モーツァルト ピアノ協奏曲第23番K.488 イ長調 カサドシュ(p)セル/コロンビア響
1969年11月14日と15日 クリーヴランドのセヴァランスホールでの録音。オーケストラがコロンビア交響楽団となっているのが、不思議だが、実体はクリーヴランド管弦楽団だという。なんでも契約の関係らしい。スターンとのヴァイオリン協奏曲でも同様の表示がされているようだ。
セル晩年の録音だが、ロベール・カサドシュとはこの他にも何曲かモーツァルトの協奏曲を録音しているから気の合ったコンビだと言えるだろう。このコンビでのモーツァルトは当時から名録音とされてきたが、長い間それを知っているだけで実際に聞く機会はほとんどなかった。セルのハイドン同様、CDショップに行くと必ずチェックするのだが、なかなか入手できない(ネットでは容易に見つかるのだが)。
さて、この曲だが、モーツァルト自作のカデンツァが楽譜として残されているなど、相当の力作だ。これまで、ポリーニ、ブレンデル、ペライア、ハイドシェックと聞いてきた。
カサドシュの演奏は、非常に淡彩だといえる。中間楽章は、ピアノのモノローグでロマンチックに崩すことが可能な音楽だと思うが、ここをセルともどもほぼインテンポで粘らずに歌っていく。前にも書いたが、珠を転がすようだと形容されたピアノの音色は、私にはそれほどのものだとは聞こえない。むしろセルともども細やかで折り目正しい音楽を作り出しているのに共感を覚える。
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コメント
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「セルのモーツァルトはまさに楷書だ」
「非常に淡彩だといえる」
私はこれを聞いていないのでコメントする価値があるかどうか分かりませんが、どうも所謂楽譜通りで、装飾などの工夫が余りされていないという先入観があります。カデンツァなどに顕著に現れるのでしょうが、淡彩といえば音が少ないのでは?
投稿: pfaelzerwein | 2005年10月 1日 (土) 03:20
「どうも所謂楽譜通りで、装飾などの工夫が余りされていないという先入観があります。」
まさにこの通りです。そういう意味では、Neuesachlichkeitの流派の演奏だといえるのかも知れませんが、余計な色づけをしないところに素材そのものを味わえる秘訣があるようです。
セル曰く「新鮮なアスパラガスにチョコレートsauceを掛けても旨くないんだ」とか。
そうは言ってもじっくり聞くと細部には千変万化の繊細なニュアンスが詰め込まれているのが聞き取れます。
先日のハイティンクのライヴの第九の隈取の話とは矛盾するようですが、モーツァルトの演奏には余計な隈取は不要のように思うのです。
投稿: 望 岳人 | 2005年10月 1日 (土) 11:04
マエストロ・セルはあの鼈甲メガネでそんな面白い事を仰いましたか。
笑いました。
投稿: pfaelzerwein | 2005年10月 1日 (土) 20:20