったらしいが、知らずにいた。このコミック・アニメーション作家の作品としては、ガンダムがあまりに有名だが、この記紀神話の再解釈ものは、荒神谷遺跡からの大量の銅剣出土などを契機とする梅原猛の出雲神話の再評価(「神々の流竄」の否定)に通じるようなものでは無かったのだろうか?

因幡の白兎神話などで子どもにも知られ、出雲大社に祀られる大国主命は、記紀神話の記述でも非常に多面的な性格を併せ持つ神のようだ。その子とされる建御名方神は、天照大神の使いの建御雷神の命に服さず力くらべをしたが負け、信濃国(長野県)諏訪湖まで逃れ、同地に鎮まったとされるが、古代信濃の諏訪が神話に登場し、諏訪神社が全国各地でいまだに尊崇されている事実と相まって、出雲と信濃という遠い国の間の古代の交流がどのようなものであったかなどと想像を膨らますのも楽しい。諏訪に入るには、険しい美濃から木曽の道よりも、日本海側を海路で巡って、糸魚川から安曇野に出、そこから諏訪に入るのが順路だろうと思うが、さにあらんか、大国主命と糸魚川の奴奈川姫との間の子が、諏訪に祭られている建御名方神と、神話でも語られている。

このような象徴的な神話を、リアリズム的な解釈により、ストーリー化したものが、このナムジ、神武で、そのストーリー性の巧みさには感心した。原田常治という人の「古代日本正史」(*)がこのタネ本であることを、著者である安彦氏自身が明らかにしている。

(*)神社伝承学 http://www2.plala.or.jp/cygnus/k1.html (真説日本古代史)

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2012年7月20日 (金)

米澤穂信 古典部シリーズ(『氷菓』など、角川文庫)

このシリーズは、7月15日の朝日新聞の読書欄の売れ筋で紹介されたが、この春から始まった深夜アニメの影響でこのシリーズを読み始めた。妻はすでに第1巻を読んだことがあったらしく、そのイメージとアニメーションのイメージが合わないと言っていたが。

アニメーションとのコラボは最近多く、地味だったこのシリーズだが、相当の売れ行きを見せているらしい。

この作家の金沢や東尋坊を舞台にしたサスペンス小説『ボトルネック』の後味があまり良くなかった印象を持っていたが、この青春ミステリーシリーズは結構面白かった。

もどかしい感じや、本歌取りの対象の先行ミステリーにこだわり過ぎているのか構成的に無理な感じも受けることがあるけれど、殺人事件やそれに類するような重大な刑事事件がまったくないのは、高校生活を舞台にしたものとして好ましい。

ただ、自分が高校生だった頃は、こんなにものを考えていただろうか、行動しただろうか、と記憶をたどると、やはりその意味では青春物は、青春を過去のものとして客観視できるようになってから書けるものかとも思ってくる。

ミステリものは、読み終えるとその記憶が相当薄れてからでないと読み返しはできないものだが、このミステリ風青春小説は、意外にもそんなことはなく、直近での読み直しにも耐えるようだ。ここは主観的なものかも知れないが、なかなかそのような本はあるものではないので、その点よく書けているのではなかろうか?

ただ、カバーがアニメーション放映に合わせて、アニメがらになっているところが、大人の読者にとっては少々敷居を高くしているところかも知れない。

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2012年7月19日 (木)

ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』 (池央耿訳)

2011年の1月、2月に読んだSF小説だが、最近たまたま買った漫画雑誌『ビッグコミック』にその漫画化版が掲載されていて驚いた(漫画化:星野之宣)。

記憶も多少薄れてしまったが、地球の衛星月の特異な(?)特徴をモチーフにした壮大なSFだった。

シリーズになっており、第2巻以降も続くらしい。

第1巻の『星を継ぐもの』の冒頭は、とても読みにくい。2010年の年末に帰省したおり、妻が持参して読み終えたのを、帰路の列車内で読み始めたのだが、何が書かれているのか五里霧中の様相を呈していて、これがこのまま続くのかと妻に聞いたほど。壮大な伏線であり、後になれば意味が分かるというので、読み続けたところ、次第に霧が晴れてきた。その後の展開は、月の起源、人類の進化の鍵も含めて壮大過ぎるほど大胆で面白い。

音楽で言えば、ちょうどシベリウスの第4交響曲のような感触といえようか。この晦渋ともいえる第1楽章を突破すれば、その後はシベリウス的に聴けることが最近ようやく分かった。

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2012年7月18日 (水)

谷川流 『涼宮ハルヒの憂鬱』などのシリーズ

青春ものにはまっていた2010年の夏に、ブックオフで数冊シリーズを購入して読んでみた。

いわゆるライトノベルジャンルの中では大ベストセラーで、最近最新刊が出たらしく、書店の平積みの棚には、文庫本全巻と並んで、ユリイカの特集号まで積まれてあった。それほど、この小説とアニメーションのメディアミックスは成功しているらしい。

音楽のジャンルも細分化が進んでいるが、小説もライトノベルというものが分化していて、それなりに読者がついているようだ。先日、記事にした「ビブリア古書堂」シリーズもライトノベルに属するらしい。

このハルヒシリーズは、中高生や大学生くらいに人気なのだろうが、設定がSF的に奇抜であり、人物造形も奇天烈ながらもユニークで、面白い。さすがに萌え系のアニメ絵が無ければ、一般成人も読めるような気がする。

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