ハーンとランラン
昨夜のNHK教育テレビでは、9時からのN響アワーでヴァイオリニストのヒラリー・ハーン(25歳)と、10時からの芸術劇場でピアニスト ラン・ラン(22歳)の演奏を見聞することができた。二人とも、最も注目されている若手ソリストだろう。
ハーンの映像(ネーメ・ヤルヴィの息子 パーヴォ指揮のN響との共演によるプロコフィエフの第一協奏曲)を見るのは恐らく初めてだと思う。雑誌やCDジャケットなどでは「アンドロイド」めいた硬質さを強調する表情が印象に残っていたのだが、 テレビでのインタビューと映像ではそのような違和感は感じなかった。ただ、小顔ゆえか、ヴァイオリンがヴィオラのように大きく見えるのには驚いた。これまで聴いたハーンの演奏の特徴として、音程のきっぱりした正確さが印象に残っているのだが、今回の映像見ることができた左手のポジショニングの切り替えの猛烈な速度と正確さの賜物かと思った。(プロコフィエフとショスタコーヴィチの協奏曲は、これから聞き込んで行こうと思っている曲ゆえ、曲自体の解釈の特徴などはよく分からなかった。)
ラン・ランは、のだめ関連でラフマニノフを曲芸のように弾くという少々辛口のコメントをしたことがあるのだが、映像で見るのは4回目くらいだろうか。一度は確かN響との共演、二度目はアルゲリッチ、キーシン等世界の著名ピアニストが10名以上集まったピアノ音楽祭で、もう一度はベルリンフィルのヴァルトビューネでチャイコフスキー?の演奏を見たことを記憶している。これは多分に先入観の問題もあるのだろうが、どうも彼の演奏は楽天的に速いパッセージを曲芸的に弾くという印象が強い。音楽をプレイしているのは好ましいことではあるが、やはり違和感を否めない。今回は、ピアニストとしてデビューした音楽家 エッシェンバッハが率いるフィラデルフィア管弦楽団との共演で、ベートーヴェンの第四協奏曲。第一楽章の長大なカデンツァの部分で、オケのメンバーは静かに聞き入っているのと対象的にエッシェンバッハ(彼としては、この曲などかつては自家薬籠中の物だっただろう)は、ラン・ランのあまりの没我的な演奏に焦れているかのような表情をしていたのが対象的で興味深かった。この後のマーラーの5番は聴かなかったが、エッシェンバッハのベートーヴェンは、大仰でもたれる演奏だと感じた。なお、ヴァイオリンを両翼配置にしていたようだった。このオケのシェフであったストコフスキーが始めたオケ楽器の近代配置が、そのオケにおいても温故知新的に揺り戻されているのはなかなか感慨深いものだった。
ともあれ、ハーンとラン・ランの注目の若手二人を見聞できたのは面白かった。こういうことがあるから、NHKの受信料をまじめに払い続けている。
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