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2005年2月26日 (土)

Appassionata の Finale

先日、「のだめカンタービレ」の登場曲目への自己流コメントで、この熱情ソナタの終楽章のコーダの下降分散和音による猛烈な終結の部分で、和声の乱れを感じると書いたので、改めて手持ちのCDを聴きなおしてみた。

◆R.ゼルキン 1962年 すべてのリピート実施 8'03" Allegro ma non troppoの指定をよく守ったテンポ。ただ、誠実なゼルキンという印象からすると意外だが、sfpやsfなど、突発的に表われるダイナミックの変化への追従が少ない。コーダはテンポアップして見事に引ききっている。和声の乱れのようなミスタッチは聞こえない。

GOULD
◆グールド 1966年4月-1967年10月 中間部(展開部と再現部)の繰り返しを行わず。 5'24"
第1楽章 15'01" 第2楽章 11'08" という極端に遅いテンポからするとフィナーレはいったいどうなってしまうのかと心配になるのだが、ほぼゲルバーの演奏と同じテンポを取り、奇矯な感じはしない。ただ、のめりこんでいる風はまったくなく、一歩引いて醒めて演奏している風に感じる。この演奏をブラインドで聞けばグールドのものとは気がつかないかも知れない。

◆F.グルダ   1967年7-8月(全23曲を一挙に録音) すべてのリピート実施。7'11"
直接比較のできるゼルキンとホロヴィッツより1分近く所要時間が短い。楽章の初めからPrestoのようなテンポで、これでコーダでのテンポアップが可能かと心配になるが、その心配をよそに、コーダは目もくらむような速さになり、最後の困難な部分もやや響きは団子になるが、弾き切っている。スリリングだが、それほど熱さは感じない。 

◆ゲルバー 1970年代の録音。 中間部(展開部と再現部)の繰り返しを行わず。5'16" 余裕のある技術により、美しい音を奏で、大きさを感じさせる。グランドマナーではあるが、大雑把さはなく、丁寧な仕事という感じ。最後の崩れもない。切迫性はあまりないが、豊かな音楽を感じさせる。それが作曲者の意図に沿うものかどうかは別として、最も気に入った演奏。

◆ホロヴィッツ 1972年 すべてのリピート実施 8'01"
ホロヴィッツの悪魔的なテクニックと美音が聞けるかと思いきや、わりと普通の演奏。所々早いパッセージからおやっと思う旋律を取り出したりのワザは聴ける。テンポ的にはゼルキンとほぼ同じ。最後の崩れはさすがにない。

最近ベートーヴェンのソナタと言えば後期ソナタを聞くことが多く、「三大ソナタ」を聞く機会が少ないので、結構楽しかった。

こう聴いてくると、コーダ終結部であのように記憶しているのは、LPでよく聴いた次の演奏かもしれない。
◆ヴァン・クライバーン
◆バックハウス

多分、非常に珍しい、ヴァン・クライバーンのLPだろう。チャイコフスキーコンクールでセンセーショナルな優勝を飾った後に録音されたもので、少年時代からよく耳にした。

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コメント

こんばんは。TB有り難うございました。
「熱情」はリヒテルやグルダ、アシュケナージで聴くことが多いのですが、どれも気に入っています。
ゲルバーのも良かったです。
「グランドマナーではあるが、大雑把さはなく、丁寧な仕事という感じ」・・・同感です。録音も良く、愛聴していけそうな演奏でした。

先日のゲルバーにコメントをさせてもらったおりは忘れていたのですが、別の方から「熱情」へトラックバックをつけてもらい、ゲルバーの「熱情」を思い出し、遅ればせながらTBさせてもらいました。

リヒテルの「熱情」は、レビューを読んだり評判を聞いたりしてはいるのですが、未だ寡聞にして聞いたことがありません。リヒテルの生も彼の手の故障で聞き逃し、それきりになってしまいましたので、少々縁が薄いのかと思っています。ただ、リヒテルのベートーヴェンと言えば、ロストロポーヴィチとのチェロソナタのピアノソナタの明晰さを好ましく感じています。

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