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2005年10月25日 (火)

ブラームス Op.120-1, 2

brahms_op120 ブラームスの室内楽は秋の夜長に聞くのにふさわしいということで、「クラシックのひとりごと」blogのクラリネットトリオの記事に刺激されて室内楽のCDを聞いてみた。

左のCDは、今井信子のヴィオラ、ゴールドスミスのピアノによるヴィオラ・ソナタ第1番Op.120-1と第2番Op.120-2。1989年6月ニューヨーク録音(長野県松本市で毎夏開かれているサイトウ記念フェスティバルに今井信子氏がジュリアードカルテットと共演したコンサートを聞いた際に記念に求めたCD。今井氏は、モーツァルトのハ長調の弦楽五重奏曲のヴィオラパートを担当)。 ちょっとピアノの音色に癖があるが、非常に渋い音楽になっている。

右のCDは、ヴィーンフィルのクラリネット首席だったアルフレート・プリンツのクラリネット、マリア・プリンツのピアノによる演奏。1988年4月、くしくも私が上記の今井信子らの演奏を聴いた「松本市のハーモニーホール」での録音。同じくOp.120-1とOp.120-2だが、こちらがオリジナル。ブラームスは、晩年にクラリネットを中心にした三重奏曲、五重奏曲を書いてきて、最後にこの二曲をものしたという。そして、三重奏曲とこの二曲は、クラリネットのパートをヴィオラで演奏するバージョンをブラームス自身が書いた(編曲した)とのことだ。ヴィオラソナタには、クラリネットでは出せない重音のパッセージなどが出てくる。

最初、ヴィオラソナタとして親しんできたが、今日購入したクラリネットソナタをCDでじっくり聴いてみると、多弁なピアノに少々甲高いクラリネットの音色があいまって、色彩的な華やかさが醸し出され大変面白い。とても晩年の創作力の衰えを嘆く風情には聞こえない。まだ初秋の、天高く馬肥ゆる秋の明るさがイメージされる。

それがヴィオラソナタとなると同じ曲なのにまったくイメージが変わる。晩秋の、落ち葉に霜を置くの風情だ。

p.s.2006/11/15  yurikamomeさんのブログで1番のソナタを拝見しTBを送らせてもらった。

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ディスク音楽03 アンサンブル」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。
TB、有り難うございました。
プリンツのクラリネットはイイですね。DENON盤のブラームス・モーツァルトのクラリネット五重奏曲やベームとのクラリネット協奏曲をよく聴いています。
今井信子のヴィオラも良さそうですね。
機会がありましたら、是非聴いてみたいと思います。

トリオからこの曲へ、そして楽器違いの聞き比べ。興味尽きないですね。手元に充分な資料もありませんが、面白い事が分かりそうです。

素晴らしい示唆を有り難うございました。何か気がついたら、書き込みます。

mozart1889さん コメントありがとうございます。DENON盤のモールツァルトとブラームスのクインテットは同じですね。協奏曲は、ちょっとかわってミュンヒンガー盤を持っていますが、オケが少々堅苦しい感じです。でもプリンツはいいですね。

pfaelzerweinさん、コメントありがとうございます。トリオの方は未聴なのですが、これもヴィオラとクラリネットの両版で聞けるようですね。ブリリアントのブラームス室内楽集に入っていればいいのですが。

クラリネットとヴィオラといえば、モーツァルトのケーゲルシュタットトリオも同じですね。ブラームスは意外なほどモーツァルトを意識していたのでしょうか。モーツァルト自身はヴィオラを好んだそうですね。

先ずOp.120-1のヘ短調の方ですが、ヴィオラの方がピアノとの音楽の受け渡しが聞けて、作曲の粋が良く分かります。それに比べてクラリネットの方は三楽章のレントナーなどのノリが良いですね。作曲家のヨハン・シュトラウスへの愛情を思い出します。

どうしてもクラリネットは、音の繋がりが滑ってしまうので、ボウイングの妙には叶わないですが、音色や躍動感が魅力ですね。

モーツアルトが新しい楽器クラリネットに慎重だった事は良く知られていますし、確かカルテットでは本人はヴィオラを弾いていましたね。当時のクラリネットは、20世紀の作曲家がサクソフォーンを使ったような感じではなかったかと思います。

ヴィオラも大振りのをヴォルフラム・クリストの様にとても腕の長い人が弾く場合や、ヴァイオリンと持ち替えする人など様々です。またタベアのような音を作る人や。私は、この曲は持ち替えのズッカーマンのLPで聞きました。今井さんの音はイタリアのヘロルド演奏の印象があります。

次の二番は大分趣が違うので改めて聞いてみます。

二曲目の変ホ長調も聴きました。予想以上に聞き比べは面白かったです。実務経験の長い作曲家なら調性を見るだけで楽器の使い方が充分予測出来るのでしょうが、我々は初めて気が付くような事も多々あります。

この作曲家にありがちですが同じジャンルで一曲目が出来ると二曲目以降は全然遣る事が違うのですね。晩年のオルガンコラール曲等の前の白鳥の歌ですね。一楽章の二つ目のヘジテートする主題などは、クラリネットでは厳しいなと云う感じです。二楽章の中間部のコラールのような繋がりは弦の良さと管の呼気両方の利点が欲しいですね。三楽章も最後の変奏などは秋空の下でスーと大きく息を吐くのが良いです。それ以外は、弦の繊細な表現力が欲しい。

結論として、両楽器を比べないと片手落ちになりそうです。両楽器版で一曲と云う気がします。晩年の音楽として、大家が無駄なく腕を振るっているのが素晴らしいです。因みに秀和先生は、どちらがお好みです?

演奏はデュ・ペイエルで、これもバレンボイムの伴奏でした。ザビーネの演奏なども聞いてみたいですね。

詳しい聞き比べのコメント、ありがとうございます。

参考にさせていただき、再度聞いてみようという気になりました。

吉田秀和さんは、どちらがお好みなんでしょう?ブラームス論集などに出ていたでしょうか?

>クラリネットとヴィオラといえば、モーツァルトのケーゲルシュタットトリオも同じですね。

と書きましたが、モーツァルトのクラリネット三重奏曲変ホ長調K.498「ケーゲルシュタット・トリオ」(1786)の編成は[p,cl,va]で、クレーメル盤では、clとvnを交換しており、ブラームスのトリオ クラリネット三重奏曲イ短調Op.114(1891/1891初演)[cl/va,p,vc]とは編成に違いがありました。失礼しました。

TBありがとうございます。おっしゃるようにヴィオラとクラリネットではずいぶん風情が違いますね。というかヴィオラの音の魅力にとても感心しました。あとはベリオによる編曲版もあるのですがこちらも近々エントリします。

yurikamome122さん、こちらにもコメント、トラックバックありがとうございました。同じ曲がヴィオラ、クラリネットで演奏されるとそれぞれ違う曲のようですね。

この楽器を変えての楽しみは、シューマンもいろいろ試みているようで、そちらも聴いてみたい分野です。

ベリオの編曲版の記事を楽しみにしております。

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