グールドのアンサンブル
またもやブックオフによい出物があり購入した。左の写真は、「グレン・グールド・プレイズ・ベートーヴェン」。グールドがピアノパートをつとめた珍しい室内楽。一曲目は、シュムスキーのVnとローズのVcによるベートーヴェンの「幽霊」トリオOp.70-1。二曲目は、同じくローズのVcによるベートーヴェンのチェロソナタ第3番。そしてアンサンブルではないが、ピアノソナタ第31番。いずれもライヴでモノラル。右の写真は、グールドが録音したバッハのクラヴィーア協奏曲集と、イタリア協奏曲、それにグールドのオルガン演奏による「フーガの技法」。
この中では、先日も聞き比べ記事をアップしたチェロソナタが一番面白さを感じた。グールドといえば、独創的なテンポ設定、ノンレガートというイメージがあるが、チェロソナタではそのような特徴はあまり聞こえず、第一楽章が少し早めなのをのぞき(提示部のリピートをしていないので他の演奏よりもその分は短い)テンポは一般的だし、レガートも美しい。ただ、彼ならではの刻印としては、先の聞き比べのピアニスト、グルダ、リヒテル、インマーゼールからは聞こえなかった独特の声部の取り出しが聞こえる。普通はチェロの陰に隠れてあまりピアノを強調しない部分で、ピアノパートを浮き出させることにより、非常に新鮮な演奏になっている部分がある。やはり彼は対位法の音楽家だった。(モノで音質的にも歪が多いので普通の鑑賞用にはつらいが、はつらつとしたグールドのピアノは味わえる。いわゆる「エキセントリックな」演奏だけではヨーロッパ楽旅が成功したはずがないと思っていたが、「正統的な」演奏スタイルで聞くと余計グールドのすごさが分かる)
ちなみに、先日の三種のタイミングと今回のローズ&グールドのそれを並べてみよう。
フルニエ&グルダ <59年> 12:56 5:22 8:38
ロストロポーヴィチ&リヒテル<61年> 12:05 5:34 8:35
ビルスマ&インマーゼール <99年?> 12:15 5:33 1:38+7:05
ローズ&グールド <62年 ライヴ> 8:52(提示部は約2:58なので単純に加えて上記3種と合わせると11:50) 5:18 8:17
クラヴィア協奏曲は、現代ではハープシコードによる演奏が普通のため、聞きなれたピノックのハープシコードと指揮によるARCHIV盤と比べると、ピアノによる演奏は少々違和感があるのだが、グールドのピアノはさすがに退屈させてくれない。モダンオケも悪くない。イタリア協奏曲はすでに他のCDで聞いたことのあるもの。フーガの技法は9曲のみだが、オルガン盤で聴くのが初めてでありオケ版(リステンパルト/ザール室内、ゲーベル/ムジカ・アンティクヮ・ケルン)との違いが面白かった。
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グールドは意外とベートーヴェンを録音しているのですね。私もソナタの最後の3つが入ったLPを持っていますが、聴き慣れた感じとは随分違っていて、違和感を覚えました。しかし、もしかしてベートーヴェンの心に描いていたのはこんなのではなかったか、なんて思ったこともあります。
私の好きなのは、協奏曲の第1番ですね。
(ゴルシュマン/CBC響のLPです)
投稿: 丘 | 2005年10月31日 (月) 17:09
丘さん、コメントをありがとうございます。
グールドは、ベートーヴェンのソナタのいくつかと協奏曲は結構録音しているようですね。私も悲愴・月光・熱情のCDを持っていますが、非常に奇抜なテンポで、曲の別の面に光を当てたとものはいえるかも知れませんが、感動からは遠いですね。グールド自身曲から距離をおいて演奏しているとのことですから。
今回購入したベートーヴェンの室内楽は、非常に珍しいもののようで、購入後、ネットで調べてみたのですが、ほとんどヒットしませんでした。今回のCDに31番ソナタが入っているのですが、あまり弾き崩しておらず好感の持てる演奏でした。フーガはさすがにグールドだと思いました。
協奏曲ではストコフスキーとの皇帝もユニークなようですね。
投稿: 望 岳人 | 2005年10月31日 (月) 17:41