トスカニーニのモーツァルト 交響曲第39、40、41番
帰宅時にブックオフに立ち寄ったらワルター/VPOとトスカニーニ/NBC響のモーツァルトの交響曲が新入荷していた。ワルターの方は同じ録音のCDを持っているので、これまで聴いたことのなかったトスカニーニの方を求めた。
高名なトスカニーニの録音はFM放送でもあまり聴いたことがなかったし、音盤としてもそれほど所有していない。父所蔵のSPの「悲愴」とベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(ハイフェッツ)は別格として、LPでは「英雄」、CDでは「第九」、「ローマ三部作」、ホロヴィッツとのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番しかない。
これまで聞くことができたトスカニーニの録音は、音響的に潤いがないためハーモニーが醸し出す倍音的な艶が聞こえず、またその楽曲解釈では短いフレージングと前のめりのリズムが自分に合わないという印象をもっていた。また、よく rigorism (厳格主義)といわれるが、頑固親父的な短気な融通の利かぬ印象、さらに酷薄な印象まであり、音楽への愛情が感じられないようでつい敬遠してきた。
今晩は、そんなトスカニーニとは相性の悪いと思われるモーツァルトの後期の交響曲だ。
第39番は、1948年3月6日 NBCのスタジオ8-Hでの放送用録音。
第40番は、同じ場所で1950年3月12日の録音。
第41番は、カーネギーホールでの録音だが、第2楽章以外は1945年の6月22日、第2楽章のみ1946年の3月11日で、どうやら録音をし直したらしい。
同時代のフルトヴェングラーのモーツァルトは第40番はエアチェックして何度も耳にしたことがあるが、トスカニーニのモーツァルトは今回がおそらく初めてだと思う。どんな演奏だろうかと、聞く前に結構緊張した。
第39番は、ハイドン風の歯切れのよさで演奏。
第40番は、管楽器の溶け合いは洗練されていないが、ベートーヴェンやチャイコフスキーで感じた頑固親父風の融通の効かなさはあまり感じられず、フレージングもぶつ切れではなく意外によい演奏だった。特に第1楽章はモルト・アレグロのテンポで疾走しながらレガートが効いた歌うモーツァルトになっていた。(ただ気になったのが展開部冒頭での音程が他の多くの演奏と少々違っているような違和感があったこと)。結構気に入った。
第41番はこの中で一番録音年代が古いものだが、演奏スタイル的はまったく古さを感じさせないもので、これもトスカニーニ臭のない柔軟な演奏に聞こえた。特にフィナーレがcon brio, con fuocoな Mozart! 素晴らしい!
評判の悪いNBCスタジオでの録音だが、今回のリマスタリングはそれほど聞き苦しくはなかった。やはり音質のデッドさがトスカニーニへの印象をしばっているようだ。
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コメント
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家にあった洋泉社Mookの「クラシック名盤&裏名盤ガイド」1996年のモーツァルトの交響曲第41番の項に、このトスカニーニ盤が、倉林という評論家に「楽しくない、拷問のようなモーツァルト」「トスカニーニを聴こうというならともかく、間違ってもモーツァルトを聴こうと思って買ってはならない」と切り捨てられていた。この評論家は、カラヤンと同じくトスカニーニも最後までモーツァルトの演奏の仕方が分からなかった大巨匠と決め付けているのだから、そのような好みではこういう感想もやむをえないだろうとは思った。ちなみにこの人が推薦しているのは、アーノンクール/ヨーロッパ室内、シューリヒト/VPO(ライブ)だ。
私は、このトスカニーニのジュピターはすばらしいと思う。
投稿: 望 岳人 | 2006年2月14日 (火) 21:03