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2005年1月13日 (木)

レッドドラゴン トム・ハリス著

余勢を駆って「レッドドラゴン」を購入し読み始めた。(文庫本も高価になった。上下2分冊で、各800円ほどの値段だ。それに比べるのもおかしいが、子ども向けの図鑑類の安いこと。2000円ほどで非常に精細で美しいイラスト、写真入りの図鑑が入手できる)

これが、例のハンニバル・レクター博士シリーズの第一作になるらしい。このようなカニバリズムものが流行し、映画化され、崇拝者までいるというのだから、末法の世ということになるのだろう。

レッドドラゴン、つまり赤い龍だが、神秘主義的で幻想的な絵と詩を残したイギリス人 ウィリアム・ブレーク の残した作品名に基づくようだ。赤い龍という題名は、東洋では、中国物のイメージが強いので、題名で損をしていると思う。(ブレークについては、ノーベル賞作家の大江健三郎が折りに触れて言及していたように記憶するが、decentな日本人の倫理的な高尚さを追い求める作家としては少々変わった indecentな趣味だと思う。)

(William Blake ウィリアム―)イギリスの詩人、画家。「旧約聖書」などに、独特な装飾性と幻想性に満ちた挿絵の版画を残した。著に詩集「無垢の歌」「経験の歌」など。(1757-1827)
Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) ゥ Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988

さて、この小説も異常な連続大量殺人犯を扱っている。次作「羊たちの沈黙」の連続殺人犯も、父親不在で、母親の愛や家庭環境に恵まれず、それが犯罪の要因になったということを匂わせていたが、この作品でも、身体障害と悲惨な生育環境がその要因だったという背景説明を行なっている。レクター博士にしても、ラトビアだかリトアニアだかの貴族の生まれだが、ソ連に攻め入ったナチスドイツ軍が撤退する際に、生き延びた幼いレクター博士以外の両親、幼い妹を殺害するという強烈な幼児体験が、その異常性の苗床になっているかのようだ。そういえば、奈良の事件でも、容疑者の育ちには相当に恵まれないものがあったとの週刊誌の事後プロファイリングがあった。これを神戸の事件との関連性で論じているものもあった。

トム・ハリスの設定は、通俗的だとは言えるが、育成環境というものが性格形成に多大な影響を与えるということは否定しがたいところだろう。

そのような典型的な異常者はなぜ犯罪に手を染め(犯罪に手を染めるから異常者なのだろうが)、同様な環境下に育っても異常者にならない人物は、何が抑止させているのか。

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