ニホンオオカミ 国立科学博物館
子どもたちに図鑑を結構買い与えている。恐竜、大昔の生物、動物、爬虫類・両生類、魚、昆虫などなど。そのなかで、長男が絶滅した動物に興味をいだいた。特にニホンオオカミという獣が、かつては日本の深山幽谷には生息していたということが不思議らしい。そして、ニホンオオカミの剥製が見られる国立科学博物館に行ってみたいと言い出した。(日本国内では、ここと、東大の博物館、和歌山大学が所蔵しているのみ!国外ではライデン博物館:写真あり。大英博物館:写真資料がない?)
数年前、子ども達がまだ幼かったときに訪れたことがあるのだが、その頃のことはあまり覚えていないらしい。今回は非常に面白かったといっていた。やはり、何をするにも適齢があるものだ。
さて、ニホンオオカミは、新館の3階にある動物の剥製が多数展示してある片隅に展示されている。子ども達とこれがニホンオオカミだよと話していたら、ボランティア(?)の説明員の方が話し掛けてきて、話を聞く機会に恵まれた。「結構穏やかな顔をしているが、背筋が平なところや、シッポが先の方が太くなっているところが、犬とは異なる。最近目撃報告された事例は、シェパードの野犬らしい。東大の博物館のは表情がいかにもオオカミらしく、怖い顔をしている。」などなど。
基準標本は、オランダのライデンにある「ヤマイヌ」というものらしい。これは、あのシーボルトが江戸時代に日本から持ちかえったもの。オランダ語もしくはドイツ語で、標本名が「ヤマイヌ」とされていたが、ライデンの博物学者がそれを研究し、ニホンオオカミと分類したのだという。それで、これが動物学的には、基準標本というものになったらしい。帰宅して、子どもの図鑑を見たら、ライデンの剥製の写真も載っていたし、大英博物館の頭骨の写真も出ていた。
ネットでいろいろ検索してみたが、学術的に充実したページは東大博物館のサイト。
ヤマイヌ(ニホンオオカミ)関係の記事が豊富なのは、suzukahiking。
このサイトは非常に詳しく資料も豊富。ただ、豊富過ぎる為、短期記憶がついていけないと、段々混乱してしまうきらいがある。こんなにすごいサイトの作成者のプロフィールが見られないが、どんな人だろう。
なお、この中に先日報道された「オオカミと近縁は、シェパードではなくチャウチャウや秋田犬」という記事があるが、上記サイトの
「イエイヌ Canis lupus familiaris タイリクオオカミの亜種。 1993年( the 1993 publication of Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference, edited by D.E. Wilson and D.A.M. Reeder.)にイエイヌもタイリクオオカミの亜種だとされ、Canis familiarisと言われていたのが、Canis lupus familiarisと分類されました。その後も、イエイヌについては研究が進み、ジャッカルが先祖だという Konrad Lorenz のかつて見解は否定されています。」
という点からみると、イエイヌ自体がタイリクオオカミの亜種ゆえ、近縁とか遠いとかはあまり意味を持たないように思うのだが、どうなのだろうか?
何しろ、イエイヌがオオカミから分かれたのは、人間の人種が分かれたとされる5万5千年前をはるかに下る1万4千年前とされるのだから、人種間の違いよりも、イエイヌとオオカミの違いの方が小さいくらいだというのだ。しかし、チャウチャウの研究は最近の結果なので、より詳しいDNAレベルの分類ができるようになったのかも知れないが。
ただ、犬種の違いは呆れるほど大きい。セントバーナードやピレネー犬のような大型犬とチワワやプードルのような小型愛玩犬が同じ種類だとは!
小学館のNEOという図鑑(2002年版)では、イヌ(イエイヌ)は、タイリクオオカミの亜種ではなく、独立した Canis familiarisとされていた。また、イヌが家畜化されたのは、3万年前だとされていた。
ニホンオオカミは存在するのか このサイトは要領よくまとめてある。
概観すると、ニホンオオカミには、まず「名称」からくる混乱の問題、記録や標本の少なさなど、またオオカミと犬が非常に近い時期(約1万年ほど前)に分かれたために交雑が可能などの問題があり、まだナゾが多いようだ。
ただ、博物館で聞いていて思ったのは、剥製や骨格が残っているのだから、いわゆるDNA鑑定が行なえるのではないかということ。ライデンの剥製、日本の剥製はどのような判定なのだろう。また、オオカミの血をひくという日本の天然記念物の犬たちはどうなのだろうか? 「ニホンオオカミ DNA鑑定」でググったところ このBLOG記事がみつかり、トラックバックを送った。
YAHOO GROUP WOLF-JAPAN 専門家が参加しているらしい。剥製の状態が悪くて、よい状態のDNAが得られないとか、犬とオオカミは近縁過ぎてDNA鑑定してもあまり意味がない(モンゴルオオカミよりも秋田犬の方が、ニホンオオカミに近い?)という話もあるようだ。
哺乳類頭蓋の画像データベース
ここでは、イエイヌは独立の種とされている。
今回のオオカミに関する検索で一番面白いと思った知見は、「イエイヌがタイリクオオカミの亜種」であるかもしれないという学説だ。イヌ類への見方ががらっと変わった。ちょうど、鳥類が恐竜の直接の子孫だという学説と同じくらいのインパクトだ。
このゴールデン・レトリバーのサイトに、1993年に発表された「イエイヌは、タイリクオオカミの亜種である」という調査報告が要領よくまとめられている。いわく、
「あなたは狼と暮らしているのです。」
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ところで、国立科学博物館だが、古めかしく重厚な本館は現在改装中で、新館が完全にオープンしていた。独立行政法人化したためか、来館者フレンドリーな雰囲気になっていたが、いわゆる格調が失われてしまった。子ども達には親しみやすくてよいのだろうが。ミュージアムショップも、いわゆるフィギュアのたぐいが多く、小学校などの観察、実験レベルの器具などはあまり扱っていないのは残念だった。
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国立博物館がフレンドリーになっていると、私も感じました。
私は、東京国立博物館で感じたんですが、守衛さんも案内係も来訪者に非常に親切です。あれは絶対に接客やサービスの研修を受けていると思いました。
昔とぜんぜん雰囲気が違います。驚きました。
URLに関連記事をリンクします。
投稿: sakaiy22 | 2005年2月15日 (火) 23:20
sakaiy22さん、いつもコメントありがとうございます。
やはりフレンドリーになったと感じられましたか。
独立行政法人化で、受け付け・案内などが親切になったのは行政改革も少し効果があったということでしょうね。
国立博物館にも行きたかったのですが、科学博物館も新館が地下3階地上3階と規模が拡大され、駆け足で見ても見切れないほどで疲れ、とても国立博物館にはいけませんでした。
投稿: 望 岳人 | 2005年2月16日 (水) 10:21
お話ついでに、実例を2つ。
1.国立博物館の正門前、切符売り場前で、お客さんが守衛さんに門をバックにした写真撮影をお願いした模様。守衛さんは、ニコニコして写真を撮ってあげていました。
2.国立博物館平成館で、コインロッカーが使えないとお客さんがクレーム。係員(守衛さん)がすごく丁寧に説明していました。
この光景を見て、私は、変わったな~と思いました。
他に、展示物の写真撮影も可能な模様(撮影禁止の掲示がなく、フラッシュ、三脚禁止の掲示あり)。昔の感覚があるので、館内の撮影ができないでいます。
法隆寺宝物館の資料室の受付さんは、昔ながらの雰囲気で、二コリともせずに座っていました。
投稿: sakaiy22 | 2005年2月16日 (水) 22:28