ライブドアによるニッポン放送株買収
フジ・サンケイグループのラジオ局、ニッポン放送の株が、ライブドア(リーマンブラザーズという米系証券会社から資金提供を受けているとされる)により大幅に買われ、その議決権比率が40%の大台に達しそうだという。ラジオ局くらいと思うのだが、このニッポン放送がフジテレビの大株主になっているから事態をややこしくしているらしい。
学生時代、フジ・サンケイグループのリーダーだった鹿内という人物の書いた自伝めいたものを、政治学の授業で読んだことがあった。同じ講義での課題書として、有名なルポ「自動車絶望工場」だとか、ソ連の反体制歴史学者メドベージェフの「フルシチョフ 権力の時代」とか多岐に渡る本がリストアップされて読まされた。鹿内という人の本はマスコミにおける労働争議の関係で読んだのかも知れない。その鹿内氏も、後継者の息子が早世し(NHKのアナウンサーだった美津子夫人と結婚した人物)、その名も聞かなくなったが、当時サンケイ新聞といえば、いわゆる「右傾化」「保守化」の論陣を張っているとみなされていたメディアだった。その頃からフジテレビが「女子アナウンサー」(女子アナ)のタレント化の先鞭をつけるなど、徹底的な娯楽路線に走り、いまや人気局として君臨している。
今回の騒ぎの張本人の堀江氏は、昨年の野球界の再編問題で、新球団を仙台に創立すると宣言して話題を撒いた人物で、オールドスタイルのオーナー会議に嫌われ敗れはしたが、それ以来ずっとマスコミの注目の的だった人物だ。今回の株の買占めはいわゆるM&Aであるが、放送局は、政府総務省により免許を受けている関係で、(この前のNHK問題ではないが)政界との関係が深い。そこに、外資をバックにしたお騒がせ男が突然宣戦布告したものだから、政財界は大慌てになっている。それも、フジテレビが、グループ内の資本関係の整理整頓のために、ニッポン放送株の公開買付(TOB)の実施を宣言し、実行する前だったものだから、余計騒がしくなっているのだろう。
もう何年も前、オーストラリアのマスコミ王(マードック?)がテレビ朝日株を買収しようとした騒動があったが、あれ以来のマスコミ経営問題だろう。一般企業の買収問題ならこれほど騒がれることはないが、マスコミとはそれほど利害関係が複雑に絡み合っているところなのだろう。
ただ、アメリカでは、タイムワーナーAOLグループなどという、新旧メディアの複合体が産まれたことがあるので、単純な外資による日本食いという感情的な反発は抜きにしても、そのようなメディアコンプレックスの時代なのだろうとは思う。デジタル放送化により、ネットによるデジタルコンテツの配信との垣根は取っ払われるわけだから、ネット起業者が、放送メディアに食指を伸ばすのは今後避けられないのかも知れない。
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3月5日現在、まだこの問題はもめている。フジテレビ側は、徹底抗戦。新株予約権の発行により、ライブドアの議決権比率を薄めようとしている。これに対してライブドアは法廷闘争に持ちこんだ。判断が注目される。
投稿: 望 岳人 | 2005年3月 5日 (土) 23:33
3月8日現在、フジテレビは約36%以上の株式(議決権?)を獲得し、商法上議決権が3分の1を超えたことで、ニッポン放送の定款変更や合併など株主総会の「特別決議」が必要な経営の重要事項をフジテレビは単独で否決できる。ライブドアが過半数を超せば、まだ分からないようだ。また、ニッポン放送はフジ株を2.5%持つ筆頭株主だがフジテレビがニッポン放送株を25%以上持つことになったため、ニッポン放送はフジに対し議決権を行使できなくなる。 また、ライブドア、フジテレビが大株主となり、双方の株式を合わせると上場廃止基準の80%に達するとみられることから、ニッポン放送株自体の上場が廃止される恐れが出ている。M&Aのケーススタディとして教科書に載るような出来事だろう。
投稿: 望 岳人 | 2005年3月 9日 (水) 17:16