2021/04/16追記
このブログの人気記事ランキングに当記事が挙がっていて、以下のリンクをクリックしてみたら、詐欺サイトまがいにとぶようになっていたので、急遽リンクを削除しました。
弁護士佃克彦の事件ファイル 「食い逃げ」の法律学 PART1 「食い逃げ」の法律学 PART2
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2009/05/24 追記
弁護士佃克彦の事件ファイル 「食い逃げ」の法律学 PART1 「食い逃げ」の法律学 PART2
が新たにヒットし、丁寧に読んでみたたら、コメントをもらった「法1さん」が受けた講義についてそれなりに分かったような気がする。それでもやはり面倒くさい法律理論ではある。
おそらく、裁判員制度では、このような「利益窃盗」問題は対象にならないだろうが、さらに重大犯罪の場合、「未必の故意」のような一種の「心理」「心のあや」がその量刑の決め手になるような事例が出てくるだろうから、このあたりも法律の専門家でなくとも理解できるような噛み砕いた、というようりも一般常識に合致できるような、説明のしかたが望まれるように思う。
-------以下は元記事------
最近マスコミで窃盗問題が喧しいが、学生時代に刑法の各論で教科書を読み、講義で聞いたはずなのに、最近法律関係のエッセイを読んでいて、何でこんな摩訶不思議な刑法の運用になるのかと改めて驚いたことがある。不勉強が恥ずかしい。
それは、刑法の詐欺罪に関連して「利益窃盗」という用語のことだ。利益窃盗は不可罰(罰すべからず)とされる。刑法に明文規定がないからだという。立法政策的な配慮なのか、それとも立法ミスなのか。
例えば「食い逃げ」をしても、初めから支払う「意志がなく」(証明しろと言っても不可能だろうが)、店員などにとがめられることなく、店から脱出すれば、詐欺にもあたらず、「利益」を窃盗しただけだとされる。
物の窃盗は当然罰せられるが、利益の窃盗は刑法典には規定がないため、不可罰になるのだという。一般人の感覚(常識)とは相容れない。
エッセイに書かれていたが、この事例は本当に「利益」の窃盗なのだろうか?飲食は単なるサービスを受けるという利益を得るのではなく、飲食物という立派な財物が関係しているので窃盗罪に該当するのではなかろうか?(追記:2008/09/08 お恥ずかしい話しだが、最近食堂で食事をしていて、この違いが分かった。財物の定義の問題だ。最近に食品偽装問題が関係してくれば別だが、多くの人は、他人に提供されて、その人が手を付けたもしくはそのまま残した料理を食べようとはしない。つまりその料理は、手がついていればほとんどの場合流通することはありえないし、手を付けられなくても、例えばラーメンの場合は時間が経てば伸びてしまうし、温かい料理は冷めてしまい、その時その場所でなければ価値がなくなってしまう。それゆえ、食堂で提供される飲食物は一般的には財物にはならないのだろう。)
また、キセル乗車した電車の乗客が、駅の改札を通らずに、駅員に制止されずに駅の外に逃げ出した場合も同様だという。 実際には、キセル乗車などは刑法以外の法律で罰せられるそうだし、食い逃げで刑事上の罪を問われなくても、民事上の責任は残り、例えば店の従業員に後日見つかった場合などは、支払いを免れることはできないそうだ。
似たような例で、電気窃盗については、当初電気は財物ではないと考えられていたが、ある事件に関して大審院(現在の最高裁にあたる戦前の最終裁判所)判決が、電気を財物とみなすと「拡大解釈」をして、窃盗罪として罰したことがあった。この後、刑法が改正され、電気は財物であるとみなすという規定が設けられ、いまや電気窃盗は立派な犯罪となったという。(しかし、電気も目には見えないが、電子という物質が引き起こす現象なので、物質である限り財物ではないのだろうか?大審院判決は財物の概念を「拡大」もしくは「類推」解釈したと言えるのか? これは、いわゆる管理不能なエネルギー、電波などにも類推されるのではあるまいか)
それにも関わらず、利益窃盗は現在にいたるまで不可罰となっている。
ところで、最近は情報を制するものがビジネスを制するといわれるほど、情報に金銭的価値が認められている。しかし、現在の刑法では、情報そのものを盗んでも罰することはできないとされているらしい。
他の罰則規定のある法律で対応されるのかも知れないが。入学試験の問題だとか、企業の内部資料だとか、いわゆるソフトウェア全般(コンピュータプログラム以外にも音楽、映像ソフトなど)だとか。 この情報の窃盗が刑法上の大問題となっているようだ。 何であれ「価値」あるものを「正当でない」手段で自己の占有におくもしくは自己の利益のために使用するものは罰せられるという規定を作れば、どこに問題が生じるだろうか?
p.s. これに関して、最近2007年になって、企業内の秘密情報漏えい、個人情報の漏えい、自衛隊の機密情報の漏えいについて、まずは単なる窃盗罪(CD-ROMなど安価なものの窃盗容疑)として対処したようだが、やはり法律が現実に合致しなくなっているのではあるまいか。
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