Appassionata の Finale
先日、「のだめカンタービレ」の登場曲目への自己流コメントで、この熱情ソナタの終楽章のコーダの下降分散和音による猛烈な終結の部分で、和声の乱れを感じると書いたので、改めて手持ちのCDを聴きなおしてみた。
◆R.ゼルキン 1962年 すべてのリピート実施 8'03" Allegro ma non troppoの指定をよく守ったテンポ。ただ、誠実なゼルキンという印象からすると意外だが、sfpやsfなど、突発的に表われるダイナミックの変化への追従が少ない。コーダはテンポアップして見事に引ききっている。和声の乱れのようなミスタッチは聞こえない。
◆グールド 1966年4月-1967年10月 中間部(展開部と再現部)の繰り返しを行わず。 5'24"
第1楽章 15'01" 第2楽章 11'08" という極端に遅いテンポからするとフィナーレはいったいどうなってしまうのかと心配になるのだが、ほぼゲルバーの演奏と同じテンポを取り、奇矯な感じはしない。ただ、のめりこんでいる風はまったくなく、一歩引いて醒めて演奏している風に感じる。この演奏をブラインドで聞けばグールドのものとは気がつかないかも知れない。
◆F.グルダ 1967年7-8月(全23曲を一挙に録音) すべてのリピート実施。7'11"
直接比較のできるゼルキンとホロヴィッツより1分近く所要時間が短い。楽章の初めからPrestoのようなテンポで、これでコーダでのテンポアップが可能かと心配になるが、その心配をよそに、コーダは目もくらむような速さになり、最後の困難な部分もやや響きは団子になるが、弾き切っている。スリリングだが、それほど熱さは感じない。
◆ゲルバー 1970年代の録音。 中間部(展開部と再現部)の繰り返しを行わず。5'16" 余裕のある技術により、美しい音を奏で、大きさを感じさせる。グランドマナーではあるが、大雑把さはなく、丁寧な仕事という感じ。最後の崩れもない。切迫性はあまりないが、豊かな音楽を感じさせる。それが作曲者の意図に沿うものかどうかは別として、最も気に入った演奏。
◆ホロヴィッツ 1972年 すべてのリピート実施 8'01"
ホロヴィッツの悪魔的なテクニックと美音が聞けるかと思いきや、わりと普通の演奏。所々早いパッセージからおやっと思う旋律を取り出したりのワザは聴ける。テンポ的にはゼルキンとほぼ同じ。最後の崩れはさすがにない。
最近ベートーヴェンのソナタと言えば後期ソナタを聞くことが多く、「三大ソナタ」を聞く機会が少ないので、結構楽しかった。
こう聴いてくると、コーダ終結部であのように記憶しているのは、LPでよく聴いた次の演奏かもしれない。
◆ヴァン・クライバーン
◆バックハウス
多分、非常に珍しい、ヴァン・クライバーンのLPだろう。チャイコフスキーコンクールでセンセーショナルな優勝を飾った後に録音されたもので、少年時代からよく耳にした。
« 「ファンタジア」の「月の光」 | トップページ | 画像を少しアップ »
「音楽」カテゴリの記事
- 音楽鑑賞で有用なサイトをリストとして掲載(2024.01.07)
- 高校時代に山田一雄さんの指揮のコンサートを聴いたことを思い出した(2023.12.07)
- Johann Sebastian Bach, Helmuth Rilling : Complete Bach Set 2010 - Special Edition (172 CDs & CDR)(2023.12.05)
- モーツァルト「伝説の録音」3巻セット [36CD+3BOOK]<通常盤> 飛鳥新社 タワーレコードONLINE(2022.04.24)
- 小林秀雄「モオツァルト」(2020.08.02)
「漫画「のだめカンタービレ」」カテゴリの記事
- 久々のコンサート ゲッツェル/神奈川フィル、三舩優子(pf) 2/4(土)(2012.02.05)
- 映画『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』テレビ放映を見た(2010.04.18)
- のだめカンタービレ #22, #23(最終巻)(2010.01.09)
- マリアン・アンダーソン 黒人霊歌集(2008.12.10)
「ディスク音楽04 独奏」カテゴリの記事
- 小学館 モーツァルト全集のCDを夏の帰省時に持ち帰った(2014.09.02)
- マリア・ティーポのバッハ「ゴルトベルク変奏曲」(2014.06.24)
- ヴォイジャー(ボイジャー)のゴールデンレコード(2013.09.16)
- グレン・グールドの1981年ゴルトベルク変奏曲の録音と映像の微妙な違い?(2013.06.24)
- 年末に届いた "LIVING STEREO 60 CD COLLECTION"(2013.01.04)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: Appassionata の Finale:
» ベートーヴェン/ピアノソナタ第23番「熱情」 [仙丈亭日乘]
ブラームス:P協奏曲第2番リヒテル(スビャトスラフ), シカゴ交響楽団, ブラームス, ラインスドルフ(エーリッヒ), ベートーヴェンBMGファンハウスこのアイテムの詳細を見る
<アーティスト> ピアノ : Sviatoslav Richter
<どんな時に聞きたい?> やる気を出したい時
<ここは良かった!> 1960年盤:最終樂章の凄じいまでの推進力!
1992年盤:彫りの深い、豐かな演奏!
<ここはいまいち・�... [続きを読む]
» ホロヴィッツのベートーヴェン「熱情」 [クラシック音楽のひとりごと]
11月を迎えて、だいぶ冷え込んできました。
ここのところ、ジョギングには実に気持ちよい気候で、爽やかな汗をかいておりました。でも、今朝はちと寒いかな?
ベストを1枚羽織って行こうか。
さて今日は、ホロヴィッツのピアノでベートーヴェンのピアノソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」を。1972年の録音。CBSソニー原盤。
ホロヴィッツといえば、「ピアノの神様」(と賞する人が多い)。60年以上の長いキャリア、その間、世界最高級のピアニストとして絶賛を博した大スター。
確かに、ホロヴィッツの弾くラフマニノ... [続きを読む]
こんばんは。TB有り難うございました。
「熱情」はリヒテルやグルダ、アシュケナージで聴くことが多いのですが、どれも気に入っています。
ゲルバーのも良かったです。
「グランドマナーではあるが、大雑把さはなく、丁寧な仕事という感じ」・・・同感です。録音も良く、愛聴していけそうな演奏でした。
投稿: mozart1889 | 2005年10月 9日 (日) 19:31
先日のゲルバーにコメントをさせてもらったおりは忘れていたのですが、別の方から「熱情」へトラックバックをつけてもらい、ゲルバーの「熱情」を思い出し、遅ればせながらTBさせてもらいました。
リヒテルの「熱情」は、レビューを読んだり評判を聞いたりしてはいるのですが、未だ寡聞にして聞いたことがありません。リヒテルの生も彼の手の故障で聞き逃し、それきりになってしまいましたので、少々縁が薄いのかと思っています。ただ、リヒテルのベートーヴェンと言えば、ロストロポーヴィチとのチェロソナタのピアノソナタの明晰さを好ましく感じています。
投稿: 望 岳人 | 2005年10月 9日 (日) 21:29