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2005年4月11日 (月)

中国での反日運動について

2004年8月9日の自記事「中国で行なわれたサッカーアジアカップの日本での報道について」で、中国における反日の動きについての、日本のマスコミの取材力不足についてコメントしたことがあった。

最近、北京、広州などで繰り広げられている反日デモについてのマスコミ報道は、どうか?通常、中国寄りと批判されることが多い朝日新聞も今日の社説では、「中国政府 なぜ暴力を止めないのか」と題して、中国政府のデモへの警察権力による規制を求めている。(明示的には書いていないが、要するに投石を暴力行為として、見て見ぬ振りをするのではなく、警察官がデモ隊を押さえつけろというのだろう)。

日本のマスコミが報道する今回の反日報道の映像を見る限り、中国の若者たちの行動、表情は非常に不愉快なものだ。投石、卵投げ、ペットボトル投げによって、日本大使館の前庭は汚れ、ガラスは一部が割られている。デモ行進の道沿いの日本料理店は、やはり投石などによりガラスを割られ営業停止をよぎなくされているという。また、広州あたりでは、日系のスーパー、ジャスコやイトーヨーカドーに群衆が押し寄せている。また、教科書問題に関係して一部の日本企業製品がボイコットを受けているらしい(アサヒビールなど)。ただ、暴力的と言っても、日本人の関係者にけが人が多く出たというレベルではなく、日本の60年代の学生運動よりもおとなしい。

ただし、在留邦人の安全上は、憂慮すべき事態だとは思うし、中国政府による「この事態の原因は、日本政府にある」というコメントは、自らの責任放棄に近いものだろう。この中国政府の弱腰の姿勢に今回の事態の謎を解くカギがあるのではなかろうか?

日本側の識者のコメントでは、江沢民政権による10年間の愛国(反日)教育の影響が、特にネットでコミュニケーションをとっている若者層を中心にして、中国にとっての戦勝60年の今年、噴出したものだと解説をしている。ただ、今回の学生を中心として若者は、そのような政治教育下で育ってきたとは言え、ネットを使いこなす能力が、あり、自由主義圏の多様な情報を得られる能力を持っているはずではないのだろうか?いわゆる「無知蒙昧」な愚かな群衆とは違うように思う。警察隊が塀の前に陣取り、その前にカメラマンが屈んで、デモ群衆を撮影している。その前で、何人かが、順々に定められた演技を行なうように投石を行なう。ひどく不自然だ。

今回の反日運動で、標的にされているのは、1.日本の歴史教科書が戦前の日中史で反省していないこと、2.日本が国連の常任理事国入りをもくろんでいること 3.尖閣諸島の領土問題、東シナ海のガス田開発など。目新しい問題としては、2と3だが、それでもこれまでは政府レベルの対応が多かったのに、昨年夏のアジアカップの頃から急に民衆レベルでの反日運動が盛り上がっているように見えるのは、どうしてだろうか?中国に赴任している知り合いに聞いても、アジアカップ時には上海でも江蘇省でも周囲の人々の様子にはほとんど変わりがなかったという。今回はまだ問い合わせていないが、どういう状況なのだろうか?

中国人の鬱憤が溜まっているのは、実感できるような気がする。改革開放の前には、一部の共産党特権階級とその他大勢がいた単純な社会構造だったが、今では沿岸部と内陸部の経済格差、個人の経済格差は膨大なものになり、これまでにない活気とともに不公平感による多大なストレスが人々にかかっているような気がする。よく指摘されているが、反日教育により、反日運動は政治的に公認されており、これを旗印にしている限り、当局も手出しはできない。明治維新で、攘夷が、幕藩体制打倒の合言葉だったように、反日も体制批判的な意味合いを持っているのかも知れない。これだけの経済的な大変動に見舞われている中国だ。これから何が起こるか目が離せない。

また、韓国での竹島問題を発端にした反日運動についても、マスコミは一部の跳ね返り的な集団をクローズアップして取り上げたキライがある。日常の交流、商取引は日々変わらずに行なわれており、全員が全員、反日に変わったわけでもないのに、一挙に全韓国国民が反日に豹変したような報道をする(ただし、盧武鉉大統領の親日政策からの急激な転換の背景についての突っ込んだ報道はされていない)。

どうも最近のマスコミは、一律に付和雷同的になっている。現地の特派員の質が低下しているのか、まず結論ありきの世論に迎合しているのか、報道姿勢に安定性がないように思う。冷戦時代のように、自分の位置をGPS的にナビできるそれなりに秩序のある状況でなくなっており、カオス化しているからだろうか?

アジアカップの時にもリンクした松永さんというライターのBLOG記事が、今回の反日騒動の規模、反日の青年層について参考になる。

 

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上海の知人からメールがありました。まだ平穏だということです。

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